――翡翠SIDE

 私は……駄目な妹です。姉さん。
 姉さんが私に薬を盛って、私の代わりに志貴さんに抱かれようとしていた。
そのことを知って私は姉さんに会おうとしました。でも、なにをするつもりだ
ったのか分かりません。
 ただ、姉さんに会いたかった。なにを問いつめるつもりなのかは分からなか
ったけども、初めて……姉さんに私はその思いを叩きつけたかった。

 なぜなんでしょう?多分……私を、私という存在を奪われたくなかったから。
 志貴さんが私を抱こうとしているのに、姉さんが私になる……それは私には
耐えられないと思ったんです。でも、勝手な話です、姉さん。ごめんなさい。

 姉さんは、姉さんであることを奪われたのに。
 私は姉さんに私をあげることを拒んだ。私も奪われるべきだったんです。姉
さん。
 なに私は……志貴さんを前にして、思わず憤りに駆られてしまいました。

 でも――秋葉さまが姉さんにあんな事をしているとは思わなかったんです。

 駄目な妹の翡翠を叱って下さい、姉さん。
 姉さんを私は秋葉さまから救い出すべきだったんです。姉さんを本当に問い
つめる権利があったのは私だけだったのに、私は……逃げ出してしまいました。
あの日のように。

 姉さんは逃げていると仰っていました。でも、本当に逃げているのは私です。
 私は姉さんが貪られているのを目の前にして、また……逃げ出してしまいま
した。
 今度こそは、私は主を裏切ってでも自分に忠実であるべきでした。姉さんを
救い出すべきだったんです。喩え――秋葉さまの前で抵抗することは、蟷螂の
鎌であるにしても。

 でも――私は逃げ出してしまいました。
 私は逃げ出して、姉さんを置き去りにしてしまいました。秋葉さまも、志貴
さまもその場に残して、私一人だけ逃げてしまいました。

 ごめんなさい、姉さん。
 私の行いは姉さんに償いきれるものではありません。でも……
 
 私は逃げて、逃げて、いつの間にか志貴さんの部屋に迷い込んでいました。
何故そうなったのかは分かりません。私は志貴さまの部屋に逃げ込んで、その
ベッドの上に倒れ伏して――
 私は秋葉さまと志貴さんが、姉さんになにをしているのかを想像しました。
あの時姉さんは縛られて裸にされて、秋葉さまに……そうなると、姉さんにさ
れることは分かりました。

 その時でも遅くなかったのですけども、私は……志貴さまに姉さんがなにを
されるのかを考えてしまいました……私をなじって下さい、姉さん。私は秋葉
さまに責められ、志貴さまに貫かれる姉さんを羨ましく思って、欲情してしま
ったのです。私と同じ身体の姉さんが責められている、もし私が志貴さまと秋
葉さまに挟まれたら――

 私は――駄目な妹です。姉さん。
 私は志貴さんのベッドの上で、寝室のことを考えながら…………自慰に耽り
ました。
 
 ショーツを脱ぎ捨てて、スカートの中に手を差し込んで。
 エプロンの胸当ての上から胸を揉みしだいて。
 指を濡れたあそこに深く突き入れて、襞の中で顔を覗かせているクリトリス
を撫でて……

 私は……志貴さんのベッドの上で、イってしまいました。
 志貴さんのベッドを汚し、姉さんの被虐の痴態を想像しながら。
 私は……私は……なんと罪深くて駄目な妹なんでしょう、姉さん。

 姉さんは私を許してくれないかも知れません。
 でも、もう遅すぎると分かっていても私は姉さんに……

 私はリネン室とキッチンを巡って、バスケット一杯にシーツとタオルとお湯
を用意して、私の寝室に向かいました。こんな準備をしていても無駄に終わっ
て、私だけ一人恥ずかしい妄想に耽っていたと思われた方がどんなにマシか、
と思ったのです。
 でも、薄く開けられたままの部屋の中を覗いたとき――

 私は膝が砕けるような戦慄に襲われました。

 私のベッドの上で、秋葉さまは裸で志貴さまの上に倒れ込んで居ました。
 志貴さんは秋葉さまの下で目を閉じて、眠っていらっしゃるようでした。
 そして姉さんは……縛られたまま、体中を汗と白濁液で汚されて……グッタ
リとしていて。

 私はしゃがみ込みそうに成りながら、ゆっくりとベッドの上に近づきました。
 そして、ベッドの傍らで姉さんの側に来ると、バスケットの中のタオルを取
って、お湯に浸して蒸しタオルを作ると、姉さんの身体を拭い始めました。

 姉さんの肌の上の汚れを取りながら、慎重に……私は姉さんの身体を拭って
いきました。
 私は姉さんの後ろ手に縛られたままの腕を見ると、指先できつく締められた
姉さんのリボンを外しました。そして、姉さんの身体を、ごめんなさい、ごめ
んなさいと呟きながら、綺麗にしようと。

 姉さんは私に触られるたびに、ううん、と小さな声を漏らして居ました。
 太股までぬぐうと、私の目の前には姉さんのむき出しのあそこがありました。
思わず赤面してしまいましたけども、姉さんのここを拭わないと行けません。
 私は慎重に、姉さんの足をかるくくつろげながらタオルを巻いた指先で、姉
さんのあそこを……

 姉さんのあそこを拭いながら、私は………私は哀しいような、それでいて興
奮するような矛盾した感情に襲われていました。眼の中に映るのは姉さんの身
体、それも秋葉さまに嬲られて志貴さんに貫かれて、それでも愛された肉体。
 私は姉さんのあそこを拭い終わったタオルをちらっと見ました。タオルはべ
ったりと粘液に濡れていて、私はタオルを変えようと思いました。

「うん……」

 その時、姉さんがかるく声を漏らしました。そして、私は見て――しまいま
した。
 姉さんのあそこの奥から、どろりと白い精液がこぼれ落ちるのを。
 それは志貴さまの精液でした。ごぷ、と音が出そうなほど液体はお腹の中か
らわき出して……私はそれを見て……

「姉さん……ごめんなさい」

 私は……姉さんのあそこに口づけしました。
 そして、私は舌で、口で、志貴さんの精液を飲みました。姉さんの身体から。
 苦い味でした。美味しいものではありませんでした。普段ならこれを口にす
る事すら私は考えなかったでしょう。でも、私は姉さんの身体からわき出す精
液を見つめると、居ても立ってもいられなくなりました。

 一緒に姉さんと汚されたかった、と。

 もう遅いのです。でも、せめて姉さんの身体を汚した志貴さまの精を私の身
体に受けて、それを共有したかったと。
 私は泣き咽びながら、姉さんの身体を舐め、志貴さまの精液を口に含み、喉
に逆らうそのいがらっぽい液体を咽せながら飲みました。

 ――私は、駄目な妹です。姉さん。
 こんな私でも……姉さんは許してくれますか?

「翡翠……ちゃん……御免ね……」

 私はそんな姉さんの声を聞いたような気がしました。
 私は姉さんのあそこを舐めながら、ただそれだけが償いであるかのように私
の舌で清め続けました。悪いのは私です、姉さん。
 泣きながら、私は姉さんの身体を舐めました。

 姉さんの太股を、膝を、お腹を、腕を、指先を。
 そして私は姉さんの足の指を口に含み、その指の間まで舌を這わせながら、
泣きました。
 最後に、私は姉さんの上に覆い被さりました。

 姉さんは、目を閉じたまま、安らかな寝息で。
 そんな姉さんに唇に、私は……唇を寄せて、その口の中に、魂の中に吹き込
むようにそっと呟きました。

「姉さん……許して下さい……」

(To Be Continued....)