――――どれだけの間、意識を失っていたのか。

 セイバーが再び目を覚ましたとき、聖堂は再び静けさを取り戻していた。
 そして主たる魔女の姿は……何処にも無い。
 だが先ほどまでの事が夢でもない証として、セイバーは変わらず聖堂に存在
し、またそのあわれも無い姿を外気に晒していた。

 疲労のためか、まだ動きがにぶい自分の身体を何とか動かし、上体を起こす。
 そしてまだ靄のかかった頭で、先ほどの事をセイバーは振り返った。

(私は……なんという、コトを)

 思い出されるのは、かつて味わったことの無い快感、淫猥なキャスターの姿、
そして、


 ――――確かに、それを受け入れ悦んでいた自分。


「―――――っ」

 思い出すだけで、体内の血液が沸騰するような錯覚に襲われる。
 ――かつて王として君臨し、騎士たる誇りを持って生きてきた自分。
 ――魔女に踊らされたとはいえ、浅ましくも快楽を求めた自分。
 どちらが本当の自分なのか。……いや、どちらも本当の自分なのだろう。

 問題なのは、今まさに存在している「自分」が、どちらなのかということで
あり――。


 「あら、もう目を覚ましたのね、セイバー」


 頭上からの声で、思考の世界へと飛んでいた自分が戻ってくる。
 そして見上げた階段の上には、ローブを身に纏った魔女の姿。
 しかしフードは被っておらず、ローブも上から羽織っただけという状態であ
り、白い肢体と整った白い顔立ちがコントラストによって強調されたその姿は、
やはり淫猥であった。

「この教会に迷い込んだ羊を捕まえに行ってきたのだけれど、まさかもう目を
覚ましているとは思わなかったわ」

 そういったキャスターの後方には、高さ一メートル、幅六十センチほどの黒
い直方体が浮いていた。
 キャスターが階段を下りてくるにつれて、その直方体も自動的に後からつい
てくる。
 階段を降り終えたキャスターは、セイバーのところまで歩き、自分の後ろに
ある直方体を見ながら説明を始めた。

「これは一種の魔術結界。ただこれは自身を守るためではなく、対象を捕縛す
るモノ。
 空間を断絶……とまでは流石に出来ないけれど。例え高名な魔術師であって
も、この結界を解呪するのはほぼ不可能な代物よ」

 確かに、その直方体は強力な魔力によって編まれたものだった。
 もしこの中に閉じ込められてしまえば、よほどの者では無い限り脱出は不可
能であろう。

「本当はすぐに殺してしまっても良かったのだけれど。……素敵な余興を思い
ついたから、こうしてわざわざ閉じ込めているわ」

 そこで一旦言葉を区切ったキャスターの顔が、また愉しげな微笑に変わる。


「私たちだけで愉しむのもいいけれど――やはり観客がいた方が、より愉しめ
るというものでしょう?」


 観客。
 その言葉の意味をセイバーが理解するまでに、さらにキャスターは説明を加
えていく。

「この結界は、外からの可視光線及び空気の振動を通し、内部からのそれを遮
断する。
 簡単に言ってしまえば、私たちがすることは全て向こうに筒抜けだけど、向
こうは何をしようともこちらには干渉出来ない。
 ……特等席としては、とてもよく出来たモノだと思うけれど?」

 それを呆然と聞いているセイバーであったが、自分が今どんな格好なのかに
気付き、両手で胸と下腹部を隠した。
 顔は赤一色に染まり、エメラルド色の目は射抜くようにキャスターに向けら
れている。

「キャスター!貴女は……貴女は私を何処まで辱めれば気が済むのですか!」

 セイバーの中に僅かに残った、最後のプライド。
 それを振り絞って、セイバーはキャスターへと対峙する。

「私は貴女との勝負に負け、望まぬ形ながらも貴女のサーヴァントとなった。
 そして……先ほどの、行為によって……私の魔力をもほぼ奪い去ったはずだ。
 もはや私はもちろん、他のサーヴァントですら貴女の敵では無いはず。
 ならば、さっさと聖杯を手にするための行動を起こせばいいではないですか!」

 だがそんなセイバーの抵抗を、まるで愉快なことを聞いたとでもいうように
キャスターは笑い出した。

「くっ……あはははははは! 貴女、まるで理解していないようね」

 愉しげな微笑を浮かべ、羽織っていたローブを再び脱ぎ捨てる。
 そして、セイバーの肢体を眺めながら再び口を開いた。

「確かに、貴女さえいれば聖杯戦争を勝ち抜くのは容易い事。
 そして貴女は既に魔力も奪われ、私に抵抗する術すら無い。
 純粋に聖杯戦争のためだけならば、もう私が貴女を気にすることはないけれ
ど……」

 更にキャスターの微笑が深まる。
 それは怯える者をいたぶる楽しみ。抵抗できないものを、更に蹂躙し尽くす
喜び。


「貴女は私のサーヴァントではなく、ペットして扱う事にしたの。
 それも性に溺れ、浅ましくも快楽のために懇願する性奴隷としてね。
 聖杯戦争が終わろうとも、貴女は英霊の座には戻れない。
 私が飽きるまでずっと、私の元に置いてあげるわ………」


 キャスターの言葉が、セイバーの脳裏にじわじわと染み込んでいく。

 そんな言葉など知らない。
 理解などしたくない。
 それを受け入れてしまえば、私は――――!

 その衝動に突き動かされたように、セイバーはキャスターへと踊りかかり、


「止まりなさい、セイバー」


 ――その言葉と共に、その動きを止めた。

「なっ――――――!?」

 自分の意思を無視して、自分の身体が動きを止めたことに驚きの声をあげる
セイバー。
 その様子すら愉しいのか、キャスターは笑みを浮かべたままセイバーへと話
しかける。

「無駄よ。先ほどの行為を経て、既に貴女の身体は令呪に支配された。
 精神は英霊のものだから、まだ自由意志はあるようだけれど……。
 もう貴女は自分の意思で死ぬことも、抵抗することも出来ない。
 そしてマスターの命には絶対に逆らうことが出来ない」

 それはあたかも、無慈悲に下される宣告のようで。

「もちろん、令呪といえど普通のサーヴァントには「常に絶対服従」などとい
う無茶な命令が通るはずは無いわ。
 だけれど、今貴女に残されているのは、存在するためだけの僅かな魔力だけ。
 そして私にはより強くなった魔力がある。
 最低ランクの一から、強制行使として一を奪う。
 ――――さあ、答えはいくつかしらね?」

 振り下ろされた言葉の槌は、哀れな弱者をコナゴナにしてしまった。

「あ…ああ、あ…………」

 身体を震わせながら、床へと崩れ落ちるセイバーを。
 哄笑する魔女と、物言わぬ黒い立方体だけが、見つめていた。




 絶望を与えても、屈せぬ者がいたとしよう。
 身体の自由を奪い、選択の自由を奪ってなお、屈せぬ精神を持った者だ。


 では、その気高き精神を堕落させるにはどうすればいい?


 それはとても簡単な事だ。


 他人がいくら強制しても侵せない領域があるならば。
 自らが進んで、それを行うようにしてしまえばいい――――。


 自分の前で力なくうな垂れた者を目にして、魔女は笑う。
 気高き魂が堕落する瞬間を想像して。
 そしてその後の、彼女の浅ましい性奴隷の姿を夢想して。

――さあ、もう一押しだ。
 もうすぐ彼女は禁断の林檎を口にする。

 「……さて。それでは、マスターとして貴女に命じるわ、セイバー」

 その言葉に何を感じたのか。
 うな垂れたセイバーが、ゆっくりと顔を上げた瞬間、


「私の目の前で自分を慰めなさい。私がいいと言うまで、何度も何度も達する
ように自らを導いて頂戴」


 魔女の無情な命令が、下された。

「――――っ、そんなことが、できると、思――ふっ…あ、」

 反論しようとした言葉は、自らの指が起こした行動によって中断された。
 自分の意思とは無関係に、右手は自分の左胸を、左手は下腹部へと移動して
いた。
 自らの指が、まるで他人の指のように這い回り、掴み、擦り、半ば強制的に
性感を高めていく。

「はっ――――から、身体が、勝手に……くぅっ!」

 膝立ちになったまま、自らを慰める聖女。
 そしてそれを愉しげに眺める魔女。

 相反する二つのコントラストは、嫌が応にもお互いの興奮を高めていく。

「ふふ、どうしたのセイバー?言葉の割にはとても気持ち良さそうだけれど」

 自らも秘所へと手を伸ばしつつ、キャスターが問いかける。そして横に浮い
ている黒い直方体を一瞥し、言い放つ。

「ほら、ちゃんと観客もいるんだから、しっかり見てもらいなさいな」

 それを失念していたセイバーであったが、自由にならない身ではどうしよう
もない。
 できる事といえば、結界の中にいる人物に懇願することのみであった。

「あ、だ、だめです!見ないで、はっ、見ないでください……ひあっ」

 そんなセイバーを追い立てるかのように、キャスターは要求をエスカレート
させていく。

「折角お尻の穴も開発してあげたんだもの。そちらも使ってはどう?」

 その言葉に反応したのか、セイバーの人差し指が窄まりへと入っていく。

「うあっ……ゆび、指がはい、って……くはっ」

 やはり異物感はまだあるのか、セイバーが苦しげに呻いた。
 だがそんなことなど微塵も気にしないというように、進入した指は深く入り
込み、僅かに震えたり指を曲げたりと、多様な動きでセイバーを翻弄する。

「うあっ! ひっ、ひあぅっ! あうぅ――――っ!」

 更に、左胸を弄んでいた右手がクリトリスをむき出しにし、摘み上げた。

「――――――! ふあ、や、――――っ!」

 先ほど何度も達していたせいか、セイバーの身体はとても敏感になっていた。
 そして今、なす術もなく最初の絶頂を迎えた。
 刺激に耐えられなかったのか、目からは涙が零れている。

「あら、もう……達したのかしら? くっ、流石に自分の指だけあって、快楽
のポイントを、覚えているんでしょう、ね……はぁっ」

 そういうキャスターも、既に息が荒くなっている。
 自身の快楽と、セイバーの痴態を見ることによる興奮が、キャスターを追い
立てていく。

「ふっ、そろそろ、ね……ん、あ、ああ……!」

 右手は自分の秘所を弄ったまま、左手をクリトリスにあて、呪文を紡ぐ。
 そして絶頂と同時に、その魔術は発動した。
 物質を変質させ、自分の意のままにする魔術を、キャスターは自分自身に向
けて使っていた。

 クリトリスの上、疎らに茂みが覆うその場所から、肉の棒が生えてくる。
 キャスターが絶頂の余韻に浸っている間に、それはまさに男根の形状として
そそり立っていた。

「……ふう、下手に魔術抗壁があるのも考え物ね。自身に魔術を行使するとき
は、ガードの甘くなる一瞬をつかねばならないなんて。
 まあ、魔術は成功したからよしとしようかしら」

 そして未だに自慰行為を続けているセイバーへと目を向ける。
 すると丁度、セイバーは二度目の絶頂を迎えたところだった。
 身体は反り返り、秘所からは洪水のように愛液が噴出し、痙攣する。
 だが、それを意に介さず指の動きはやむことは無い。
 既にセイバーは失神寸前の状態に陥っており、涙を流す目は半眼、唇からは
涎が垂れていた。

「あらあら、ここまで激しく動くとはね……。今度からはきっちり加減するよ
うに命じないと。……もういいわよセイバー、動きを止めなさい」

 その言葉を聞いた瞬間、激しく動いていた指が動きを止め、セイバーは前の
めりに崩れ落ちた。
 半眼で荒い息を繰り返すセイバーに、キャスターは無情にも命じる。

「セイバー、私のこれを咥えなさい。しっかりと、私が達するまでね」

 もはやセイバーの意識が無い状態でも、身体は動くのか――立ったままのキ
ャスターの目の前に跪いて、セイバーの口はキャスターの男根を咥え込んでい
た。
 そしてそのまま、自身の顔を前後させ、吸い付く。
 舌は亀頭部分を舐め、右手は竿の部分をしごいていた。
 それは余りにも熟練した、男を悦ばせる為の行為――。

「はぁ……随分、慣れているようね、セイバー。
 性交の経験は無いのに、どうしてかしら…ああっ、いい、気持ちいいわ……。
 そう、もっと吸って……んっ」

 キャスターは恍惚とした顔で、セイバーの頭を掴んで前後させる。
 セイバーはまだ意識が朦朧としているのか、一心不乱に目の前のモノをしゃ
ぶっていた。
 舌を竿に絡ませ、喉の奥で先端を刺激する。
 唾液は潤滑油となり、更にスムーズな動きで全体を覆っていく。

「あっ、カリに歯が当たって……でも、気持ちいっ、い、んっ、はぁ………。
 すご、いっ……吸い込まれ、そ、う」

 軽く当たる前歯は、巧妙に刺激を与え、更に快感を高めていく。
 口内の空気は吸い出され、真空状態になった口内にある男根に、セイバーの
頬肉が張り付く。
 もうそれは、奉仕という行為ではなく一種の擬似性交にも似ていて。
 凄まじい速さで、相手を快楽の高みへと押し上げていく。

「ああ、いいわセイバー! んっ、もうすぐ出そう、よ……ああっ!」

 この言葉を聞いた瞬間、更にセイバーの動きが激しくなった。
 前後運動が速くなり、更に吸い付く力が増す。

「ん、出る、はぁ、しっかり、口で受け止めなさい……――――っ!」

 一瞬、男根が震えた直後――セイバーの口内に、白濁とした液体が注ぎ込ま
れた。
 その勢いは強く、口で受けれなかった分が唇の端から零れ、胸に落ちる。
 そしてそのショックからか、セイバーの意識が覚醒する。

「ふむっ、ん、ん――――!?」

 驚いて吐き出そうとしても、喉は勝手に液体を嚥下していく。
 ごく、ごくり、と大量の白濁液を飲み干し、口内を犯していた男根が引き抜
かれてから、セイバーはようやく解放された。

「けほっ! けふっ、はぁ、はぁ、ああ……」

 僅かに口内に残った白濁液を吐き出し、愕然とそれを眺めるセイバー。

(ついに……口内をも犯されてしまった)

 僅かに残っていた何かが、徐々にだが削られていくのがわかる。
 このままでは全てを蹂躙され、そして、

(私は堕ちてしまう……封じていた女としての性に目覚め、そのままキャスター
の道具として暮らすことを受け入れてしまう)

 そんな事は絶対に嫌だ。
 だが、このまま快楽を与え続けられれば、いつかは必ず堕ちる時がくる。
 何故ここまで私は受け入れまいと必死になっているのか。
 全てを受け入れてしまえば、楽になれるというのに、何故私は―――?

 そんな葛藤を内部に抱えつつも、身体の火照りは止められない。
 先ほど前の自慰行為、そしてキャスターに口内を犯され、性感帯を刺激され
た事で、セイバーの身体はより強い快楽を欲していた。
 熱病のように頭の中に熱が進入し、思考能力がどんどんと奪われていく。
 自然とセイバーの指は、自らの秘部へと向けられ、もどかしさを止めようと
動いていた。

 荒い息を繰り返していたキャスターが、セイバーの様子を見て愉しげに笑う。

「ふふ……もう貴女も我慢できないのね、セイバー。
 いいわ、私ももう我慢の限界……早く貴女を犯したい。
 さあセイバー。お尻をこっちに向けて、犬のように四つん這いになりなさい。
 後ろからたっぷりと、突き上げてあげる……!」

 大量に射精したにも関わらず、今もなお天を向いている男根に指を這わせな
がら、キャスターが命ずる。
 そして内心の葛藤はどうであれ、もはやキャスターに逆らうことが出来ない
セイバーが、ゆっくりと姿勢を変えていく。
 口からは白濁とした液を垂らし、胸にもそれが飛び散った姿の少女が、犬の
ような屈辱的ポーズを取らされるその姿は、例えようの無いほどに淫靡だった。

「くっ……お、お願いです、キャスター!
 それを…それを入れるのだけは駄目です!
 そんな、そんな太いものを入れられたら、私は――――」

 もはや彼女に許されているのは、口を開いて相手に懇願することのみ。
 だが、そんな奇跡を願うことすら虚しいとばかりに、無慈悲な声が彼女の耳
に届いた。

「今更そんな事を言われても無理よ、セイバー。
 貴女がどうであれ、私は止めることが出来ないし、止める気も無いわ」

 キャスターの手によって広げられたセイバーの蕾へと、いきり立った男根が
当てられる。

「ひっ―――」

 セイバーの口から、短い悲鳴が漏れた。
 そして、最後の宣告が告げられる。


「―――さあ、セイバー。今から後ろの処女を奪ってあげる。
 そしてたっぷりと、貴女の中に注ぎ込んであげるわ……」


 ズブ、と音と共に、セイバーにキャスターの男根が突き刺さった。
 拡張を行っていたためか、抵抗らしい抵抗も無く、根元までスムーズに入っ
ていく。
 だが、それによって与えられた快楽は、セイバーとキャスターの理性を溶か
すのに十分だった。

「んんっ! 凄い、全部、飲み込む、なんて……っ!
 それに凄くきつい、わ……ちぎられそう、よ……」
「くはっ! ダメ、お、おかしく、なる、っ―――!」

 男根がセイバーの中を往復するたびに、極上の二重奏が響き渡る。
 互いに快楽を与え合う行為は、次第に熱を帯びていく。

「ああ、貴女の中、とっても、熱いっ……!
 はぁ、とろけ、ちゃい、そう…んあっ」
「あっ! ん、はぁっ! ふ、ふと、い、い、あ、ああっ!」

 もはや、気高き騎士の姿は何処にも無い。
 そして、陰惨な魔女の姿も。
 ただ此処に存在しているのは、本能に支配された二匹の雌のみ――――。

「んん、セイバー……はぁ、もっと、可愛がって、あげる……!」

 そういって、上体を前のめりに倒し、自分の胸をセイバーの背中に押し付け
ながら、両手をセイバーの両胸へと伸ばす。
 手の平に収まるサイズの胸を弄びながら、人差し指と中指で薄桃色の先端を
摘み、刺激し、捻りあげた。
 更に僅かな魔力を送り込み、それが新たな刺激となってセイバーを飲み込ん
でいく。

「ひうっ! あ、胸が、しびれ、て……っ!
 んっ、かんじ、る…はぁっ!」
「ん、私も、胸が、こす、れてっ……!」

 その姿勢のまま、キャスターはセイバーの耳へと囁く。

「ほら、私たちが乱れてる、ところ、ちゃんと、見てもらわないと、ねっ…」

 目線の先には、黒き直方体。
 そう、あの中には、この痴態を見ている誰かがいる――――。
 それを実感した瞬間、セイバーの身体全体が、更に熱く火照っていく。

「あ、いや、いやぁ……! みられ、てる、なんて、そん、な……っ!」

 頭を振ろうとも、現実を振り払えるわけではない。
 そしてそんな異常な状態にあってなお、興奮はエスカレートしていく。

「セイ、バー、貴女と、キス、したい、わ……。
 顔を、こっちに、向けなさい」

 激しく動いている状態でのキスは難しいのか、セイバーの右手がまずキャス
ターの首へと伸ばされた。
 そして上体を捻った格好で、覆いかぶさっているキャスターとの口付けを交
わす。
 既に息は荒く、呼吸も絶え絶えの状態でのキスは、お互いの空気を貪りあう
様に激しく、更に舌を絡ませあうものになっていた。
 もはやお互いが何をしているのかも、わかっていないのかもしれない。

「んっ、っは、ああっ、き、来たわ……そろそろ出そう、よっ」

 そういったキャスターは、両手の指に唾液を絡ませ、右手をセイバーの股間
に、左手を自分の股間に伸ばした。
 そして既に勃起しているクリトリスを摘み、同時に捻りあげる。

「きあっ! ひっ、ああっ! だめぇ、強すぎ、るっ――――!」

 あまりの刺激に、セイバーの背中が反り返る。
 そしてキャスターにも、もう限界が訪れようとしていた。
 トドメとばかりに、微弱な電流に変換された魔力を、お互いの肉芽に流し込
む。


「ああ、セイバー、セイバー! 貴女も、一緒、にっ――――!」
「あっ、くる、何かくるっ! まっしろに、なる――――っ!」


 根元まで入った男根の先端から白濁液が噴出した瞬間、セイバーの肛門はそ
れを食いちぎらんばかりに収縮し、そして秘裂からは愛液が噴出していた。
 両者とも数回痙攣し、そのままぐったりと動かなくなった。

「……はぁっ、はぁ、ん、凄く気持ちよかったわ、セイバー……」
「………はっ、はっ、あ………?」

 快感の余韻が残っている状態で、二人は再び口付けを交わした。
 今までのような激しいものではなく、お互いを確かめるようなキスを。
 暫くして引き抜かれた男根には、セイバーから溢れた白濁液と、腸液が絡み
ついていた。
 また、引き抜かれた後の肛門はいまだ開いており、桃色の腸壁と中に注がれ
た白濁液が見えるその光景は、恐ろしいほどに淫靡である。

 穴から漏れ出した白濁液が床に落ちる様を、結界の中に閉じ込められた『彼』
だけが見ていた。




――気付いた時には、既にこの中にいた。

 抵抗といえるモノすら起こす事は出来ず、ただキャスターに話しかけられた
瞬間、この身体は自由を失ったのだ。
 手足は動かず、顔はまるで空間に固定されたかのように動かない。
 そんな状況で、目の前に広がる光景に愕然とした。


――――薄暗く、不透明な壁を隔てたその向こうで、黒と白が交わっている。


 その様はとても淫猥で、この世のモノとは思えないほどに淫らで、そして美
しかった。
 感覚が完全に麻痺していると、他人事のように自分の状態を認識する。

 自分の知っている『彼女』が、喘ぎ、懇願し、そして堕ちていく。

 最初は何度も目を逸らそうとして、それが出来ない自分を殺してやりたくな
った。
 いくら魔術に支配されていても、意志の力さえあれば、その程度の事ができ
ないはずは無いのに――。

 だが、結局それが出来なかった。

 不透明な箱の中に閉じ込められて、
 足掻いても足掻いてもどうしようも出来ない現実を突きつけられて、
 目を閉じて耳を塞ぐという行為さえも出来ずに。


 自分は、確かに目の前の光景に欲情してしまっていた―――ー。


 『彼女』が命令され、強制的に自らを慰めていた様も、
 男性の象徴とも言えるモノを咥えていた様も、
 そして――必死の懇願も届かず、無残にも犯される様も。

 その全てに、自分は欲情していたのだ。

 そして今、お互いを求め合う行為に発展したそれを、自分は見続けている。
 黒が白を侵食し、蹂躙し、染め上げていく様子を。
 既にお互いの限界は近く、加速的に頂上へ昇りつめていく気配がはっきりと
感じられる。
 そして―――


"――ああ、セイバー、セイバー! 貴女も、一緒、にっ――――!”
"――あっ、くる、何かくるっ! まっしろに、なる――――っ!”


 最後の最後まで、自分は。
 目を離すことなく、箱の外の様子を――見続けることしか出来なかった。



(To Be Continued....)