その先を口にするのを恥ずかしがって、志貴が口ごもる。
かぁ、と耳まで赤くして俯く少年の志貴の姿は、秋葉には堪らないものがあ
った。愛しい志貴の全てを支配し、思うがままにその反応を操ることが出来る
――秋葉の頭を痺れさせる、サディスティックな誘惑。
それを、この腕の中のほっそりとした少年の身体は発しているのだ。
秋葉は志貴を焦らす。
「……私の手に、何が当たっているんですか?」
「そ、それは……その……」
「これですわね?」
「あ、あああ!」
秋葉は手を伸ばすと、それを指に摘んだ。
親指と人差し指に握られたのは、紛れもなく志貴のペニスであった。それも
成人男性のグロテスクで毒々しい逸物ではなく、つるんとした少年の可愛らし
くもあるもの。
硬さを帯びて立ち上がりつつある志貴のペニスに、秋葉は指を絡める。手に
こびり付いた泡で、それをしごき洗うように上下に動く。
「だっ、だめぇ、秋葉……」
「ふふふ……兄さんが仰っていたのはこれですね?私の手に当たっていたのは
……兄さん?教えて頂きませんか?私の手に当たっていたのは何かを」
「それは……お……んぐっ!」
秋葉の手が、ぐっと志貴の口を覆い隠す。
口に入った石鹸の苦さと、突然思いも寄らない行動に出た志貴は秋葉の腕の
中であがく。だが、それはまるで生きの良い釣魚のヒットが釣り人を楽しませ
るように――
わずかに鼻で呼吸できるほどの隙間しか、秋葉はゆるさなかった。しっかり
とその口を塞ぎ、秋葉はもがく志貴に甘く語りかける。
「ん……んんぐ……」
「兄さん……その言葉を聞いて良いのは私だけの筈ですわ。そんなに大声で喋
ったら、シエルに聞こえてしまうではないですか……勿体ない……」
秋葉は志貴に拗ね、じゃれつくような言葉を口にした。その間も秋葉の指は
しゅっしゅと志貴のペニスを擦っている。ソープによって潤滑性を増した手は、
ともすると秋葉の手からつるりと抜け出してしまうほどの大きさであった。
だが、その手の中でだんだん大きさと硬さを増してくるペニスの手触りに、
秋葉は陶然となる。ゆっくりと、掌の上の志貴の軸に指をかけるとそれを剥く
ように――
「ここも、こんな風に洗われたんですね……兄さん……」
「ん……んん……んんん!」
「ちゃんと恥垢も洗って貰いましたか?兄さんの皮かむりのここを剥いてもらって――」
秋葉の口から語られる自分の身体の恥部を指し示す言葉に、志貴は身悶えし
て恥ずかしさを表現する。でも、口を封じられ、その小さな身体を秋葉に抱き
込まれ、弱みである性器をしっかりと握られている志貴は秋葉にどうすること
も出来ない。
せめて手を秋葉の腕に掛けて外そうとするが、それも――秋葉の腕にぶら下
がっているように見えるほどに非力だった。
秋葉の指は包皮に包まれた志貴のペニスの先端をくりくりと摘む。
そして、その根本に向かって剥けていく包皮に指をかけると、じりじりと剥
き始める。秋葉が首をのばして志貴の股間を肩越しに覗き込むと、泡でまっし
ろな股間からぴょこんと志貴の先端が覗いているのが目に見えた。
それを握る自分の指。それは輪のように志貴の軸に巻き付いて、志貴の包皮
の先端からピンク色の粘膜を覗かせる。
じり、じりと秋葉の指が下がる。
志貴の包皮も苦しげに剥かれていく。わずかに下がるたびに、胸に当たる志
貴の身体が暴れる。秋葉の指は志貴の口を塞ぐのではなく、そのソープに濡れ
た指で志貴の唇を犯し始めていた。
秋葉の指は、志貴の口に侵入し、指は舌に触れる。
志貴ははぁはぁと息を荒くする。志貴を染めるのは身体を支配される屈辱か、
あるいは屈服の快楽か――指を甘く噛み、目を閉じて志貴は秋葉の身体に沈む。
志貴のペニスは、その亀頭を半ば剥かれていた。
ぷるぷると震える股間の肉棒に、秋葉は親指の腹で楽しげに撫でる。志貴の
身体をほしいままにする快感に酔いしれ、一人の恥女のように少年に対する性
的な悪戯を繰り広げていく。
秋葉には兄を愛撫しているというよりも、一人の美少年を手込めにしている
――そんな禁断の快感が脳裏を支配していた。普段の秋葉ならそんな弱者への
虐待は唾棄するところだが、それが愛する兄であるという倒錯した関係が、惑
わせ、ただ快楽へと酔わせていく。
「兄さん……ちゃんと皮の中も洗ってますか?」
「ん……んんんんん!」
「私がせっかくですから綺麗に洗って差し上げます。ほぅら……」
きゅっと――秋葉の指が根本まで下がる。
そして、志貴のまだ小さいが間違いなく男性そのものである亀頭が剥き出し
になり――
志貴の身体が突っ張るように、暴れた。
びくんびくんと――
「………………」
志貴には声もなかった。ただ、剥き出しにされてしまった自分の性器をどう
されるのか、秋葉がどうするのか?それを苦痛と快感の入り交り、秋葉の体の
中に絡め取られ、不安と期待で心を揺るがせる。
秋葉の手が、そんな志貴の亀頭を包み込んだ。
それもたっぷりと泡をまとわせ、掌で包み込んで洗うように――
「ふふふ……こうやって兄さんのおちんちんを洗うのも、普段とちがって……」
「………んぅ……」
「兄さんにして貰うときには大きく感じるのに、手の中に収まってしまって…
…可愛いですわね?兄さんの……ふふふ」
秋葉はからかうような笑いを含みながら、わしゃわしゃと志貴の股間を洗っ
ていく。
志貴の亀頭の窪みに指を宛い、掻き取るように洗うと志貴の身体がつっぱる。
でも、心の何かが折れたように、志貴の身体は秋葉に従っていた。
「ん……んぅふ……ちゅぷ……」
志貴は知らず、秋葉の差し込まれた人差し指を撫でていた。
舌に乗る味は石鹸の表現しがたい苦さがあるが、志貴の頭はそれを味だと認
識はしていない。ただ、秋葉の指を奉仕するように丹念に舌を這わせていく。
秋葉の指が、志貴を締め付け、しごく。くちゅくちゅちゃぷちゃぷと石鹸と
膚が混ざり合った音が響く。その指は硬く晴れ上がる志貴のペニスの全てを掌
握している。
秋葉の指が、志貴の口から抜かれた。
言葉の戒めを解かれた志貴であったが、その口から悲鳴や叫びは聞かれなか
った。ただ、秋葉のされるがままになって微かに漏らす吐息が聞こえるだけだ
った。
志貴はぐったりと秋葉の肩に身体を預け、足を投げ出しにして秋葉に股間を
触られっぱなしにしている。その股間に前から秋葉の腕が伸び、志貴のペニス
を嬲っていたがそれだけでは満足できなくなったように――
「ん……秋葉……んふぁ!」
志貴の身体が弓なりに反る。
秋葉の肩の強く志貴の頭が押しつけられるが、それは秋葉の予想済みの出来
事であった。口を開けて苦しげにも聞こえる息を聞きながら、秋葉は笑う。
なぜなら――
「ここも……洗いませんと……」
秋葉の手が、志貴のお尻に伸びていたのだった。
浅い肉付きのお尻の肉を割り、秋葉の指は志貴のすぼまり――肛門を捉えて
いたのであった。それを指の腹でぐりぐりと、中に押し込むようになでつける
秋葉。
「秋葉、そこは………ああっ……あ、はぁー、んぅ!」
「兄さんのお尻の穴も洗わないと行けませんね、かわかむりの兄さんの恥ずか
しい垢だけじゃなくて、お尻もぴかぴかに……うふふふ」
秋葉はそう囁きながら、両手で前から後ろから志貴を責め立てる。
志貴のペニスはしっかりと秋葉に握られ、指が上下のピストン運動を強いて
いる。それだけでも志貴は硬く強張り、剥き出しの亀頭を振るわせて今にも破
裂しそうだったのに――
今や後ろからも秋葉の責めの魔手が迫っていた。秋葉は気まぐれに小さな睾
丸を指で転がしたかと思うと、すぐに志貴の奥底にある志貴の肛門を攻めよう
とする。
指でそれをもみほぐす秋葉に、志貴はのぼせたような声を出す。
「やめ……秋葉……ああ……んっ、ああ……」
「あらあら、兄さんったら止めろと?こんなに気持ちよさそうなのに……今止
めたらきっと兄さんはもっとして、といってお願いするに違いありませんのに
……ですから」
つん、と秋葉の指が押し込む。
きゃぁ!と志貴の女の子のような悲鳴が上がる。
「安心してください……兄さんはしっかりこの私がイカせて差し上げます」
「秋葉……ぅ……ああああああああ!」
押し込まれた指が、グリグリと奥へと進んでいた。
志貴は身体を硬直させ、筋肉を強張らせてそれに抵抗しようとする。だが、
それがどれほど効果があったのかどうか――秋葉の指は止まらなかった。
ボディーソープの滑りも秋葉に味方をした。
秋葉の人差し指がずず、と志貴のお尻の穴に飲み込まれていく。
指の第一関節まで志貴の肛門が広がっていき、秋葉の指をくわえ込む。ここ
まで入ってしまえば、もう志貴には抵抗のしようがない――志貴の身体が何度
ものたうち、この屈辱から本能的に秋葉の身体から逃げたそうと前のめりにな
る、が。
「ふふふ……兄さんのお尻の穴が、私の指を締め付けて来ますわ」
秋葉は志貴を逃しはしなかった。
志貴の一番奥深くに指を差し込み、その身体を預かる秋葉から逃げることな
どかないはしないのだ。志貴は四つんばいになり、その身体の上に秋葉が覆い
被さる。
秋葉の黒髪が、さらにその背中に広がる。それは魔法の黒髪で魔女が生け贄
の美少年を押さえつけ、手込めにしている光景に他ならなかった。
それも、魔女の――秋葉の手は前後から志貴の股間に差し込まれ、それが妖
しげに蠢いている。それなのに、生け贄の美少年――志貴の股間にはその優し
げな身体に見合わないほどにペニスが怒張し、秋葉の指に握られていて。
まるで何かを絞り出すように、秋葉の指がしごき下す。
「ああっ、ひぃ、うぁ……ああっあっあっあああ……」
「兄さん……兄さん、お尻の穴で感じているの?」
「秋葉が……ああぁ……はぁ、あ、ああぅは………ひぃ………」
「いやらしい……お尻の穴で感じて、おちんちんをこんなに硬くしちゃうんで
すね、兄さんは……」
秋葉は覆い被さり、指に全神経を集中させる。
志貴の硬く強張ったペニスを擦り上げる指はもちろんのこと、肛門に第二関
節まで飲み込まれた指の感覚も初めてであり、秋葉を愉しませる。
ふと、女性の身体に指を差し込みたがる男性の心理が秋葉にも分かったよう
な心地になる。こうやって可愛いらしい異性のなま暖かい身体に指を突き入れ、
その感触を愉しむと共に少しでも動かすと鋭敏な反応が返ってくる。これを愉
しまずに何を愉しむというのだ、というほどの快感。
「ふぁ……秋葉……だめ……そんな風にされたら……」
「どちらをですか?ぴきぴきに腫らせた兄さんのおちんちんをしごかれるのが
駄目なんですか?それもと、こちらの……私の指を噛む兄さんのお尻の穴が、
ですか?どっちも堪らないみたいですね、兄さん」
苦しげな声を漏らす志貴に、秋葉は快感に酔った言葉を返す。
四つんばいになって手も足もブルブル震わせる志貴の身体と、それを全て味
わい尽くそうとする秋葉の貪欲なまでの責め――秋葉の指は、志貴のすぼまり
の中を前後に動く。
秋葉はぺたと身体を着け、志貴の身体の反応を全て感じ取ろうとする。志貴
は健気にも秋葉の被さる体重を支え、股間に前後から浴びせかけられる快感に
堪えていた。そんな志貴の、指を動かすたびに感じる反応――秋葉は目を閉じ、
志貴の耳に弄言の毒を流し込む。
「あら……こんな風に出し入れされるのが感じるのですね?兄さん……まるで
女の子みたいに……」
「うぅ……うぅぅ……うぁぁ……ああ……あああ!」
「でも、兄さんの硬いおちんちんは男の子そのものですね。うふ、もう我慢で
きないんですか?」
腰が何度も後ろにぶつかるように引かれる志貴の動き。
その腰が逃げるような動きを、秋葉は志貴の絶頂の予兆だと読み取っていた。
志貴のペニスは秋葉の指の中でこれ以上なく硬く強張り、いまにもはち切れて
しまいそうな。
「……兄さん?ちゃんと……イカせてあげますから……」
「秋葉……あっ、あっ、ああああああああ!」
秋葉の指がぬぷり、と根本まで埋もれる。
志貴の肛門は、秋葉の指を拒めなかった。ぬるぬるとほどよい締め付けを秋
葉の指に与え、そのまま直腸内を指で蹂躙される。
志貴は敏感なペニスを嬲られ、身体の奥底を秋葉の指に犯され、悲鳴――で
はない、快感に任されそうな悲鳴を上げていた。
「ああっ、ん、ふぃ、ぁぁ、ああああ!」
「男の人は……ここが確か……うふふ、ありましたわ」
秋葉の指は、志貴の直腸の中の小さなポイントを探し当てていた。
根本を締め付けられていたが、志貴の体の中を動き回る秋の指が探り当てた
のは、腸壁のぬるりとした感触の中にある小さなしこりであった。そこを指の
腹で撫でる。
そして、秋葉の外の手がラストスパートを賭けるように根本から絞り上げる――
「ああああっ、ひぃ、ひぃぁぁぁぁぁああああ!」
「さあ……兄さん、我慢為されずに……!」
秋葉は志貴の絶頂を導き出そうとする。
志貴の身体が瘧を起こしたようにガクガクと震える、四肢をつっぱって堪え
る志貴の身体は地震に揺らぐ建物のように、今にも崩れそうな――
秋葉は、ぴくん、と根本から引きつる志貴のペニスを感じた。
その手を亀頭にかぶせ、絞り出すようにぎゅっと握る。そして、志貴の身体
の奥底にある前立腺を秋葉の指は刺激し続けている。
「あっ、あああ………!」
志貴が、ほとんど声にならない甲高い叫びを上げる。
それがきっかけなのか、それが最後の抵抗だったのか――
「……あぁ……兄さん……」
どくどくっと……熱い液体が迸るのを秋葉の手は感じる。
志貴の身体を包み込む秋葉が、その身体を抱きしめる。指に握り込んだ志貴
の亀頭は、震えながら白濁液を吐き出していた。
指に絡み、手の中に溢れる志貴の精液。
「あっ……あぁふ……ふぅあ……」
志貴の切なげな吐息が漏れ、今まで志貴の身体を支えていた腕の力が抜けて
いく。
がくっと倒れる志貴の身体、秋葉はせめて浴場の床にぶつからないように志
貴の身体を支えようとするが、態勢に無理があったのかそのまま倒れ込んでし
まう。
志貴の身体が、熱い。
秋葉の指は、志貴の身体の奥底で一番敏感な部分をえぐっていたが、その指
もひくひくと肛門に噛まれている。そして射精後にだんだん柔らかくなってく
る志貴のペニスをなで回す秋葉の指にはべったりと志貴の精液にまみれていく。
「……気持ちよかったですか?兄さん……」
「うぅ……ぁあ……」
そっと秋葉が志貴の耳元に囁きかける。
志貴の首がこくんとちいさく頷くの感じると、秋葉は志貴のお尻の中にある
指を抜こうとする。ここを責めなかったら、こんなに――いつにも見ないほど
志貴が射精することはなかっただろう、とも考えながら。
それに、こんなにたくさんの精液が――兄さんの青い樹液が……
「……うふ……兄さんの……こんなにたくさん……」
秋葉は志貴の股間から手を放し、その白濁液にまみれた手を見つめる。
石鹸と精液、二つの白濁液にべっとりとまみれた秋葉の指。それを見ている
と、志貴の身体から放出された熱い精に味わいたい……そんな発作のような想
いが秋葉の中を犯す。
秋葉は床にぐったり倒れる志貴の上で、その指に舌を絡め、丹念に拭おうと――
「はいはい、そこまでです」
ぐいっと。
秋葉の身体は脇の下から抱え上げられ、抵抗する暇もなく志貴の身体から引
き離された。
軽々と秋葉の身体を持ち上げる力、それも無遠慮に――そして、何かからか
うような声色に秋葉はその正体を知る。
まるで陵辱されたように、志貴は風呂場の床に倒れ込んで動かない。
そんな志貴の姿を見ると罪悪感を覚えなくもないが、今はそれよりも――
「何をするんですか、貴女は!」
「いつまでも遠野君に乗っかっていたら駄目でしょう、まったく秋葉さんとき
たら小さな遠野君に容赦ありませんね……おや」
それはシエルだった。両手を脇の下につっこみ、無遠慮に胸を掴みながら秋
葉を立たせていた。一瞬秋葉の足が宙に浮くほど軽々と――それは女性の腕の
力ではなく、屈強な男性のそれのように。
すとん、と立たされた秋葉は目を怒らせて振り向く。だがシエルはひょいと
秋葉の右手首を掴むと持ち上げて――
「ふむふむ……あんむ」
秋葉の指を、ぺろりとシエルは舐める。
いきなり人の指を舐めるシエルの動きに秋葉は一瞬呆気にとられて反応がな
い。だが、シエルが舌で舐め取ったのが志貴の貴重な精液だと気が付くのにも
う一瞬の時間が必要だった。
その間にも、まるでソムリエがワインを舌の上で転がすようにシエルは思案
顔で、舐め取った白濁液を口の中に巡らせ、おもむろにコメントを発する。
「ちょっと石鹸が混じっているのが残念ですが、それでも遠野くんの青々しい
男の子の薫りが口の中いっぱいに広がって――」
「なっ、なっ、何を勝手に兄さんの精液を貴女が味わってるんですか!これが
私が……」
秋葉は背後のシエルに怒りを爆発させるが、シエルには馬耳東風のように―
―恐縮することはなく、ちっちと指をこれ見よがしに振ってみせる。
「いやぁ、秋葉さん」
「……なんですかさっきから貴女は」
「確かに遠野くんの身体を洗ったことはありますけども、お尻の穴に指はつっ
こみませんでしたよ?いや、すごいですねぇ秋葉さんは、まるで遠野くんがリ
ョージョクされてしまったみたいで」
シエルはほれ、と顎を示す先には、ぐったりと風呂場の床で横たわる志貴の
ほそい身体があった。呼吸が乱れ、肩で息をしているのが見て取れる。
そんな志貴の身体はまだらに石鹸の泡に覆われ、横倒しにうずくまるような
格好はまるで、少女か少年が心ない大人に襲われて犯された後のような生々し
さを――
ごくり、と唾をのむ音がする。
それは、秋葉とシエルの喉から同時に。二人とも横たわる志貴の姿に、痛々
しく哀れで保護したくなる心境と共に、これほどまでに奪われた以上は最後ま
で志貴を奪い尽くしたい、という欲望を混ぜ合わせた、焦げる様な高まり。
「…………」
秋葉もシエルも言葉がない。
シエルは秋葉の手首をつかんだまま、秋葉は背後にシエルを控え、どちらが
先に襲いかかるのか――
二人の雌豹が、一匹の傷ついた子鹿に襲いかかる。
そんな表現がしっくりくるような風呂場の緊張を打ち破ったのは、秋葉か、
シエルか。
だが、その二人が聞いたのは、背後から小走りにやってくるぺたぺたという
裸足の足音であった。傍らをすり抜けて志貴に元にやってきたのは――
「はいはい、志貴さん?お体を綺麗にしましょーねー」
「琥珀!?」
志貴の身体を助け起こしたのは、琥珀だった。リボンを外してタオルだけの
姿は見分けが着けにくいが、声色と物腰は琥珀であった。
秋葉とシエルは先行をゆるした琥珀に内心舌打ちを禁じ得ない。琥珀は志貴
の身体を抱き上げると、薄目を開けた志貴の顔色を窺う。
「うう……こはく、さ……」
「もう、秋葉さまったらひどいですねー?志貴さんに襲いかかって……でも安
心してください?私と翡翠ちゃんが優しく志貴さまの身体を洗って差し上げま
すからねー?」
その声は、志貴から立ち尽くす二人に、いや、その背後に向かっていた。
志貴以外の女性陣の瞳が、そこにいる――おおきなエアマットレスをかかえ、
居心地悪そうに俯く翡翠の姿を認める。翡翠もバスタオル姿で琥珀に似通って
いたが、いつもの人形のような素振りではなく、その手に持つもののの恥ずか
しさを知ってかかすかに赤面している。
そう、大人3人くらいが乗れそうな、大きなエアマットレス。
それに、翡翠の足下にある手桶にはいろいろな薬品とおぼしきビンやチュー
ブが並んでいて――
「さささ、翡翠ちゃん?一緒に志貴さまをごしごし洗っちゃいましょう!」
「……姉さん、そんな大声で嬉しそうに言わないでください……志貴さま、こ
ちらにどうぞ」
「待ちなさい!何をするつもりなの!翡翠、琥珀!」
秋葉とシエルを軽く無視して志貴を運ぶ琥珀は、くるっと振り返ると説明す
るのが嬉しそうに笑いながら――
「それはもう、翡翠ちゃんと私の身体で洗いっこですー。マットレスをふくら
ませていたら遅れてしまって申し訳ありません」
「そんなこと聞いているんじゃないわよ!あなた達二人でそんな兄さんを……」
うがー!と吠え声がするほどの憤激を見せる全裸の秋葉。
だが、その後ろにいるこれまら全裸のシエルがなにいってるんですか、とば
かりに呆れた声を上げる。
「一人で愉しんで、おまけに遠野くんのお尻まで犯した秋葉さんに言われても
説得力皆無ですよ。ま、順番というものです」
「何を言うのよ!そもそもシエル、よそ者の貴女には順番なんか回さないわ!」
「まぁまぁ、それは遠野くんの希望次第。それに秋葉さんに邪魔させるわけに
はいきませんからね。髪洗ってさせ上げます」
がしっとシエルは秋葉の肩を掴むと、その身体を回れ右させる。
その間にも志貴の身体はエアマットレスの上に優しく横たえられ、琥珀も翡
翠もタオルを外して手に手にぬるりとした透明なローションをたらしていく。
「……翡翠……琥珀さ……ん……」
「志貴さま……可愛い……」
「ふふふ、まじかるあんばー特製のまじっくろーしょんで志貴さまを極楽往生
させてあげますよー?それに翡翠ちゃんも一緒に……」
抵抗の弱った志貴の身体に、そしてお互いの身体に伸びる翡翠の、琥珀の手
マットレスの志貴の小さな身体の上に被さっていく双子の使用人の姿をなん
とか視界の片隅に追いながら、秋葉の抗議の叫びが響く。
そして、見る見るうちに双子の体の中に沈んでいく志貴の情けない声と、シ
エルのあきれかえった声がそれに混じる。
「兄さん!」
「秋葉さん、遠野くんはあんなに可愛いのだから独り占めはよくありません」
「兄さんは私のモノです!」
「あーれぇぇぇlー」
(To Be Continued....)
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