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「無理はしていません……そう、こんな風にしても志貴は気持ちいいのですか?」

 ――シオン、どうした?

 わずかにシオンの雰囲気が変わったのに志貴が気が付いた。それは、彼女が
何かを開眼したかのような、いままでリードされるままの頼りなさではなく落
ち着きが。

 シオンは志貴の根本を掴んで直立させると、舌を延ばしてその裏筋を下から
上へと舐めあげ、志貴の雁首のくぼみの舌を這わせる。
 ああう!と志貴はその強い快感に思わずシオンの髪を握りしめていた。それ
でもシオンの舌は志貴の感じる亀頭の上を円を描くようになぞり続けていた。

「し、シオン……どうしてそんなテクニックを、ああっ!」
「ここが志貴が感じると予測したのです……こうされるのも気持ちいいでしょ
う?」
「おおっ、うぁ、ああ!」

 今度はシオンは志貴のペニスをつまみ上げ、その根本にたぷんと横たわって
いる陰嚢を口に含んだ。
 そして二つのちいさな肉のかたまりを、口の中でコロコロと転がす。そして
ぬるぬるに濡れたペニスを手でシゴキながら――

「っひゅ!ああ、あああ!い、あああ!」
「んぷぅ……こうされるのが溜まらないのです、志貴は……大分わかってきま
したね」
「シオン……いいよん、ああ……はぁはぁはぁはぁ」

 やおら攻勢に転じたシオンの、アンバランスなほどのテクニックに志貴は喘
ぎ声を上げる。こんな痴戯をするシオンの、まざなしの真剣さと口と舌の淫ら
な動きがあまりにも……刺激的であった。

 志貴はシオンの髪に手を添えて、その動きを探る。
 シオンは真剣な眼差しのまま志貴のペニスの幹を舐め上がっていくと、再び
その先端を口にふくむ。
 今度は口に入れるのが精一杯という頼りなさげな風情ではなく、志貴の感じ
るところを全て知り尽くしたかのように舌をうごめかせながら――

「ああっ、うあ!ん!」

 志貴が堪らず声を上げる。志貴の敏感な粘膜の先端にシオンの舌がまとわり
つき、ぬめぬめと舐める。そして唇に吸い付けるようにして志貴のペニスが飲
み込まれ、なま暖かくしめったシオンの口内で吸い付くように刺激される。
 志貴が思わず腰を浮かせ、荒い息をついてしまうほどのめくるめく快感であ
った。

 シオンは口の中で志貴の男根を吸い、甘噛みしながら頬に押しつける。
 志貴の感じる部分を出来るだけ効果的に刺激しよう――シオンはごく合理的
にそのフェラチオの所作を行っていた。だがそれがまるで練達の娼婦のような
なめらかで淫らな動きとなっていることに気がつかないかのように。

「ん……ふぅ、ふぅ……ん、ん」

 志貴の太いペニスで塞がれているシオンの口からは、もごもごとした籠もっ
た声しか漏れない。だがそうしてシオンの舌が動くたびに、志貴は腰に疼くよ
うな官能を覚えてシオンの髪に指を埋めていく。

 シオンに攻められ、志貴は陰嚢がすくみ上がり、腰の中に満ちあふれた情欲
の水位が危険なほどに上昇していることを察知する。そうしている間にもシオ
ンの口と舌は志貴のペニスから精液を搾り取ろうと淫らにうごめいている。

「シオン……シオンがすごく気持ちいいから……俺は……もう……」

 そういって志貴はシオンの頬を軽く撫でる。
 シオンはそんな志貴を、加えたままで見上げ――

 笑った――様に志貴の目には見えた。
 だがその表情を確かめる前に、シオンの頭が志貴の逸物を加えたまま動き始
める。
 唇の締め付けと舌の動き、口腔がうねるように志貴にからみついてきて。

「あんふっ、んっ、んうぅ……はぁ!」
「……いいよ、シオン……シオン……もう、もう――あああ!」

 志貴がシオンの頭を掴むと、ぐっと押しつける。
 シオンは押さえつけられるままに、志貴のペニスがびくびくびくっと震える
のを感じた。志貴の腰は浮いていて、その悲鳴のような喘ぎ声で――

 どくっと、舌の上に液体が溢れた。
 それは勢いよくシオンの口の中にはき出され、舌の上でびゅくんびゅくんと
踊る。志貴のまみれさせていたカウパー線液よりも濃くて苦く、粘性の高い液
体。

 勢いよく喉に流れ込もうとするその志貴の熱い液体をシオンは――

「んー、んー、んんー!!」

 志貴はシオンの頭を押さえて、快感の吐息を長々と吐き出しながら……はな
った。
 シオンの暖かい口の中で、何度も何度も白濁液を吐き出す快感。
 しばし志貴は陶然とその快感に酔い、目を閉じて余韻に浸っていたが……

 手を離し、自分の足下で苦しげにもがくシオンの存在に気が付いた。
 志貴の手から解放されると、シオンは手探りでベッドの上に落ちたビーカー
を探る。指先でそれを捕まえると、志貴の股間からゆっくり顔を起こしていく。

 にゅるる、と志貴のまだ硬さを失わないペニスがシオンの口から吐き出され
る。唇をすぼめて中のものを一滴も出すまいとするシオンは、ゆっくりと顔を
顔を上げ、最後に赤黒くてかてかと光る亀頭に唇を這わせて、そして口の中に
目一杯に含み唇を閉じたまま……

「……んぅ……ああ……」

 シオンはビーカーを口元に当てると、その中にたっぷりと堪った液体を吐き
出す。
 シオンの小さな唇から、どくりと粘っこそうな白濁液がこぼれ落ちる。それ
は雫となり筋となり、ぼたりぼたりと粘性を保ってビーカーの底に堪っていく。
 シオンは口の中のその苦い男性の精を、苦しげな表情――だが、ぼうっと熱
を含んだ瞳で口からこぼれ落ちさせて。

「……シオン……」

 志貴はその、シオンが口から己の精液をこぼれ落ちさせる光景を目の当たり
にしていた。
 体を起こしたシオンが、まるで自分が採取した精を志貴に証明するかのよう
にビーカーに吐き出し続ける。シオンの口をさんざんに犯した自分の精を、見
せつけるようにビーカーに溜めていく――それは目眩がするほど扇情的でもあ
ったが。

「…………」

 それよりも志貴には、今のシオンがだんだん哀れに感じ始めてきていた。
 必死に志貴の精液を欲しがるあまり、こんなに無茶をして――そう思うと、
シオンを押し倒して嬲りたいという男性の本能よりも、無理してがんばった娘
を褒めてあげたくなるようなそんな気持ちの方が多くなる

 シオンの口から、志貴は驚くほど多くの精液が吐き出されるのを見る。
 ビーカーに堪る白濁液を見つめると、これを口の中に吐き出されたシオンは
余程苦しかったのだろうな……と志貴は感じる。いつにもない倒錯的な状況で
あっただけ、量も濃さもひときわであったと思うだけに。

 志貴は左右を見回すと、手を伸ばしてベッドサイドのティッシュと箱ごと取
る。
 そして大急ぎで二三枚を引き抜くと、それを手に持ってシオンに近寄る。
 つぅん、と精液特有の鼻につく薫りがする。自分の精子でもこれだけの薫り
があるのだから、シオンはさぞや――と思う。

             §               §

「シオン……おつかれさま。よく頑張ったね」

 シオンは精液を吐き出し終えると、その手をゆっくりと下げて放心状態で座
り込む。
 シオンの唇には溢れた志貴の精液で白く彩られていた。その顔は苦しかった
任務を終えて一種の放心状態にいるかのようで、側に近づく志貴に気が付いて
いないかのようであった。

 志貴はその手のティッシュで、やさしくシオンの唇を拭う。
 シオンはなすがままにされていたが、志貴が二度目のティッシュを変えるこ
ろに――ぽろり、と涙を流した。

「――――――――――――――――」

 シオンの眦から流れた涙は、つう、となめらかな頬の上に伝う。
 志貴は間近にその涙を見た。手にしたティッシュでそれを拭おうかとしたが、
その手よりもむしろ……志貴はシオンの顔に唇を寄せる。
 ちゅ、と優しく志貴の唇がその筋を舐めた。

「――――――――――――――――――あ」

 肌の上に唇の熱さを感じて、シオンはようやく気が付いたかのように瞳を向
ける。
 だがそこには視界の内側に入った志貴の顔があり、志貴の鼻が目に入るがそ
の顔はやがて上に動いていって。
 シオンは自分の前髪が軽く分けられるのを感じた。

「……よくがんばったね」

 そうささやいてから、志貴はシオンの額に唇を寄せる。
 シオンのつるりとした額に、志貴の唇がそっと触れ――そして離れていった。
 シオンは自分の額に手を当て、そこに触れたぬくもりを確かめるようにして
――

「ああ、そうだ、俺もこんな風だった……しまったしまった」

 志貴はシオンを満足そうに眺めたかと思ったけども、すぐに股間丸出しでま
だ精液と唾液に濡れた様に気が付き、くるりと背中を向けて大急ぎでティッシ
ュを引き抜く。
 背中をかがめてせわしなくティッシュのゴミをつくっていく志貴の姿をシオ
ンは見つめていた。だがやがて、シオンは尋ねにくそうに志貴に声を掛ける。

「志貴……その、私は……いや、私のことよりも志貴はよかったのですか?」
「――よかった、というのはシオンにしては微妙な言い回しだなぁ……いや、
もう、満喫させて頂きました」

 そう戯けるように志貴はくくっと笑うが、ズボンをなおしながら振り返って。
 そこには志貴の笑顔はなく、むしろシオンに対して哀れみを感じているかの
ような静かな顔があった。
 シオンはその眼差しを前に、背筋を伸ばしていく。

「……なにか、いじめちゃったみたいで御免……ああ、こんな事言ってもなぁ」
「――――――――――――――――――」
「とにもかくにも、シオンはこういうことは初めてなんだろうし……それなの
にお口の中で出しちゃったのはつらかっただろうと思うし」
「――――――――――――――――――」
「まぁ、とにかく……御免」

 そういって志貴はぺこりと頭を下げた。
 シオンはそんな素振りを見せる志貴を瞬きもせず見つめていた。志貴に謝ら
れたことで、ようやく自分はひどいことをされていたのだ……と気が付く。人
並み以上に聡い彼女にしては鈍感なことであった。
 だがベッドの上に正座をして、深々と頭を下げる志貴を見つめていると――

 シオンは額に手を当てたまま、そんな志貴にゆっくりと語りかける

「……私は……私は志貴に悪いコトをされたとは思っていなません。いや、私
も志貴に随分ひどいことを依頼したのですからむしろ志貴の要求は提供者とし
ての当然の権利です」
「いや、でもその出す方より出される方がつらいわけだし、それに――ああも
う、シオンは処女の年頃の女の子でしょう!それがそんなことしちゃいけませ
ん!」


 シオンの遠慮がちな口ぶりに焦れたように志貴は呻く。
 処女の年頃の女の子――そう言われたことにシオンは新鮮な驚きすら感じて
いた。それに処女だからそんなことをしてはいけないという志貴の倫理観の微
妙な線引きにも。
 ただ、そんな風に志貴に気遣われると……シオンの中で熱い血潮がうずく。

「――――――――――――――――――」

 こんなことを言ったら志貴はどんな顔をするだろう。
 いつもの彼女なら志貴の感情と行動をシミュレートして、口に出しもせず得
心するはずであった。だが、口の中に残った苦い志貴の味と、自分の胸の中の
鼓動がそれをする前に――

 シオンはごく冷静な顔で、尋ねていた

「では……志貴が、志貴が私の処女を貰ってくれれば――こういうことをして
志貴は喜んでくれますか?」
「――え?」

 志貴はがばりと身を起こして、信じられない様な顔をしてマジマジとみつめ
る。
 志貴の眼鏡の向こうの青い瞳を感じると、シオンは自分の言葉の持つ恥ずか
しげな意味にようやく気が付いたかのように頬を赤らめ、弁明するように。

「――いや、ものの喩え、レトリックの反語です。そんな、私が志貴に処女を
捧げるなどと言うことは……」
「…………俺は、シオンの初めての人になら……喜んで」

 そうぼそり、と答える志貴を今度はシオンが頭蓋骨の中まで見通そうかとす
るように凝視する。咄嗟にシオンはエーテライトを放って志貴の真意を確かめ
たい衝動に駆られたが、その手にはまだ精液入りのビーカーが握られていたた
めに為せなかった。

「俺は、シオンが……放っておけないし協力したいし、それに……好きだから」
「――好き、という感情は……愛しているとか恋しているとか私はその定義が
出来ません。だけども私は……私は志貴を喜ばせたいといつも思っていて」
「それが、好き、なんじゃないのかな……」

 ふたりともいつしかベッドの上に正座して、こちこちになって対面していた。
 図らずも口舌遊技から始まって、逆に純情な愛の告白で終わるこの奇妙な寝
台の上の夜が、どんな風になるのかを――二人とも計りかねている。
 二人は月夜の舞踏会で、どんな風に手を取り踊り出したら良いのかわからな
い純情なダンサーたちの様な戸惑いと、密かな高揚を感じながら。

「――志貴?」
「……シオン……」

 二人とも、膝でにじり寄る。
 二人が手を伸ばして、お互いの手のひらを触れ合おうとして――

「あ」

 期せずして、二人で一つのビーカーを握り合うおかしな格好になる。
 二人の視線は、四つの手に囲まれたなみなみと注がれたビーカーの中の精液
にそそがれている。良い感じになった恋人同士が二人でその分泌液を眺めてい
るというのはいかにも奇妙で、いかにもおかしかった。
 不意にこみ上げる、笑い。

「……何を私たちはやってるのでしょうね、志貴?」
「ははは……そうかもしれない、まぁ、その、今日はそれもあることだし」

 志貴はシオンの手から離れる。
 シオンはその大事な精液のサンプルを手にしながら、ようやく自分の仕事を
思い出したかのように、顔色をさっと改める。

「シオンにはまぁ、それの研究があるし、今日は……今日はシオンの気持ちを
確かめられただけでも」
「そう……ですね。でも、私は本当にそう思ってるんですよ?志貴」
「まぁ、いずれの機会に――ちゃんとシオンの処女は貰ってあげるから。ただ、
今日はお疲れ様。ゆっくり戻って休むといい」

 シオンはそっとベッドから降りると、靴に足を通してサイドテーブルの上の
ベレー帽を取り上げて頭の上に乗せる。
 そして立ち上がったシオンは、ベッドの上にあぐらを掻いて見送る志貴に向
かい直ると、もじもじと言いづらそうにしていたが、やがて……

「志貴、最後にお願いがある」
「…………何?」
「お休みと……約束のキスを、してくれませんか?」

 シオンはそう、志貴を静かに見つめて囁いた。
 我ながら心細く、それに感傷的な――でも、こういうのも悪くはない。
 シオンがそう心の中に念じていると、志貴はベッドの上から足をおろし、ゆ
っくりと立ち上がる。小柄なシオンに、寝間着姿の志貴が被さるように近づい
てきて。
 柔らかく押さえられた明かりの中で、シオンは志貴の顔を見上げて――そし
て目を閉じる。

 志貴はシオンの肩に手を乗せて、ゆっくりと引き寄せると……初めてその唇
に触れた。

「…………んんむ!」

 口づけして、雰囲気一杯にシオンとの接吻を味わおうとした志貴は、顔色を
変えた。
 唇にかすかに残るしょっぱく苦い味と、こうするまえにシオンがいったい何
を口にしていたのかを遅ればせながら思い出して。

 慌てて顔を話す志貴を、シオンは怪訝そうに見つめていたが、やがて口元を
押さえる志貴の尋常ではない驚きようの原因を気が付く。
 だがシオンは、ふっと気を許した笑いを浮かべて――

「お返しです、志貴」
「ううう、シオン、さっきした後にまだうがいしてないだろ……ううう、自分
のもの舐めちゃった……」
「それくらいで動揺しないでください。そのうち約束通り私の全てを志貴に味
わって貰うのですから」
「……それはうれしい申し出だけども、その、シオンも口濯いだ方がいいよ……」

 口元を押さえてかがみ込む志貴の苦しげな指摘に、シオンは軽く唇に指をあ
てる。
 そして得心したように頷きながら、哀れな様相に志貴をからかうように言う。

「なるほど、秋葉の言うとおりです。志貴の精液の味も悪くはありません」
「怖いこというなって……ああもう、そんなところだけ秋葉に似られても困る
んだよな」
「そうかもしれませんね。では志貴、お休みなさい」

 シオンはベレーを持ち上げて一礼すると、くるりと身軽に振り返って歩き出
す。
 そして、思い出したように振り返ると――

「約束――ですからね」
「ああ、約束、楽しみにしているよ……うえー、ぺっぺ」

                                   
     《ToBeContinued?》

 

 


【後書き】

 どうも、阿羅本です。お読みいただき有り難うございます。
 今回のシオン祭のSSですが、シリアス1本とコメディを1本、両方とも18
禁で……と考えていて、コメディっぽいのがこちらになります。

 遠野家で秋葉に薫陶を受けていたらやっぱりこう、せーえきネタを秋葉は吹き込む
よなぁ……と限りなく邪悪な偏見の中に阿羅本は閉じこめられておりそうするとどう
なるかを考えるとこうなる、と言う感じでございます。例によって例の如く阿羅本
ちっくに頭の悪いばかえろになって、なかなか気に入ってはおりますが(笑)

 ……あ、でも本番無しだ(笑)
 こう、この話だとお口だけのほうが奇麗にまとまるなー、と思うのですがその半面
嬉しはずかしのシオンの初体験が……絶対この環境だと秋葉と琥珀さんが乱入してく
るよなぁ、とも邪想が私を蝕んでー(笑)

 でも、このSSも志貴が転げ回る当たりが自分でも愉快でなかなか気に入ってます。
まぁ、俺でも女の子に前立腺マッサージされて射精させられるのなら泣いて抵抗する
よなぁ……そ、それもマゾっぽくて悪くはない鴨?(笑)

 とにもかくにも、今回もお付き合いいただき有り難うございました。
 それではまた次回作で〜

 でわでわ!!