さらり、と衣擦れの音を聞いた。ああ、脱いでるな、と思いながら俺も他人
の身体を使ってるみたいに服を脱ぐ。信じられないようなことだったけども、
俺の寝室で俺とセイバーは二人で裸になろうとしていた。
セイバーが頷いてから、俺も彼女も言葉を失っていた。何か口にすれば、こ
の時間がぷつん、と音を立てて切れてしまう気がする。
蔵の中にあった、古い八ミリの映写機。あれを直して一緒に入ってたセピア
色の古いフィルムを見たときに、声を立てると脆いセルロイドの帯が切れるよ
うな気がした。それで、俺もオヤジも黙って遠い誰かの家族の記憶も映す、ス
クリーンを見つめていた。
そんな容易くとぎれてしまいそうな何かが、今のこの寝室にある。
「…………」
ちょっと眠ったせいか、酒は大分抜けてきているみたいで、なんとか足腰は
立つ。
布団の片隅で、ズボンとトランクスを脱ぎ捨てた。それでも気になるのは背
中でセイバーがどうしているかと言うことで……あんなに格好良さそうなこと
を言っても、今の俺はもうどうして良いのか分からないくらい緊張して混乱し
ている。
だって、セイバーと寝るだなんて……あんなに綺麗な彼女を抱くことを想像
しなかったと言ったら嘘だ。でも、そうなると確信していたと言ったら嘘とい
うより世迷い言だ。
素っ裸になって、何をしたらいいのか――気の利いた、彼女を安心させる台
詞の一つのも思いつかないのが悔しい。あれだけ大見得切ってこれだというの
はもう――それに、セイバーもなんて言うのか。
ちょっとだけなら、振り返って良いかな?と思っていると……
「――――!」
ひやっと背中に何かが当たり、俺は竦む。これは、肌だ。
俺の背中、肩胛骨の間当たりの敏感な箇所に触れるセイバーの手。いや、手
どころじゃない、背中全体、というか太股の裏までぴったりとそれがふれあっ
ている。ほんの少し冷たいけども、心地の良い柔らかな感触。
俺の胴に、セイバーの腕が回ってくる。みぞおちの上にふわりと白く浮かび
上がる彼女の手が重なる。そ、その格好になると俺の背中に間違いなくセイバー
の胸が――
いや、胸よりも感じるのは、背中に抱きついたセイバーが頬を預けているこ
とだった。背中に俺の鼓動を聞き取るかのように、ひしと着けている。
「…………うう」
「シロウ……シロウの身体は暖かい」
セイバーの言葉が、そのまま胸の中に落ちてきた。ああ、彼女の声を肌で聞
くと、こんなに官能を引き立てるものかと――またアルコールが戻ってきたみ
たいに、頭がくわん、とぶれる。
「せ、セイバーの身体もその、柔らかい……」
「そうですか?お世辞でもそういってもらえると嬉しいです」
きゅ、と腕に力がこもったみたいで、セイバーの身体が密着して……なにか
それだけで気持ちよくなってしまう。裸で立ったまま抱かれて、どうすればい
いのか……
セイバーの手が解かれる。惜しいけどもちょっとだけほっとした――かと思
ったけども、その手は今度は俺の胸と腹に動き出す。
「あ、あ、ああ……」
「やはり男の人の身体は分厚いです、シロウの身体に触れて分かりました――」
セイバーの手が、胸を撫でる。一時やたらに負った手傷はうっすらと筋を残
しているけども、火傷の痕に達してとふ、と先に進んで良いのかどうか、セイ
バーの手が迷っていた。
俺はその手を重ねる。手を包み込んで、俺の身体に当てた。
セイバーの指が一瞬逃げ出しそうだったけども、ひたりと触れた。やはり、
綺麗じゃなくてもちゃんとセイバーに触れて欲しかったから。
それに、もう片方の手は下がっていって……その、そのまま下がると何も履
いてない訳だから、ベルトラインより下に触れるのは……
ああもう、なにをそんな怯えているんだか、決心したはずなのに。
「……せ、せ、セイバー」
声が裏返る。格好悪いけど、仕方ない。
セイバーの手が腰の、硬い毛に触れた。そこより下に下がると必然的に俺の
股間そのものに触れる事になる。
「……シロウ、緊張していますね」
「そ、それはセイバーにそこを触られているわ、わけだし」
「リラックスしてください、シロウ……私がシロウを欲したのです、ですから
私がシロウを悦ばせるべきなのです」
セイバーの指が、くっと俺のペニスをつまむ。あ、と息が喉の奥で固まる。
そんな、悦ばせるべきって――そんなセイバーの綺麗な声で言われた言葉が
俺をくらくらと酔わせる。ぐ、と情欲の血が身体に淀み、それがセイバーの指
の触る箇所に流れ込んでいく。
後ろからセイバーに寄り添われ、しなやかな身体が俺の身体に触れる。背中
に触れているので、手が伸ばせないのがもどかしい。それなのにセイバーの指
が俺のをつまんでいるという――
「はぁ……」
甘い吐息を背中で聞く。
セイバーは硬さを確かめるように、ペニスを撫でさする。指がまとわりつき、
しゅっしゅと擦るように――か、硬くしなきゃいけないんだけどこんな風にさ
れて硬くしてしまうのは何かすごい過ちを犯しているような……それに、寄り
添うセイバーの身体が俺の肌を侵していくようで。
ぶるぶるっと何度か硬く身震いをする。セイバーの指はひどく巧みに俺のペ
ニスを弄っている。根本の方からするりと軽くなで上げたかと思うと、今度は
指の輪を作って強くしごく。そうすると俺の中にある血液をここに集めること
を知っているかのように。
自分でするのとか、遠坂にぎこちなくして貰うのとかと違う――俺のペニス
と言うより、俺の心を高めていく。こんなに身体の中に血があったのかと思う
ほどに沸き立ち、心臓から身体に巡り、そして体中から官能を寄せ集めるよう
にセイバーの指に導かれて股間に注ぎ込む。
「……シロウ、感じていますね……私の指で」
「う、うん……その、セイバー……あ、あ、あ」
ちらっと目線を落として何かを言おうと思った瞬間――それがぽろりと身体
の奥に転がり落ちた。なぜなら、俺が見てしまったのはそそり立つ、見慣れて
はいるけどもグロテスクな物に細いセイバーの指が絡みついている、その美醜
の激しいコントラスト。
嘘でも妄想でもなく、セイバーが俺の股間をまさぐっている。それも背中に
顔を預け、ふたりとも立ったままで。いきなり醒めたはずの酒がぐわん、と戻
ってくるような熱さが頭の中で――
「ふふ、硬いです、シロウのここが……私の指でこんなにしてくれるだなんて」
「だ、な、だ、だってセイバーがしてくれるから、その……うぁっ」
軸だけを探っていたセイバーの指が、剥き出しの亀頭にふれる。
そこは肌ではなく敏感な粘膜で、それの上にセイバーの指が乗せられる。今
までにない、ずぐっ、とペニスの軸に響くほどの感覚。それだけならまだしも、
セイバーは先走りの液を指にぬりたくってぬたぬたと指を……
「あ、ああ……うっ、はぁ……ああ……」
言葉が言葉にならない。腰が引っ込みそうになる過大な触覚の情報。親指と
人差し指は時に奔放に俺の亀頭を這い回り、快感を探り出そうとする。こんな
淫らな行いをするのに、セイバーの指は口づけしたくなるほど綺麗で――
「気持ちいいですか?ここを、こんな風にされれば殿方は――」
「それは……せ、セイバー!」
なんとかセイバーの名前だけを口にすると、俺は手を背中に伸ばす。
ちょうど俺の腰の下にひたりと触れる、セイバーのお尻に回り込むように。
見えなくても、手に触るセイバーのお尻がすごく整って綺麗で、硬さと柔らか
さが絶妙に釣り合っているのが分かる。肌触りはあたかも赤子の頬のようにし
っとりとしていて……
「はっ、あ……し、シロウ、今は私がする番でシロウは……はぁ……」
そんな声を上げるセイバーを押し切って、俺は手をお尻の谷間から下に動か
した。お尻とふとともの境界線から内側に、こうすれば直接セイバーの中に触
れられる――
指先にち、と濡れた感触を感じる。柔らかい、まるでバターの中に指を差し
込んでしまったようにぬるりと温かい。そしてきゅーっとそんな手をセイバー
のお尻が締め付けてきて。
「ああっ、ど、どうしてそこを……し、シロウ」
背中でセイバーが身悶えするのが分かる。もしかして無理矢理触って痛かっ
たんじゃないか?と不安になるけども、俺は後ろからセイバーの秘所をつつく。
その間にも、両手でセイバーは俺のペニスをまさぐり、なで、擦り上げている。
それも、いつでも我慢できなくなって漏れてしまいそうな快感。指で睾丸と
かをまさぐられるとぐーっと頸から頭に血が上がりそうになる。
「さ、されるばっかりじゃ……セイバーに悪いだろ。それにこんなに……」
もう濡れているのだろうか、セイバーは。でも身体の奥にある粘膜の襞だか
らこれくらい普通なのかも知れない。経験がないのでその辺はよく分からない
けど、俺だけこんなに分かりやすく快感を貪っているのに、セイバーは感じて
無いというのは駄目だろう。
だって、お互いにお互いを欲してこの部屋にいるのだから。
「う……はぁ……ん、シロウ……つ、爪を立てないで……」
「あ、御免……ああ、で、でもちょっとセイバーそれ強い……先に出したら…
…うっ」
二人とも、お互いの大事な箇所を触れながらそんなことを口にする。はぁは
ぁという荒い呼吸に混じって、お互いのどこをどうするのかを言うというのは
……おかしいかも知れないけど、口にしないとどうにかなってしまいそうだっ
た。
「もっと、もっとセイバーに触れたい……駄目かな」
「シロウ……はい、それでは……」
セイバーが俺のペニスを掴んでいる手を離し、巻き付く腕を解く。この立っ
たままの格好は興奮するけども、無理があった。やっぱり向かい合ってお互い
にした方が――
――――あ、あ。
振り返った俺の中で、何かが、何もかもが、どんな風にかおかしくなって、
これからどうするのかを及ばずながら考えていた設計図がくしゃくしゃになっ
て、ギザギザの破線の寄せ集めになる――
「シロウ……はぁ……」
セイバーは掌に着いた、俺の雫を舐めている。
彼女は一糸まとわぬ、生まれたままの姿だった。髪を下ろし、肩に掛かる髪
はこんなに軽そうに輝いていたのかと、こんな暗い部屋の中でも分かる。それ
に細い首筋、なだらかな肩、細い腕、控えめな胸と浮く肋骨と鎖骨の線、それ
なのにヴィオラのような引き締まったウェストと豊かなお尻、すらりと髪に筆
を放ったように流れる脚の線と、髪と同じ金に輝く茂みがあって――
それの全てが完璧で、疵一つ無く、美しく、力を秘めていてそれがそんなに
美しかったから、俺を理解不明の世界に追いやる。
こんなに美しく、泡から生まれるヴェヌスの様な彼女。髪を下ろしたせいか、
かすかな見慣れない違和感があったけども、それでも――いつも見ている緑鋼
玉の瞳は紅の欲情の色を内に秘め、うっとりと俺の漏らした液体を、美味しそ
うに舐めていて――
「あ、あ、あ」
だめ、だ。こんなセイバーを見てしまったら、もう遅い、俺の中の剥き出し
の俺が彼女を狂ったように求めずにはいられない。抱きたい、撫でたい、彼女
を腕の中に収めてその全てを得たい。それがたとえ罪であっても、どんな咎が
我が身にあってもそれはあまりにも小さく、些細なことにすぎないと信じさせ
るほど、に。
一滴も残さずに舐め上げたセイバーは、吐息と共に俺を見つめる。
僅かに細められた瞳が、ぬたりと空気を変えるほどに色艶を帯びた。金糸の
髪と象牙の肌の彼女が、俺を見て微笑み、唇が――
「シロウ――来てください」
なんて俺が言ったのか分からなかった。ただ、瞬きするほどの時間も惜しい
という焦りが俺を駆り立てていた。もし、彼女がこのまま逃げていったら狂っ
てしまうというあり得もしない恐怖に打ち震えたかの様に。
「はっ、う、あ……」
セイバーに抱きつき、そのまま布団の上に倒れ込む。まるでタックルするよ
うな勢いだったけども、不思議と自然に横たわっていた。俺はセイバーの身体
を抱く、細い。身体の下に下敷きにすると潰れてしまう、と疑問無く信じてし
まうほどに。
セイバーを持ち上げて、俺の上に載せる。これでいい。仰向けの俺の上には、
髪を垂らしたセイバーが穏やかに笑っている。上に乗っているけども、体重を
感じない。俺がおかしくなってるのか、セイバーがそんなに軽いのか。
「シロウ……先程の続きを……」
髪を掻き上げ、唇を合わせてくるセイバー。何度目になるのか分からないキ
ス。
俺が舌を求めると、セイバーも控えめながら舌を返してくる。ぬら、と温か
い唇と舌を絡め合わせ、本能のままに口舌の痴戯に耽った。なんで唇だけなの
に、頭がじんじんするほど気持ちいいのか――
「は、う……ん」
「はぁ……ああ、良いです、シロウ……もっとしたいのですが……」
セイバーと唇を離すのは名残惜しい。でも、彼女の舌がそのまま俺の顎に、
首筋に、そして胸へと下っていくのを感じ、仰向けで天井をみつめて、セイバー
の頭に手を添える。
唇が這った跡が、熱い。ひりひりするんじゃなくて、血液が肌の下で熱く固
まったように――そんなセイバーの愛撫の跡が、身体を下っていく。
このままだときっと、セイバーは俺の股間まで舐め下っていくだろう。でも、
またされるだけなのはいやで、俺もセイバーの身体に触れたい。もし彼女がこ
こを愛撫するのならば、彼女のそこを俺も触れたい。
顔を上げる。セイバーが目を閉じ、舌を伸ばして俺の肌を舐めるのを目にす
ると、それで目の奥がじっと灼けるようだったけども――俺はそんな彼女の身
体がどうなっているのかを確かめた。
セイバーはそのまま俺の身体を下がっていくのではなく、すこし斜めに傾き
身体を外していた。だから、体を起こせば彼女の身体をこっちに引き寄せられ
る。
「セイバー、いいかな」
「はい、シロウ……あっ」
上体を起こし、腕を伸ばす。僅かに驚いたようなセイバーだったけども、腰
の辺りを掴んでそのままくるっと俺の身体の上を回転させて――
そして、顔の上にセイバーの足を跨がせる。そう、こうすればいい。
「なっ、ななな、何をするのですかシロウ、こんな格好で!」
「俺もセイバーを舐めたいから、この姿勢がいいなって……恥ずかしい?」
俺が下になって、セイバーが上。でも、身体が向いている方向が逆。
ちょうとシックスナインの格好というのだろうか、お互いの腰が顔に近づく
ような格好になった。顔は見えないけども大慌てなセイバーの声が聞こえる。
「こ、こんな、不浄をシロウに近づける格好は失礼であって……」
「セイバーの身体にそんなところはないよ。それに、俺のもセイバーの目の前
にあってちょっとこっちも恥ずかしい訳だから、あいこだろ」
「そ、そうかもしれませんが……ぁぁ……はぁ……」
はぁ、とセイバーの吐息を硬くそびえ立つ俺のペニスが浴びる。
俺は首だけ起こしてセイバーの身体を見ようとする、と……
俺の胸の上を跨るセイバーのお尻とふととも。それを後ろから見ている。
必然的に足は広げられ、セイバーの大事な部分がぱっくりと俺にご開帳にな
っている。それに目を、魂を奪われた。こんなアングルでセイバーをみると―
―
すらっとした綺麗な、セイバーの秘裂。
それがほんの少し、濡れて光っていた。
…………?!?!
もうこれ以上壊れるところが無いと思っていた頭が、もっとぐちゃぐちゃに
なる。いままでドンブリの中でご飯と卵をかき混ぜていたが、今度はドンブリ
も微塵に砕いてかき混ぜるみたいに、頭の中が心臓になってしまって心臓が血
で壊れて胸の上に被さるセイバーの身体の感触は燃える氷みたいで、喉は砂漠
の様に枯れて割れ、それなのに冷たい泉が目の前で滾々と湧いていて、俺は、
俺は俺は――――
「シロウっ、はぁぁぁああ!」
セイバーの甘い悲鳴が聞こえる。
腰を掻き抱き、セイバーの秘所にしゃぶりついていた。お尻に顔を埋め、太
股に顎を挟み、唇でセイバーの秘密の唇を舐める、啜る。ぶちゅりと淫らにす
する音が響き渡る程に。
俺はセイバーの秘所を必死になって舐めていた。唾液をぬりたくり、湧き出
る愛液を啜り、こうしないと死んでしまう病人のように。お腹に上に乗ったセ
イバーの身体が波打つ。
「はうう、ああっ、シロウ、そんな激しく……ふぁあっ、ああん、うぁぁ……
ひぃう!」
セイバーの腰をがっしり掴んで、逃げ出せないようにする。セイバーの膝が
布団を蹴って逃れようとするけども、俺はそんなセイバーのお尻にぴったと顔
を着けて、ぢゅるぢゅると淫らな音を立てて――唇がこんな、大きな音を立て
ることが出来ることが不思議に思うほどに。
「いいっ、あああ……うっ、はぁぁっ、ああ!」
舌でセイバーのクリトリスをほじり出す。筋の上に隠れそうな小さな実があ
り、そこを舌で舐めると一際高くセイバーの腰が動く。俺の目の前にはちょう
と割開いたセイバーのお尻の穴がひくひくし、それは強く舐めると息をすって
くーっとすぼむ。
セイバーの味と薫りを感じる。どんな味がするのか、他に比べられない。た
だその薫りを胸一杯に吸い込み、身体の奥まで彼女のその清らかな香りで満た
し、彼女の味で酔いたかった。
「ふあ……ああう……シロウ……シロウ……」
俺の名前が呼ばれた、その瞬間――俺もごん、と強い快感に打たれる。
俺のペニスがぬるりとなま暖かい口に包まれる。セイバーの口が俺のペニス
を舐め、包んでいる。あの造作の小さくで愛らしい彼女の口に、俺の肉棒がく
わえられている、そんな想像と打ち寄せる官能が入り交じってもうなんと言っ
たらいいのか分からないほどに、すごい。
俺がセイバーを音を立てて啜ったように、セイバーもちゅぷる、と唇に音を
立てて舐めている。セイバーの舌がぬるんと亀頭を包み、唇が軸を締め付ける。
指がそれに添えられ、弄ばれ……
セイバーの中に包まれている。それだけでも弾けそうなのに、舌が動いてつ
んとつつき、ぬらっと亀頭の粘膜をこそぐように這い、そして尿道から中身を
吸い上げるようにつ、と音を立てて吸われる。
その快感に酔いしれながらも、それ以上の快感をセイバーに与えようとする。
尻尾を追い掛け合う犬のように、俺とセイバーは互いに互いの敏感な箇所を舌
と唇で愛撫し合う。それがぐるぐると円を描き、巻き上がっていく快感の渦の
ような――
「ひゃう……ん……んちゅ……うぶ……ぷは、シロウ、はああ……」
「セイバー……いいよ……うっ、はあ……ん……んうううう……」
指でお互いを触れ合っていた頃の、お互いにどこがいいのかを確認し合う余
裕はない。頭の中まで快感に痺れるのに、喉は渇いて頭は空っぽで心臓だけが
どんどんと血液を圧縮して、沸騰しそうに熱い。
そんな熱い血が、俺の股間に止めどもなく注ぎ込む。セイバーの身体も火照
ってくるが俺ほどでもない。このセイバーの身体まで折れと同じほどに熱くな
れば、ぐにゃりとお互いの身体が融けて絡み合うんじゃないかと思うほどに―
―
「シロウ……ふあ……シロウのが、びくんびくんって……私の口の中で……ふ
ああ!」
襞の寄った膣口に舌を突き立てると、セイバーは言葉の途中であえぎに痺れ
る。お尻の向こうにふさっと彼女の髪が舞ったのが見えた。でも、セイバーの
秘裂を舐めるのを止めない。セイバーから溢れる蜜の方が俺の唾液より多くな
っているけども、俺はセイバーのその液体を飲み啜りながら、なおも襞の奥を
探っていく。
舌だけではない。指も差し伸べ、襞の中を掻き分ける。セイバーのそこは柔
らかく、指で開くとくにっと形を変えて中にあるつるりと柔らかな奥が露わに
なる。陰毛の辺りから桃色に染まるそこに、南国の果実を味わうように――
「ひぅ……シロウっ、シロウっ、そんなに中までしたら……はぁぁ!」
ぎゅーっとペニスをセイバーは握る。乱暴なくらいの刺激が、むしろ心地よ
い。
セイバーの秘裂の中をどろどろにしていると、セイバーの身体も何度も跳ね
る。触れる肌は汗ばんでいるが、俺の掻く汗なのかセイバーの汗なのか、見分
けが着かない。この褥には二人の汗と、いやらしい体液の香りを混ぜた、麝香
よりも濃い空気が立ちこめ、鼻の奥を痺れさせる。息は常に浅く、その激しさ
がより香りと熱を濃縮している。
「いくよ、セイバー……」
俺は、セイバーの一番敏感な部分がわかっていた。女性はここがやはり感じ
るのだろう、男性の似たような部分だってやっぱりどこよりも感じやすいのだ
し。
指で押し広げた、襞の接合部。そこにあるクリトリスを皮ごと、押し込むよ
うに舌で――
「そこはシロウっ、はぁ、ああああああーっ」
くわんっ、と踊るように身震いするセイバーの背中。
セイバーが背中を仰け反らせ、俺の顔にぎゅっと腰を押しつけるようにして
……太股も力が籠もって、俺はセイバーの飛沫を浴びながら、彼女の何よりも
強い反応を感じていた。
舌が離れる。ぬらっと漏れた粘液に覆われ、セイバーの襞はぬるぬると濡れ、
輝き、震えている。セイバーの痙攣するような強い動きで、ふさっと彼女の髪
が舞うのが視界の片隅で見えた。
「ぁぁ……はぁ、あ、あ……」
そして、くたっと俺の上に崩れ落ちるセイバー。肺の底から吐く、長く苦し
そうな息が続く。セイバーのこの様子からすると、イってしまったんだろうか
……
でも、でもまだ俺はいけてない。セイバーは快感の頂点を極めたのか、くっ
たりと横たわったままだけど、俺のペニスからまだ手を離さずにいた。でもさ
んざんセイバーの指と舌で愛された俺の股間には弾けそうな欲望が詰まり、こ
のまま終わればそれが毒となって身体に逆流しそうな、そんな予感もする。
「はぁ……し、シロウ……」
セイバーの弱々しい声。気が遠くなっているのか、それとも何かを恥じてい
るのか、力のない声は呼吸の間に交じる。俺の息はまだ短く浅く、より強い快
感を求めているのに――上に乗るセイバーの身体も熱く感じる。
目の前にある秘裂に添えた指を動かす。人差し指で、襞の奥まったところに
ある膣口を探り、そこにゆっくりと指先を埋めていく。
つぷ、と柔らかな肉に触れると、つぷぷ、と飲まれていく。それは決して緩
くはなかったけども、これならセイバーの中にも俺が入れられるんじゃないか
な?と思うほどに解れていく。
指を入れられるのを感じたのか、セイバーの身体がひくっと震える。
「あ………は、ああ……し、シロウ……」
「いっちゃったんだね、セイバー……今度は俺がセイバーに……セイバーの中
でいきたいんだけど、いいかな」
第二関節の前まで入れられた指は、ぎゅっと指の輪で挟んだように締め付け
られる。中はセイバーの肌より遥かに温かく、ここに俺自身を差し込んだら融
けてしまうかも知れない、そう思うほどに――
でも、なかでどろどろに、ぐちゃぐちゃに解かしてしまいたかった。そうす
ればこの勃起した肉棒の中の血を全て解き放ち、どれだけの快感に痺れること
が出来るのか、と。
指を抜く。そして、跨いでいたセイバーの太股を外して態勢を変えようとす
る。太股も愛液でべとべとで、こんなにセイバーが滴るのかとおもうと不思議
なほどだった。布団の上にセイバーを横たえる。俯せの彼女のは――
「…………」
快感に肌を紅潮させ、オルガイズムの余韻に汗を浮かべ、髪は肩に乱れ、首
から背中、お尻に繋がる線の美しさは朝日に染まる雪山の稜線を思わせる様な、
そんなセイバーの裸体。こんな肢体を恣にしていたと思うと、目眩すら覚える。
シーツを掴んで、セイバーが顔を起こす。首がしない、垂れた金髪の彼女が
俺を見る。あの愛らしくもあったセイバーの顔は、快感と疲労の為か今まで見
たこともないような妖艶さ、で。
すっと伏された瞳が流し目になって俺を横切る。それは熱い熱に浮かされた、
宝石の瞳。魔術師の魔眼のような、何か知らない女性という名の回路が燐光を
発しながら俺の魂をわしづかみにする。
股間が熱く、もはや痛い。これを何とかしないと俺は――
「シロウ……来てください。でも、一つだけお願いがあります」
セイバーはその瞳を俺に向ける。今にも泣き出すんじゃないかと不安になる
瞳。
俺は生唾をのんで、なんだい、と聞き返す。どんな願いでも、たとえ死に向
かって飛び込む事であってもセイバーの願いなら聞けるような気がする。
セイバーは顔を伏せると、ぽつりという。
「後ろから、私を抱いてください」
「え……」
(To Be Continued....)
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