「凄い……」
感心したようにアルクェイドはわたしと遠野くんを見つめている。
圧倒された様な表情。
期待した通り、打ちのめされた様に何か考え込んでいる。
かなりの衝撃を受けたのは間違いない。
これで、このまま……。
でも、どこか思いつめた表情をして、四つん這いになってにじり寄って来る。
?
何をするつもり?
「こうやればいいんだよね」
アルクェイドは遠野くんのペニスをそっと掌に載せる。
何をするのかと見ていると、恐る恐る口を近づけ、ピンク色の舌を前に出す。
「え……」
信じられない。
アルクェイドは遠野くんの精液とわたしの愛液とでどろどろになっているペ
ニスに舌を這わせている。
さっきのわたしの行為をなぞるように。
ぽかんと口を開けてそれを凝視してしまう。でも頭の中でその光景が消化不
良を起こす。
あのアルクェイドが、真祖の姫君が、こんな真似を……。
性臭に満ちたペニスに口で奉仕をしている。
遠野くんの精液だけでなくて、わたしの愛液でも汚れているのに、構わず舌
で丹念に舐めて綺麗に後始末している。
人間とは違う化け物であり、羞恥心の有り様も異なるのかもしれないが、好
悪や己の存在に対する誇りというか自意識のようなものは存在している。
少なくとも、あれだけ敵対し嫌っているわたしと彼女の想い人である遠野く
んが交わった残滓を自分から舐め啜っている今の姿は、どうにも受け入れがた
かった。
遠野くんも、じっとその奉仕に身を委ねながらも、驚いた顔でアルクェイド
を見つめている。
稚拙な動きながらアルクェイドの舌が何度もペニスを上から下まで往復する
と、三度遠野くんのペニスは勢いを取り戻す。
それを見て、アルクェイドは根元を押さえぱくりと咥え込む。
よくわからないらしく上下に頭を動かすが、深く呑み込もうとして苦しそう
な顔をする。喉を突いたのだろう。
それでも何度も口に含み熱心に口をもごもごさせている。
「痛っっ」
遠野くんが小さく叫ぶ。
「ごめん、志貴」
アルクェイドの口からペニスが抜け出る。
歯を立ててしまったのだろう。
アルクェイドは再度トライしようとして躊躇い、困った顔でわたしの方を見
る。
仕方ありませんね。
ちょっと泣きそうな顔のアルクェイドに同情心が起きる。
今の思いがけぬ行為で毒気が抜けたらしい。
「最初からディープスロートは無理ですよ。
手伝ってあげますから、取りあえず遠野くんの先だけを口に含んで、舌で舐
め回してみなさい。歯は立てない様に気を付けて……」
頷くとアルクェイドは言われた通りに動く。
うーん、でもぎこちないし遠野くんもそんなには良さそうでないですね。
仕方ないなあ。
わたしは立膝でにじり寄るとアルクェイドと並んで顔を近づける。遠野くん
の幹に舌を伸ばす。
さっきまでのアルクェイドの唾液でてらてらしているそこを構わず舐め、舌
を這わせる。
下へ下へと動かし、遠野くんの皺だらけの袋とさらにその縫い目の下、女性
で言えば蟻の門渡りに相当する辺りもぺろぺろと舐める。
遠野くんの呻き声が聞こえる。
また、つつーっと上へ。
わたしの顔が近づき、アルクェイドは一度にゅぽんとペニスを口から出す。
「じゃあ、二人で遠野くんをいっぱい気持よくさせてあげましょう」
「うん」
アルクェイドの右側に並んで、わたしは唇を遠野くんのペニスの裏筋の根元
に寄せた。
意図を解して、左からアルクェイドも同じ様にする。
唇でちゅっちゅっと口づけしながら舌を動かす。
ゆっくりと上に向かいながら、横目で興味津々な金髪の姫を見る。
やっぱり綺麗だ。
こんな浅ましい行為をしているというのに、アルクェイドは凄く綺麗だ。
ちょっと悔しくなって、彼女に見せつける様に遠野くんへの奉仕に熱を入れ
る。
感心したようにわたしの動きを見つめ、アルクェイドもお手本に倣う様に動
き出す。
二人で何度も幹を往復し、不思議な感触の袋を玉ごと一つずつ口に含み、く
びれの部分を舌先だけで痺れるまでちろちろと舐め、ふたりの舌も唇も遠野く
んの逞しいペニスを縦横無尽に這い回り、触れていない部分は皆無となる。
いつの間にか仲良く息を合わせて、遠野くんへの奉仕を行っていた。
「もう、ダメだ、限界。二人とも放してよ」
わたしもアルクェイドも夢中で遠野くんの切迫した声なんか聞こえない。
いや、聞こえているからか。
わたしは遠野くんの足をしっかりと掴み、アルクェイドは腰に回した手をぎ
ゅっと強くする。
わたしは舌先を遠野くんのペニスの先端に伸ばし、鈴口に集中して刺激を与
える。
アルクェイドはわたしの頬に自分のそれを密着させながら、遠野くんのはじ
けそうな膨らみを横から唇でちゅっと吸いながら動いている。
幹が空いたので私はぬめぬめとしてそれを手で握ってゆっくりとしごき、ア
ルクェイドは遠野くんの袋を指先で弄っている。
「ダメだよ。離れてよ、このままだと二人の顔を汚しちゃう」
切迫した声。
固定された下半身を振りほどこうとする。
「いいですよ、遠野くん。我慢しなくて」
「うん。私も平気。そのまま出して」
それでも躊躇っている。
そういう処、好きですよ遠野くん。
ではもう少し精神的に楽にしてあげますね。
「かけて、遠野くん。わたしの顔を遠野くんので、どろどろにして下さい」
「私も。志貴の欲しい」
「お願いします」
「お願い、志貴」
自然と嘆願口調で二人して遠野くんの精液を乞い願う。
きっと目は潤んで熱に浮かされたようになっているに違いない。
こんなある種、屈辱的なシチュエーションに酔っている。
愛する人の情熱の証とはいえ、どろどろとした白濁液で髪も顔も汚された無
惨なありさま。眼鏡からべっとりと粘液がしたたっている……。
でもそんなポルノ映画まがいの己の姿を想像するとぞくぞくとしてしまう。
それだけでまた軽く達してしまいそうなほど高ぶる。
それに隣のアルクェイドの存在。
こんな輝くように綺麗な、真祖の姫君が人間の精液で汚される。
どんな顔をするのだろう。
もとがもとだけにより無惨な被虐的な姿になるのか、それともそんな姿でも
なお光り輝いているのか。
遠野くんにしても、私だけならそれほど抵抗感は無い筈だろうけど、彼女の
存在に躊躇いを覚えているのだろう。
それでも、遠野くんに二人して懇願している姿はかなりの興奮と理性の崩壊
を誘ったのだろう。
遠野くんはぽんぽんとわたし達の頭を手で軽く叩いて告げた。
目の色が多少違っている。
「いくよ、シエル、アルクェイド」
最後の瞬間に、二人で遠野くんから少し離れる。
遠野くんはびくびくと震えるペニスを私達の方に向けた。
どきどき感が高まる。
発射を促すように遠野くんが自分の手で軽くしごく。
手が止まり、かわりに腰が前後に動く。
手で押さえているのにペニスが荒れ狂うが如く根本から揺れる。
ペニスの先、鈴口が僅かに膨らむ。
僅かに間が空く。一秒にも満たぬ空白。
そして……、遠野くんが爆発した。
はああ、こういう風に出るんだ……。
見上げる形で顔を並べるわたしとアルクェイドにびゅくびゅくと白濁液が迸
る。
凄い量、そして凄い勢い。
とても立て続けの三度目とは信じられない。
幾分かは塊となって顔を直撃し、残りは滴の如く降り注ぐ。
熱い。それにむせ返るような遠野くんの雄の香り。
精臭に息が止まるようで、くらくらする。
陶酔しながら、唇に口に触れたそれを、舌で舐めとり味わいながら飲み込む。
単純な肉体的な快楽は、たぶん抱き合って子宮の奥深くに向って射精する方
が大きいと思う。
でも、女性の顔を、それもわたしとアルクェイド二人の顔を同時に汚す行為
は、それ以上になにか精神的な満足感を、征服感にも似た充実をもたらしたの
だろう。
こんな満ち足りた顔をしている遠野くんは、珍しい。
「ふふ、酷い顔ね、シエル」
「そういうあなたこそ」
わたしがアルクェイドの顔に興味を持ったように、彼女もわたしに関心を持
ったらしい。互いに相手の遠野くんの迸りを受けた顔をじろじろと見る。
アルクェイドは……、そんな精液で化粧された姿でありながら、なお可愛い。
ちょうど泥だらけの子供が、どれだけ汚れていても微笑ましく目に映るのに
似て。
わたしはどうなのだろう。
鏡を見て確認したいような、したくないような。
「えっ?」
ついとアルクェイドの顔が近づく。
接触する寸前。
思いがけぬ彼女の動きに、とっさに反応できない。
「え、ええっ、なにを……」
躊躇いも無くアルクェイドはわたしの顔をぺろりと舐めた。
小さな口から出た舌が、おでこを、鼻筋を、頬を、唇の脇を、顎を這う。
穿たれ垂れ始めている精液をぺろぺろと舐め取っている。
舌で取り難い処は、形の良い唇を寄せてちゅっちゅっと啄ばむ様にする。
「な、何を……」
体を硬直させて戸惑った声を上げる事しか出来ない。
これが敵意や殺気なりを少しでも含んでいる行為であれば、反射的に体が動
くが、今のアルクェイドにはまったく邪気が感じられない。
「じっとしててよ、綺麗にしてあげるから」
穏やかな口調で言う。
ちょっとだけ子供を諭すような響きすら混じっている。
拒もうとしたが結局、最後までそのアルクェイドの奉仕を受けてしまった。
「うん、綺麗になった」
(To Be Continued....)
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