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「……」

 いつもは全く気になんかしていないのに

「……」

 見られる事は慣れているはずなのに

「はぁ……」

 椅子に腰掛けながらも、秋葉は注がれる多数の視線を感じずにはいられなかった。
 確かに今までの自分は一人だけ違う制服を着て、最初は好奇の目で見られた
ものだが、そんなものを意識するほど臆病ではなかった。

 が、今日は違う。
 みんなが自分を見て、小声で話をしているような……そんな感じがした。

 ――ほら、遠野さんの服装、見てー?
 ――秋葉様、似合いすぎます!
 ――なんか、スカート短すぎない?

 いつも遠巻きのクラスメイトが、今日はより遠くに感じている。
 それを気にしない、とする方が無理な話だ。怒りなのか、震えてる自分がいる。
 バンと机を叩き、大声で「言いたい事があるなら言いなさい!」と叫びたい
気持ちだ。
 目を閉じると、まるで幻聴のように聞こえてくる、自分への様々な言葉。
 
 ……兄さんに言われてこんな格好をして、どうして兄さん以外の公衆の面前
にこの姿を晒さなくてはならないの!?

 やり切れぬ思いは、愛する、そして今は憎らしい兄に向けられる。それは怒
りを伴うものの筈だったのに、見られている、という不思議な感覚に身をおか
しくしている自分も、認めざるを得なかった。

 それは……羞恥

 そんな言葉が、秋葉の心にわき出した瞬間だった。

 ビクン……

「……!?」

 秋葉は、体を貫く感覚に言葉を発する事が出来なかった。
 熱がじわりと広がり、抑えが効かないように全身を伝搬する。

「そん……な」

 平静を装うが、一度決壊した堤防は、もう奔流をとどめる事は出来ない。

「ああ……」

 秋葉は自分の内部から溢れる熱に、ただ必死に耐えるしかなかった。



「……」

 休み時間、遂に視線に耐えかねて秋葉は手洗いに入る。そうして便座へと座
ると水を流す。

 ザァーッ

 その音に紛れて、秋葉は自分のスカートに手をかけ……そして、スカートに
隠された内部をまさぐった。
 自分以外では兄にしか触れられた事のない、その真っ白な内股を越え、茂みの
その奥に潜むそこに指を触れた時……

 クチュ

 脳をこねるような、柔らかく隠微な響きが聞こえてくる。
 音は水にかき消され何も聞こえなかったが、その感触から直接脳に響き渡る
それは、とろとろと濡れた水音そのものであった。

 ああ……信じられない。

 秋葉は、そんな自分の醜態に心と体がバラバラになっていく。
 そうして、音が消え去るまで夢中でその感覚を味わう。背もたれに体を寄せ、
大きく開いたそれに自分の指をあてがい、その濡れ方を確かめるが如く最奥ま
で入れる。そして、ゆっくり、本当にゆっくりとストロークさせ、

 ず、ず、ず……

 水飴を絡め取るように出し入れを繰り返した。

 ……いやだ、わたし、こんないやらしい……

 指を受け入れ、大きく蠢く自分自身の膣に更に惑わされ、秋葉はひとつぶる
りと震え上がった。

 ……音が止んだ。

 秋葉は、差し込んでいた指をゆっくりと引き抜く。
 ズチュリ……という感覚を残し、自分の中から現れてくる指。

「……」

 目の前に翳すと、そこは愛液でビチョビチョに濡れ、いやらしくてら光って
いる自分の指があった。その光景は、いっそう自分の興奮を高めるものとなり

「ああ……」

 ひとつ、ため息を漏らす秋葉。
 その瞬間、股間から新たに溢れた雫が

 ピチャン……

 静かになった水面にざわめきを起こさせ、波紋を広げていった。
 その音に、更に自分の中の熱が大きくなっていく。


 ……

 こんな事になってしまったのも、全て兄さんが悪いんです
 私の着替えを覗いたりなんかして……
 私にこんな格好をさせるようにして……
 私のからだを火照ったままにして……
 私の……

 ……ああ、だから責任を取って頂かないと
 私をこんな女にしてしまった兄さんには、責任を取って頂かないと……


 秋葉はふふっとひとつ微笑むと、ゆっくりと立ち上がり、ドアを開いていた。



                                      《つづく》