「後ろから、私を抱いてください」
「え……」
「士郎の顔を見ながら愛されるのは幸せすぎて、怖い――だから、後ろからこ
の私を貫いてください」

 この期に及んでなんでそんなことを――と否定したかった。でも、心のどこ
かで彼女がそれを恐れ、そんな抱かれ方を欲している理屈が分かる。
 でも、どっちから抱くというのはもう俺にはどうでもよかった。たとえ前か
らでも、後ろからでも、上からでも下からでも良い。彼女を抱きしめ、貫き、
その身体を抱き留めることが出来るのならばなにも悩むことはない――

「分かった」
「ああ、シロウ……許してください、こんな私の我が儘を……」

 頷く俺と、弱々しい声で俯いてそう呟くセイバー。

 セイバーの背中に回ると、お腹の下に腕を入れてお尻を起こす。四つん這い
になってお尻だけを掲げさせるようなポーズだ。後ろからだとこんな感じにな
るだろう。
 お尻が腰に触れると、それだけで高まりきった俺自身が暴発しそうになる。
引き締まってるけども綺麗な曲線を描く臀部が、暗い部屋の中で浮き上がるよ
うに見えた。そんなお尻の肉に手を置くと、汗ばんでひたっと掌に吸い付く。

「はぁ……あああ……あ……」

 まだ快感の余韻が続くのか、小さな声で喘ぎを漏らすセイバー。
 そんな彼女の濡れそぼった襞に、ペニスを宛う。手を添えてもなんで自分の
身体でこんなになってしまったのか、と思うほど硬くふくれあがり、セイバー
の唾液に濡れた肉棒を――

「シロウ……来てください、私を……」

 お尻を少し割って、膣口の位置にペニスを付ける。セイバーはきっと初めて
だから、丁寧にしなくちゃと思うけども、こんな風に抱かれることを望む彼女
はむしろ壊れてしまいそうに手荒に扱う方が望みに適うのか、そんなことが脳
裏に去来する。
 でも、それを考えている暇はなかった。濡れた女性の襞に触れる俺自身が、
早く早くとせかしてくるようで――それに、セイバーの綺麗な手が怯えるよう
にぎゅっとシーツを掴んで、――背中から肩に乱れた金の髪が、何よりも色っ
ぽくて――

 セイバーが振り返る。髪の間に光る緑の瞳が俺を求める快感を宿していて…


「はぁっう……ああああ!」

 ずぬり、と腰を進めた。亀頭がが狭い彼女の入り口を押し広げて中に侵入し
ようとしていた。やはりセイバーの初めての人は俺だったようで、このきつさ
は処女であるに違いない――いきなり入り口で俺のペニスが立ち往生しそうな、
締め付け。
 でもそんな抵抗があっても、セイバーの中は温かかった。蜜壷のように、秘
密の洞のように、俺をその中に誘って止まない――腰を掴むと、止めることな
くセイバーの中を進む。

「セイバー……ううっ、あ……」

 俺の口からも声が漏れる。それは、苦痛と満足。
 セイバーの中を進めるのは無理に敏感なペニスをねじ込む痛みが伴っていた、
が、これを受ける彼女の苦痛に比べれば取るに足りない。それに、今まさにこ
の美しいセイバーを我が物にしたという、禁断の快感が俺をわしづかみにして
いた。
 
「シロウっ、ああ、ふあああううう……」

 セイバーの背中が反った。首が仰け反り、金の髪が舞う。
 だが、そんなセイバーの背中がしなう様すら俺の官能を引き立てるばかりで
あった。ずずず、と音がしそうな挿入と共に、セイバーの内奥を押し広げてい
く。ギリギリと張りつめた肉に、破りそうに進める俺。
 そして、ぷつっとその緊張が限界に達し、破綻した――

「ああああうううっ!」
「大丈夫?セイバー」
「はぁっ、はっ、は……平気です、これくらいの苦痛は取るに足りませ……あ
あ、シロウは本当に、私を――」

 私をどうしているのか。それは彼女の口から漏れなかった。
 顔を布団に伏せ、皺が寄るほどにシーツを握りしめるセイバー。細い身体が
白いシーツの上で、俺の手によって乱されている。そして彼女と腰で繋がりあ
って、俺のペニスがどこよりも熱い彼女の体の中を感じていて――

 腰を掴みなおし、俺は体を動かし始める。貪欲にピストン運動で処女の彼女
から快感を搾り取るのは酷な気がする、が、こうしないと俺が完全にどうにか
なってしまう。繋がり合う俺とセイバーの身体は強い磁力を発しているようで、
このまま永遠にこうしていたいような。

 遠坂の時に感じるのとは違う、全く異質の感覚。ただ、それが俺を俺でなく
してしまいそうな――だから、動かないといけなかった。ずっずっと腰と引き、
そしてセイバーの中を進める。
 俺に絡みつくセイバーの秘肉。それは熱く湿っていて、襞が寄っていて、俺
を締め付けていて――限界に達しつつある男性器には気持ちよすぎてほとんど
拷問のように――

「はぁぁっ、うう、ああ……シロウ……あああっああっ」
「セイバー、いい……いいよ、セイバー……」
「私の中をシロウが……こんなに……上に当たって……ひっあっあ……」

 セイバーはそんな、快感に酔いしれた声を上げる。
 乱れていた、セイバーが――それがさらに俺をあおり立てる。腰と腰の肉が
ぶつかり合い、激しく音を立てるほどに。ぱんぱん、とどこか裏腹な軽薄さを
感じさせる音が寝室の中に響き、それに俺たちの声が入り交じって。

「いい……すごく締め付けて……このまま……」
「シロウ……ああん……あっ、は、はぁぁ……あああ……すご……く……きも
ち……はっああっあ……」

 セイバーと向かい合っていないのが、今更ながら悔やまれた。俺に抱かれて
いるセイバーの顔を見たかった。でも、それはセイバーが望むところでなかっ
たから、俺はセイバーの手と背中が見せる身悶えの様で彼女を感じるしかない。
声は甘く、今にも融けてしまいそうで。
 ペースが上がる。どんどんと熱く、どんどんと激しくなるために、セイバー
を貫く。

 セイバーの肩が震える。そして、僅かに一瞬肩越しに振り返った彼女の目を、
見た。
 金の舞う髪の向こうに

 ――一筋の涙が、眦を伝う。

 その涙の意味。なにか、胸を締め付けられる、言葉にならない大量の感情。
 涙が彼女を振り返らせさせずにいられなかったのか。それとも、振り返った
からこそ流れた涙なのか。彼女を抱く俺の身体は痺れる。
 こうしてちゃいけない。もっと彼女をしっかり抱かないと、セイバーは――

「セイバーぁぁぁ!」
「シロウ………はぁぁっ」

 セイバーの背中に覆い被さるように、俺は繋がりながら彼女を抱く。首筋に
唇を寄せ、身体を寄せて、交合のリズムを保ちながらよりそれを加速すらして。

「ああっ、はぁ、うう……はっあっあっ、シロウ……シロウ……そんなに私に
……」
「セイバー……はっは……は、あ、い、いや、アルトリア――」

 その名前を、縋り付く悲鳴の様に口にする。

 セイバー、いやアルトリアの身体に電流が走ったように震える。なんでこの
名前を口にしたのか、いや、大昔から知っていて、その名が真名であることを
俺の中の何かが確認していて、そういえばセイバーが必ず反応してくれるって
――激しい運動に、心臓が胸の中でだくだくと血を吹き上がらせ、頭の中が欲
情の液に詰まっているのにそんなことだけはっきり確信できて。

 泣いている、彼女を振り向かせたかった。
 抱かれていて、幸せな涙じゃない。そんな涙を流されたままで抱くのは嫌だ
った。後ろ向きにして欲しいと言ったのは、その涙を見られない為だったのか
――

 手を腰から離し、彼女の首筋に添える。その細い顎に指を掛けると俺に顔を
向かせるようにねじらせる。彼女の声が耳に、そして指をかけた喉から伝わる。
 それは、心臓が軋んで上げる悲鳴のような声。

「いけません、シロウ。私の顔を見ないでください――」
「だめだ、気が変わった。セイバー……いやアルトリア。俺の方を見てくれ、
お願いだ」
「そんな……はっあ……ああ……駄目です、私はシロウに……そこまで想われ
る資格もないのに……そんなことは、私には」
「泣いてるじゃないか、その涙が俺の為に流すのなら、俺はその涙を拭わなき
ゃいけないから。アルトリア、こちらを向いて――」

 その名前に、その言葉に彼女の抵抗が弱まる。
 肩が上がり、腰をねじった格好でアルトリアが振り向く。彼女は涙を溢れさ
せていて、それでも表情を感情に流されないように堪えている。それが俺には
悲しかった。
 指でなく、唇で涙を拭う。アルトリアの、セイバーの味がする。彼女はもう
心が震えて折れそうな、弱々しい声を出す。

 青い瞳が俺と交差する。また、じわっと涙が溢れる。それは悲しみの涙じゃ
決してない――

「ああ……シロウ……シロウ……」
「アルトリア……ほら、もう泣かない、だから……」

 だから、俺の腕に抱かれて、ありのままの君のままで。
 その言葉を口にする前に、俺は――彼女の中で、達した。

「あっ、ああ、ああああああああーーーーーっ」

 甲高い嬌声が上がるけど、唇でそれを吸い取る。俺と彼女は繋がり、その中
にどくどくと俺自身の熱い精を放っていた。肉道が俺のペニスを包み込み、一
滴も漏らさないようにと搾り取るような感じがするような。

 アルトリアと、セイバーと口づけを交わす。泣いていた彼女は、俺の顔の中
に遠い何かの光景を見たような、恍惚の表情を浮かべている。今にも気を失い
そうだけど、それでもいままでセイバーを見た中では、アルトリアの本当の顔
だって思える透き通った純粋さがあった。

 そんな彼女を抱きしめながら、俺は……最後の一滴まで注ぎ込むと、それが
限界の様に彼女の身体に倒れ込んだ。柔らかく、小さく、細く、しなやかで、
美しく、そして熱くて強い血を宿した彼女を俺は――


(To Be Continued....)