性の交わりとは、その行為そのものだけを愉しむものでは無い。

 行為の前には、それに至るまでの経緯を愉しみ、行為の後には、その余韻を
味わうものだ。
 火照った身体に、ひんやりとした石畳が心地よい。
 荒い息をつきながら、キャスターは横でぐったりしているセイバーを見つめ
る。

―――白濁とした液を口と後ろの穴から垂らし、更に白く穢れたその姿を。

 何度も絶頂を迎え、肉体的・精神的にも疲労しているセイバーは、殆ど失神
したような状態になっていた。
 だが、それでもまだ終わらない。彼女にはまだ、最後の仕上げが残っている。

 気高き獣は地に堕ちて、身体は穢れ自由を奪われた。
 自らを律していた『誇り』という名の枷も、引きちぎられて今は無い。

 さあ、残るものは何だろう?

 無限の可能性を秘めた未来? 否。もはや残っているのは奈落に続く一本の
道だけ。

 ありのままを受け止めれる現在? 否。受け止めれるのは、絶望と苦痛のみ。

――――ならば、決して変わる事の無い過去?
 美化され、苦痛は色あせて、いつまでも綺麗なままに昇華される記憶。
 既に起こった出来事には、何物も干渉できないだろう。

 では、過去のページに一滴の、黒い黒い液を垂らしてみたらどうだろう?
 ページをめくっていると、突然そのシミは現れる。
 それは深く浸透し、次のページにも、その次のページにも、シミは残ってい
る。
 そのシミを見るたびに思い出す、苦い記憶。いくら美化しても、そのシミは
消える事無く――――彼女を苛み続けることだろう。

 未来を奪い、現在を蹂躙し――過去に逃げることすら許さない。
 そうして初めて、セイバーは没落する。人間以下の、ペットに成り下がるの
だ。

 手間暇をかけて完成させた作品こそ、長く長く――他人を、そして自分を満
足させるものに仕上がる。それはいつの時代も、そして作品が違ってもなお、
変わらぬ真理なのだから。

――――画竜点睛。
 何処かで聞いたその言葉を思い出しながら、キャスターは身を床に横たえた
まま、セイバーに命じた。

「セイバー、貴女と私ので汚れた此処を、口で綺麗にして頂戴。……それと、
私の身体を跨いで、お尻を顔の方に向けて」

「……あ………」

 やはり意識が混濁しているのか、満足に返答も出来ないまま、セイバーはゆ
っくりと体勢を変え、キャスターに覆いかぶさる形で身体を反転させた。俗に
言うシックスナインの格好である。
 そうすると必然的に、セイバーの目の前にはキャスターの擬似男根が、キャ
スターの目の前には、未だ白濁とした液と透明な液を垂らしているセイバーの
秘所が来ることになる。
 体勢が整うと、セイバーは男根にまとわりついている液体を舐め上げ始めた。
 ゆっくりと丁寧に、まるでアイスキャンディーを味わうかのように、舌で液
体をすくっていく。
 竿部分に付着していた液体を舐め終わると、今度はカリの部分に舌を這わせ
始める。

「はっ……そう、先っぽからも吸い出して……あうっ、ん、上手よ……」

 下部から伝わってくる快感を味わいながら、キャスターは目の前にあるセイ
バーの秘裂へと舌を延ばす。
 舌先がクリトリスに触れた瞬間、セイバーの身体がぴくん、と波打った。
 その反応を愉しみつつ、奥から湧き出た愛液と、垂れてきた白濁液を舌で舐
め取り始める。
 お互いに相手の秘所を舐め上げ、綺麗にしていく。それを経ていくうちに、
また興奮が高まっていくのをキャスターは感じていた。

「んっ……ちゅ、ちゅる……む、っ……はぁ、あっ……」

 セイバーは更に、カリの裏筋にも舌を這わせ、残っていた白濁液を舐め取っ
ていった。
 既に意識は覚醒しているのか、キャスターが秘部を舐めるたびに、切ない喘
ぎ声を漏らす。
 ぴちゃ、ぴちゃという粘液質の音と共に、二人の喘ぎ声が合奏のように響く。

「あうっ……は、ぁ…や、ん……ちゅ、ふっ――」
「はぁ……あっ、ん、ぐちゅぐちゅ…して、る……っ」

 舐めれば舐めるほど、更に蜜が溢れ出てくる。そしてその染み出てきた蜜を、
舐め上げる――。そんな終わりの無い行為が、キャスターの一言で停止した。

「はっ、セイバー……もう、いいわ。
 次は、上体を起こして……ん、腰の位置はそのままで……」

 セイバーは言われたとおりに動きを止め、上体を起こした。
 舌と男根の間に、透明な糸が伸び――ぷつり、と切れる。
 今の格好は、セイバーがキャスターの顔を跨いでしゃがんでいる状態になっ
ていた。自然と腰の位置は下がり、キャスターの眼前にはセイバーの秘部がよ
り近づく。
 そしてキャスターは、敢えて触れなかったセイバーの肛門に口をつけ、ちゅ
う、と吸い上げた。

「ひぁっ!? 吸わ、れっ……あっ、は、……っ!」
「んっ――っ、……ちゅ、る……はぁ……どう? 外に吸い出される感触……
いいでしょう?」
「は、っ――すご、い……っ」

 中に溜まっていた白濁液が吸い出される感覚は、セイバーには未知のものだ
った。
 魔力が吸い出された時とはまた違う快感に、セイバーの膝が震えている。
 一方、吸い出した液体を嚥下するキャスターも、自分が吐き出したものを他
人から吸い取るという行為に、快感を感じていた。
 若干白濁液が残っていたふちの部分を舐め上げると、セイバーは背を震わせ
ながら喘いだ。

「ひ、ぁ……そ、そこはダメです……感じ、すぎ―――はぁっ」
「ちゅ、ん――ふふ……敏感になってるみたい、ね……ほら、綺麗になったわ
よ。
 ……もういいわ。立ちなさい」

 何度も擦られ、赤くなっているセイバーの肛門から口を離して、キャスター
が告げた。
 まだがくがくと震える膝を何とか抑えて、セイバーが立ち上がる。
 キャスターも身を起こし、セイバーの後ろに回りこんで、耳元に囁く。

「さて、それでは最後の余興……特別ゲストに出てきてもらおうかしら」
「――――っ!」

 そう、先ほど責められたときに、何度も何度も言われてきた言葉。

"――ほら、ちゃんと観客もいるんだから、しっかり見てもらいなさいな――"
"――私たちが乱れてる、ところ、ちゃんと、見てもらわないと、ねっ――"

 恐らく、この教会を訪れた者なのだろう。
 キャスターは『羊を捕まえた』と言っていた。弱く、鈍く、生贄として使わ
れる事も珍しくない動物。
 比喩ではあるのだろうが、それは今のセイバーのように『踏みにじられる側』
の者である事を物語っていた。

 後ろに立っているキャスターの手が、ゆっくりとセイバーの胸と下腹部に降
りていく。
 直立するように命じられたセイバーには、抵抗する術は無い。唇を噛み締め、
じっとされる事に耐えるしか無かった。
 左手で胸の弾力を、右手で秘裂の上にある陰毛の感触を楽しみながら、キャ
スターは優しげな声でセイバーに囁き続ける。

「……愚かなことね。勝ち目の無い戦いに自ら赴く――そんなものは勇敢とは
言わない。ただの蛮勇よ。
 挙句、こうして籠の中に囚われているんですもの」
「……えっ―――?」

 その言い方はおかしい。
 『勝ち目の無い戦い』? その言葉は、ただ迷い込んだ人間に使う言葉では
無い。
 そう、それはまるで。


 自らの危険を顧みず、誰かを取り戻しに来た者に対する言葉のような―――
―。


 まさか、そんなはずは無い。
 いくら何でも、『彼』は――こんな所に来るわけが無い。
 だって私は―――『彼』に、刃を向けて……。
 あの傷では、暫くは動けないはずだ。なのに、何故私は。

 それでも『彼』ならば来てしまうと、そう半ば確信しているのだろうか――
――。

 動揺が伝わったのか、キャスターの声に愉しげな響きが混じり始める。

「……あら、どうしたのセイバー? 何だか顔色が悪いけれど」
「な、何でもありま――っ、んっ……」
「あらあら、折角綺麗にしたのに。また濡れてるのはどうしてからしらね……?」
「――っ、それは、貴女が……は、ん……っ」

 胸に伸ばされた左手は、既にセイバーの桜色の先端を弄り、右手は秘裂の上
を滑っている。
 そんなセイバーの様子を愉しみつつ、キャスターは最後の言葉を囁いた。

「じゃあ、そろそろ出てきてもらいましょうか。
 そして直接、貴女の痴態を見てもらうことにしましょう。
 ――――『******(開錠、展開)』」

 その言葉が紡がれた瞬間、微動だにしなかった黒き直方体に亀裂が生じた。
 そして、まるでプレゼントの箱がぱたぱたと開くように、側面部分が剥がれ
落ちて――。


 『彼』と『彼女』は、再び対面した。




「あ――――」

 意識もせず、声が漏れた。
 それはどちらが発した声だったのだろう?
 身動きすら出来ず、目を離すことすらせずに『彼女』を見つめる『彼』?
 その身を弄ばれ、目の前にいる『彼』を愕然とした表情で見つめる『彼女』?
 お互いが声をあげた事すら気付かず、お互いを見つめる。そして、その声に
込められた意味合いは微妙に違っていた。

 一人は、秘密が露呈した時の居心地の悪い罪悪感が。
 そしてもう一人は、目の前の光景が信じられないという呆然とした響きが、
その声に込められている。

「どう……して、そん、な」

 続く呟きは少女のもの。今の声に秘められているのは、目の前の光景を否定
する響き。そして、微かな怯え。
 その僅かな、しかし確かな怯えが、少女の中でどんどんと大きくなっていく。

(何故『彼』が、どうして)
(あの傷、傷で動けるわけが)
(見られていた? 全部、一部始終?)
(嘘だ、こんな、こんな事が――――)

「……嫌」

 拒絶を意味する、小さな呟き。
 本人すら気付かずに、最後の支えとなっていた『何か』が、脳裏の奥で音を
立てながら崩れていく。
 それを認めるわけにはいかず、しかしそれを止めることも出来ずに、彼女は
慟哭した。

「――――嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 魂を振り絞るような、悲痛な叫び。
 その声を聞いて、キャスターは精神面での責めが完了したことを確信した。

 誇り高き獣は、ただの哀れな人形に成り下がったのだ。

 それを思うと、自然に笑みが浮かんでくる。
 そして、その様子を見ていた『彼』――衛宮士郎が、怒りを込めてキャスター
を見上げた。

「……キャスターァァァァァ!!」
「ふふ、お礼を言わなければね、坊や。
 貴方のおかげで、セイバーは完全に陥落した。もし貴方がいなければ、ここ
まで簡単にはいかなかったでしょうからね……」

 目に酷薄な色を浮かべつつ、キャスターは笑う。
 そして何かに気付いたように、更に笑みを深めた。
 目線の先は――張り裂けんばかりに膨張している、士郎の股間部。

「……そう、ずっと見ていたの? 私とセイバーが交わっているところを……。
 口では怒りを表していても、身体はそうじゃないみたいね。
 どうだったかしら? 眺めていた感想は」
「ぐっ――――……お前……っ!」

 ぎりぎりと歯を食いしばって、その辱めに耐える。
 例え目をつぶっていても、聞こえてくる声までは防げない。そうなれば、修
行僧でも無い士郎に劣情を抑える術は無い。
 それを承知の上で、キャスターは聞いているのだ。見ていなかった、等とい
う言い訳が意味を成さない事を知っていて、なお。
 そんな士郎の様子を愉しげに眺めていたキャスターが、腕の中でぐったりと
しているセイバーの存在を思い出したかのように見た。
 そして再び士郎の方を向き、妖艶な笑みを浮かべつつ、口を開く。

「そうね……もう用済みだからさっさと『加工』してしまおうと思ったけれど
……貴方にもご褒美をあげなくては。
 ――――見るだけでは、つまらないでしょう?」

 あたかもそれは名案だ、とでも言うかのように。
 目線を盛り上がった股間に向けながら、魔女は微笑んだ。

「なっ――――」

 キャスターの意図を理解して、士郎は愕然とした。
 その間に、キャスターは腕の中で動かないセイバーに命じる。

「ほら、セイバー。貴方の元マスターが、貴女のせいで苦しんでいるのがわか
るかしら?
 快感に身悶える貴女を見て、あんなに股間を膨らませて……可哀想だと思う
でしょう?
 だから、貴女が楽にさせてあげなさい。口を使って、ね……」

 主人の命令を受け、元主人の元へと向かっていく奴隷。
 それが今の、セイバーの役割だった。

「くっ…………」

 ゆっくりとこちらに向かって歩いてくるセイバーから逃げるように、必死で
身体を動かす。
 だが、魔術の縛りは肉体的な力ではどうしようもできない。腰の後ろに回っ
ている腕は離れず、座禅を組むように曲がった足はぴくりとも動かない。
 結局数センチしか移動できず、その間にセイバーは士郎の前へと立っていた。

「あ…………」

 士郎の口から、呆然とそんな声が漏れた。
 白く、滑らかなセイバーの肢体が、惜しげもなく自分の前に晒されている。
 華奢な手足と、まだ成長しきっていないその身体に、確かに存在する女の部
分。
 胸の先端に色づく桜色の乳首や、髪の毛と同じ黄金の下毛に、嫌でも目を奪
われる。
 そして、その奥に隠された薄桃色の割れ目と、そこから湧き出ている透明な
液体を見た瞬間、更に士郎の股間が膨張した。
 それに反応したかのように、セイバーが膝を折り、その手をファスナーへと
伸ばす。

「っ! ダメだ、やめてくれセイバー……!」

 しかし、その制止の声はセイバーの行動に何の影響も及ぼさない。
 ファスナーが下まで下ろされると、既に勃起している肉棒が外気に触れた。

「……あ……」

 僅かに息を呑む気配がする。
 それは士郎とセイバー二人のもの。
 色んな感情が入り混じったその声が消えるまでの一瞬、時が止まる。
 そしてその一瞬の後に、セイバーは士郎を見上げて呟いた。

「―――ごめん、なさい、シロウ―――」

 きらり、とセイバーの頬を伝う光の粒。
 それは士郎が初めて見る――彼女の、涙だった。

 セイバーはすぐに顔を伏せ、士郎の分身と対峙する。
 そしてそっと――壊れものに触れるかのように、口付けた。

「――――っ!?」

 むき出しの亀頭に、電流が走った。
 更にその電流は、脊髄を通って脳に達する。今まで味わったことの無い、快
楽。
 その行為だけで達しそうになった自分を、歯を食いしばって押さえ込む。
 だが、セイバーの動きは更に加速していく。
 右手で竿の部分を軽く握りつつ、更に自分の口内に士郎の肉棒を導いていく。

「はっ――――うあっ、くっ―――!」
「ん……む、ちゅ…ちゅる、んっ……」

 唇が亀頭をすっぽりと飲み込んだ瞬間、先端から僅かに漏れていた液体が吸
いだされた。
 頬が収縮し、内側が全体に張り付くその感覚が、更に刺激となって脳髄に突
き刺さる。

「うあっ……! セイ、バー……!」
「ふっ……ちゅ、んんっ……くちゅ、んむ……」

 吸い出した透明な液を飲み干し、それが終わると舌先でカリの裏を刺激し始
める。
 唇は亀頭を前後し、それに合わせて右手が竿の部分を前後していた。
 そのどうしようもないくらいの快楽の暴力に打ちのめされながら、士郎は必
死に抵抗する。
 彼女を――セイバーを、これ以上穢さないために。
 だが無情にも、セイバーの動きは留まることを知らない。
 舌先がカリを刺激し、口元が締められ更に前後する。
 それに合わせて動く指も強く握られ、より一層全体を圧迫する。
 まるで搾り取られるような感覚が、士郎を襲う。

「あ、ん……ちゅ、は……くちゅ、ん……っ……」

 セイバーも、上顎を刺激されて感じているのか。
 空いていた手が、無意識に自分の秘所へと伸びていった。
 指がゆっくりと、秘裂の上を往復する。

「あらあら……。奉仕しているのに、感じちゃっているのかしら……。
 ホント、淫乱になったわね、セイバー」

 後ろで二人の様子を愉しげに見ていたキャスターが、近づいてくる。
 そして、四つん這いになっているセイバーの後ろで膝を折り、その手をセイ
バーの股間へと潜り込ませた。

「んむっ―――!? ふぐ、ん、んっ――――!」

 一層強い刺激を感じ、驚愕の声を漏らすセイバー。
 その反応を楽しみながら、キャスターは更に言葉を紡いでいく。

「こんなにクリトリスを勃起させて……いけない子ね、セイバー。
 いやらしいお汁もこんなに垂らして……もうぐちょぐちょ」

 あふれ出ている愛液を指ですくって、それをセイバーの眼前へと持ってくる。
 目の前で開かれた指と指の間で、透明な液体が糸を引いていた。

「ほら……こんなにぬるぬるしてるお汁を、貴女は垂らしているのよ。
 それも、元マスターを奉仕しながら、ね……」
「んむっ……や、やめて下さい……」

 口を男根から離して、セイバーが懇願する。
 だが、手は休む事無く、士郎に快感を与え続けている。

「あら、私は何もしていないわ。貴女が奉仕して、自分で濡らしているだけ。
 ……ほら、自分が垂らしているものなんだから、ちゃんと綺麗にしなさい」

 そういって、セイバーの口内に自分の指をつき込む。

「ん……ふむっ、じゅ、じゅる……っ、ぷは、は、あ……」

 強引に指で口の中を犯してくる指をしゃぶり、付着した愛液を飲み干す。
 そんなセイバーの様子を間近で見た士郎は、嗜虐心を煽られるのを感じてい
た。

(あのセイバーが、無理矢理に――――)

 改めて普段接していた彼女とのギャップを見せ付けられ、士郎は狼狽する。
 だが、確かにそれを愉しんでいる自分を見つけ、自己嫌悪に襲われる。

(くそっ、何考えてんだ俺は――――!)

 既に快楽が脳を支配しているのを憎々しく思いながら、士郎は頭を振った。
 それに気付いたキャスターが、セイバーの口から指を引き抜く。

「ほら、坊やが待ってるわよ、セイバー? ちゃんとイカせてあげなさい。
 ――何も考えられなくなるまで、しっかりと、ね」

 冷笑を士郎に向けながら、キャスターが命じる。
 それに従い、止まっていたセイバーの奉仕が再開された。

「……んむ、ちゅくちゅ、っ……んむ、っ、あ、ふ……んん、ちゅ、っ……」
「く――あ―――セイ、バー……っ!」

 先ほどよりも強く、丁寧な奉仕。
 舌は丹念に亀頭を舐め、唇が竿の一部までくわえ込み、それに合わせて右手
が往復する。
 更に吸い上げられ、先端から零れた液体をこくこくと飲み干していく。

「ふふ……いい子ね、セイバー。
 貴女は、私が可愛がってあげる……。
 そうだ、競争しましょうか。貴女が坊やをイカせるのが先か、私が貴女をイ
カせるのが先か。
 もし貴女が負けたら、もう一度同じように奉仕してもらいましょうか」

 そう言って、セイバーの後ろに回りこんだキャスターが、指先をセイバーの
肛門へと差し込んでいった。
 ゆっくりと、しかし確実に、指はセイバーの中へと埋没していく。

「ふむっ―――ー! んっ、ん―――!」

 驚いたように、セイバーが声をあげる。
 そしてそれに急かされるように、士郎の肉棒に吸い付き、舐めあげ、しごく。

「はっ―――ぐっ……!」

 より強くなった快楽の波に逆らうために、歯を更に食いしばる。
 だが、それもそろそろ限界に近い。
 何か、他の刺激があれば果ててしまう――そんな状態に追い込まれていく。

「あら、貴女の元マスターはどうやら貴女に続けて奉仕をして欲しいみたいね?
 それなら私も期待に添えてあげないと――」

 そう言ったキャスターの指の動きが激しくなる。
 前後だけでなく、ひっかけるように腸壁を擦り、更にピストンのスピードを
上げていく。

「――――っ! む、んむぅ、ふぐ、ん―――っ!」

 肉棒を咥えたまま、セイバーが悶える。
 後ろから加わってくる快感と、奉仕することで生まれる快感に逆らいながら、
セイバーは左手を士郎の方へと伸ばす。
 そしてファスナーの内部に手を入れて―――

「なっ――――!?」

 無防備な、袋をきっちりと包んでいた。
 そしてそのまま、指を躍らせる。

「っ――――――! はっ――――!」

 突如として沸き起こった新たな快感に、なす術もなく打ちのめされる。
 我慢してきた射精感がこみ上げてきて、それを必死で押さえつける。
 確かにこのまま出してしまえば、この狂った時間は終わる。
 逆に耐えてしまえば、更に同じことが繰り返されるだけだ。そうわかってい
ても。

(自分から、セイバーを汚すのは、嫌だ―――!)

 自己満足な想いだとわかっていても、それを破ることは出来なかった。

 だが、言葉にしなければわからない事もある。
 セイバーは何故士郎がそんなに耐えているのかを理解できず、混乱した頭で
必死に奉仕していた。
 薄々士郎の考えに気付いているキャスターは、そんな二人の様子を見、愉し
んでいる。

 そして、そろそろセイバーにも限界が近づいていた。
 ついに行き場を無くした疑問と危機感が、セイバーを突き動かしていた。

「はっ―――シロウ、お願いです、どうか―――」

 それは奉仕から逃れるための言葉だったのか。それとも。


「どうか―――貴方を、私にください――――」


 セイバーの、心の奥底から湧き出た叫びだったのか。

「――――――っ!?」

 それを聞いた士郎の堤防が、あっけなく崩壊した。
 急激に高まっていく射精感を、もう止めることが出来ない。

「ぐっ……セイ、バー―――っ!」

 再び咥えられ、吸い上げられる。
 口内が狭まり、頬の内側と舌で全体を刺激され、喉の奥で先端を小突かれる。
 そしてついに、耐えに耐えた射精が始まった。

「っ、っ………!」

 どく、どくっと音を立てて、セイバーの口内に精液が注ぎ込まれていく。
 それをセイバーは懸命に嚥下していく。
 だがそれでも飲み干せなかった精液が、セイバーの口の端から漏れていた。

「んっ……坊やはイったみたいね。さあ、貴女もイキなさい……!」

 セイバーの後ろでセイバーを責めていたキャスターが動いた。
 人差し指に中指を添えて、一気に奥まで突き刺す。
 更に、左手は勃起したクリトリスを捻りあげていた。

「、――――――――っ!?」

 目を見開き、しかし口は肉棒に塞がれたまま、セイバーは声も無く吼えた。
 同時に、秘裂の奥から愛液が勢いよく吹き出てくる。

「あら……よほど良かったみたいね。潮まで吹くなんて。
 やっぱり興奮したのかしらね……坊やに奉仕をするのが」

 そういって、士郎を見つめるキャスター。
 しかし、士郎とセイバーにはそんな事は聞こえていなかった。
 荒い息をつきながら、ただただ自らの身に訪れた絶頂の余韻を、味わってい
た。



(To Be Continued....)