――秋葉SIDE
「良い格好ね?琥珀。そう思わなくって?」
私は琥珀を見下ろしながらそうせせら笑った。
琥珀は後ろ手に縛られ、猿ぐつわのされた姿でベッドの上に倒れていた。服
はすでに私の手によって脱がしさられており、琥珀の白い裸体は力無く横たわ
るばかりであった。
部屋の明かりを付けた私は、暗闇の中で行った緊縛の成果を確かめ、頷いた。
琥珀が顔を上げて私の顔を見る。青い瞳――
こうやって視覚に頼ると、間違えて翡翠を緊縛してしまったかのような感覚
に捕らわれる。無理もない、翡翠と琥珀は双子の姉妹、なおかつ翡翠に琥珀が
化けているのだから。
しかし、光のない闇の中の気配、感じた汗の味は間違いなく琥珀だった。私
がこの感覚で人を間違えることはない。
琥珀の瞳は人に反抗したり、許しを請うたりする瞳ではなかった。驚きなす
術のない瞳、と言うのが一番近かったのだろう。まだ諦めの深い色ではない。
布を含まされて口元を締められた琥珀の顔。私は背中をかがめて、琥珀に顔
を近づける。
「……ふふふ、どうしてくれようかしら、そうね……」
私はベッドの上に昇り、琥珀の肌に手を触れる。
同性だというのに、羨ましくおもえるような絹の肌。脇の下からふくよかな
胸に、手を這わせる。私には恵まれてないその双丘に手を当てる。
琥珀は全裸にしていたが、私もショーツ一枚の姿になっていた。琥珀の胸を
ぐにりといじりながら自分の胸を見下ろすと、そこには……自分で見ても薄い
胸が。
琥珀の胸を握る指に力が籠もる。
「んんっ!」
「憎らしいわね、こんなにたっぷりあって……この胸で兄さんを誘惑したの?」
私は仰向けの琥珀の胸に顔を近づける。そして、口を開いてその乳房に――
歯が琥珀の肌に当たった瞬間に、びくりと琥珀が身を竦ませる。私はその反
応を楽しみながら乳房を甘噛みして、舌でぬらりと走らせる
「んん……んんぅ……んあ……」
「ふふふ、兄さんはたっぷり愛撫してくれて?こんな風に……」
私は琥珀の乳首を舌先でつつく。サクランボの種のような突起を乳房の中に
埋め込み、振るわせる。腕に押さえた琥珀の身体が、私の舌の動きに従って動
く。
ちらっと上目で琥珀の顔を見つめると、琥珀は目を閉じて眉をひくつかせて
いる。
「……ふんっ、まったく憎々しい……ほぅら」
「んぅー!」
私はお腹に手を這わせ、つるりとしたおへその辺りに走らせる。そして、そ
のまま手を陰毛の上からあそこに差し込む。
じゃり、と陰毛の手応えと、柔らかい肉に指が押し当てられる感覚。そこは
肌ではなく、ぬるっとぬめった粘膜。
琥珀の豊満な胸に私の胸を押しつけ、乳首と乳首を合わせて絡める。
そして私の指は琥珀の割れ目に差込み、爪で襞の中のクリトリスをさがす。
敏感な粘膜をひっかくように探ると、琥珀は激しく身動きした。
「んぅー!んんうー!」
「あら?いたいの?それとも……ここが感じるの?答えなさい?琥珀」
「んんっ、んんんー!」
私の指は、襞の上に顔を隠したクリトリスと探り当てていた。つるっとした
突起に手首で振るわせるように刺激を加えると……
「んんんー!んっ、んん!んんんー!」
「あらあら、足を突っ張らせて……感じているのね、琥珀」
私が琥珀の中に押し込んだ指を振るわせると、琥珀は声にならない喘ぎ声を
あげる。
琥珀の首筋に私は唇を押し当て、舐めた。この肌一枚の下に宿る血潮を感じ
ながら。
琥珀を責め苛んでいた指を離すと、ぺとりと粘った粘液がまとわりついてく
る。私は人差し指を翳して見せた。
「……まだまだたっぷり濡らしてあげるわよ」
琥珀の首筋に語りかけながら、私は肌を合わせて琥珀の僅かに汗ばむ身体を
楽しんでいた。そして、耳を澄ますと――
トクトクと脈打つ琥珀の鼓動と微かに聞こえる足音。
やがて足音がこの部屋に向かい、近づいてくると私は体を起こし、琥珀の上
に被さる。
琥珀もこの足を音を聞きつけていたようだった。後ろ手に縛られた手をもが
かせて身じろぎするが、私はそんな琥珀の顔色を見つめた。
「そろそろ来るようね……お楽しみの時間ね?琥珀」
琥珀はいやいや、とばかりに首を振る。だけどもう遅い。
私は身体を起こすと、琥珀の背中に回り込んでその身体を起こさせる。私に
後ろから抱かれるようにして琥珀は起きあがり、身体をドアの方に向けさせる。
琥珀は首を逸らしてドアを見ないようにしていた。私は琥珀の顎を掴むと、
猿ぐつわされた顔を無理にドアに向ける。
がちゃがちゃと忙しなさげに鍵が回される。そしてせっぱ詰まったような声。
翡翠と兄さん――想像はついたようで、意外な組み合わせ。
――兄さんは予想したけども、翡翠は意外ね。
「さて……琥珀?」
「んぅ!」
私は手をお尻の方から琥珀の足の付け根に回し、濡れた秘部に差し込んだ。
ぬるり、という手応えと共に指先には柔らかく熱い琥珀の粘膜の感触、私が
ドアを見つめると……
「姉さん……!」
「秋葉……!」
暗い廊下を背にして、私たちを見つめる二人の顔。
翡翠は瞬間にして打ちひしがれた様な顔になり、兄さんは……この光景を理
解しているんだろうか?仰け反るようにしてよろめき、戸口に寄りかかる。
「あら?遅かったですわね。兄さん、翡翠」
「秋葉……それに琥珀さん、それは一体……」
私は兄さんの声を聞きながら、ぐちゅぐちゅと琥珀の中に差し込んだ指を動
かす。
女性の身体は後ろから弄られやすく出来ているから、ぴったり足を合わせて
いる琥珀でも私の指を受け付けてしまう。全裸で縛られ、猿ぐつわまでされた
琥珀は、兄さんと翡翠の視線に射られながら……
「んんっ!んんぅー!うんんー!」
「…………ぁあああ……」
翡翠はかろうじて堪えて立っているみたいだったが、裸で責められる琥珀を
瞬きもせずに見つめてている。首を振って抵抗する仕草をする琥珀は、私の指
から逃げようとしているのではなく、戸口に立ちふさがったまま痴態を見つめ
られる事から逃げ出そうかとしているような。
翡翠の目線に、私は顎を掴んで琥珀の顔を合わせさせた。
その時、すっと哀しいような、理解したような色が翡翠の眼に走ったことを
私は見逃さなかった。やおら翡翠は――
「失礼いたしますっ!」
「あっ、おいっ、翡翠……!」
突き飛ばすような勢いで振り返ると、翡翠は逃げ出した。
戸口に兄さんが立っていたけども、その横を翡翠は駆け抜ける。兄さんは肩
が当たって身体をよろめかせるが、出来たのは廊下に逃げ去る翡翠を眺めるこ
とぐらい。
――翡翠には分かっていたみたいね
私はそう感じながら、琥珀の頤から指を離す。琥珀は荒く鼻息を付きながら、
がっくりと首を項垂れた。
私に散々言葉と指で責められるよりも、翡翠の一瞥の方が堪えた――なんて
皮肉な。
だけども私は琥珀を責め苛む指を止めなかった。琥珀のくぼんだ膣口を指で
探り当てると、その中に指を埋め込んでいく。
「ん……んんぅ……」
「さすがに琥珀ね、私の指をこんなにするりと……」
「翡翠……琥珀さん、それに秋葉……」
今残されているのは、戸口に頼りなく縋る兄さんのみ。
どうするか兄さんは悩んでいるのだろう。翡翠を追うのか、この部屋の中に
進むのか。ならば私がすべきことは一つ。
頬に張り付いた私の髪を拭うと、私は琥珀の肩越しに兄さんを眺める。
兄さんは肩を喘がせ、足腰が萎えたかのように震えながら立っている。驚き、
困惑、そういうものを隠しきれない顔。
「兄さん……兄さんには説明が必要ですね」
そう言いながらも、私は琥珀を嬲り続ける
人差し指と中指を琥珀の膣に深く差し入れ、指の付け根がぎゅっと締められ
る感覚を味わいなら、私は琥珀の身体の感じる点を探す。指を巡らせて……
私がぐっと手首をあげるように膣道を責めると、琥珀の身体が前に倒れ込む。
「んんぅ、んぁぅ!……んんぅ!」
「説明……」
私はそんな兄さんに嫣然と笑って頷いた。琥珀の豊満な胸に比べると貧弱な
胸が兄さんの前に露わになってしまうけども、この際は耐えて話をするのがい
いだろう。
それよりも、兄さんは背中を丸めて喘ぐ琥珀に目を奪われているみたいだっ
たから。
「兄さん、兄さんは琥珀に唆されて翡翠の部屋に夜這いに来たんでしょう?」
「な……な、なんでそのことを……」
兄さんは手を滑らせ、転げまろぶ様にして部屋の中に崩れ落ちる。顔色が真
っ青――きっと図星に違いない。いや、それ以外にあり得ないのだから。
なぜなら……
「なのにここにいるのが琥珀で、それに私までいる……それが理解できないみ
たいですね、兄さん」
「……」
「幸い翡翠に会ったようですから、琥珀のトリックはお分かりになられている
かとおもいますが。兄さん?兄さんは琥珀に騙されたんですよ」
私はそう兄さんに決めつけて言う。兄さんはふらふらと立ち上がろうとする
が、まるで気分でも悪そうにずいぶんと足元が頼りない。ただ、一歩一歩なん
とか私たちの方に近寄ってきているみたいだった。
兄さんは、心臓の上の服を握り締めながら唸るように喋る。
「騙された……なんで、それが……」
「兄さんが欲求不満なのを承知で、翡翠を襲わせる。だけれども翡翠は琥珀に
入れ替わっていて、兄さんは気づかずに琥珀を翡翠だと思って犯してしまう。兄
さんはそのことを悔悟して、スキが生まれる。それを琥珀は次の策のためにス
テップとする……違って?琥珀」
私は琥珀に尋ねる。だけども指は、琥珀の中のGスポットを探り当てている。
膣壁のお腹の方にある窪みに指を押し当て、そのまま手首からえぐるように
――
「んんんんぅぅぁあああああ!!」
「あらあら、どうしたの?琥珀?」
「ぁああ……ああっ、ふぅんあああああ!!」
琥珀はびくんびくん身体を振るわせて、私の刺激に耐えているようだった。
兄さんもびっくりして琥珀の方を見つめている。無理もない、猿ぐつわをさ
れながらこんなに大きな声で喘ぎ声をあげるのだから。琥珀の痴態と兄さんの
驚きよう、一度に見るとひどく可笑しい風景に見える。
くっ、と私は喉の奥で笑うと、指を操りながら兄さんに話を続ける。
「私に言わせれば、兄さんはそんなことをするまでもなく隙だらけです」
「そ、それを言われると……」
「ですが、琥珀は回りくどいことが好きなのよ……だからこうやって、翡翠の
部屋で翡翠の恰好までして兄さんに犯されるのを待っていたんです。ほら」
「んぁっ!」
私は琥珀の髪を掴んで、顔を上げさせる。
兄さんの目にも見えるだろう。琥珀がターコイズブルーのカラーコンタクト
をしているのが。
「なんで……秋葉が……それを」
生唾を飲みながら切れ切れに尋ねる兄さんに、私は溜息混じりに答える。
「琥珀のすることに気が付かない私ではありません、兄さん。私をいくら騙し
ても許せますが、琥珀がこれ以上兄さんを謀るのは、遠野の主として許せませ
ん。だから」
私はふっと笑いを頬に浮かべてみた。
きっと――私は悪女の顔をしているだろう。使用人を淫靡な責め苦にかけて
楽しむサディスティックな女主人の顔。兄さんはそんな私を嫌うかもしれない。
でも、今は……兄さんを見つめ、その瞳を覗く。眼鏡の底にある兄さんの群
青の瞳。
その奥にある兄さんを魂を絡め取る。そう念じながら――
「だから、琥珀の行動を先回りして……こうして琥珀にお仕置きをしているん
です」
「ふぅ……んああああっ、ああっ、うあああああ!」
私は琥珀の中を指で蹂躙した。同性として、こんな風に弄られれば気持ちよ
いよりも痛いということは分かる、でも……今は一声でも多く琥珀を叫ばせな
いと行けない。
琥珀が叫び声をあげればあげるほど――兄さんはこのベッドに近づいてくる
のだから。
「そ……それで……秋葉、お前は……」
「兄さん?そこに立っていらっしゃらないで、こっちにいらっしゃいませんか?」
私はそう、兄さんに呼びかけた。その瞬間に兄さんの顔に浮かんだ、淫らな
喜びの色――琥珀が火を付けた淫楽の導火線が、こんな皮肉な形で引火すると
は思っていなかっただろう。
兄さんも、琥珀も。それでも兄さんは抗うように……
「こっちって……ベッドの上はお前と琥珀さんが……」
「もうっ、私から言わないと分からないんですか兄さんは!ですから……遠野
の主として、兄さんも琥珀のお仕置きに参加して下さい。被害者は兄さんなの
ですよ?」
つい激昂しかけた自分をなんとか押し止めながら、私は兄さんに告げる。
琥珀はベッドの上で私に指を差し込まれながら、背中を丸めて悶えるばかり。
私はそんな琥珀の背中に被さるようにして責め、兄さんを見つめている。
ベッドサイドでふらふらと揺れながら立っている兄さん。
もうあと一押しで、兄さんもこのベッドの上にやってくる。それは確信だっ
た。
私は琥珀の中から指を抜いた。散々責め抜いたせいか、手首に滴るほどに琥
珀の愛液に濡れていた。私は琥珀のお腹に手を回し、その身体を引き上げる。
そして、私は琥珀の両膝の裏に手を差し込んだ。こうして後ろ向きに抱きか
かえる様にすれば……
「んんふぅぅ!」
琥珀は両膝を開いて、兄さんに向けて身体を開く姿勢にさせられる。
私に抱きかかえられ、膝を押し広げられ、はしたなくもM字開脚の恰好で―
―私に散々責め抜かれた女性器をむき出しにする恰好で。
はしたない……琥珀の痴態を兄さんに向けて見せつける。
琥珀は首を逸らして兄さんの視線から逃れようとしているようだったけども、
もう遅い。
「………」
兄さんが見ている。琥珀のあそこを食い入るように。
見るのはきっと初めてじゃないだろう。でも、こんな恰好で露わにされるの
はきっと。
私はだめ押しとばかりに、片腕を琥珀の股間に差し込む。
「ここに……兄さんのお仕置きを」
私の指は琥珀の大陰唇に添えられる。
人差し指と中指で、琥珀の襞を――まるで熟した果物を割るように、琥珀の
襞の寄った女陰の秘裂をむき出しに、した。
むわりと、琥珀の中の女の匂いが香り立つような。
指先にとろりとした蜜がまとわりつく。
きっと琥珀のあそこは、湯気を立てそうなほど熱く脈打っているのだろう。
いやらしい粘膜の女の華は兄さんを誘って……
「ん……んぅぅぅ……」
兄さんは、口も開かずに……ゆるゆると膝を折って顔を下げていくと……
「んんぅぅぅぅぁああああああ!」
(To Be Continued....)
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