「遠野くん、挿入れてもいいですか?」

 嫌なはずは無いが、懇願を滲ませて許可を求める。
 そうしている間も握った手の強さを微妙に弱くしたり強くしたりして微弱な
刺激を送り続ける。
 はたして遠野くんは嬉しそうに寛大にも了承してくれる。

「挿入れて、シエル先輩、はやく……」
「わかりました。遠野くん仰向けになって下さい。わたしが上から……」

 横になった遠野くんを跨ぐ様な、はしたない格好をする。
 遠野くんの目が何もしないのに濡れて蜜を滴らせているわたしの谷間を見つ
めているのを感じる。
 それだけでトロリと新たな愛液が分泌される。

 このままではわたしも我慢できない。

 力強くそびえ立った遠野くんを、わたしの口で綺麗にしてより大きくした遠
野くんを、手にとり、上からゆっくりと挿入させるべく近づける。
 遠野くんの目が期待の色に満ちる。
 すぐにご期待に答えてもよいのだけれど、あえてじらしますよ、遠野くん。
 
 ちろちろと遠野くんの先端でわたしの小陰唇をなぞる。

「ああっ、先輩、気持ちいい」

 感極まった声。
 この辺は少し不思議。まったく同じ行為を遠野くんにされる時は、感じても
っともっととせがむのは私の方なのに。
 どちらが主導権を握るかで、違う結果になっている。

 少しだけ腰を落とす。
 ペニスの先端だけが柔肉に僅かに埋もれる。
 うんんんん。
 思わずそのまま完全に最後まで呑み込みそうになったが、意志の力で止めた。
 小さく円を描くように腰を動かす。
 遠野くんが小さく呻き声をあげる。

「気持ちいいですか、遠野くん」
「気持ちいいよ、先輩」

 いつもならそんな素直な遠野くんにはさらにサービスする処なんですが、こ
れは罰でもありますからね。
 強めも弱めもせずに同じ行為を繰り返す。
 遠野くんをじらすように。
 遠野くんはやがてペニスの先に与えられるこの刺激だけでは、物足りなくな
ったようだ。

「シエル先輩……」
「なんです、遠野くん」
「もっと、もっとしてよ。こんな意地悪するような真似しないでよ」
「どうしようかなあ。遠野くん、さっき一回して満足したんじゃないんですか。
もうここで止めたっていいくらいじゃ……」

 僅かな動きすら止めてしまう。
 遠野くんが必死な顔をする。

「やだよ、止めないで。お願いだよ、こんな途中で止められたらおかしくなっ
ちゃうよ。先輩、ねえ、お願いだから」
 
 なんて可愛らしい表情。
 横目でアルクェイドを見る。
 声もなく驚いている。
 こんな懇願の表情でおねだりする遠野くんなんて、きっと初めて見たのだろ
う。
 それに遠野くんにリードされるだけで、こんな風に自分が主導権を握ったこ
とも無かったに違いない。
 
「うふふ。わかりました。本当はわたしも待ちきれなかったんです。挿入れま
すよ。いっぱいいっぱいわたしの中で気持よくなって下さい」

 体重をかけていく。
 遠野くんので串刺しにされていく。
 
 一気に奥まで差し込んで、一旦満たされた感触を味わう。
 遠野くんも、わたしを味わうように深く溜息をついている。

「どうですか?」
「暖かくてキツい。それに先輩のって何でなんにもしていないのにこんなうね
うねと……。んっ、締め付けてきた」

 まごう事なき賞賛に、悦びに満たされる。
 それで体が勝手に反応している。

「動きますね、遠野くん」
「うん……」

 ゆっくりと腰を動かす。
 遠野くんのお腹に手を置いて支えにして、上下に抜き差ししながら、前後左
右の動きを加える。

 遠野くん、気持よさそう……。
 わたし自身も肉体的に快楽の波に揺られているが、それよれも遠野くんの歓
ぶ姿に性感が高まっていく。
 
 うんん……。
 え、ちょっとまずい。
 火が燃え上がりすぎている……。
 少し宥めないと。でも、そう思うとまたふわっとした波が……。

「シエル先輩、凄いよ」
「……」

 返事をしない、いや出来ない私を見て遠野くんが怪訝な顔をする。
 わたしの顔をじっと見る。
 気づいたようだ。
 わたしが返事もままならない程に感じてしまっているのを。
 
 にやりと笑う。
 そこで遠野くんのスイッチが切り替わった。
 すなわち受けから攻めに。攻守の逆転。
 年上の魅力的なお姉さまに弄ばれる少年から、哀れな女の子を取って喰うケ
ダモノに。

「うん、どうしたのかなあ、シエル先輩」
「え……」
「まさか、感じすぎて声も出せないって事は無いよね、ねえ先輩」

 いきなり乳房をぎゅっと握られる。

「ひゃん」

 かまわずぐにぐにと力を入れて揉まれる。
 両の手で押し潰す様にしながら、真ん中に寄せてみたり、左右に開いてみた
り。
 そうかと思うと敏感な乳首を指で強く引っ張られたり。

「あんん、強くしないで、遠野くん」
「あれ、嫌なの?」
「……嫌じゃありません」
「うんうん、素直が一番だよね。もっと可愛がってあげる。先輩、動きが止ま
ってますよ」
「は、はい、ごめんなさい。うん、んんんっ」

 すっかり緩やかになっていた腰の動きを再開する。
 でもそれを邪魔する様に、遠野くんは乳首を責めたり、ふたりの合わさった
辺りに指を差し入れたりして、わたしに悲鳴を上げさせる。
 意志の力でそうした快感を打ち消すことは出来るのだが、もちろんそんなも
ったいない真似はしない。
 それにしても遠野くん、優しい時は本当に優しいのに、こういう苛め方も大
好きなんだから……。

「先輩って本当にエッチだなあ。
 最初からとろとろにしちゃって、俺の咥え込もうとしててさ……。
 ん、そんな顔したって駄目だよ。違うとでも言うつもり?」
「だって……、ひあっ、やだ」
「あーあ、ろくに触ってもいないのにこんなに大きく硬くなっちゃって。
 皮剥いてあげようか?」
「はい……」
「聞こえないなあ」

 ああ、遠野くんの嬉しそうな事。
 酷い、酷い。でもそれがまた……。

「剥いて直接触って、可愛がってください」
「どこを? それに人に頼むときにはさ、どう言えばいいのかな、先輩?」
「お願いします、私のクリトリスを……、触ってください。遠野くんの指でも
っと気持よくして下さい」
「よく出来ました」
「あああぁぁぁぁっ」

「なんで、志貴、こんな……」
 横合いから声がする、誰?

 ああ、すっかりアルクェイドを忘れていました。
 信じられないものを見ている顔。
 そうでしょうね、こういう遠野くんの一面にはお目にかかっていないのでし
ょうね。
 優しく抱き締めて嫌がる事なんかしない、それもまあ遠野くんですけどね。
 でもこうやって意地悪で、女の子に恥かしい事を言わせたり、思い出すだけ
で顔から火が出そうな事をしたりさせたりする遠野くんも、貴方の知らない素
敵な遠野くんなんだから。

「ああ、遠野くん、ごめんなさい。
 もう、わたし、もうすぐ……」

 遠野くんはそれを聞くとわたしの動きでは足りないと、下からがんがんと激
しく腰を打ちつけてきた。
 お尻を指を食い込ませるようにしてぎゅうっと痛いほどに力を入れてつかま
れる。
 そしてわたしの体を乱暴なほど上下させる。
 たまらず上体を倒す。
 遠野くんの胸につっぷしてしまう。
 遠野くんの胸板に押し付けられ、胸がつぶれる。

 遠野くんが自分のペースでクライマックスを迎えたいというのなら、それは
それでかまわない。
 遠野くんの邪魔にならない程度に体を揺らしながら、遠野くんの与えてくれ
る荒々しい動きを堪能する。

「先輩、俺も一緒にイクよ、先輩の中にいっぱい出してやるよ」
「イって、遠野くんイって下さい。
 わたしのお腹にいっぱい注ぎ込んでください」

 ズンと下から強く腰が打ちつけられる。
 呼応するようにわたしもぎゅっと遠野くんを締め付ける。

 遠野くんの片手が痛いほどわたしのお尻に食い込み、もう一方の手は背に回
される。
 わたしも遠野くんをぎゅっと抱き締める。
 遠野くんがわたしのお腹をいっぱいにした時、わたしは体の中も外も遠野く
んを感じながら絶頂を迎えた。

 ああ、遠野くんが体の中に広がっていく……。
 

 ・
 ・
 ・
 最後にちゅっと唇を触れさせ、遠野くんから貴から名残惜しげにわたしは身
を離した。
 身を離すと同時に遠野くんの愛の証がわたしの中から溢れ出す。
 いっぱい出されちゃった。
 嬉しい。
 遠野くんは、全て放出したようにペニスを小さくしている。
 
「凄い……」

(To Be Continued....)