――志貴SIDE

 わからなかった。
 なぜこうなったのかはわからなかった。
 翡翠の後を追ってこの部屋にやってきてから、まるで別の次元の世界の物事
を見せつけられているような気がする。翡翠は俺を突き飛ばして逃げ出し、俺
は琥珀さんと秋葉に直面する。

 それも二人とも、裸でベッドの上で絡み合いながら。
 秋葉もショーツ一枚の恰好で、琥珀さんのお尻を弄んでいた。琥珀さんは後
ろ手に縛られ、猿ぐつわをされて呻いている。一体何でこんな事になってしま
ったのか?

 わからない。

 秋葉は俺に色々説明していたようだったけども、俺の脳髄はそれを理解して
いなかった。ただ俺の目に映るのは琥珀さんの痴態と秋葉の哄笑だけだった。
俺はその光景に引きつけられるように……

 なにを俺はすべきなのか?正気に戻れと秋葉に言うのか?それとも琥珀さん
を助け出すのか?翡翠を追うのか?選択肢はいろいろあるが、どれも正解に結
びついていない。
 俺は困惑するまま、知らずベッドの傍らに立っていた。その時に秋葉は薄笑
いを浮かべながら――

 琥珀さんを、俺の目の前で大股開きにさせた。
 ベッドの上に抱えられた琥珀さんは、俺に惜しげもなくその足の奥にある女
陰を露わにしていた。陰毛は愛液に濡れ、肌が紅潮した琥珀さんは、痛々しく
も艶めかしかった。
 まるで、書斎にあった伊藤晴雨の責め絵を見ているかのような……

 俺が見守る中で秋葉はさらに
 指で琥珀さんの性器の割れ目をくつろげて見せた。
 琥珀さんの食虫植物のようなピンクの肉の華が、樹液に濡れて俺を誘ってい
た。
 琥珀さんはうめき声を上げていたけども、喜悦か屈辱か
 秋葉は笑いを浮かべていたのは、誘惑か罠か

 わからない。

 俺が出来たのは、華に見せられた虫の様に、琥珀さんの秘部に膝を折って口
づけする事だった。頬にぺたりと琥珀さんの太股が当たるのを感じながら、俺
の唇は琥珀さんの秘部に近づくと……

「んんぅぅぅぅぁああああああ!」

 琥珀さんのくぐもった叫びを聞きながらも、俺は唇を愛液に濡らして口づけ
をしていた。
 どろどろに濡れた琥珀さんの割れ目は柔らかく熱く、俺は唇にむにゅりと柔
らかい粘膜と襞が触れるのを感じる。俺は目を閉じて、舌と唇で琥珀さんの秘
部をひたすらに貪る。

 なぜ、そんなことをしなければいけなかったのか……わからない。
 でも、俺の目の前に広げられた琥珀さんの秘裂が俺を、その形とその薫りで
誘っていたから……

「んんぅっ、んはっ、んんふぅぅぅ!」
「あらあら、琥珀ったらせっかく兄さんにクンニリングされているの、喜ばな
いのね……こうされたかったんでしょ?琥珀」

 秋葉は琥珀さんを言葉嬲りしているようだった。
 俺は琥珀さんの腰を抱き、鼻を恥丘に押し当てるようにしてひたすらに舌を
繰った。琥珀さんの身体の下には秋葉のほっそりとした身体を感じるが、俺は
その身体に押し込むようにして琥珀さんの身体の奥へ奥へと進める。

「んんっ、んんはっ!んはぁぁぁぁぁ!」
「くすくす……兄さんも琥珀のあそこをこんなに美味しそうに舐めているだな
んて……ほら、見なさい?琥珀」

 秋葉は琥珀さんの顔を俺に向けて下げさせる。
 俺の見上げた瞳が琥珀さんの――何故か青い瞳と交わる。琥珀さんの目には
絶望にも似た色が掃かれていたけども、俺の舌が琥珀さんのクリトリスに触れ
ると……

「んはぁああああ!」
「兄さん……まずは琥珀をイカせてください、お仕置きに……こうやって」

 俺の顎に、こつんと下から指が触れる。
 俺が顔を起こすと、お尻の下から長く細い秋葉の指が、琥珀さんのお尻の方
から宛われていた。俺が見守る中、秋葉の指は……

 秋葉の指は、襞の奥にある琥珀さんの膣口に飲まれていった。見る間に第二
関節から指の付け根まで深く琥珀さんの中に埋もれると、残りの指を軽く曲げ
た拳がぐるっと動く。
 その時、琥珀さんの腰が跳ね上がるように――

「んふぅぁああああああ!」
「琥珀の中のお腹の方に、感じるところがありますから……兄さんもここを」

 俺はそんな秋葉の言葉に従って、人差し指を秋葉の指に沿わせるように……
入れる。
 入り口でぎゅっと締め付ける筋肉の感覚はあったけども、琥珀さんは俺と秋
葉の指を受け入れていた。琥珀さんの中に入れたことはあるけども、別の人の
指が一緒にあるというのは初めての体験だった。

 こんなに、血が狂いだしそうなまでに淫猥な指遊戯。

「兄さんの指が……琥珀の中で……そう、ここに」
「ここ……か?」

 俺は秋葉の指先が押さえていた場所を、慎重に撫でる。
 目で見えるわけではないけども、指先には琥珀さんの中の襞の多い膣道とは
ちょっと感触の違う、窪みに触れる。そこに、秋葉の指に押し込まれるように
されて……

「んんふぁぁぁ!はふんんぁぁぁ!ひぅっ!ひぅ!」
「兄さん……兄さんはここを、私は琥珀の中をもっとかき回して……」

 俺は目の前の、琥珀さんの秘所に俺と秋葉が指を指し込み合い、歪んだ秘唇
の嫌らしくも奇妙な姿を見つめていた。俺は、くつろげられてむき出しの襞の
上にあるクリトリスを見つけ、そこに口づけしながら……指を掻き出す様に動
かし始める。

 俺と秋葉の身体に挟まれて、琥珀さんの身体は狂ったように暴れる。
 俺はそんな、ロデオのように動く腰に唇を当て、指を動かし、秋葉の指が膣
の中で淫乱な虫のように動き回るのを感じ、ぴくぴくと琥珀さんの花弁が痙攣
するのを唇で知りながら。

 ぷちゅぷちゅぐちゅぐちゅと、音を出しながら激しく愛撫をする。
 琥珀さんは秋葉の身体にぶつけるほど激しく身体を反らせると――

「ふぅんぁあああああ!ひぅはぁあああああ!」
「イキそうなのね、琥珀……ほうらっ、イきなさい!」

 秋葉が一声興奮して叫ぶ。その瞬間……

 ぶしっ、と俺の口の中で、琥珀さんが破裂した。

「――――!」

 水風船が弾けて中から水が破裂するような、そんな感覚だった。
 琥珀さんのクリトリスの下の尿道口から、いきなりおしっこのような液体が
噴出してきたのだった。俺は惑いながらもその液体を口で受け、あまつさえそ
れを……啜った。

 俺は迷うことなくその液体の啜り、飲み干す。

「はぅふ……んんはぁぁ……」

 まるで汗のようなほのかな塩味のするあたたかな液体だった。
 俺は琥珀さんの中から指を抜くと、鼻下を濡らした液体を拭ってみた。アン
モニア臭はしないし、黄色い色も付いていない。だけども愛液のような粘りは
ないし、不思議なまでの透明な液体で……

 琥珀さんは突っ張らせていた両太股から力を抜いて、ぐったりしているみた
いだった。秋葉は琥珀の身体をベッドの真ん中に引き込み、俺はようやくベッ
ドの上に登る。
 スリッパを掃き捨てた俺の顔を、秋葉は驚いたように見つめていた。無理も
ない、何故か液体に顎まで濡れているんだから。

 俺がごしごしと手で拭うと、秋葉は納得したように……笑いはじめた。

「……何か可笑しいか?秋葉」
「いえ、兄さん……兄さんがあんまりにも上手かったらから、琥珀ったら我慢
できなくて潮を噴いてしまったんですね……兄さん?」

 俺は秋葉の言葉に驚くような、ひどく頷かされるような心境であった。
 女性の身体は刺激されると、尿じゃなくて潮を噴くというけども……まさか
琥珀さんが潮を噴いてオルガイズムに達するなんてことは今まで知らなかった
から。

 秋葉は琥珀さんの身体を跨いで俺に近づくと、ぽかんとした俺の顔に近寄っ
てきて。
 秋葉の舌が……俺の頬をを舐める。それも可愛らしくぺろりと撫でるのでな
く、まるで頬に付いたものを拭い取るかのように、舌をのばして這わせるよう
に……

 ぴちゃぴちゃと音を立てるように、秋葉の舌は俺の顔を這う。

「な、なにを秋葉……」
「綺麗にしてさしあげますわ、兄さん……琥珀ったら兄さんにこんな粗相をす
るだなんて……」

 秋葉はそんなことを言いながら、俺の頭を押さえて顔を動かし、舌で俺の顔
を拭っていく。琥珀さんの汚した顔を綺麗にする、と言うよりは琥珀さんの印
を秋葉の唾液に入れ換えたがっていうかのような、執拗なまでの……

 秋葉は顎の下まで俺の顔を舐め、そして最後に舌を俺の唇に……むにゅり、
と当てる。
 秋葉の舌は熱く、ほんのり冷たく感じる秋葉の肌とは対照的だった。俺は秋
葉の舌に思わず堪えられず舌を動かしてしまうと、二人で唇を合わせて……ディー
プキスになる。

 俺の舌を秋葉の舌に絡め、二人で唇を貪る。こうやって粘膜質の舌を繰り合
っていると、先ほどの――琥珀さんの膣の中で淫らに動き合った指の動きが脳
裏に過ぎる。
 秋葉がまるで俺の唾液を飲みたがっているかのように激しく貪られ、俺は窒
息死そうなほどの……

「兄さん……兄さんの舌……美味しい……」

 秋葉は譫言のようにそう呟いている。
 俺と秋葉がしばし我を忘れて口舌愛撫の遊戯に耽っていると、もぞり、と身
体の下で琥珀さんが身じろぎする。あんなに激しく絶頂に至って、しばし失
神していたかのようだった。

 秋葉も気が付いたらしく、未練を残して俺から唇を離す。
 俺もつい唇に指を当てて、秋葉の……琥珀さんを次にどうするかを伺う。

「……琥珀?兄さんにした粗相、償わせてあげるわ……」

 秋葉は琥珀さんの顎を被う、猿ぐつわに指を触れる。
 うなじで縛り合わせられた結び目を秋葉は解き、口にくわえさせられた布き
れを抜き出す。さんざん唾液に濡れた布がべたり、とシーツの上に落ちると…
…琥珀さんは胸で深く息を吸い込みながら咽せ始める。


「うぐぇほっ、げほっ……はー、はー、はー……」
「琥珀……兄さんのペニスにご奉仕してさせあげるのよ?貴女の粗相を償うた
めに、ね」

 秋葉は琥珀さんの猿ぐつわを外していたけども、後ろ手に縛られた手はその
ままだった。
 琥珀さんの身体は秋葉に導かれるままに、ベッドの上であぐらを掻く俺の方
に進んでくる。裸の秋葉に付き添われる琥珀さんは、俯いたままで肩で息をし
ながら……

「兄さん?失礼しますね」
「え?あ?おい秋葉……」

 秋葉は手をのばして、いきなりぺろんと俺の股間の寝間着をめくる。
 そのまま秋葉の腕は迷うことなく俺のトランクスをズリ下げ、股間を露わに
……

「うぁっ」

 散々琥珀さんを責め、秋葉の唇を貪った興奮から、俺の股間の肉棒はいきり
立っていた。
 ぐんと宙を差して聳え立つ俺の肉棒に、琥珀さんは秋葉に頭を押さえられな
がらゆるゆると顔を下げていく。俺の股間に跪くようにして、琥珀さんの頭が
被さる。
 俺の肉棒のむき出しの亀頭に、琥珀さんの唇が当たる。唾液に濡れた唇はぬ
らりと俺のモノを包み込んで……舌が俺の鈴口に当たる。

 そんな琥珀さんに秋葉は何かを囁きかけていた。内容は分からないが……こ
くり、と琥珀さんが頷くのが、ペニス越しに分かった。琥珀さんの舌と口腔が
俺の肉棒を包み込んで……

「うぁ……はぅお……」
「兄さん……」

 俺は股間に走る鋭い快感に、思わず声を上げていた。秋葉が俺の身体に被さ
ってくるとそのまま仰向けに倒れる。
 秋葉は俺の上体を被う様にして、俺の顔に顔を寄せてきた。秋葉は中断した
キスを再開したがる様に、唇を俺の顔に触れてくる。俺は秋葉の長い髪を撫で
ながら、その唇に答える。柔らかい秋葉の唇を舐めながらも、俺は……

「秋葉……ぴちゃぷちゃ……はぁぅ……」
「兄さん……どうですか?琥珀の具合は……うふふふ」
  
 秋葉は笑いながら、俺の顔を押さえて長い舌でまるで喉の奥まで舐めたがっ
ているように奥へと差し込んでくる。それだけでもくらくらするような快感な
のに。
 俺の股間では、琥珀さんがうずくまってフェラチオをしている。

「ぅぁああ……もっと、秋葉、琥珀……」

(To Be Continued....)