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 身繕いを終えた俺と秋葉は、最後にもう一度離れの中を見回した。
 それでも、やっぱり秋葉のぱんつは見当たらなかった。

「こんな狭い部屋なのに、どこに行っちまったんだろうな?」
「お布団と一緒に押入れに仕舞ったのでは、と思うんですが……」

 秋葉が妥当なところを述べた。
 だが、布団のあたりも調べたんだけど。

「ちゃんとシーツも剥がして振ってみたんだけどなぁ……」

 あたかも通りかかった船を呑み込むサルガッソーの海みたいに、この離れは
通りかかったぱんつを呑み込む、とでもいうのだろうか?

「……兄さん。馬鹿なことを言ってないで、もう行かないと」

 うっかり口に出していたみたいだ。

「あ、ああ」

 ばつの悪い思いをしながら、俺は秋葉の方に向き直った。


 そういうわけで、結局秋葉はパンティを着けずにスカートを穿いている。
 つまり、秋葉は『のーぱん』なのだった。


 離れから庭に下りて扉を閉めると、秋葉が丁寧に施錠した。
 見回すと、月明かりと星明りがある分、外の方が明るいくらいだった。

 秋葉の方に視線を戻した、その時。

 夜の風が、秋葉のスカートの裾を、ふわりと舞い上がらせた。

「きゃっ!」

 黄色い悲鳴を上げて、秋葉は前屈みになってスカートの裾を押さえ込んだ

「兄さん、何ですか?」

 俺の視線に気付いて、秋葉が難詰するような調子で問い掛けて来た。
 俺は親指を立てて応じる。

「グッドジョブだ、秋葉」

 せっかく褒めたのに、秋葉は当惑顔でこっちを見ただけだった。

「……はい?」
「今の動きは実によかったぞ」
「そんなことで褒められても嬉しくありませんっ!」

 秋葉が柳眉を逆立てて叫んだ。
 男心のわからないヤツめ。





 玄関に入ったとたん、琥珀さんとぶつかりそうになった。

「あぁ!秋葉さま、志貴さん!
 よかった。お二人のお帰りが遅いので、これから探しに行こうかと―――」
 琥珀さんの言葉を、秋葉が遮った。

「心配かけて済まなかったわね、琥珀。それより、着替えて来るから―――」
「琥珀さん、夕食の用意はもう出来てるんだよね?」

 秋葉が言い終わる前に、今度は俺が口を挟んだ。

「はい。冷めないうちにお召し上がり下さい」
「わかった」

 俺は琥珀さんにうなずくと、そそくさと自室に向かおうとした秋葉の手首を
掴んで引き戻した。

「ほら、秋葉も早く食堂に行かないと。
 せっかくの夕食が冷めちゃうじゃないか」
「う……」
「そうですよー。さ、秋葉さまも志貴さんも、食堂へいらして下さいねー」

 琥珀さんが笑顔で言い置いて、ぱたぱたと厨房へ戻って行った。

「ほら、行こう、秋葉」

 俺は、にやっと笑いながら、もう一度秋葉の手を引いた。
 秋葉は恨めしげに俺を睨んだが、渋々うなずいた。

「……わかりました」

 『のーぱん』故にすーすーするスカートの中が気になって仕方がない様子の
秋葉は、左手でしっかりとスカートを押さえて歩き出した。

「……あのな。そんな不自然な格好で歩いてたら、余計に目立つぞ?」
「う……。そ、それもそうですね……」

 そう答えておきながら、秋葉はやっぱりスカートから手を放さなかった。





 夕食後は、いつものように居間に移動して紅茶を飲む。
 琥珀さんと翡翠に聞かれるまま、学校のことなんかを話しながら。

 いつもなら、俺はさっさと抜け出すところだけど―――
 今日は、ゆっくりするつもりだった。
 一方、秋葉は落ち着かない表情でソファに浅く腰掛け、左手でさりげな〜く
スカートの前を押さえている。

「翡翠、もう一杯貰える?」
「はい」

 翡翠がカップに紅茶のお代わりを注ぎ終えるのを待って、訊いてみる。

「秋葉も飲むだろ?」
「えっ?あ、はい……」

 秋葉は、半分上の空でうなずいた。
 のーぱんですーすーするスカートの中が気になって仕方がないんだろう。

 そんなことは知らない翡翠が、一礼して秋葉のカップに紅茶を注ぐ。
 それを横目に、俺はふかふかのソファに背中を預け、話を続ける。
 そう。夜はこれからだ。





 紅茶のポットが空になったのを潮に、俺と秋葉は席を立った。
 後片付けは琥珀さんと翡翠に任せ、居間を後にする。

 廊下に出たところで、俺は秋葉の腕を取った。

「秋葉、あのさ」
「何です、兄さん?」

 秋葉が、やや苛立たしげに俺を見返した。
 まぁ、秋葉が不機嫌なのも無理はない。
 俺が居間でだらだら話を続けたせいで、秋葉は席を立つきっかけを失って、
ずっとのーぱんのまま付き合うしかなかったわけで。
 もちろん、秋葉は俺がわざとだらだら話を続けていると知っていたわけで。
「ちょっと散歩に行かないか?」
「…………」

 秋葉は、じろりと俺を睨み返した。

「いいかげんにしてください。私は―――」
「秋葉が嫌なら嫌でいいんだけどさ」

 俺がそう答えると、秋葉は安堵の表情を浮かべた。
 もっとも、それは俺が続きを言うまでのことだったけど。

「それならそれで、こうするだけだから」
「え……っ?」

 秋葉に抗議する暇も抵抗する暇を与えずに、俺は秋葉を抱え上げた。
 いわゆる、お姫様抱っこ、というやつだ。

「ちょ、ちょっと!兄さん!」

 秋葉がじたばた暴れ出したので、俺は秋葉の足の方に身体を回転させた。
 風圧で、スカートの裾がぶわっとパラシュートみたいに広がる。

「…………!」

 俺の腕の中で、秋葉は大慌てて両手を下に伸ばし、スカートを押さえた。
 これでは抵抗どころではあるまい。
 顔を真っ赤にして身を強張らせ、必死にスカートを押さえ付けている秋葉を
胸に、俺は長い廊下を足取りも軽く歩いて行った。





 秋葉を抱えたまま、木立の中を庭の奥に向かう。

「本当に軽いな、秋葉は」
「それより、下ろしてくれません?」
「下ろしたら逃げない?」
「逃げませんから」

 秋葉は大きく息を吐いた。

「―――兄さんったら、もう。
 私が……その、下着…を着けてないと知っていながら、いけしゃあしゃあと
散歩に誘ったりして……断ろうとしたら、こんな風に強引に連れ出すなんて。
 兄さん、私をいじめてそんなに愉しいですか?」
「愉しいさ」

 俺はあっさりうなずいた。
 それから、付け加える。

「でも、別に秋葉をいじめるのが愉しいわけじゃないぞ。
 秋葉と一緒にいられるから愉しいんであって。
 ……例えば、こんな風にお姫様抱っこして散歩したり出来るから、さ」
「に、兄さんが最初からそういう風におっしゃって下されば、私だって……」
 秋葉はまだスカートの前を押さえたまま、ごにょごにょと呟いた。

「下ろすよ?」

 秋葉に一言声をかけてから、そっと足を支えた手を下げて行く。
 秋葉は俺の肩に掴まって、柔らかな地面に足を下ろした。
 次の瞬間。
 俺は秋葉を胸に抱き寄せた。

「兄さん…………」

 秋葉が、頭を俺の肩に押し付けて来た。
 左手を秋葉の後頭部に回し、長い黒髪をそっと撫でてやる。
 そうしながら、右手を自由にする。
 そして―――
 右手を、正面から秋葉のスカートに潜り込ませ、やおら恥丘を掌で覆う。

「ひっ!」

 秋葉がびくんと顔を上げた。

「やめ……ダメです、兄さんってば!」

 俺の手から逃れようと爪先立ちになった秋葉を、さらにきつく抱き締める。
 逃げられないようにしておいて、右手の指先をくいっと曲げる。

 くちゅり。

 小さな音とともに、中指の先が、柔らかい何かに沈んだ。

「何だ秋葉、もうこんなにしてたのか?」
「い、言わないで下さい。そんなこと……」
「いつから濡らしてたんだ?まさか、食事してる時からずっとか?」
「違います。そんなことはありませんっ!」

 秋葉にぽかぽか叩かれながら、俺はなおも追及する。

「だったら、食後に紅茶飲んでた時?」
「違いますってば!」
「そうか、俺にお姫様抱っこされながら、こんなにしてたのか」
「だから、違うと言っ……いぃぃぃっ!」

 秋葉の否定の言葉が甲高いよがり声に変わったのは、俺が軽く曲げた中指で
膣壁を引っ掻いたせいだ。

「やめて、やめて。兄さん……やめ……あ……」

 ちゅく、ちゅく、ちゅく、ちゅく、ちゅく、ちゅく、ちゅく。

 早いテンポで中指を浅く抜き差しする。

「んっ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あっ、あっ、あっ、あはぁぁぁっ!」

 急速に高まって行く秋葉に合わせて、指の動きを少しずつ加速して行く。

「ま、待って、待っ……て……くぅっ!ぅんっ!んんんんんっ!」

 俺の胸板をぽかぽか叩いていた秋葉の両手が止まった。
 ややあって、秋葉の両手が、今度は俺の学生服の胸元をきつく握り締める。
 秋葉がさらに伸び上がるようにして、俺の腕の奥に入り込もうとする。
 それに応えて、俺は中指のストロークを深くする。

「あっ!兄さん!兄さん……私、わたっ……し……!」

 がくがくと、爪先立っている秋葉の脚が激しく震え出す。
 中指に加えて人差し指も、秋葉の中に押し込んだ。
 揃えた二本の指で秋葉の中を掻き回しながら、左手で秋葉の顔を引き起こし
噛み付くように唇を合わせる。
 秋葉の方から、積極的に俺の口の中に舌を伸ばして来た。
 こっちも、積極的に応える。

「んんんぅ……あ、あぁ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ!」

 秋葉が口を離し、全身を震わせながら甘い声を張り上げた。
 構うもんか。
 これだけ屋敷から離れていれば、誰にも聞こえやしないさ。

「兄さん……お願いですから、これ以上は……」
「ああ。俺も、もう我慢……出来そうにない」

 言い終えるより早く、秋葉の手が、俺のベルトにかかっていた。

「あ、あぁ、兄さん……」

 秋葉が、火でも点きそうに熱い息を漏らしながら、もどかしげにバックルを
外し、ボタンを外し、ジッパーを引き下ろし、俺のズボンとぱんつをまとめて
ずり下げた。

「兄さん、早く……っ!」

 秋葉に言われるまでもない。
 右手を秋葉のお尻に移動させ、太腿の裏側に沿って下に滑らせる。
 膝の裏側を掴んで、秋葉の左足を小脇に抱え込む。
 そこで手首を返し、今度は秋葉の左足首を掴む。

「あ……!」

 そのまま、俺は秋葉の左足を高く持ち上げて行く。
 秋葉の制服のスカートが大きく捲れ上がり、夜目にも白い秋葉の下腹部が、
薄い陰りが、てらてらと濡れ光る秘裂が、俺の目に飛び込んで来る。

「う……あ、あの、兄さん……こんな格好……嫌…です……」


                                      《つづく》