「……その、どうすればいいのです?志貴」
シオンは志貴の前にちょこんと正座をして向かい合い、とまどい気味に聞く。
志貴もなぜかつられた様に正座して向き合っていた。二人とも肩をいからせ
てこわばり、何とも視線を合わせづらそうにしていて。
志貴もんー、と唸ってそれに答えようとしたが、軽く唇を噛んで。
「まぁ、その、シオンは男がどういう風にしてするのかを知ってると思うけど」
「志貴、その話し方では何を指しているのかがあまりにも抽象的すぎます。も
っと具体的に――」
シオンはいつもの習性で志貴に明確な言葉を言わせようとするが、それが小
恥ずかしいことになると気が付いていない様子であった。志貴もとまどいを覚
えながら頬を掻くと、しばらく口の中で言葉を迷わせた後に――
「その、マスターベンションというかオナニーというか、自慰」
「細かい説明痛み入りますが…………だ、男性のオナニー?な、なぜそのよう
なものを私が知っていなくてはならないのです、志貴?」
「……シオンぐらい何でも詳しければ知ってると思ったんだけど……もしかし
てシオンはオナニー知らないのかな?」
何気なく志貴はつついてみると、シオンは眉をつり上げて憤激したように勢
い込んで――
「失敬な、私も自慰行為の存在ぐらいは知っています!」
「じゃぁ、シオンはオナニーするの?」
「…………それがこれと何の関係があるのです?志貴」
誘導尋問に乗せられるシオンではなく、そう落ち着いて答えると志貴は残念
そうに頭を振った。やれやれ、せっかく面白いことが聞けそうだったのに――
と思うと残念であったが、これからのシオンの行動はそれを十分に埋め合わせ
てくれるだろう。そう思うと志貴はにっこりと笑う。
「いや、興味があっただけ。とにかくまぁ、男性のオナニーはこう……」
志貴は股間に手を当て、握るような仕草で上下させる。
そんな淫猥な仕草を女性の前でしてみせることになるとは志貴は今まで思っ
たこともなかった。そしてそれを見せる相手がお堅いシオンだと言うことも意
外の上に意外であるというか。
シオンはその志貴の仕草をじっと見つめていた。
「陰茎を手でしごくのです?」
「いろいろスタイルはあると言うけどね、こんにゃくとかカップラーメンとか」
「……その二つはこの国の食品であると記憶していますが、なぜ自慰行為と関
係あるのですか?志貴」
連想でろくでもないことを口走った志貴に、シオンは真顔で尋ね返す。
そんな、カップラーメンオナニーなどという異端のスタイルを説明していい
ものか志貴は悩むが、話が滞りそうであったので手を振って忘れてくれ、と仕
草で示して。
「まぁ、とにかくそうして勃起させて、射精に導くわけ」
「……本当にそれだけで?」
「いや、いろいろコツはあるけども……都度教えていくから、安心していいよ、
シオン」
志貴はそう安心させるようにシオンに言うが、シオンは膝に手をついたまま
体を硬くしてじーっと志貴の、股間にある手に目を注いでいる。
いったい何をシオンが考えているのか志貴は訝しんだ。きっと彼女のことだ
からこうしている間にも連綿と生理学的な所見から志貴のクライマックスまで
のシミュレートを行っているのかもしれないが、シオンはもじもじと体を動か
すと、正座した足を崩す。
「では……痛くしないように努力しましょう」
「なんか、それは女の子に言われる台詞じゃないなぁ……」
志貴がシオンの口ぶりに苦笑するが、なぜ苦笑されるのかを理解していない
シオンの疑わしそうな視線を受けて、膝を崩してシオンの足を向ける。
ああ、なんか普通に女の子を相手にする時とちがうなぁ――という感慨を抱
きながら。
シオンはのろのろとベッドの上を四つんばいに進むと、志貴の前で止まる。
そしてその姿勢のままで、間近にある志貴のズボンの股間に視線を注いでいる
シオンは片手をゆっくりと伸ばし、志貴の足の付け根に触れようとする。ま
るで未知の動物に触れるかのように慎重に――そしてシオンの指先が志貴の股
間に触れた瞬間に、ぱっとシオンは手を引いた。
「……そ、そんなおそるおそるじゃなくてもいいのに」
「私だって……私だって男性の性器に手を触れるのは初めてなのです。志貴の
……志貴の男性器はもう、硬くなっていませんか?」
「あー……かもしれないな。じゃぁ」
志貴はよっと一声あげで膝立ちになる。
やおら目の前に股間が迫り上がったシオンは驚いて顔を引く。が、志貴がな
にをやるのかと興味深そうにその挙動を伺っていた。
志貴は寝間着のズボンの腰紐をゆるめると、ちらとシオンを見てからおもむ
ろ――
「いつまでも俺がこうしていても仕方ないし」
「何を?志貴――……ああ、あ……」
志貴はシオンの目の前、それも顔の前で――ズボンを脱いだ。
それもズボンだけではなく、そのしたのトランクスまで一纏めにして。男ら
しくいさぎの良い脱ぎっぷりであったが、それはシオンには全くの心の準備を
させなかった訳である。
シオンの顔の真ん前に、黒く縮れた毛のもしゃもしゃとした山が目に映る。
そしてその髭のような陰毛の山を麓に従えた、ずるんとしたソーセージのよ
うな肉の突起が目の中に飛び込んできた。それは浅黒い肌の色で、伸びた先端
からは赤黒の粘膜の先端が顔を覗かせ掛けている。
シオンは逃げることもままならず、志貴の――志貴の股間の肉棒を目の当た
りにしていた。
シオンの顔色はまず蝋のように青白くもあったが、目の前の肉棒がぶらぶら
と動くたびにどんどん紅い血色を帯びてくる。シオンは口元を手で多い、その
異性のグロテスクでもある性器そのものを見つめながら……口にする言葉を探
して戸惑う。
それでようやくシオンが漏らした、志貴への感想はというと。
「これを……これを私が、勃起させなくてはいけないのですか?」
「もちろん……いまでもまだまだだけどね、さ、シオン――」
志貴はそういって、腰を勧めてほとんどシオンの顔に触れんがばかりに近づ
ける。
ぶつかりそうなところまで近づけられたその男性器をシオンは、手をおそる
おそる進めていった。シオンの細く巧みに動く指は、志貴の股間のその肉界を
人差し指と親指でつまみ上げるようにして――
「うっ……」
「こ、こうでいいのですか?志貴」
冷たいシオンの指で触られた途端に、わずかに志貴は声を漏らす。
シオンの指は志貴のペニスの中程を触っていたが、それはおそるおそるつま
み上げているにすぎなかった。シオンは志貴のペニスをつまみながら……その
中に骨がないのに、中途半端に硬くなっている感触を異に感じていた。だがそ
の指先にも――
「あ……志貴の性器が、動いている」
「シオンに触られているからだよ……そう、このままそのままほかの指で、包
み込むように俺のモノを掴んでくれ……」
敏感な男性器を摘まれる感触に志貴は軽く喘ぎながら、シオンに指示をする。
そうしないといつまでもシオンが摘み続けていると思ったかのように。
シオンは頷くと、慣れぬ手つきで志貴の軸に指を添える。シオンの手の中に
握られた肉棒はびくびくと脈打ち始めてくる。その手の中の未知の感触に、シ
オンは驚きながら逐一口にする。
「なにか……志貴の性器が変化している。私の手の中でだんだん硬くなってき
て」
「そ、それは女の子に……シオンに触られているから。シオンの手は柔らかく
て可愛くて……」
志貴もまた、シオンに説明をする。だが、それはシオンに大事なところを掴
まれているためか頼りなさげにふるえている。シオンは片手で、不思議な手触
りのペニスを握ったまま志貴におどおどと尋ねる。
「これを……ど、どういう風にしてこすれば……」
「もうちょっと力をいれて握って……そう、そんな感じで……う……」
シオンの指が志貴自身を包み込む。そして、中に芯がある肉棒を指で握り、
その手触りと熱さを感じて手の中からまだ先を覗かせるペニスを見つめていた。
手で押さえつけたためか、血が集まった肉棒の先端から皮をかぶった亀頭が
その魁偉な姿を覗かせ始める。
シオンは己の手の中で形を変える志貴の男性自身をじっと見つめていた。彼
女の目は錬金術師として観察すると言うよりも……初めて男性の痴態を目の当
たりにする少女の動揺と、かすかな喜びを秘めていて。
息を殺してシオンは、志貴の肉棒をこする。握られている志貴はシオンの手
が控えめに動くたびに、ああ、ううと声を漏らしながら――
「ああ……こ、この格好だと……うん」
志貴は膝立ちであった態勢で、シオンの手首の向きに気が付いたのか、その
場にすとんと腰を下ろす。シオンは足を開いた志貴の間にうずくまるような格
好になった。
手から逃げた志貴の肉棒を、シオンは手で追う。そうして、志貴の股間に被
さるように四つんばいになり、再び掴む。
だが、腰を下ろした志貴の股間には、佇立する肉棒がそびえ立っている。
自らの手の刺激によって変わったと頭で理解はしていても、雁首まで皮をめ
くれ上がらせて男性器のその凶暴でもある姿を目の当たりにされると、一瞬シ
オンの指先が躊躇った。
だが、垂直に立つ男性器をしっかりとシオンは手に収める。どくどくと血液
がその中に熱く流れ込む脈動が感じ取れて。
その肉棒を握っているだけで、志貴の熱い血液が身体の中に流れ込んでくる
ような錯覚。
これは研究のための採取活動だ、と自分に言い聞かせるシオンであったが、
初めて男性のペニスを手にするその興奮が彼女の中を駆けめぐる。
――いけない、こんなことに私は
「シオン……もうちょっと強めでいいから……雁首のあたりを締め付けるよう
に」
「こ……こうですか?志貴」
シオンは顔を上げて、志貴の顔を見上げながら尋ねる。
シオンの指は志貴のペニスの胴に食い込むように握られていた。まるでジョ
イスティックを握るようにシオンの指は志貴の裏筋に宛われて、それが上下す
ると……
志貴は出来るだけ身体の力を抜いてリラックスしようとしていた。それより
も、まるでおねだりするかのような顔でシオンが自分を見上げていて、その横
には――シオンの手に扱かれる反り返ったペニスがある。秀麗なシオンの顔と、
グロテスクな自分のペニス。美と臭のコントラストは時として人を限りなく興
奮させる。
視覚的な刺激は、シオンの迷う指の刺激よりも時として強烈であった。
志貴は喉の奥ではぁはぁと声を漏らしながら……それでも、まだまだ限界ま
でには余裕があることを感じ取っていた。
「ん……志貴……感じていますか?」
「それはもう……でも……もっとぎゅっと握ってもいいんだ……」
「……痛くありませんのか?志貴?そんな……仮にもこれは人体でももっとも
敏感な器官なのですよ?」
シオンは勝手のわからない異性の身体を手にしながら、不安そうに尋ねる。
志貴はそんなシオンの心配と遠慮を愛しく思いながら――シオンの髪に手を
伸ばす。志貴の手が軽くシオンの前髪を触ると、その仕草をシオンは逐一見つ
めていて。
「……どうしました?志貴」
「いや、いいよ……男性はもっと荒々しく扱われるのが好きなんだよ」
「そ、そうですか……ではこういう風に?」
シオンは自分の手元を見つめると、指に力を込めて絞り上げるように――
志貴の喉からうぁっ、と短い叫びが漏れる。その声にシオンは一瞬力を緩め
ようとしたが、意を決してそのまま上下に……
「シオンっ、ああ……ふっ、あああ……」
「ああ……志貴……これでよければ……このまま」
シオンの手は志貴を強く絞りつけながら上下にしごき上げる。亀頭の上をこ
つんとこすり上げると志貴の腰がそのたびにビクンビクン動き、やがてむき出
しの尿道口から透明な先走りの汁をはき出し始める。
その液体はシオンの手を汚していき――
「我慢汁が出て来て……シオン、ああ……もっと」
「カウパー線液ですね。それもこんなに……こうして……もっと志貴に……」
シオンは手を動かす速度を速める。
志貴は股間の上に、手首をつかってごしごしとこすられるシオンの手淫に肩
で息をしながら耐えていた。このまま刺激がつづけばシオンの手と顔に思いっ
きり己の情欲をぶちまけてしまいそうで――
いや、でもまだそれでは物足りない。
志貴の中の欲望がまだそんな言葉を告げていた。まだまだ楽しみたいと――
「志貴……これから、どうすればよろしいのです?もっとなにかしないと志貴
は――」
「――シオンの、シオンの口でして欲しい」
その願望が志貴の口から告げられると、シオンはがばりと音が出そうなほど
激しく顔を上げた。長い三つ編みが波を打ちシオンの背中の上で暴れ、シオン
はやおら手を止めて志貴を目を見開いて凝視する。
ぐ、と根本で止まった手に志貴は悲鳴すら上げそうになったがぐっと我慢す
る。
ああ、言ってしまった……と己の勝手に動いた口に後悔を覚えもしたが、一
方では素直に欲望をはき出せた自分の口を褒めてやりたくなる。
そんな、満足と微かな後悔を混じらせた志貴の顔を、シオンは真意を測りか
ねるような瞳に見据え、やがて訝しむような声で――
「……いま、なんと言いました?志貴」
「シオンのお口で俺にして欲しい……俺のモノをしゃぶって貰いたいって」
「――――――――――――――――――――――――」
シオンはまだ握っている志貴のペニスに目を注ぐ。
赤黒いくリッパに雁首の立った志貴のその立派なペニスは、最初見たときよ
り倍は大きくなっているとシオンには観察できた。それを自分の口で刺激する
などと言うのは……それよりもこんな大きいモノが口にはいるんだろうか?
シオンはもう片手で自分の唇を心配そうに触れる。
小さく形の整ったシオンの唇は何もつけていないの微かに紅く、肉感的では
なかったがつい奪いたくなるような可憐さを帯びており――この小さな口を志
貴の巨大なペニスが犯す。
その光景を、シオンの細作りの顔に自分の肉棒がくわえ込まれる卑猥な光景
を想像するだけで志貴は達してしまいそうになる。
だが、シオンは貝が口を閉ざしたように無言で――
「――――――――――――――――――――――――」
「まぁその、手淫よりもフェラチオしてくれるほうが刺激が強いから……」
「――――――――――――――――――――――――」
「ああ、動かしてくれないと萎み始めてきちゃうし……どう、シオン?」
もしかして虐めすぎたかな?と志貴は不安になる。
はじめて男の性器に触るシオンに、フェラチオしてくれとお願いすれば怒ら
れて当然、彼女にいろいろ今の場は不利な状況はあると言っても……
志貴の股間でうずくまり、菫色の目でどこを見ているかわからないシオン。
だが、志貴の予想を上回り、シオンへの説得を要するまでもなく、その頭が
下がる。
シオンの唇が志貴の粘膜の亀頭にキスをする。そして控えめにあんむと開か
れたシオンの唇の中に、カウパー線液にぬれた志貴のペニスが……
「うわっあ!」
期待はしていたが、予想よりあまりにも早く訪れた口淫の感触に志貴は悲鳴
を上げる。
手で強くしごく手淫はその力強い刺激があるが、口で包まれる感触のその柔
らかさと暖かさ、まるで絹の布に包まれるかのような妙なる口内の感触が一気
に志貴を包み込む。
シオンは舌を志貴の幹に添えるようにして、志貴のペニスを飲み込んでいた。
その太い肉棒はシオンの造りの小さな口では目一杯に広げないと飲み込めない
大きさであり、ましてや歯を立てない為に大きく開くのであれば――シオンは
息を止めて志貴をくわえ込んだ。
口の中に押し込まれる、熱く濡れた肉棒。それはシオンの口の中を塞ぎ舌に
触る尿道口のカウパー線液の苦いようなしょっぱいような、不思議な味覚を覚
える。
シオンはそんな志貴のペニスを軸の中程までくわえ込むと、目だけを志貴に
向けた。
「おお……あっああ……」
志貴はそんな、突然やってきたシオンの口撃に狼狽えていた。
フェラチオされるのは初めてではなく、アルクェイドも秋葉もシエルもそれ
ぞれ相手にその異なったプレイを味わっていた。だが、このシオンのあまりに
も大胆でありながら、たどたどしい口の動きは未知の刺激であった。
志貴は両手を伸ばすと、シオンの頭を両手で掴む。
「ふんむっ?」
「いいよ……シオン、そのまま口の中と舌を使って、俺のを舐めてくれ……」
そう教えながら、シオンの顔をゆっくりと動かそうとする志貴。
シオンは志貴の導きに従い、顔を進ませた。舌でペニスの上を這わせながら、
口蓋に志貴のペニスを受け入れていく。どくどくと脈打ち、口の中を圧迫し、
奇妙な味と熱さのある志貴のペニスはシオンの口の中を犯していくが、喉に達
する前にこんどは引き抜かれるように……
「ん……ふうん、ん、ん……」
「そこ……尿道口のあたり……それに唇で締め付けて全体を……そう……」
シオンは言われるままに、志貴の男根を加え、刺激する。
口の中をいっぱいに塞がれるシオンは鼻で息をしていたが、やがて息苦しく
なったのかにゅぽんと志貴のペニスをはき出す。たっぷりと唾液に濡れた志貴
のペニスはいやらしく赤黒につやを放ち、シオンのほおにぺちんと当たる。
「苦しい?シオン?無理しなくてもいいから……」
「無理はしていません……そう、こんな風にしても志貴は気持ちいいのですか?」
《つづく》
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