思わず声に出る好奇心、あるいは願望。
凛の反応は無い。
肯定と察して、あるいは黙殺する態度への気遣いより未知の部分への興味が凌い
で、士郎は手を伸ばす。
赤子の指先のような小さな瑞々しいピンク色の膨らみ。
ぴんと張り詰めたようにも見えるが、繊細で、触れるのを躊躇わせる。
それでも、士郎は指をあてがった。
そっと、触れるだけでも壊れそうなガラス細工に対するように。
形としてはそんなに変ったものではない。単なる小さな突起に過ぎない。
それでいながら、秘められた部分の中でも、大事に守られている部分。
そこを見つめているだけで、士郎は息を飲む。
軽く接触面を増やす。触れた所が点から面へと変わっていく。
じれったいほどゆっくりと。
「固くなってる」
見た目は可憐で、僅かな刺激にも屈しそう。
しかし、思ったよりも突起はしっかりとしている。
胸のピンク色の乳首が愛撫によって突き出て固くなるのにも似ている。
一見強くなっていながら、同時に驚くほどの敏感である処も似ていた。
触れれば凛に刺激を与える。しかし例え快美であれ、強すぎれば苦痛に変ってし
まう。
そっと、そっと。
それでも凛の眉が寄るのを、できるだけ気遣いつつ、士郎は指を動かした。
次第に加減がわかり、少しは大胆に士郎の指が動く。
頂上に乗った指が後ろへと、根本へと動く。
指の軽い圧力で、尖った肉芽を守っていた皮が後退する。
あるいは熟しきった豆が自ら莢を飛び出すように。
明らかに回りの柔らかいピンクの襞とは違う艶、形状。
周りの柔らかそうな肉皮に比べても堅く見える。
知識としてはどういうものか士郎も知っていた。
見てなるほどと思う部分もある。
自分にもある伸び縮みするものと、似ていなくも無い。
しかし、ある種間抜けに見える男のものに対し、なんと慎ましくそれでいて魅力
的なのだろう。
これが、凛のクリトリスが柔皮で包まれ守られているのは当然に思える。
たとえ今の様子が庇護を求めていないように見えても。
誘われるように、士郎の顔が近づいた。
まだ、続けようとしている。
それをじっと凛は見つめたまま。
止めはしない。
ただ、一言呟くように言う。
「敏感だから、優しくして」
僅かな怯え。
それに、士郎は頷く。少しでも安堵させるように。
高価な宝石、あるいは不用意に触れただけで溶け崩れる氷細工にでも触れるよう
に。
士郎は出来るだけの注意と、目に見える緊張を持って凛のルビー色の肉芽を弄る。
震えが士郎の指先に伝わる。
そろそろと皮を後退させる。
球体というより楕円の形の突き出した形状。
もっと手を動かせばさらに剥けるのかもしれない。
しかし、それ以上の行為をするのが躊躇われる。怖れすら感じている。
そこまでで士郎は満足した。
後はただ、凛の隠された宝石を、うっとりと眺めるだけ。
遠坂家の秘蔵の魔石のどれよりも、魅惑の魔力を放っているようだった。
瞬きすら惜しむように、凛の艶やかな肉芽を士郎は見つめ続けた。
「綺麗だ。こんなになってるんだ」
「知らないわよ。
だって、自分でもこんなにした事無いんだから。
こんなにしげしげ見られるのなんて、衛宮くんが初めてなんだから」
ちょっと怒ったような口調は、しかし動揺の様子を示しているだけ。
初めてという、その言葉の意味。そしてその話し方。
非難していてもなお、柔らかい。
士郎の心に愛しさがこみ上げてくる。
もっと遠坂を愛したい。そんな衝動に後押しされたように、士郎は舌を触れさせ
た。
剥き出しになった肉芽に、直接の愛撫を加えようと試みる。
皮の上からなぞったさっきとは違う。
直接、触れる。
「ふぁ、や…、やめて」
悲鳴が上がる。
短い髪に凛の手が触れる。
ぐしゃぐしゃと力が入り、指が髪に入る。
強すぎただろうかと舌を止める。
もっと注意して、舌先で軽く突付くようにして接触させるだけにする。
凛の手が押しやる動きを止めた。
加減に注意しつつ、舌を動かしつづける。
赤い縁から、柔らかいピンクの肉皮から、繊細な花びらのような粘膜まで。
舌で触れる感触が心地よい。
しだいに潤みを帯びてくる様が喜びを誘う。
秘められた部分の女の匂いが酔いを誘う。
濡れた舌を、別な粘液にまみれつつある秘肉に絡め、凛の分泌する露液を舌で掬
い取る。
飽く事無く遠坂凛を味わう。
ともすれば単純な舌の上下運動だけで満ち足りてしまいそうなところから、注意
を外す。
こんな素晴らしい感動を与えてくれている相手を。
初めて秘密の場所を異性の自由にさせてくれている凛を。
なんで放っておいて、自分だけの快感に浸っていられるだろうか。
何より、そうした稚拙であろう舌戯で、あの遠坂凛が反応し、小さく声を上げて
いる。
その痺れそうな感動と喜び。
そう、声が変っていた。凛の口から漏れる声が。
押し殺したような、耐えるようなさっきまでの調子もまだある。
それはそれで、士郎の耳を刺激し、背筋をぞくぞくとさせていた。
しかし、今、その調子が変っている。
意味のある声というより、音の混じった息。
むしろ泣いているような響き。
そして時折混じる、吐息混じりの甘い声。
その音色をもっと聞きたいと、士郎は熱を入れて愛撫を続けた。
とろとろと明らかに濡れだした粘膜に唇をつけ、熱い蜜を啜りこむ。
小さく小刻みに、強く大胆に、舌を動かす。
そして。
びくんと腰が跳ねるように動いたのと、士郎が顔を上げたのとどちらが早かった
か。
悲鳴のような、どこか小さな声。
太股を抑えていた手に伝わる力。
緊張と弛緩の交替。
目に映る反応に、士郎はぼんやりと、イッたのだろうかと考える。
少なくとも、尋常でない反応。
絶頂まではいたらなくとも、瞬間的には高まりに我を失っていた。
紅潮した肌、目尻が少し潤んでいる。
喘ぐ声、のけぞって見えた喉が艶かしい。
自分の手でこんなになったのだとは、士郎には信じがたかった。
そこに触れたままの手を離す。
指先にはまだ股の肌触りが残っている。
軽いクライマックスは同時に、士郎の行為をもいったん終わらせる力があった。
体を起こす。恐れにも似たものが胸に忍び込んでいた。
裸で横たわる、遠坂凛。
見た事の無い、綺麗な裸体。
同時にどうしようもなく性的な魅力に溢れた姿。
今まで、触れていたのだよな、と信じがたく士郎は心の中で呟く。
逃げ出したい気持ちさえ起こる。
そうできないのは、同じ凛の艶やかな姿に縛られているから。
息を整えながら、凛も上半身を起こした。
士郎は息を止めて待つ。
怯え。
凛は軽く頭を振る。
潤んだ目で士郎を見つめ、目の光を戻す。
微かに頬を赤くしているが、それ以外は先ほどまでの姿。
「ねえ、衛宮くん」
士郎を見つつ、凛が近づく。
間近に。
「遠坂、何を?」
「わたしだけだと、不公平でしょ?」
そう凛は言うと、視線を逸らしてしまう。
目を合わせるのが恥ずかしいと言うかの様に
そんな凛の姿を見たら、士郎には逆らう事など出来ない。
じっとして、ただ視線だけを傍らの少女に向ける。
ちょこんと正座を崩したような格好で、凛は間近にいる。
その視線が士郎の顔から離れ、胸を経過し、止まった。
ある一点で。
見られている。
遠坂凛が自分の、こんなになったものをまっすぐ見つめている。
そう認識しただけで、びくんと根本が動く。
恥ずかしさを感じる。
それと同時に、痺れるような感覚。
「こんなに大きくなるんだ」
軽い驚嘆を含んだ声。
まじまじと見つめる視線。
恥ずかしがって目を背けるタイプではないが、やはり平然としてはいない。
己の性器を異性に見られるのは、羞恥を否応無く引き起こす。
はちきれんばかりに大きくなり、そそり立っている。
つまりは興奮と、いやらしい思いに満たされている証。
しかし、その様は凛にはある種の感銘を与えたようだった。
「だって遠坂の見たり、触ったりしたんだから」
「でも何もしていないのに」
不思議そうに呟き、凛は手を伸ばした。
まっすぐに。
そこへと。
はちきれそうになっている屹立へと。
「ちょっと」
「触るわ、当たり前でしょ」
「当たり前って」
「これが、これからわたしの中に入るんだから……」
言って、凛は顔を赤らめた。
生々しい表現にか、積極的な物言いにか。
士郎も伝染したようにさらに恥ずかしさを感じた。
その空気が淀むのを止めるように、凛は白い指を改めて動かした。
「触れてないのに何だか熱いみたい。触ると火傷するんじゃないかしら」
「そんな事はないぞ。少しは熱持ってるだろうけど」
とうとう、白い指先が触れた。
先端の敏感な部分ではない。
筋になった急所である部分でもない。
笠状になった下、感じやすいくびれの部分でもない。
脈うった幹の部分に、柔らかい指の腹が触れているだけ。
なのに、どうして。
士郎はむしろ射精し果てなかった事を不思議にすら思っていた。
凛の性器に触れ、間近に見て、舌ですら戯れた。
その夢のような行為、それでいて興奮に血を噴出しそうな淫靡な体験。
それも素晴らしい陶酔と、体の五感で感じる快美だった。
そしてその興奮が、尋常でない高みに士郎を持ち上げていたのではあったが。
指の冷たく、それでいて柔らかい感触。
固い爪の感触。
性器を間近に見ている異性の瞳。
遠坂凛が、触れている、それも嫌々ではなく自分の意志で触れているという事実。
それらが士郎を肉体的な刺激、直接的な快感によってだけでなく、絶頂へと導か
んとしたのだった。
そんな士郎の状態を知ってか、知らずか。
思いもかけぬほど大きく、そして固い。
はちきれんとする勢い故にか、熱を帯びている。
そんな驚愕の器官に警戒しつつも、それでも暴れたり危害を加えないとは判断し
たのだろう。
あるいは魔術師たる好奇心が目覚めたか。
凛は指で士郎の幹と言わず、根元の袋と言わず、探索を続けていた。
顔も近づいている。
ほとんど触れそうなほど近く。
息が軽くペニスを擽る。
また、ピクリと屹立が脈打つ。
噴火する前の火山にも似た、内からの高ぶりの発露。
それを何のシグナルと取ったのだろうか。
凛は手の動きを少し強めた。
幹を滑るように白い指が撫で上げていく。
軽い握りでしごいていく。
柔らかな白い指の軽い締め付け。
手のひらの摩擦の甘美な刺激。
「うぁ、と、遠坂ッッ」
悲鳴。
士郎の声の調子に、手の動きが止まる。
「え、何。どうしたの、衛宮くん?」
「頼むから、少し止めてくれ」
「ごめんなさい、痛かった?」
「逆。気持ち良すぎて……、これじゃもたない。ちょっと勘弁してくれ。お願いだ
から」
「う、うん」
握ると言うより、優しく包むようにしていた手を離す。
確かに、それは常ならぬ高ぶりだった。
びくびくと弾けそうになる様。
士郎が腹筋に力を入れ、深く息を吸い吐いている。何やらもごもごと呟いている
のがわかる。
落ち着かせているんだ。
凛はそう悟り、まじまじと自分の手を見詰めた。
いつもと同じよね?
軽くいつもの自分に戻っての、自問自答。
初めての遠坂凛にはわからない、士郎の肉体反応を思い起こす。
むしろ、いつもの戯れで手で士郎を追い詰める時の方が、刺激自体は強い筈。
指で敏感な雁の部分をなぞり、尿道口を指先で突付き、強く握ってしごいてみせ
る。
たらりと唾液を落して、単なる摩擦ににちゃりとした感触を加える。
士郎の堪える声と表情、より熱く容量すら増していく士郎の膨らみの重み。
幹から手を動かして、あるいは空いた手で幹の根本にぶら下がる袋を軽く包んで
みたりもする。
そうした要所要所に対する愛撫に比べれば、今は本当に触れているだけと言って
も良いほど。
なのに士郎の切迫感は段違いだった。
股間の隆起は、そのまま変化があるようには見えない。
しかし士郎は少し落ち着いたのだろう。切迫感は消えていた。
「ありがとう、遠坂。気持ち良かった」
「そう」
真顔で言われると、男のものに手を伸ばした事に羞恥の念が起こる。
頼まれてならまだしもと。
しかし士郎の言葉には揶揄する響きもなく、素直な喜びの表現として凛は受け止
めた。
「遠坂」
互いに性器に触れ合って、愛撫をし合った事で、少しは緊張感がそがれたのだろ
うか。
果ててしまう寸前迄高まり、繰的な反応が少し出てきたのだろうか。
躊躇わず士郎は、凛の唇に触れた。いや、奪った。
そのまま、今度は凛の体を布団に倒す。
背に手を回して、そっと。
抵抗はまるでなかった。
さっきのキスともまた違う感触。
二人とも体が熱くなっている。
異性の手に触れられ肌が上気し、中からぽかぽかとしていた。
唇も熱を帯び、こぼれる息も高まっている。
キスをしながら、士郎は手を滑らせた。
胸に軽く触れ、可愛いおへその辺りをかすめ、すべりの良い太股の合わせ目へと。
さっき間近で見て、匂いを嗅ぎ、舌で舐めた部分に指が忍び込む。
「はぁッふ…」
少し喉を仰け反らせ、凛が小さく声を洩らす。
過敏な反応。
しかし、士郎はその耳を擽るような喘ぎ声にあまり注意はいかなかった。
もっと驚くべくモノがあった。
手の熱さ。
ぐっしょりとした異質な感触。
「え、こんなに濡れてる。さっきより凄い。こぼれるほどびちゃびちゃになって」
士郎の声は、淡々と事実と疑問を述べていた。
冷静な指摘ではない。
ある種の感動が込められている。
それが強く、そして心の底から震えるようなものだからこそ、一見、平静に見え
る。
しかし、凛にとってはそうした抑揚ない言葉こそが一番効果的だった。
効果的に、刺激をした。羞恥を感じる部分を。
「俺のをさわってたから? それでこんなになっているのか?」
(To Be Continued....)
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