「………………」
「ふぅ……」

 ぐったりとした志貴をようやく取り戻して抱え込んでいるのは、秋葉であっ
た。
 遠野家の大浴場は無駄なぐらい広く、5人が入ってもまだまだ余裕がある。
注ぎ口からじゃぼじゃぼと流れ出し続けるお湯の音が、露天の浴場を支配して
いる。
 秋葉は髪をタオルに結い上げて包み、まるで母親が息子を抱いて入浴する様
に志貴を後ろから抱きかかえている。志貴は肩に秋葉の手を回され、脱力して
お湯に浸かっている。

 丁度その二人から120度つづ角度を置く様に、シエルと翡翠・琥珀がお湯
に浸かっている。シエルはいったいどれくらい湯に浸かっているのかはわから
ない長風呂だったが、顔色も変えずに目を閉じ、軽く鼻歌を歌っている。翡翠
は後ろから絡み着いて身体に触れてくる琥珀にどことなく困ったような顔で並
んで湯船に身を浸している。

 この二組と一人、間にある会話が――どうにも生み出しづらかった。

「……………」

 志貴は鼻までお湯に浸かり、ぶくぶくと泡を出す。
 秋葉の細い身体に抱えられ肌と肌とが接して、そこはお湯以上に暖かかった。
秋葉は肉置きが控えめなのでむっちりとした手応えはないが、それでも女性の
身体に触れる心地よさには変わりはない。

 いや、この入浴でそんな女体の肌触りは来世分ぐらいまで満喫した――と志
貴は思う。

 まずはシエルの挑発に反応した秋葉によって洗われたが、それはどちらかと
いうと犯されたという方が正しい。最後は股間を扱かれ、お尻の穴に指を差し
込まれてイってしまった。
 少年の身体で無抵抗だとはいえ、それは嬉しいような、哀しいような複雑な
心境であった。

 秋葉の手に搾り取られたというのに、自分の身体が琥珀と翡翠に洗われる内
にまた元気になってくるのも志貴にはうらめしくも思えた。琥珀特製のローシ
ョンと行っていたけども、また体に良くない成分が入っているのだろうと……
それに、志貴を挟んでその柔らかな体で洗う翡翠も琥珀もその薬のせいか、触
れあう姉妹同士の肌のせいか、それともその間に挟まった志貴の身体のせいか、
興奮してきてやがて――

(志貴さま……私の中に……んぅ……)
(あは、志貴さんのおちんちんが私の中でびくびくって……あんなに翡翠ちゃ
んの中で出したのに……)

 志貴は脳裏にその艶っぽい言葉を思い出し、くらくらと目眩にも似た心地に
なる。薬のせいにするのは都合の良い言い訳で、志貴もぬるぬるになりながら
琥珀と翡翠を堪能してしまったのであった。
 そして綺麗に濯がれ、手ぐすね引いて待ちかまえていたシエルに渡され今度
はどんな快感の責めがあるのかと思っていたその時に――

「………兄さん?」

 そうはさせじ、とはせ参じた秋葉に奪取されたのであった。
 かくしてシエルは舌打ちはするものの志貴の奪回を諦め、翡翠も琥珀も満喫
しおわり、秋葉は一人ぷりぷり怒りながらも志貴を抱きかかえて放そうとはし
なかった。
 秋葉の呼びかける声に、志貴は頷いた。

「……はぁ……なんか疲れちゃった……」
「それはそうですよ、秋葉さんと琥珀さんと翡翠さんのお相手ですからね、喩
え遠野くんが元の身体でもこれだけ一緒にお相手すれば――」

 そういって頷くシエルの言葉は、秋葉の強い一瞥を浴びせかけて黙らせる。
 そんな秋葉の瞳がじろりと動いて翡翠と琥珀の二人に向かうが、二人とも意
に介せずにじゃれ合っている――というよりも、琥珀がほとんでセクハラまが
いに翡翠にくっつき、それに恥ずかしがっている翡翠……という様相であった。

「……でもねぇ、秋葉……」
「?」
「いや、やっと一緒に居られるなぁ、と思うと嬉しくてね……暖かいよ、秋葉
の身体」

 志貴は肩に掛かる腕をそっと外から抱きかかえ、頬に当てる。
 そういって目を閉じる志貴の顔を秋葉は見られなかったが、体の中に深く身
を預ける志貴を感じていた。志貴は体の中にすっぽりと包めてしまうほど小さ
く、まるっきり子供であるにもかかわらず――秋葉には大きな誰かの背中に縋
り付いているようにも感じる。

「……秋葉?あの……」
「どうされましたか?」
「……さっきみたいに襲われるのは……や、やっぱり俺が秋葉を何か怒らせた
からかな」

 志貴はそう、自信がなさそうに呟いた。
 志貴は紛う方無き被害者なのに、こうも落ち込まれると秋葉にもようやく心
の中で後悔が生まれる。それも、志貴が理由もなく自責に襲われているのだと
すれば尚更に。
 秋葉は志貴の頭の上に、そっと顎を乗せる。

「……そんなことはありません。ただ……兄さんが無性に可愛かったからです」
「そ、そうなのね……でも、ああいう手荒いのは……でもね、秋葉」

 志貴はくるっと、秋葉の膝の上で身体をひねる。
 そして向かい合わせに秋葉の身体に抱きついた。急に身体の向きを変えた志
貴に秋葉は戸惑うが、志貴の滑らかな肌がぴったりとお湯の中でくっつくと、
途端に恥ずかしさが湧いてくる。そんな俯く秋葉の顔に、首に腕を回した志貴
が下から向き合う格好になる。
 微かに俯いた秋葉の耳に、そっと志貴が囁きかける

「……ちょっと、気持ちよかったかも」
「に……兄さん、そんなことを……」

 気持ちよかった――と、志貴に言われることの方が秋葉には、まるで自分の
お尻の穴をくすぐられるみたいな、背中の落ち着かないむずむずとした恥ずか
しげな身悶えを生む。
 そんな秋葉の唇に、志貴は自分の唇を合わせる。ちゅ、と軽いキスをすると、
志貴は気恥ずかしそうな秋葉に小さな声で言う。

「……ねぇ。秋葉……」
「ごめんなさい、兄さん……兄さんを虐めてしまって……ごめんなさい……」

 秋葉はそう、謝罪の言葉を囁くばかりであった。そんな秋葉の口も優しく唇
で塞ぐと、志貴もほんの少し恥ずかしそうな顔で目を合わせた。

「じゃぁ……秋葉……こんどは一緒になろうよ」
「え?……あ……」

 志貴は秋葉の膝の上にまたがるような格好になっていたが、その股間にぴょ
こんと――志貴の少年の男性器が起きあがって、秋葉のお腹に触れていた。
 優しく押しつけられた志貴の腰にそんな反応があるのを知って、秋葉は驚く。
肩に回した手を外し、お湯の中に潜らせて志貴の腰を確かめると、それは確か
に志貴のペニスの手応えがある。

「ん……」

 ペニスの軸を指でさぐられ、志貴は軽く声を上げる。
 秋葉は驚き怪しんで志貴の顔を見つめるが、険しい顔も志貴の優しい笑顔の
前にはすぐにとろけてしまって――また、しきの唇が静かに秋葉の唇に触れる。

「……だめかな?その、シエル先輩も翡翠も見ているから恥ずかしい?」
「そんなことはありません……でも、兄さん、よろしいのですか?」

 秋葉が心配そうに尋ねる。でも、志貴は困ったような顔をして頷いて。

「……琥珀さんの薬のせいかもしれないけども……その、まだ身体が……」
「では……兄さん、どうぞ」

 秋葉はそっと、志貴の身体を持ち上げて足を開く。
 湯船の縁に背中を預ける態勢の秋葉は、志貴を足の間に挟み込む。その足の
付け根には陰毛に綺麗に彩られた秋葉の秘所があり、志貴は指を伸ばしてお湯
の中のそれを触る。
 外気の下で粘膜の肌に触れるのとは異なる、ぷにりと柔らかい手触り。志貴
は指に触れる複雑な襞の形をたしかめると、身体をぴったりと寄せ合う。

 秋葉もそんな、小さな志貴の身体の好きなようにさせていた。
 志貴のペニスが秘裂に宛われるのを感じる。秋葉は志貴の背中の腕を回し、
ぎゅっと志貴の身体を抱き寄せる。

「秋葉――これからべたべたしよう。今まで出来なかったくらい、先輩や翡翠、
琥珀さんに見せつけるぐらいに」
「兄さん――んぅ、はぁ……ああ……」 

 秋葉は、自分の中に志貴が入ってくるのを感じる。
 シエルや翡翠、琥珀の目の前であったにもかかわらず、志貴とのセックスを
見られているにもかかわらず。シエルは横目で何か感心したように、翡翠は目
を見開き、琥珀はいかにも楽しいものを見つけ出したかのような瞳で見られて
いても……

 今このときだけは、秋葉にはそれが誇らしくも思える。
 抱き寄せた志貴の身体が、もっともっと自分の中で深く感じたい。そう、秋
葉が祈るように思うほどに――

 湯気の立つ岩風呂の中で、秋葉と志貴は抱き合い、繋がり合い、互いの名前
を呼んで……

「兄さん……」
「秋葉……」

                                        《END》

 

 


【あとがき】

 どうも、阿羅本です。皆様、今回のSSですがお楽しみいただけましたでしょうか?
 ショタ志貴シリーズでございます、ええ、実はMoongazer内でも最も人気があるの
ではないかと思っているショタ化した志貴が手込めにされてしまうと言う、件のアレ
でございます(笑)

 自分では一応四部作で一通りまとまりを着けたのですが、それでも時折書いてみたく
なるものでして……特にOPEN化してからしにをさんや古守久万さん、大崎瑞香さん
という名手の方々によってのショタ志貴作品をみると、こういうやり方もあるのかと
感銘すら覚えるもので、むらむらと書いてみたのでした……秋葉、痴女になってる
し、すごく楽しそうに(笑)

 しかし、あれです、自ら言うのもなんですがショタ志貴はいいものですなぁ!(爆)

 今回は二五〇万ヒット記念と言うことでアップさせて頂きましたが、これがきっかけで
連載再開……となるかどうかは皆様のご声援次第、と言うことで(笑)

 皆様のご感想をお待ちしております。 
 これからもMoongazer共々よろしくお願い致します〜

                                        阿羅本 拝