「あ……その、セイバー……綺麗だから……そんな、恥ずかしがることはなく
って」

 何か言わなくちゃいけないから、とりあえず褒めてみるけど決まらない。や
おら詩人のようにおお、アルトリア汝はヴェヌスの神の恩寵の如く輝き、とか
叫びたいけどそんな語彙はなく、もにゃもにゃと口の中で何かを言おうとして、
そして口ごもってしまう。
 それほどにセイバーの身体は綺麗で、見ている俺がどうしていいのかわから
ないし、今のままだとどうにもならない。

 むしろ縛ってくれた方が有り難かったような気もする。そうしないと、セイ
バーの前で立ち往生する情けない俺の言い訳が立たない。
 は、は、と弾む息を飲んでいると、頬にぴたっと冷たい手が当たった。背中
に遠坂の胸が当たって、俺の身体を支えながら何を――

 ぞくっと、戦慄に身体を捩る。

「ねぇ……見てる?士郎、セイバーのこと」
「も、もちろん。でも遠坂も綺麗だし、セイバーも綺麗だから……ああもう、
比べてどっちがどっちだなんて言わせるなよ、そんな無粋なの俺は嫌いだから
な!」

 自棄になってそんなことを口走るしかない。耳元に当たる遠坂の唇が、くす
りと笑いを漏らす。セイバーは伏し目がちに、俺をちらちらと見てきていて…
…いつも強く輝くあのエメラルドの瞳が、こんなに柔らかく魅惑的に向けられ
ることがあるなんて。

「シロウ、そこまで無理を言って頂かなくても……」
「セイバー、そうでもないわよ、ほら……」

 遠坂の手が、俺の身体の上を這う。
 指が長く爪が綺麗な遠坂の手は触ったり触られたりすると嬉しいけど、今の
拘束された俺を弄ぶ手となると、それは魔女の手だといいたくなるほど恐ろし
くて、それが俺のお腹の上を這っていって、ズボンの中に差し込まれるに至っ
ては。

「――――――い!」

 喉が悲鳴を上げそうになる。そんな、女の子みたいな悲鳴を上げるのはみっ
ともないけど、それでも遠坂の指が確実に俺の硬く強張って隠れている男性器
を摘むと、我慢できるものではない。
 蒸れたトランクスの中に進入する遠坂の指。それが俺の陰毛を触り、充血し
て形見を帯びてきた秘密の軸を撫でさする。あ、ああ、と喉が勝手に息を音に
していく。

 俺を後ろから抱き、首筋に唇を這わせる遠坂。ぺちゅり、と触れる唇は肌に
融け、俺の血と汗を吸おうとしているみたいで、その腕に俺は抱かれて悶える
ばかり。

「ああ、う……そ、そこはやめ、遠坂……」
「ほら、セイバーの裸を見て士郎の男の子の部分がこんなに硬くなってる……
私の指にかちかちになって当たってるわよ、士郎……」
 
 背後から流し込まれる、遠坂の言葉責め。
 それに合わせて、ズボンの中で遠坂の奔放な指責めが始まっていた。そんな
テクニックいつのまに、と混乱した頭で思うけども、親指と人差し指と中指で
巧妙に俺のペニスを弄り出す。擦り、締め、そして雁首のあたりを撫でるよう
にしたりしていた。
 
 それに、そんな風に俺が攻められているのを、セイバーが見つめている。
 こんな、なすがままに遠坂に責められているのを見られるのは、情けなく恥
ずかしく、そしてどこか甘美だった。遠坂の指に弄られ、あられもない声を上
げ、それを美しくも気高いセイバーに見られている。彼女が威厳を持って俺を
見下してもそれはマゾヒスティックな快感になる。

 けども、遠坂に弄ばれる俺とセイバーは、二人とも被虐的にシンクロしていく。
 俺を見るセイバーが、ゆっくりと息を漏らす。その白磁の肌は温かく、この
蒸れた部屋の中でも微かな湯気を立てているみたいに見えた。胸を隠したその
手、そしてぴったりと合わさった膝が、もじもじと気後れしたように動き出す。

「士郎……いやらしい、私とセイバーがするのを聞いてこんなにしてたのに、
セイバーの裸をみたらこんなに現金にふくらせちゃって……男の子よね、士郎も」
「あ、あ、当たり前で萎える方が問題……あっ、そ、それ止めろ、ああ……」
「あ、士郎ここ感じるんだ。ふーん、良いこと知っちゃった」

 指が尿道口と前雁の集合部をくりくりと、先走りの液に濡らして弄られる。
粘膜の亀頭は剥き出しで、それがトランクスの内側に擦れると痛かゆくきもち
いのに、遠坂の指にそれが触れられるのだから、腰が何度も跳ねる。

 それなのに、身体が自由じゃないから藻掻くのも容易じゃない。だから、遠
坂に本当に一方的に弄ばれるままで、彼女の興奮させる題材だけを提供し続け、
俺は快感の中で消耗していくように……

「ああっ、ぬ……はぁ、ああ………ああっ、あ」
「あ、士郎の身体、熱い……士郎の薫りがする、ほんと……あーもう、男の人
の薫りなのに、どうしてこんな……ん……ほら、こうして……」

 目玉がぐるっと裏返って、白目になるような快感。なんて良いのか分からな
いけど、股間から脳にずきずきくるような、指戯の官能だった。それに俺の背
中に顔を当て、遠坂が囁くその言葉も俺を煽っていく。

 でも、それ以上に――俺の瞳は、セイバーに釘付けにされていた。

「ああ……シロウ……シロウがそんな……ああ……」

 雨音の彼方に消え入りそうな、セイバーの細い声。でもそれはぬったりと熱
く、耳にはいると鼓膜が火傷してしまいそうに感じる。唇は何度も舐められ、
可憐な唇が赤く濡れている。
 セイバーの手が、微かに動いていた。胸を触り、ゆっくりとその手にしたモ
ノを戸惑いながら確かめているように。重ね合わせた膝頭が、緩やかに櫂を漕
ぐように動く。あの足の付け根にはセイバーの汚れのない神聖な場所があって、
それがもしかしてそこが大変なことになって彼女にそうさせているのか、と妄
想する。

 あり得ない、けど、俺が目に見ているのは間違いようはない。
 ただ覗いているだけだと、俺の目の錯覚だろう。でも、俺とセイバーは共に
遠坂に遊ばれていた。二人とも遠坂の愉しみの下僕と成り下がってしまい、そ
の被虐の鎖が俺とセイバーの首を二つながらに繋いで、俺たちを卑しく悦ぶ犬
として共感させるようで。

「はぁ……ああ……ん……シロウ……シロウが、凛に……」
「は……ああ……ん……セイバー……」

 呼吸が分かる。離れているのに、その息づかいと鼓動が俺に伝わる。
 セイバーは身体を火照らせていて、それのやり所に困っている。だから手を
動かして少しでもそれを紛らわせようとしているんだと、分かる。俺もがちが
ちに性欲で硬くなっていて、それを遠坂に弄ばれ、瞳はセイバーの痴態に釘付
けで、どうしてどうされていいのかもう……

「はぁ……ねぇ、シロウ、見てる?」

 囁かれる、快感の悪魔の響き。どことなく禍々しく、そしてそれに全てを委
ねて楽になりたいという負の安息を掻き立てられる。遠坂の囁きだったけど、
それは言葉ではなく俺の耳をねぶる舌のうごめきであった。

「セイバーったら、したこと無いっていってるのに、オナニーしてるわ……士
郎がこんなことをされてるのをみて、堪らなくなっちゃって……可愛い……は
ぁ……」

 神経がおかしくなる。遠坂はあくまで、角が生えていて、俺とセイバーをた
だならぬ背徳の道に堕落させる悪魔の囁きを漏らしていてで、それに俺は耳を
閉ざすことが出来ない。嘘だ、信じないといって目を閉じても、セイバーがあ
んなに切なげに胸を撫でていたのを忘れることは出来ない。

 耳朶に這う、遠坂のぬらりとした舌。つぷり、と耳穴に触れると耳が崩れ落
ちそうに熱く感じる。

「士郎は知ってたんでしょ……本当はセイバーがオナニーしてたの、あの襖の
向こうでちょっとづつ指を動かして……可愛い声ね、私が聞いても堪らなくな
っちゃうし、抱きたいって……士郎のここ、こんなふうにしてたのね」

 しゅっしゅ、と手が俺のペニスをしごく。どこで聞いたのか、男性のせんず
り行為を真似るように。トランクスを先走りの液で汚し、遠坂に扱かれてその
指の綺麗な感触と、裏返しの卑猥な動きに酔いしれる。

「――schließen」

 大陸系の詠唱が、遠坂の耳から漏れる。
 足首と膝を縛っていた無形の抵抗が、解かれる。紐で縛ってあったと言うよ
り、くるぶしと膝が磁石でくっついてしまったみたいな押さえ方だったので、
足が自由になるとほっと――でも、遠坂は立て続けに身体を押してくる。

「え?遠坂なに……」
「ほら、セイバーが見ているのに士郎のを見せてあげないのは不公平よ?」
「………」

 そんなことを聞かされて慌てる俺と、俯くセイバー。暗に自慰に耽ってるこ
とを指摘されたようで、その手が止まって前髪の中に潤んだ瞳が隠れる。せっ
かく良いところを覗いていたのに、という悔しさはあるけども。

 背中を押され、膝立ちにさせられる。いっそ立ち上がって……どうしようも
ない。
 逃げてもこの腕の縛りは自分で解けないんだから、遠坂の言いなりにしたが
うしかない。それに、まだ俺も、そしてセイバーも戯れられたがっていた。心
のどこかに。

 だから膝立ちにされて、後ろからズボンごと引きずり下ろされてもなすがま
まで。
 ずるっと、太股の上を衣服が滑っていくのが分かった。そしてそれに逆らっ
て立ち上がる身体の突起部。

「と、遠坂、そんなコトしたら……うわっ」
「セイバー、みて……士郎のおちん○ん、セイバーを見てこんなにしてるのよ」

 は、俺をと唆し、危うい淵に彷徨わされるような笑い。
 遠坂が後ろでそんなことを囁き、また俺の肉棒に触れる。膝立ちになって、
股間を丸出しにしてセイバーの前に逸物を晒している。それも遠坂に握られ、
まるで石作りみたいに硬くそそり立たせて……

「あ……シロウ……」

 セイバーの瞳が、俺の股間を見つめている。そのエメラルドの気高い瞳が、
俺の陰毛を、肉軸を、睾丸を、捲れ上がって湯気をたてそうな亀頭に向いてい
る。まるでオークションされる奴隷が、その精機能を競り主によって客の前で
証明させられるように、さらし者にされて……

 背筋が弓なりに反る。その屈辱の方が、触られる感触よりも理性を痺れさせる。
 そして、それがはしたなくもこんなに俺を興奮させる。流れ込む血が視線に
惹き付けられ、上半身の血が全部そこに流し込んで行くみたいに膨れあがる。
海綿体がみちみちと血に軋みそうなほど、こんな硬い勃起が――

「ああ……あああ………ああああああ!」

 遠坂は後ろから、見せ物のペニスを指で嬲る。
 寝室の空気の中に佇立するそれを、両手でなで、しごく。しゅっしゅっしゅ
という肉の響きが旋律となってこの部屋を支配する。そこからやってくる官能
は毒々しく、鋭敏で、今にも精液を滴らせたがっていて……

「……セイバー、見て……士郎のはまるで女を求めてこんなに硬くしている卑
しい奴隷○んぽみたいに……こんなに悦んでるの、私にされて、ほら、ほら…
…」
「シロウ……は、ああ……ああ……ん……」

 俺のペニスのイメージが、余程強烈なのかセイバーは瞬きもしない。
 それなのに、グロテスクさに見開かれていたであろう瞳は、まるで煮られた
チーズの固まりのようにゆっくりとまろみをおびてくる。その熱はセイバーの
快感なのか、そのとろりとろりと解ける薫りが漂ってくる気がする。

 セイバーがもそり、と身体を竦ませる。まるで身体の痺れに耐えているよう
で……でもそのまま四つん這いになって、身体を何かで覆い隠すことなく俺に
向かって近寄った。
 セイバーの結った金の髪が、なだらかな肩の白さが、そしてお尻まで繋がっ
た背中の美しい白雪の稜線が近づいてくる。

「セイバー……何を……うっ、ああ……ああ、ん……」
「セイバーも見たいのね、士郎のこの扱かれて悦ぶ奴隷○んぽを……ほら、も
っと側で見て?すごい匂いがするでしょ?セイバー?」

 四つん這いになって、まるで発情した雌獅子のようなセイバーがよろり、と
近寄る。
 その美貌に、俺のペニスが近づく。遠坂の手で飛び散る飛沫で、セイバーの
顔を汚してしまいそうなほどに。その綺麗なつんとした鼻がくんくんと匂いを
嗅ぐ。

 嗅がれている、俺のペニスの薫りを。それは触られ、キスされるよりも特殊
で屈辱的で、なんと蠱惑的で。俺の男臭がセイバーの口の中や鼻の中を犯すよ
うな、流動するいやらしいイメージ。

「ああ……シロウの匂い……まるで獣みたいに強くて……ああ、こんなにシロ
ウが……」
「ふふふ、こんなに士郎はセイバーに間近で見られてびくびくしてるのね、私
でこんなに硬くしてくれたこと無かったのに……良いわ、士郎?士郎も士郎の
奴隷○ンポも、セイバーも可愛がって上げるんだから」

 そんな宣告と共に、ぎゅっと遠坂の手が締まる。
 その感触に、尻が痙攣して尻の穴が体内のめり込みそうになった。それなの
に構わず遠坂の手は勢いよく俺の肉棒を絞り始める――

「あああっ、うう、ああ!遠坂、そんな、セイバーにっ、あっ、ああっ、あああ!」
「心配しなくても良いの、セイバーはきっと顔で受け止めてくれるから。ほら、
無理せず士郎のおちん○んから出しちゃいなさい、たっぷり貯めた精液を……」
「シロウ……私は……シロウ、許してください、ああ……」

 セイバーの消え入りそうな囁き。
 そして、セイバーの身体を支えていた手が抜かれ、それは……セイバーの身
体に吸い付いていった。手が往くのは、セイバーの股間。
 セイバーのお尻と足の奥に触れた、くちゅりという音すらどこからか聞こえ
たような気がした。

「あああっうっ、ああああ!」
「シロウ、私は……シロウの匂いで、こんなに……ああ、ああっ、は、ああ…
…」

 セイバーが、俺のペニスを前に自慰をしている。
 こんなに綺麗で、愛らしく、それで疵一つ無く完璧なセイバーが情欲に燃え
立たせられ、その身体の中にある嫌らしい部分をその尊い手で撫でている。オ
ナニーなんかしたことがないと聞いたのに、セイバーの中の女性の本能に突き
動かされるようなそのぎこちない動きと、恍惚と罪に酔ったほのかに紅い顔。

 駄目だ、我慢できない。毒液でセイバーの顔を汚してしまう、その罪の恐ろ
しさに恐れおののく。でも、それを避けることは出来ず、まるで飢えのあまり
我が子を食いながらもその肉の美味さに酔いしれるような、矛盾と極限の中で
快感と本能がスパークする。

「あああっ、ああああああ!」
「士郎、びくびくしてる……出るのね、出しちゃいなさいこの奴隷○ンポ――!」

 頭の中に、快感の釘が刺さる。それも無遠慮な三寸釘が、内側から外へ。
 延髄からずきずきと釘が生えていって、その痛みに首が、背中が仰け反り、
殊更にペニスを押し出しような格好になった。その痛みで身体のスイッチが落
ちて、腰の奥の水門が開かれてどっと白濁液が流れ出した。

「うぉあああああ!」
「はぁ……ああっ、シロウ――!」

 どぴゅりどぴゅり、と精が迸る。
 熱い精液が枯れた尿道口を駆け上って、外界に吐き出される。それの先にあ
のセイバーの顔があると思うと、何も考えないことが幸せなほどに気持ちいい。
何度もペニスが痙攣して、遠坂の手とセイバーの顔を汚す。

 目を閉じたセイバーの頬に、ぴちゃりと精液が白く塗られていく。
 セイバーの顔に、俺の精液。その汚された顔に、悦びを浮かべるあの碧緑の
瞳。
 そんな、瞳で――俺に燃え尽きることを禁じ、まだセイバーを求めさせるよ
うな……嗚呼。

「は……あ……たくさん出たわね、士郎。ん……」



(To Be Continued....)