アイコンタクト成立。まぁ、俺と同じコトを琥珀さんが考えているかどうか
は知らないけども、まぁ大意はずれないだろう。翡翠にも目線を流すが、こっ
ちはこっちで気が付いていないような。
「なにを言い淀んでいるんですか?兄さん」
「いや……可愛いな、秋葉のその恰好」
俺は嘯く。ひゅー、と口笛を有彦のようにならそうと思ったけども、なにか
情けない感じで空気が唇から漏れただけだった。
ただ、こんな言葉でも秋葉には効果覿面だった。組んでいた腕をだらんと垂
らすと、口をぱくぱくさせて俺を見つめる。よほど驚いているのか……
「な、なにを言うんですか兄さん!」
「いや……こういう秋葉も悪くないな。いつもの服はちょっと色気がなさ過ぎ
だから、こういうのもいいんじゃないかな?」
「な……な、な、な」
俺が一歩ずい、と足を進めると、秋葉は意味無く動揺して後ずさりする。
メイド服を着て脅える秋葉。いい、これはいい、ブラボー!という感じだ。
さっきから翡翠や琥珀さんで燻っていた欲情の熾火が、この秋葉の弱々しい
素振りでいよいよ火がつく。
「兄さんっ!変な事言わないで下さい!」
「いやぁ、俺は正気さ。翡翠が琥珀さんの恰好をするのもいいし、秋葉の制服
を琥珀さんが着ているのも何とも言えない味わいがある。でも、お前のメイド
服姿は……うふふふふ」
秋葉の剣幕には力がない。
悪人ちっくな笑いが俺の唇に浮かんでいることだろう。人間楽しいと、何に
もしなくても口の端が耳まで釣り上がりそうな笑みが浮かぶのだから。もう一
歩踏み込むと、秋葉は腰が引けて逃げを打とうとする。よほど俺に邪気を感じ
ているのか……
だが、秋葉の背中を塞ぐ者があった。
琥珀さんが秋葉の背中に回り込んで、逃げる秋葉の腕と肩を掴む。
「あら、秋葉さま、どうされたのですか?」
「こ、琥珀……離しなさいっ!翡翠もなにを見ているの!」
秋葉が悲鳴を上げるが、琥珀さんはもちろん動じない。
翡翠を一瞥すると、この状況の展開に付いていけない様子で黙って居竦んで
いる様子だった。俺はにっこりと翡翠に笑い掛けてみる。
「んー、翡翠、心配しなくていいから」
「にっ、兄さん……何を……何を一体!」
「あら、秋葉さま、お気づきになられませんか?」
後ろから秋葉を抱き留める琥珀さんは、耳元に口を寄せて秋葉に囁く。
「今の秋葉さま……ふふふ、秋葉さまは私と志貴さんの使用人ですね」
「なっ………」
秋葉は絶句して、ぶわりとポニーテルを振って後ろを向く。
肩越しに秋葉は琥珀さんの瞳を見たようだった。あの、虚ろな笑いが琥珀さ
んの瞳には浮かんでいる……人の反論を許さない、深い光のない瞳。
俺は琥珀さんの変わり様に驚いて見つめるが、俺の目を見る一瞬だけ命の光
は戻っていた。そしてその光に浮かんだものを読みとると、おれは頷く。
なるほど……こう来るか、琥珀さんは。ならば俺は……
「そう、じゃぁこうしよう。この衣装通りの役で……するか」
「あ、良いですね志貴さん……じゃぁ、私はお嬢様の役で、翡翠ちゃんは秋葉
さまの先輩の使用人の役ですねー」
「で、俺はそのまま、秋葉は……新人の使用人だ。いいね?秋葉」
俺は秋葉の瞳を覗き込み、頷く。
秋葉の目には困惑と抵抗の色が浮かんでいた。秋葉のその遠野の当主として
の矜持か、持って生まれた性格故か。だが俺は秋葉に近寄ると、すっと腕を伸
ばす。
びくっと秋葉は身をすくめる。いつもの秋葉では考えられない。
きっとこの服のせいで、秋葉も無意識下で役に入りつつあるのかも知れない。
秋葉は呻くように俺にむかって細く……
「なにを馬鹿なことを……兄さん……」
「馬鹿、ねぇ……でも着替えないでやってきたお前を見ると、満更でもないと
言う感じがするな」
俺の指が秋葉の顎に触れる。つ、と冷たい肌を指先に感じていた。
そして秋葉の下顎を指の中に収めると、俺の方を向かせる。こんな仕草を取
らせるだけで、ひどく嗜虐心をそそる。もうここまで来れば引き返すことなん
か考えもつかない……
なぜこうなってしまったんだろう?衣装の魔力?
わからない。
「それに、お前も……実はお嬢様然としていても、心の中では貶められて辱め
られたいと感じているのかもしれないな……なら、今はそれを発散するといい」
なにか自分でも、普段思いもつかないすさまじいことを口にしている気がする。
秋葉の顎を摘む指を離すと、そのまま走らせて喉元の滑らかな曲線に這わせ、
襟元の喉をつ、とつつく。
こんな動き一つだけで、秋葉は身を凍らせている。俺の指に魔力が宿って秋
葉の身体を動かす糸をからめ取ってしまったかのような。
俺の唇が笑いを刻む。琥珀さんは抑えていた秋葉の腕を離し、その代わりに
俺がその腕を掴む。
ちらと目を遣ると、琥珀さんは秋葉の後ろから翡翠の元に歩み寄っていた。
俺が秋葉を凍り付かせている間に、琥珀さんは同じように動かずに立ちすくん
でいる翡翠に語りかける。
琥珀さんは笑ってはいたが、もはや役になりきりお嬢様の気品とオーラを放
ち始めている。さすがは琥珀さん、こういうコトをさせると実に上手い。
それに、浅上の制服もその迫真性に一花添えていた。いつもの恰好ならこう
はいくまい。
「翡翠ちゃん……いいえ、翡翠?貴女の後輩の秋葉ちゃんに、志貴さんへのご
奉仕を教えて上げてくださる?」
「姉さん……こ、琥珀さま、か、畏まりました」
短い会話だったが、千言を費やして翡翠を説得するよりも琥珀さんの科白に
は効果があった。翡翠はこの短い会話だけで、己の役割を悟らされたのであろ
う、おずおずと琥珀さんに頭を下げる。
この科白は秋葉の耳にも入り、お辞儀をする翡翠を見せられることで殊更に
孤立したことを感じたのであろう。指先に触れる秋葉の身体に短い戦慄が走る。
ふっと俺の口に笑みが浮かんだ。秋葉、あきらめて堕ちてしまえ、と……
なんでこんなにダークな心地になるのか……わからない。
秋葉の初めて見るメイド服姿が俺を狂わせる、というのが……そう思えば……
「秋葉さ……ん?志貴さまへのご奉仕の仕方を教えます……」
翡翠は俺から秋葉の腕を受け取る。す、と俺が後ろに身体を引くと、翡翠が
秋葉の前に立つ。
その後ろで、俺は腕組みしてどういう成り行きになるかを興味深そうに見守る。
秋葉は震えながら琥珀を凝視するが、怒鳴り散らすだけの力も失われている
ようだった。
「翡翠……一体何を……」
「秋葉さん。志貴さまに……跪いてお口で……志貴さまがご満足なさるように。
これ以上は言いませんが、おわかりですね」
そう言って翡翠は、俺を振り返って黙許を求める。
俺は頷く。なるほど、そういう風に来るか、翡翠は……本当はそんなことを
したかったのは翡翠その人であり、秋葉にそうさせているのかと思うと不思議
に可笑しい。
翡翠は秋葉の手を引いて、俺の前に連れてくる。
俺の前に秋葉は引き据えられ、救いを求める瞳で俺を見上げた。涙目になっ
た秋葉……だが、ひどくそれも嗜虐心をそそるだけだった。俺は秋葉の目を見
据えて、言う。
「さぁ……どうする?秋葉」
「は……はい、志貴さま……」
ああ、秋葉の奴も……とうとう。
のろのろと秋葉は膝を折って跪くと、片手でスカートを折りながら顔を俺の
股間の前に向ける。白いカチューシャとポニーテールの頭が俺の腰の前で揺れる。
秋葉は俺の腰に腕を回すと、抱き寄せて股間に顔を当てる。
そこにはすでに厚く硬くなった俺の股間の一物があった。ズボン越しに秋葉の
頬に触れるだけで、びくびくと疼くような感じがする。
「志貴さまの……志貴さまにご奉仕させていただきます」
秋葉は消え入りそうに細く呟く。そして、唇をズボンに寄せると、口でチャ
ックを探り当てて前歯で軽く噛むと……ちぃぃ、と手を使わずにチャックを下
げる。
そんな秋葉の屈辱的な、跪く姿態。
跪いて俺の腰元に顔を寄せる秋葉……自分でこうするように命じたとはいえ、
実際に目にしてみると信じられない。
だが、秋葉は目を細めてチャックの中を口で探り、器用にトランクスを下げ
てその下の硬い肉塊を探り当てようとする。
俺は秋葉を見下ろしながら、ただするがままにされていた。
「あぁ……志貴さまのが……」
すっかり俺を様付けで呼ぶようになった秋葉は、顔にぺちん、と俺のペニス
が当たると漏らす。ズボンの中から解放された俺の陰茎は固さと熱さを帯び、
これから待ちかまえる快感の予感に震える。
俺の亀頭の先が秋葉の鼻筋に触れ、そのまま先走りの液を垂らしながらつつ
と下っていく。まだ秋葉の唇に入っていないのに、肌に触れるだけで思わず声
が挙がる。
「志貴さまの……ああ……」
「うふふ、志貴さんは準備万端ね。じゃぁ翡翠、どうするか教えて上げて?」
いつの間にか俺の背中の方から琥珀さんの声がする。振り返ってどこにいる
のかを探そうとしたが、やめておいた。翡翠は秋葉の後ろで露わになる俺の肉
棒を見つめている。
翡翠は秋葉の後ろにしゃがみ込んで、まるでピアノを連奏するような恰好に
なる。そして、俺の腰に回された秋葉の腕を取ると……
「では秋葉さん……口で志貴さまに……」
「はぁ、い……」
(To Be Continued....)
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