アルクェイドの声は、妙に遠くから聞こえた。

「シ、エ、ル……」

 がちがちと、不器用に顎が動いた。

「…………?」

 シエル先輩が、怪訝そうな表情を浮かべた。
 次の瞬間。
 気づいた時には、シエル先輩に躍りかかっていた。

 完全に不意を衝かれたシエル先輩には、とっさに俺から剣の切っ先を逸らす
だけで精一杯だった。
 その隙に、シエル先輩に胴タックルをかまして、そのまま押し倒した。
 すかさず先輩の両手を背中にねじり上げ、剣を放させる。

「遠野くん!なにを……」
「メガネだ!」

 わけがわからないまま、わけのわからないことを絶叫した。

「メガネをしてない先輩なんて先輩じゃないっ!」
「はへっ?」

 俺の下で、シエル先輩が気の抜けた声を発した。

「メガネ!どこにあるんだ!」

 先輩の両手を左手一本で押さえ、右手をフリーにする。

「と、遠野くん。ちょ、ちょっと……!」

 身体をよじって逃れようとするシエル先輩に構わず法衣の上から探り回る。
 みつからない。

「くそっ!どこだ!」

 胸元にはなかった。
 腰のあたりを探る。

「そっちじゃありません。反対側です」

 右腰のポケットを探していると、シエル先輩が顔をしかめて言った。
 法衣の上からとはいえ全身を乱暴にまさぐられるのはやはり嫌なんだろう。
 そんなことはわかっていた。
 しかし、どうにも止まらない。
 左腰のポケットに指を突っ込み、メガネのケースを摘み出した。
 ケースを床に置いて、片手でぱちんと開ける。
 メガネをさっと振ってフレームを開き、シエル先輩の顔に押し当てる。
 反射的に目を閉じた先輩に構わず、ぐいぐい押してメガネをかけさせた。

「こ、これだよ。これ」

 喉の奥から声が絞り出されてくる。

「やっぱり、メガネをしてこそシエル先輩なんだよっ!」

 メガネをかけさせた先輩の顔をみつめている間にも――――
 どす黒い衝動は、どんどん膨れ上がり続けている。
 勝手に、はぁはぁと息が荒くなって行く。

「と、遠野くん、一体どうしちゃったんですか?」

 俺に押さえ付けられたまま、シエル先輩が不安そうに訊ねた。

「わからない……」

 かろうじて、それだけ答えた。
 本当に、俺はなんでこんなことをしているんだろう?
 本当に、わからない。

「わからないって……まさか!」

 先輩が、不意にはっと息を呑んだ。
 のけぞるようにして、アルクェイドを睨む。

「アルクェイド、貴方!まさか!遠野くんに魅了の魔眼を……!」
「わざとやったわけじゃないんだけどねー」

 アルクェイドはあっさりと認めた。

「止めに入った時に、本気になったわたしの魔眼をまともに覗き込んじゃった
みたいね」
「だ、だったら、早く遠野くんを正気に戻しなさいっ!」

 シエル先輩がじたばた暴れ出した。

 背中に回した両腕をぐいっと押し上げ、関節を極める。

「く……っ!」

 シエル先輩の顔が苦しげに歪んだ。
 それを面白そうに見下ろしながら、アルクェイドはゆっくりと首を振った。

「言ったでしょう。
 志貴はわたしの魅了の魔眼をまともに覗いてしまったのよ。
 こうなったら、わたしでも今すぐ正気に戻すのは無理ね」

「な、なにを……
 そ、それに!遠野くんは貴方の魔眼にあてられてるんですよ? 
 わたしにではなく貴方にこうするのが普通でしょう!」
「いいえ。違うわ」

 アルクェイドは、もういちど首を振った。

「志貴は今、普段したいと思っていながら、理性で抑えていたことをしようと
しているのよ。
 ……わたしはあなたを殺すつもりだったけど、志貴は違うみたい」

 ああ、そうとも。
 シエル先輩を殺したいわけじゃない。
 ただ、シエル先輩が欲しいだけだ。
 メガネをかけたシエル先輩が、欲しいだけなんだ。

 シエル先輩の腕を放すと、今度はシエル先輩の肩を床に押さえつけておき、
素早く馬乗りになって押さえ込んだ。
 いわゆるマウントポジションというヤツだ。

「あなたが今回のことを素直に謝るなら、止めてあげてもいいわよ?」

 アルクェイドが、シエル先輩の顔を覗き込んで、からかうように告げた。
 シエル先輩は、ぷいっと顔をそむける。

「だ、誰が貴方なんかに!」
「意地を張ってる場合かなぁ?ま、わたしにはどうでもいいんだけど」
「く……っ!遠野くん!やめてください!遠野くん!」
「ほらほら、もう間に合わなくなるわよ、シエル」

 アルクェイドとシエル先輩の話は、耳には聞こえても頭には入らなかった。
 ただただ、メガネをかけたシエル先輩の顔を見下ろしていただけだ。

 やがて、見ているだけでは満足出来なくなっている自分に気づいた。
 どす黒い衝動が、次第に具体的なイメージとして頭に広がりつつあった。

 シエル先輩の肩から手を放し、法衣を高く押し上げている胸に移動させる。
 まずはしたちちに掌をあてがい、軽く押し上げるように揺らしてみる。

 たぷ。
 たぷたぷ。

「ちょ、ちょっと……」

 目を白黒させながら、シエル先輩が俺の両手首を掴んだ。
 胸から俺の手を引き剥がそうとする先輩。
 それでも、軽く、じっくりとしたちちを揉み続ける。

「は、放してください。遠野くんっ!お、怒りますよ」

 聞こえない聞こえない。
 じわじわと掌を上にずらし、今度は外から中へ円を描くように揉みたてる。
 一秒でも早くシエル先輩にむしゃぶりつきたい自分を抑えて。
 あくまでも、そっと。
 あくまでも、丹念に。
 それから、執拗に。

「は……ふぅ……ぅん……」

 鼻に抜けた甘い声。
 シエル先輩が、はっと息を呑んだ。
 次の瞬間、ぼっと顔を赤らめてそっぽを向く。

 掌を少しだけ内側に滑らせ、ちち全体を鷲掴みする。

「は……っ…く……」

 俺の両手首を掴む先輩の手に、ぐぐっと力が入る。
 ちょっと痛かったのかもしれない。
 そう思って、ふっと力を緩め、掌を少しばかり浮かせた。

「え……?あ……」

 触れるか触れないかの微妙なタッチで、法衣越しに先輩のちちを撫でる。
 麓の方から頂上に向けて、螺旋を描くように、じっくりと時間をかけて。

「あ、あー……」

 シエル先輩が、どこか困ったような表情を浮かべた。
 それはそれとして、焦らすようなちち愛撫を続ける。

 あと少しで、指が頂上に辿り着く。

「と、遠野……くん?」

 シエル先輩が俺の顔を見上げて口を開いた。
 いつの間にか、先輩の息が荒い。

「あの、あの……っ!」

 先輩がなにか言いかけて、ためらった。
 なんだろう?
 手を止めた。

 ひく。

 シエル先輩の口元が引き攣るように震えた。

 頂上付近まできていた掌を、麓に向かって引き返させる。

「あ……」

 シエル先輩の手が動いた。
 握っていた手首を放すと、掌を俺の手に重ねる。
 そして、俺の手を自分の胸に、ぐぐっと押さえつけた。

「…………」

 その状態で、じっと俺の目をみつめてくる。

 どくん。

 心臓が跳ね上がった。

 どくん。

 メガネ越しに見える、シエル先輩の潤んだ瞳。
 それを見て、改めて理性がぶっとんだ。
 ぐわっと頭に血がのぼった。
 ついでに、ぐわっと別のモノにも血がのぼった。

 勝手に両手が動き、シエル先輩の手を払いのけていた。
 背中を起こし、周囲を見回してさっき落としたナイフを探す。
 あった!
 壊れた聖水盤の方に右手を伸ばし、大理石の破片の間からナイフを拾う。
 左手でメガネを外し、邪魔にならないように床に滑らせる。

「と、遠野くん?」
「ちょっと!志貴ってば、なにする気?」

 シエル先輩とアルクェイドの慌てたような叫びをどこか遠くの物として聞き
ながら、先輩の法衣の胸元に走る『線』を探していた。

 『線』を確認するやいなや、右手のナイフを一閃させた。

 法衣の胸元が縦にすっぱりと切り裂かれ、白いブラジャーに包まれたちちが
姿を現した。

 もう一度、さっきと同じプロセスを繰り返す。
 『線』を凝視し、ナイフを振るう。
 今度は、ブラのストラップが切断された。
 ナイフを脇に置き、ブラのカップを左右にずらす。
 シエル先輩のなまちちが、ぷるん、と顔を出した。

 改めて、先輩のちちに手を伸ばす。
 掌に吸いつくような先輩の肌。
 指先に触れる、乳首のぷるぷるした感触。
 摘むように刺激してやると、たちまち固く勃ち上がってくる。

「や、やっ……!」

 先輩は慌てた様子で俺の手を抑えようとする。
 きゅっと軽くつねってみる。

「はぅっ……」

 やはり、乳首を責められると弱いらしい。
 先輩の手の力が緩んだ。
 すかさず両手を自由にした。
 今度は逆に先輩の手を掴む。
 そして、先輩の手を、先輩のちちにあてがう。

 先輩の上で膝立ちになると、急いで制服のズボンのベルトを解く。
 濡れた制服のズボンとトランクスをひとまとめに引きずり下ろす。
 成り行きを見守っていたアルクェイドが目を丸くしているのには気づいたが
正直、構っている余裕はもうなかった。
 がちがちに固くなっている俺自身を、シエル先輩の胸の谷間に押しつけた。
 先輩の手に手を重ね、亀頭を左右から圧迫する。
 その状態で、腰をぐっと押し出してみる。
 引っかかるような感じで、うまく動かせなかった。
 これではだめだ。
 再び膝立ちになって、よいしょっと一歩前に出る。
 マウントポジションに戻り、今度は竿の根元あたりを先輩に挟んでもらう。

「これ、舐めてよ」

 言いながら、髪を掴んで先輩の頭を持ち上げ、ちちの間からにょっきり顔を
出している俺自身の先端を口元に突きつけた。

「あ…ん……っ……」

 苦しげな表情をしながら、シエル先輩がおずおずと口を開け、舌を伸ばす。

「ん……うぅ……はぁ……ん……」

 微かに声を漏らしながら、先輩はペニスにちろちろと舌を這わせてくる。
 熱い吐息と、ねっとりとした感触。
 気持ちいい。
 でも、舌の先しか届いていないので、単に唾液をつけているだけに近い。

 こんなもんじゃ、全然足りない。

 そう思ったとたん、ずきん、と頭痛がした。
 背筋に悪寒が走り、嫌な震えがくる。

「くっ!」

 思わず、ぎゅっと目を閉じ、右手でこめかみを押さえる。

 もっと……したい。
 もっと……

「ど、どうしたんですか、遠野くん?」

 慌てたようなシエル先輩の声。
 目を開くと、先輩が心配そうにこちらを見上げていた。
 ついでに、先輩の唇の端とナニカとの間を、唾液の筋が結んでいた。
 それがつっと切れた瞬間、また一本理性の糸が切れた。

 その時。
 ふと、仄かな芳香に気づいた。
 シエル先輩やアルクェイドの香りとは違う物だ。
 まさか、誰かが入ってきたのか?
 だが、周囲を見回しても、アルクェイドしか見当たらなかった。
 すると、この香りはどこから?

 床に転がっている木箱に視線が行った。
 繊細な彫刻に覆われた蓋が開き、中身が床に散らばっている。
 その中のひとつ、ガラスの小瓶から、なにか液体が漏れている。
 液体?
 なんだろう?
 左手を伸ばし、床に溜まっていた液体に触れてみる。
 指先に、ぬるりと滑らかな油の感触。

 油……

 使える。

 思わず、にやりと笑いながら、ガラスの小瓶を掴んでいた。
 緩んでいた蓋を外す。

「あ」

 シエル先輩が、小瓶を見て声を上げた。

「遠野くん、それは終油の秘蹟に使う香油です!」

 小瓶を引っくり返し、先輩の胸の谷間にたっぷりと香油を注いだ。

「ダ、ダメですっ!こんなえっちな目的に使っちゃダメなんですってば!」
「えっちな目的って、どういうこと?」

 なおもたらたらと香油を垂らしながら、先輩に訊ねてみる。
 香油の残りを右掌に取ると、小瓶を置いた。
 そして、軽く両手を擦り合わせてから、先輩のちち全体を撫で回す。

「え……あ……あ――――」
「ねえ、教えてよ先輩」

 シエル先輩が困った顔になった。

「そ、そんなこと、女の子に言わせないでくださいっ!」

 さすがにはっきりとは言えないらしい。
 でも、ちゃんと知ってはいるらしい。

「シエル先輩のえっち」

 言いながら、ぐっと腰を突き出した。
 香油のおかげで、シャフトがするりと胸の谷間を滑る。
 腰を引き戻す。
 さっきまでとは違い、いい感じだった。
 横からちちにあてがわれた先輩の手に自分の手を重ね、腰を突き出す。
 適度な圧迫感を味わいながら、ゆっくりと腰を引き戻す。
 そのたびに、ちゅぽっ、ちゅぷっ、とどこかで聞いたような音が響く。
 香油が先輩の体温で温まり、これまでよりも強烈な芳香を放ち始める。
 香りを胸一杯に吸い込みながら、先輩の胸の谷間を往復する。

「く――――」

 先輩の上気した顔を見ているうちに、我慢できなくなってきた。
 先輩の手に重ねていた手を放し、膝立ちの格好になる。
 右手で軽く竿を扱きながら、左手で先輩の髪を掴んで持ち上げる。

「うぅっ!」

 びしゃっ!

 大量の精液が迸り、先輩のメガネに当たって飛び散った。

「あ……っ」

 レンズを汚した白濁液が、どろりと先輩の頬を伝って流れ落ちる。

「さっき先輩の言ってた、えっちな目的って、こういうこと?」
「……遠野くん、すけべおやぢみたいです」

 シエル先輩はそう言うと、ぷいと顔を背けた。

「へいへい。どうせ俺はすけべおやぢですよ」

 先輩の上に馬乗りになったまま、身体をねじって右手を後ろに伸ばす。

「でも、そういう先輩はどうなのさ?」
「な、なんの話ですか?」

 法衣のスカート部分の襞を掴んで手繰り寄せ、裾を捲り上げる。
 先輩の両脚が太腿の半ばあたりまで剥き出しになったところで、おもむろに
右手で先輩の脚の付け根を手探りする。
 下着の上からでも、じっとりと湿っているのが感じ取れる。

「……濡れてるよ?先輩も気持ちよかったの、ぱいずり?」
「違いますっ!誤解を招くような発言は控えてくださいっ!

 シエル先輩はぶんぶん首を振って否定した。

「それはっ、さっき遠野くんが聖水盤を壊した時の水ですっ!」
「ふーん。そうかぁ」

 シエル先輩の上からどき、先輩の手を取る。

「そうだよね。先輩って一応はシスターだもんね。シスターともあろうものが
神聖な教会であそこを濡らしてるわけがないよね」
「う…………」

 俺に引き起こされながら、先輩は決まり悪そうな表情を浮かべた。

「それなら……と」
「きゃ!」

 やおら先輩を抱え上げ、祭壇に向かって歩き出す。
 ずり落ちたズボンが纏わりついて歩きにくいが、気にしない気にしない。

 先輩を床に下ろして祭壇に寄りかからせると、左腕を腰に回したまま右手で
改めて法衣の裾を捲り上げた。
 俺を押しのけようと暴れる先輩に身体を密着させ、祭壇に押しつける。

「はいこれ、しっかり咥えててね」

 言いながら、スカートの端を先輩の口元に押しつける。

「とぉ…んぐっ……」

 先輩が抗議しようと口を開けたので、これ幸いとばかり裾を押し込んだ。

「む――――っ!」

 先輩の目の色が変わった。
 相当怒っているようだ。
 相当怒っているようだが……
 右手をパンティに押しあてる。
 熱い物で濡れた布地が指先に引っかかる。
 そして、ぷにぷにと柔らかい感触。
 そのとたん、先輩が眉を寄せて目を閉じた。

「んんっ……ぅ……」

 中指に力を入れ、ぐっとめりこませる。
 下着越しにも、じわり、と熱い物が滲み出してくるのがわかる。

「ふぅっ!」

 俺を押しのけようと胸板に当てられていた先輩の掌。
 指が曲がり、くっと制服を掴んだ。

「どうしたの先輩。まさか、神聖な教会であそこをいじられて感じてるの?
 でも、そんなわけ、ないよね」
「――――ぎろり」

 先輩が、仇を見るような目で俺を睨む。
 でも、顔を火照らせ、はぁはぁと息を喘がせながらではちっとも怖くない。
 右手をパンティの中に滑り込ませる。

「うぅ……」

 ざらっと指に絡むヘアを掻き分け、まずはクリトリスを探す。
 探り当てたところで、もう少し下に指を這わせる。
 くちっ。
 濡れた音。

「もうびしょびしょだよ。先輩」

 指に掬った愛液をクリトリスに塗りつけ、圧迫し、転がすように愛撫する。

「は……っ!」

 先輩が短く声を上げ、口から法衣の裾が落ちた。

「どうしたの先輩。そんなに気持ちよかった?」

 先輩の耳元に顔を寄せて聞いてみる。
 ついでに、耳たぶをこりっと軽く噛んでみたりもする。

「…………」

 先輩は唇を震わせただけで、なにも答えなかった。

「先輩?いいかげん正直になったら?」

 言い終わると同時に人差し指と中指を揃え、シエル先輩の中に押し込んだ。
 既に濡れ切っていたので、ほとんど抵抗らしい抵抗はなかった。
 するり、と指が埋まる。
 軽く指先を曲げ、指の腹で襞を擦るようにしながら浅く抜き差しする。

「あぅっ!」

 シエル先輩が首をのけぞらせた。

「ここかな?」

 反応のあったあたりを、もう一度指でなぞってみる。

「あぁぁぁっ!」

 今度こそ、先輩が甲高い声を上げた。

「気持ちいいの?先輩?」
「………………」

                                            《続く》