「きゃっ」
「綺麗だ、遠坂の胸。こんなに形が良くて、可愛くて」

 いきなりの行動に悲鳴が上がる。
 大胆な真似をしたが、そのまま士郎の手は愛撫には到らない。
 その代わり、指で触れられたような錯覚すら感じさせるような視線が絡んでいた。
 まだ完全に自由にはなっていない胸。
 下の方でよれたブラジャーに軽く形を潰されている。
 しかしその為に、かえって柔らかさを感じさせる。
 白い肌の中で、真ん中の蕾だけが薄いピンク色。
 可憐に座する乳首が、何とも色っぽくも見える。
 心持ち、突き出している。

「触わってもいいか?」
「……うん」

 律儀に訊ねた言葉に、恥ずかしそうに答える言葉。
 躊躇いつつ、士郎の手が胸に触れる。
 指先が、触れる瞬間に止まり、そして先端から僅かにずれた処へ。
 ピンク色の突起と、膨らみの白い肌の境。
 やや淡くくすんだ輪を、指先がくすぐるように動く。
 爪先が触れていただけだったものが、僅かに倒れて指先の腹に代わる。
 そっとそっと指が胸を小さく動く。
 人差し指だけだったものが、その数を増やす。
 丘陵をそっと撫ぜていく。
 あくまで軽い触り方。
 しかし、凛は指の動きに反応し始めていた。
 指の動きによって顔色に変化が現れ、小さく息を洩らす。
 直接はまったく触れていない乳首に手がかすめた時に、声までがこぼれ出した。

「はぅ、な……」
「遠坂?」
「いつもはもっと強く触るのに、なんでそんなぎこちなくするのよ。触られるこっ
ちも緊張が移って……」
「だって、遠坂だぞ」

 一瞬、素に戻って凛が問うと、士郎はあっさりと答えた。
 もっとも直接的な答えになっていない。
 しかし、完全なる理由になっていると言わんばかりの顔。
 凛はその表情から士郎の頭の中を読み取る。
 いきなり触れる事なんて出来ない。
 はっきりと触れてしまう事を恐れている、不安を見せている。
 それは、夢が醒める事を。
 不用意に手を伸ばして遠坂凛に嫌われる事を。
 それでも、触れずにはいられない。
 恐る恐る接触しただけで、士郎の顔には喜びが満ちていた。

 どのように自分は想われていたのだろうか。
 凛にはわからないし、訊いたとて答えは得られないだろう。
 答えようとしたとしても、そんな心の機微を士郎自身にも言語化できる訳がない。
 でも、言葉ならぬものは伝わる。
 その憧れの瞳。
 夢見るような目。
 手から伝わる強い情感。
 向けられる者としては、赤面せざるをえない。
 頬に熱さを感じ、照れ隠しのように凛は文句を口にした。

「じろじろ見ないでよ」
「うん……」

 士郎は返事をしている。
 だが、視線は一向に離れない。
 思慕の眼差しは揺るがない。

「遠坂……」

 ようやく、士郎から変化が生じた。
 凛に呼びかけ、そこに寝てくれと言うように士郎は視線を布団に向ける。
 いきなり押し倒すよりはマシだが、スムーズとは言い難い。
 しかし、士郎の意を察すると、凛は素直に従った。
 布団に背を預ける。
 脚を伸ばす。
 死角になっていた部分が、士郎の目に入る。
 下着を取り去り、もはや隠す生地は無い下半身。

 局部に注がれる視線に、凛に羞恥の感情が湧いて来る。
 ともすれば両の手がそこへ動き出しそうになる。
 でも覆い隠さない。
 覚悟を決めていたから。
 今日は衛宮士郎に、全てを捧げようと思っていたから。
 だから、そこに目を向けられ、触れられるのも、どれだけ恥ずかしくても我慢し
ないといけない。
 
 士郎が同じく横たわる。
 凛の体にはまだ重ならない。すぐ傍らで上半身だけが凛に被さるような格好。
 どうされるのだろうと思っていると、士郎の体が動いた。
 顔が胸から腹を越えて、さらに先へと向かう。

「ちょっと、士郎」

 乱暴ではないが、それでも強い力。
 士郎の手が止める間もなく凛の脚を掴み、動かしていた。
 白い腿の付け根、秘処がすべて開かれている。

「こんなになってるんだ、遠坂のここ……」
「いきなり、何するのよ」
「だって、そのままじゃ痛いぞ」
「それは、そうだけど……」

 余りに即物的すぎると不満を言いたくなる。
 もう少しやりようがあるだろうと。
 凛の戸惑いを尻目に、士郎の方は強い積極性を示していた。
 いささか強すぎるほどの。
 脚を大きく割り広げさせ、鼻先が恥毛を掠めるほど顔を近づける。
 開かれた谷間に指が触れる。
 つぷりと潜り、襞に閉ざされた部分を露わにしようと……。

「ちょっと、止めて、衛宮くん」
 
 そう激しすぎる訳ではない。多少は荒っぽいが乱暴ではない。
 ただ、これまで胸に触れるだけで怯えていた士郎とは違っている。
 まるで人が変わったみたいに見える。それが凛を必要以上に慌てさせていた。
 しかし、士郎は止まろうとしない。
 声耳に入っているのかも定かでない。
 ためらい無く士郎の指が凛の女性器の中を蠢いている。それは不快な感触でなく、
むしろ明らかな快美となっていたが、その本当は未知のものではない刺激が凛に恐
怖を与えた。

「お願い、優しくして。わたし、初めてなんだから」

 半ば叫ぶ。それでも士郎は止まらないだろうと思いながら。
 しかし、電機仕掛けの人形がスイッチを止められたかのように士郎は止まった。
 むしろ凛の方がきょとんとするほど。
 士郎の顔が上がる。
 凛の視線と交差する。
 ああ、いつもの衛宮くんだ。
 瞬間的に察して、凛は安堵した。

「ごめん、遠坂……」

 後悔と謝意が滲み出る士郎の言葉。

「どうしたの?」
「俺にも良くわからない。遠坂とこれからするんだと思ったら頭が真っ白になって。
 どうにかして遠坂と上手くやらないといけないと思ったら、急にどうしていいか
わからなくなって。
 自分勝手にして、恐がらせちゃったよな。本当にごめん。謝る」

 暴走みたいなものかと、凛は判断する。
 士郎の体自体は、遠坂凛に何をすれば良いのかを憶えている。
 軽い頭のオーバーヒートによって、意志によらず、想いによらず、技術のみが走
ったのだろう。
 恐縮する士郎を安心させるように、凛は微笑みを浮かべる。
 
「気にしないで、ちょっと恐かっただけ。
 余計な事を気にしなくて、衛宮くんが好きなようにしてくれればいいから」
「そんな、俺だけ……」
「衛宮くんがわたしの事想ってしてくれる事なら、きっとわたしも平気だから。
 でも、さっきみたいに、わたしが恐くなったら止めてね」
「わかった。嫌だったら止めてくれ。俺も出来るだけ優しくする」

 決意の表情にくすりと凛は笑う。
 体の力を抜く。
 士郎のする事を、受け入れようとする態度。
 しかし、眉が少し顰められた。

「でも、最初はやっぱりここなの?」
「嫌か?」
「いいけど……。うん、好きにして」

 開かれた脚の付け根。
 今しがた触れかけた性器。
 我に返った士郎の興味の対象は、変わらずその最も秘められた部分であった。

 抗い難いように、士郎の目がそこに向けられている。
 白い股の内に見える、紅を薄めた亀裂。
 黒い翳り。
 その可憐にして淫靡な様。
 女を強く、はっきりと感じさせる部分。
 遠坂凛にすら、こんな生々しい部分がある。
 そのアンマッチな処すら、魅惑されずにはおられなかった。

 息がかかるほど、士郎は間近に凛を見つめる。
 僅かに、そこが動いている。
 綻びに見える合わせの部分が、今にも花開きそうに見える。
 小さく士郎の鼻が動いた。
 好きにさせようとしていながら、凛が抗議の声を上げた。

「匂いなんて嗅がないでよ」
「何でだよ。遠坂のここ、いい匂いがする。
 それに俺、隅々まで知りたい。遠坂の頭の先からつま先まで」

 つま先までという言葉に反応したのか、凛のつま先がぴくんと動く。
 僅かに内側に丸まるような動きをしている。
 士郎がそれを見たら、小さい貝殻のような足の爪に唇を寄せ、言葉がまったくの
真実の吐露であるのを示したかもしれない。
 しかし、今の士郎は視界を奪われているも同然。太股の先にまで注意が向かなか
った。

 そっと士郎の指が亀裂に触れた。
 薄紅を溶かした色の唇をゆっくりと撫でさする。
 ぴくんと凛の下半身全体が痙攣したように動く。
 大丈夫かと士郎は指を止め、凛の様子を見て、また続ける。
 僅かに亀裂に指先が沈む。
 皮膚を擦るだけでなく、粘膜が絡むように指先に触れる。
 ほぐすような上下の運動を繰り返し、士郎は凛の唇をくつろげた。
 外からはわからぬほど、そこは潤いに満ちていた。
 粘膜が濡れている。

「もう濡れてるよ、遠坂」
「恥ずかしい事言わないでよ」
「だって、こんなに……」
「衛宮くんに感じさせられたのよ、わかるでしょ」
「俺?」

 まじまじと見つめる。
 一度指で誘うと、そのまま左右に花開いた陰唇。
 現れ出る内側の鮮やかなピンク色。
 花弁のように複雑な襞の重なり。
 先ほど乱暴に触れたとは言え、ほとんど触れてもいない部分。

「胸を触られて、恥ずかしいところ見られてるんだって思ったら……」

 士郎の胸に感動が広がった。
 稚拙な行為に対する明らかな反応。
 それに羞恥しつつも、凛は隠そうとしていない。
 白い肌を朱に染めつつも、感じている様子を晒してくれている。
 こうしている今も、凛の中で露出しているという思いが作用しているのだろう。
 粘膜の奥から、露がこぼれ出した。
 きらきらと輝きつつ伝い、こぼれ落ちそう。

 反射的に、そこに士郎は舌を伸ばした。
 頬に太股が触れた。
 愛液を舌先が受け止める。
 それだけでなく、女の匂いとしか言えないものが掬い取られる。
 飲み込む。
 
 遠坂の出したものを飲み込んだ。
 その事実で、士郎の頭が沸騰した。
 そのまま舌での愛撫を開始する。
 あまり激しくし過ぎない。遠坂に優しくする。
 それだけは忘れないようにしながら。

 まずは、辺りを濡らした粘膜を舐め上げる。
 閉ざされ篭った匂いに酔いしれつつ、全て舐めてしまう。
 後から、また新たな蜜液が滲み出す。
 どれだけそうしていても綺麗にはなりそうもない。
 
 薄いびらびらの重なりの上。
 唇にも似たピンク色の薄肉の合わせ目の辺り。
 そこへも士郎は舌を伸ばした。
 凛の蜜液と、士郎自身の唾液がぽたぽたと垂れそうな舌先。
 それが触れる。
 小さな突起。
 サヤに包まるように、皮をかぶっているが、中のものが覗きかけている。
 皮の上から、つんと舌先で突く。
 触れるだけよりは僅かながら強い動き。

 凛は過敏に反応する。
 触れられるだけで、どれほどの刺激となっているのか。
 逃れるように、肉芽が左右に動く。
 しかし、それが皮肉にも舌を出す士郎に擦りつけるような事にもなる。
 
 そうしていると、少し感触が変ったように士郎には思える。
 そこに集中しているだけに、僅かな変化をも舌先が逃さないのか。
 僅かに、固く。
 そして、先よりも尖ったような感触。
 
 士郎は顔を上げた。
 はっきりと目で確かめたかった。
 唾液で塗り込められような、皮を被った突起は、確かに変っている気がする。
 舌の這った跡だけでなく、包皮が少し捲れるように後退しただろうか。
 包む皮の解けより、覗くものがある。
 皮が捲れて中が見えると云うより、自ら飛び出そうとしているようにも見える。
 
「中、見てもいいか?」
「……」

(To Be Continued....)