「どうしたの翡翠ちゃん。見回りはもう終わってるんでしょう?」
手首を握りしめたまま、笑みを浮かべたまま白い顔が問うた。
「わざわざ起こしに来てくれたのかしら。それとも……」
翡翠が白い手を外そうとその手首を掴み返したとき、白い影はするりと隙間から滲
み出すと翡翠の体を両腕ごと抱きかかえてしまう。目の前、鼻の磨り合う程近くに琥
珀の顔があった。琥珀は翡翠に頬寄せると、耳元で囁いた。
「私にも……いいことしてくれるの、翡翠ちゃん?」
身を強ばらせた翡翠の体が不意に引かれ、部屋の中に放り出される。床に倒れ込ん
だ翡翠が振り返ると、後ろ手に扉を閉める白い体が浮かんでいた。
床を這って後ずさるが、すぐにテーブルが背を打つ。琥珀は扉に錠を施すとゆっく
りと歩んできた。脇にあるブラウン管の光を受けて、情液が手や内太股でてらてらと
輝いている。琥珀は被さる様に屈み込むと翡翠の頬に手を沿わせた。指先の液体が顔
を汚していく。
「姉さん……どうして……?」
「どうして? 翡翠ちゃんこそ、こんな時間までどうしていたのかな?」
琥珀は翡翠の顔に線を引きながら問い返す。
「わ、わたしは──」
「うふふ……ちゃーんと知ってるのよ、翡翠ちゃん?」
頬を撫でていた指が顎を掴むと、テレビに方の顔を向けさせた。
「ひっ」
ブラウン管に映し出された像から背けようとした顔を、琥珀は自分の顔と抱えるよ
うに回した腕で固定してしまう。股に腰を打ち付けられて首を振る女の顔が目に飛び
込む。
「ダメよ、翡翠ちゃん。秘密にしようったって、そうはいかないんだから」
そこに写っているのは、志貴に犯される翡翠の姿だった。
「姉さん、こんな物、どうやって」
琥珀は笑って応えない。テーブルの上で小瓶が音を立てる。
「翡翠ちゃんたらえっちなのねぇ、あんなに気持ち良さそうにして……」
「そんなことっ!?」
「それとも、志貴さんだからいいのかしら……?」
「なっ!!」
かっと頭に血が上った。首に巻き付く琥珀の腕を振り解く。
「姉さん、いい加減にしないと──っう!」
向き直って口を開いた瞬間、口の中に指を差し込まれる。
味、というよりもひたすら強烈な刺激が翡翠の口内に広がる。首を振って吐き出そ
うとするが、ますます深く指を突き入れられる。喉の奥まで広がった刺激に、たまら
ず噎せ返る。くすくすと笑う琥珀を突き離したところでようやく指が引き抜かれた。
「姉さん、何を──」
ひりひりと痛む喉を押さえて立ち上がったとき、翡翠は肌が粟立つのを感じた。太
股にスカートが磨れると、ぞくりとした感覚が走る。膝を付いて、自分の体を抱くと、
自分の手でただ触れただけだというのに体が震えた。
「ううっ──はあぁっぅ……はぁぅうっ」
息をする度に背筋を快感が駆け上り、快感に身じろぎすることでまた快楽が生まれ
る。鼓動と共に体が熱くなっていく。
「──っ、何──これ……」
「ちょっと強すぎたかな? わたしが一人でするときにいつも使っているお薬なの。
本当はもっと薄めて使うのだけど。翡翠ちゃん飲んでくれないでしょうから、そのま
ま舐めさせちゃった」
「──なんで──こんな──もの──を」
琥珀は翡翠傍らに屈み込むと、肩を抱いて体を走る快楽を耐えているその首筋に息
を吹きかける。翡翠がびくりと身を竦ませる。
「ひぅっ」
「だって、わたしは普通にしても気持ちよくなれないから」
琥珀がそう言って背をつぅと這わす。思わず仰け反らせるとぐっと背を押された。
手をつこうとしたが間に合わず、床に敷いてある厚手の敷物に顔から突っ込む。顔を
撫でる敷物の感触でさえ愛撫の様に心地よい。その異常な感覚に冷たいものを感じて
身を起こそうとしたとき、下半身を刺激していたスカートの生地の感触が消える。
「もう、翡翠ちゃんたらこんなにしてぇ。膝まで濡れちゃってるわよ」
その声で、琥珀に対して尻を突き出すような形で伏せていることに気付く。琥珀が
スカートを捲り上げたのだ。ショーツ越しに琥珀の息がかかっているのが分かる。
「ショーツがぐっしょり。うふふ、翡翠ちゃんのってこんな形なのね」
「やめてっ、姉さんっ!」
「やめてって、何をやめるのかな?」
ショーツの上から琥珀の指が秘部に触れる。押される圧力でショーツから情液が滲
み出る。
「ああっ、んっ」
「翡翠ちゃんたら触られるだけでこんなに感じちゃうんだ。もしかして、志貴さんと
するよりも気持ち良いのかな?」
指が上下するのに合わせて翡翠の腰も上下する。
「はぅっんん!!」
脳を射つ感覚に体が強ばり、震える。先に零れた以上の情液が奥から溢れ、太股を
伝い落ちた。指に合わせて震える翡翠に向かって琥珀が笑いかける。
「あらあら、翡翠ちゃんたら触られただけでいっちゃったんだ。かわいいー」
言って、琥珀はショーツに手を掛けると、するりと膝まで下ろす。ショーツと秘部
の間に幾筋もの愛液の滝ができ、充血して皮から顔を出した肉芽と口を開いてとろと
ろと情液を滴らせる秘部が露わになる。琥珀はそっと顔を寄せると、頭を出している
肉芽を舌先でつつく。
「……ぅっふぁ……」
秘裂がきゅっと閉じてじくじくと情液が染みだし、肉芽を弄ぶ琥珀の舌の上に流れ
落ちた。琥珀は舌に零れた液と肉芽を丹念に混ぜ合わせる。
翡翠の腰がぶるんと震えて、秘部から吹き出した情液が琥珀の顔を打つ。
「きゃっ」
琥珀は顔にかかった体液を指ですくい取ると、口に含んだ。そして気付いたように
くすくすと笑うと、今度は秘裂に二本指を差し入れる。暴れる腰を片腕で押さえ付け
て、中を掻き回す。ねっとりとした液体の絡み合う音と翡翠の喘ぎ声が部屋に響き、
指の動きに合わせて秘部から液が吹く。
「あぅっ、あっあっあぅあっ」
「ふふ、ふふふふふふ」
琥珀は指を引き抜くと、何度も絶頂に達し涙と唾液で汚れた翡翠の顔にその指を近
づけると、液を捏ねながら言った。
「見て、翡翠ちゃん。あんまり翡翠ちゃんがいっちゃったものだから、志貴さんのが
溢れてきちゃった」
琥珀の指で白濁した粘液が混ぜ合わされるのを胡乱な頭で見つめていた翡翠の口に、
その指が差し込まれる。生臭く、酸味を帯びた液体が舌に絡んでくる。
「どお、美味しい、翡翠ちゃん?」
「うぅ……あぁ……あぁ……」
琥珀は目を細めると翡翠の後ろに正座し、脱力した翡翠の体を抱えて自分の腿に座
らせた。ぐったりと力を失ったその肩からワンピースのメイド服を下ろす。現れたシャ
ツはテレビから漏れる薄暗がりの中でも判るほど汗で濡れていた。シャツは体に張り
付き、柔らかな曲線を浮かび上がらせている。
琥珀は用をなさなくなったシャツの上から胸に両手を添えるとその先端を指で撫で
回した。琥珀の指に合わせて体が小刻みに痙攣する。
「あ……あ……」
「ブラの上からでも気持ち良いんでしょう? 翡翠ちゃんたらえっちなんだからぁ」
先端を捏ねる琥珀の指に翡翠の手が重ねられる。
「……姉さん……もう、やめて……」
琥珀の手の動きが止まる。が、次の瞬間力任せに握られる。翡翠の口から苦悶の声
が漏れる。
「どうして?」
翡翠の胸を握り潰しながら琥珀が言う。
「そんなに志貴さんの方がいいの?」
床に広がったスカートの中に片手を差し込み、翡翠の秘部に触れる。
「ここをこんなにしてるのに、まだそんなこと言うの?」
膨れ上がった肉芽を人指し指と親指で摘み上げると、捻るように擦る。情液が琥珀
の腿に落ち、小さな水溜まりを作っていく。
「ほら、どんどん溢れてくる。それでも、まだ志貴さんの方がいいなんて言うの?」
「ひぃ──はっ────くぁあっ」
翡翠が大きく身を震わせると、情液とは違う粘度の低い液が琥珀の手を打った。
くぐもった水音が部屋に響く。スカートから手を取り出すとむっとした熱気と饐えた
匂いが広がる。
「あぁ…………」
「……ふふ…………あは、あはははっ」
琥珀が脇に腕を回して抱きかかえて立ち上がると、翡翠の体からメイド服がするり
と抜け落ちる。内股から滴がぽたぽたと落ち、敷物にできた染みの中に吸い込まれて
いく。ベッドに翡翠を横たわらせると、その膝にかかった情液と小水に汚れたショー
ツを引き抜き、足を開かせて股の間に体を置いた。シャツに手を伸ばし、ボタンを一
つ一つ外していく。
「……姉さん……やめ──うむぅっ」
翡翠が口を開くが重ねられた琥珀の唇によって塞がれる。侵入した琥珀の舌が口内
を蹂躙する。唾液と唾液が絡み合い、吸い出され、唇の間から溢れる。
「うぅ……ふぅう…………はぅふんん……」
「……ぉぁ……んぁ……むぅぅ…………はぁ」
翡翠の口を犯す間にも琥珀の手は止まらず、ボタンを外され開いたシャツの隙間か
ら上気した上半身が晒されいく。露わになったブラを上にずらすと、白い双丘と強ば
ったその先端が赤く揺れた。
「あ、ふぅ……」
琥珀は唇を翡翠から離すと糸を引く唾液もそのままに、胸に顔を埋めて舌を這わせ
る。固くなった先端を舌先で転がし、軽く噛んで口に含む。琥珀の荒い息遣いが敏感
になった胸を刺激する。
ぴちゃぴちゃと一頻り翡翠の胸を舐めしゃぶった後、琥珀はおもむろに身を離し、
ベッドから降りた。離れたところで小物類が立てる音を聞いて翡翠が霞んだ頭を巡ら
せると、黒い棒状の何かを手にした琥珀が見える。琥珀はくの字をしたそれを持って
ベッドに戻ると、呆然とする翡翠に向かってそれを振った。
「翡翠ちゃん、これが何か分かる?」
「……う…………あ…………」
「これを使ってね……志貴さんと同じ事をしてあげる」
そう言って琥珀は膝立ちになると張型の片側を自らの秘裂に埋める。溜息のよう
な声が琥珀の口から漏れる。
「くっ、ふぅぅ…………ふふふ……さぁ、翡翠ちゃん?」
琥珀は翡翠の腰を持ち上げると、自分の秘所から生えているものを翡翠の秘裂に押
し当て秘裂の形に動かす。それの先端に情液がを擦り付けられる。翡翠が手を伸ばし
て止めようとしたとき、ずるりと秘裂の中に押し入った。
「ふぅぁ──ぁぁ」
肉壁を押し退けて侵入するその感触に翡翠は堪らず声を上げる。張型が一番深い所
まで身を埋めると、琥珀は顎を震わせる翡翠に笑いかけた。
「翡翠ちゃん、深いのね……全部入っちゃった」
張型がゆっくりと後退を始める。入り口近くまで退いたところで再び深奥に潜り込む。
「くあぁ、うぅっ!」
中程まで下がったところで、再び奥に進む。繰り返し。押し出された情液が張型を
濡らし、シーツを濡らす。体を撃ち合う音と粘る水音が部屋に響く。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「んぅ、んん、ぅぅ、んっ」
突き入れられる感触を翡翠はシーツを掴んで耐える。と、琥珀がその手を取り、指
を絡めてくる。身を捩り首を巡らせると、テレビの中に指を絡ませ組み敷かれる自分
の姿が見えた。
琥珀は仰け反る翡翠の上に覆い被さり、涙と唾液で汚れた翡翠の顔に舌を這わし、
唇を塞ぐ。二人の双丘が潰され、動きに合わせてその形を変える。徐々に腰の動きが
大きくなり、突き入れる速度を増していく。絡み合った指が小刻みに震える。
「はぁっ、はぁっ……翡翠ちゃん、いきそう?」
唇を離して問う琥珀に翡翠は目を固く瞑って首を振る。琥珀は微笑むと、もう一度
唇を重ねる。腰の速度が増していく。張型が二人の最奥を叩く。
びくんと翡翠が仰け反り、手を握りしめた。両腿が琥珀の腰を締め上げる。
「はっ、はっ、うっ……はあぁぁぁっ!」
翡翠の手を握り返し、琥珀もぶると腰を震わせる。
「ふぅ、ぅぅぅぅぅぅぅっ──ふぁ…………」
二人とも、肩で息をしてしばらく身を重ねる。
「気持ちよかった、翡翠ちゃん?」
開いた翡翠の瞳に目を細めて笑う琥珀の顔が写る。翡翠の顔に、ぽとぽとと熱いも
のが落ちる。
「翡翠ちゃん……ごめんね…………」
笑顔のままの琥珀の目から、涙が零れる。
「翡翠ちゃんのこと……考えると…………わたし、どうしても……抑えることが……」
翡翠はそっと琥珀の首に腕を回す。そしてぎゅっと胸に押し付けると、頭をそっと
撫でる。
「翡翠ちゃん?」
「…………私は志貴さまが好き」
翡翠に撫でられている琥珀の体が震える。翡翠は続ける。
「……でもね、姉さん。……私、姉さんも大好きよ……」
「……翡翠ちゃん……」
翡翠は無言で撫で続ける。
「………………うぅ……ぅうぅううう……ぁぁああああ……」
薄暗がりの中、嗚咽を漏らす琥珀の頭を、翡翠はいつまでも撫で続けた。
(第2話──了)
《つづく》
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