4.
「・・・遠野。お前さん、本気か?」
困惑に揺れる声で囁く蒼香に、私は陰鬱に頷いた。
「・・・まあ、本気といえば、本気よ」
正気か、と聞かれれば案外怪しいものかも知れないけれど。
覚悟を整えるために深く息を吸い込む。
とてもじゃないが好きになれそうにない薬臭さが、心を落ち着かせてくれる気がした。
頼りない灯りに照らされた部屋。その壁は怪しげな薬品やら器具で埋め尽くしていた。
『検査室』とプレートは張ってあったけど、一体何を、検査するのやら検討も付かない。
「へへへ。なんか、恥ずかしいなー」
部屋の中央にある簡素なベットに腰掛けて笑うのは羽ピンは、照れたように頬を赤らめている。
いくら彼女でも、制服のスカートとパンツを脱いだ姿はさすがに恥ずかしいのだろう。
さらにその股間から、白い男性器のような形をした物体が起立していればなおさらのことだ。
・・・まあ、これからすることも考えると、私も負けないぐらい恥ずかしい。
そう、これからすること。
つまりは、『凸茸』のお祓いの儀式。
琥珀が私たちに告げたその方法は、いたってシンプルだ。
開放されない精が固まって呪いを成したというのなら。
その精を開放してやればいいだけの話。
そう、琥珀の言う通り「出しちゃえば」終わる。至って簡単な話でそれ自体に問題は無い。
...女性の体液を染み込ませないと、その開放ができないという、
そのあまりにふざけた設定さえなければ、だけど。
ただでさえ、呪い、という言葉を受け入れていない蒼香に対して
そのお払いの方法は余りにも...そう、馬鹿げているように聞こえたのだろう。
一瞬、顔を真っ赤にして琥珀に掴みかかろうとしたくらいだから。
その蒼香は、今はおずおずと―――彼女にしては稀有の表情で私と羽ピンの間で
視線を往復させている。
「やっはり、他の方法、ないのかな・・・」
「琥珀からうんざりするほど、説明を受けたでしょ?
一旦は納得したんだから、覚悟決めなさいよ」
「・・・まあ、そうだけどな」
私の言葉に頷きつつも、蒼香の言葉は珍しく歯切れが悪い。
まあ、いくら琥珀に丸め込まれた―――もとい、説得されたとはいえ、
元々蒼香は此方側の人間ではないのだから、無理はない。
私だって、少し前までの琥珀の言葉なら、そう素直に信じる気にはならなかったかもしれないし。
だから、本当は、蒼香を外に待たしておいて私だけで儀式を行ってあげるのがいいのだろうけど。
それはちょっと、できない。
だって、こんなの―――私だって、死ぬほど恥ずかしいんだから。
『文献によると、まぐわっちゃうのが、一番効果的らしいんですけどね』
真剣そのものの表情で琥珀はつぶやいたが、
あいにくと菌糸の固まり相手に純潔を捧げるつもりはないので、その方法は却下。
つまり、女性の体液を染み込ませればいいのだから、手っ取り早いのは舐めて唾液を
つければいいのだ。
「蒼香、これは治療行為なんだから。
人工呼吸と同じよ、別に恥ずかしがることなんてないわよ」
「・・・そ、そうだな。人工呼吸と同じ・・・だよな。うん、同じだ」
私自身の気恥ずかしさを押し隠して、蒼香に告げた言葉は、やっぱり半分以上、私自身に向けた言葉。
頷いて、必死で自分に言い聞かそうとしている蒼香を暗い視界の隅に捕らえて、
私ももう一度大きく息を吸い込む。
そう。これは治療行為。要するに傷口を舐めて消毒するとか、人工呼吸するとか、そういったことと同じ。
単に、舐める場所とか、そのカタチとかが、ちょっと・・・そう、ちょっと特殊なだけだ。
だから、恥ずかしがるなんて、損なだけ。
ちなみに、琥珀はこの『治療』に参加できない。
『本当は私が、処理して差し上げるのが一番簡単なんですけど...』
心底申し訳なさそうに、琥珀が私に耳打ったのは、彼女のもつ感応能力との相性の悪さ、だった。
先ほどの診察でもわかったように、『茸』から羽ピンに送られる刺激はかなり強烈らしい。
万が一、彼女の能力と感応した場合――――彼女達が壊れてしまうかもしれない、ということだった。
結局さっさと『茸』を処理するためには、私か蒼香がやらなくちゃいけないわけ。
―――よし!
ぱん、と軽く頬を叩いて気合を入れ、私は出来るだけ平静に、羽ピンに始まりを告げた。
「じゃあ、羽居。はじめましょうか。準備はいい?」
我ながら固い声色に、羽居はこくん、と頷いて。
ぴょこん、とベットの上に正座して、私に向かって深々と頭を下げた
「...羽居?」
「不束者ですが、よろしくお願いいたします」
思わぬ言葉に硬直する私に、顔を上げた羽ピンは、頬を赤らめて、えへへー、と笑った。
「・・・って言うんだよね? こういう時ー」
...その仕草と表情に、思い出したかのように頬が熱くなる。
「あのね、羽居。
これは、治療行為なんだから、そういうことは考えなくていいの!」
どうしようもなく湧き上がってきた羞恥を悟られないように、語気荒く私は羽ピンに指を突きつけた。
「えー、でも...」
「でも、じゃない。直ぐに終わらせてあげるから、しばらく黙って我慢して置くように」
「秋葉ちゃん、なんか、えんこー親父みたいー」
「...噛み千切るわよ、あんたは」
「うー、それは痛そう。痛いのはヤなので。静かにするー」
しぶしぶ、といった口調でそういうと羽ピンは、ようやく黙ってベットに横になった。
なんだかんだで、やっぱり、はずかしいのだろう。
両手で顔を隠して、私のほうを見ないようにしている。
ただ、股間から生えた異物だけが、彼女の興奮を表すかのように、ぴくり、と脈を打つ。
奇妙に白いその色が、それがヒトのモノではない、と私の理性に告げる。
だけど、あまりに、男性のモノに酷似しているその形状が、どうしようもなく羞恥心を刺激する。
(――――治療行為。治療行為)
それこそ、お呪いのように、その言葉を脳裏で反芻してから、私はそっと羽ピンの傍らに膝をつく。
眼前にある、その異物。
一般的な男性のサイズなんて知らないけれど、私の片手でちょっと余るくらいの大きさ。
・・・多分、兄さんのよりは小さい・・・のかな。
もっとも問題は、その男性器に似た部分よりも、その根の方にある。
うっすらと白い膜状のものが、羽ピンの女の子の部分を完全に覆い隠してしまっているのだ。
・・・あそこも舐めないといけないのかしら。
おもわず、そんなことを考えながら、それに見入ってしまった私。
ふと、横からの視線に気付いて顔をあげると、まじまじと私のほうを見詰めている蒼香と視線がぶつかった。
うう。羽ピンのアレを凝視していたところを見られた。
もう、顔の赤さは取り繕いようもないけれど、それでも努めて平静に咳払いを一つして、
ベットの向こうを、指差した。
「・・・蒼香。あんたは反対側からね」
「やっぱり、私も?」
「あ・た・り・ま・え。いっしょにやれば、半分の時間で済むって言われたでしょ?」
「・・・了解」
私の答えに、頬を紅潮させ、やや瞳を潤ませながら、それでも蒼香は諦めたように息を吐いた。
その彼女がベットの反対側に回りこむのを確認して、私、眼を閉じる。
これから舌を伸ばす対象の形を意識しないで済むように。
そして、羽ピンや蒼香と眼をあわさずに済むように。
・・・よし。
何度目かの気合の声を内心で上げて、私はベットに手を付き、
『茸』が生えているであろう位置に目を閉じたまま顔を近づける。
ほんの僅かの甘い香りが鼻腔をくすぐった瞬間に、つん、と鼻先に『ソレ』が触れたのが分かる。
堪えきれずに震える舌先を、ゆっくりとその異物に近づけて―――触れた。
バニラのような匂いは、『茸』が女性を誘うためのものか、あるいは...羽ピンの匂いなのか。
たぶん、前者だろうな。
そんなどうでもいいことで、少し思考を誤魔化して、唇から舌を突き出して、
僅かに震える舌先で、その異物に触れた。
その瞬間。
「ひゃっ...」
ぴくん。
小さな羽ピンの声と同時、『ソレ』が小さく痙攣した。
「あ、ごめ...」
羽ピンが慌てて体を起こしかけるのを察して、眼を閉じたまま片手を上げて彼女を制す。
なるべく、平静に―――なんでもないことのように、声を落ち着けて。
「あやまらなくていいわよ。大丈夫だから、ね」
「...うん」
消え入りそうな羽ピンの声が、泣き声に似た響きを含んで耳に残った。
ぽす、と音を立てて彼女が再び身を横たえたのを気配で確認して、
再び、舌先で『茸』に触れる。
ぴくり、と再度、それは脈打つ。、
僅かに彼女の体の方にも痙攣が走ったようだったが、今度は羽ピンは声を上げなかった。
舌先に、残る感触は人肌よりも冷たくて、ナイフよりは暖かい。
つるりとした触感とあわせて、まるで蝋燭を舐めている感覚。
それの感覚を確かめながら、ゆっくりと唇を羽ピンの『モノ』に押し付けて、
唾液を口付けた部分に塗りこむように、舌を動かす。
「...んっ...ふっ...」
びく、と。『ソレ』が脈打つと同時に、小さく、羽ピンが痙攣する。
なるべく、体を動かさないようにしているのだろう。
彼女が四肢に力を込めているのが、シーツがこすれる音と彼女の呼吸で読み取れた。
唇をつけたまま、ゆっくりと舌を根本に向けて動かす。
「くぅっ...う...んんん...」
『体液を絡める』という琥珀の言葉を思い出しながら、
なるべく唾液を舌先に集めるようにしながら、今度は先端へ向けて。
「ん...ふ...」
舌が動くにつれて、『ソレ』どくどくと脈打ち、それにあわせて羽ピンの体が
何かを堪えるように微かに痙攣と硬直を繰り返す。
「ふっっ...っく...あっぅ...う」
上に、下に。
ただ、単純に。
でも丹念に。
唾液を羽ピンの『モノ』に塗りこむように。
口の端から溢れ、喉下から伝い落ちる唾液を時折拭いながら、
ただ黙々と、私は舌を動かした。
「く...うぅ...うぁ...」
必死で羽ピンが押し殺そうとしている声が、徐々に甘く、熱を帯びていく。
それに同調するように、『ソレ』は急速に熱を持ち、一個の生命であることを主張するかのように、
どくどくと脈打ち続けた。
それは、多分、お払いが上手くいっている証拠だろう。ここまでは、多分、予定通り。
...でも、少し、なにか、おかしい。変だ。
どくどくと脈打つ音が、なぜこうも鮮明に脳裏に響くんだろう。
きつく閉じた瞼の裏で、瞳が熱を持っているみたい。
私の唾液の匂いと交じり合った羽ピンの体臭が、奇妙に甘く鼻をくすぐって、
頭の芯が熱くて、融けていく。
・・・なんだろう、この感じ。これって、まるで・・・?
どこか胡乱な感覚に囚われたまま、うっすらと瞼を開くと
ぼろり、と瞼の裏に閉じ込められていた涙がこぼれて、頬を伝った。
涙に霞む、私の瞳が捉えたのは、紅く濡れた羽居の『モノ』。
それは琥珀の言葉のとおり、いまやすっかりと『異物』から羽居の体へと変じた結果か。
紅く見えたのは――びくびくと脈打ちながら充血している所為だろう。
その羽居のモノの向こう。
呆、と私を見つめて、立ち尽くす蒼香の姿があった。
「あ・・・」
私の視線に気付くと、蒼香は小さくおびえたような声をあげて、ぴくり、身を震わせた。
暗い部屋の中、私が羽ピンのものを舐めつづける光景。
それを一人、傍観していたことに、一種罪悪感を感じていたのだろう。
「あの・・・遠野、私―――」
熱にうかされたように潤んだ、蒼香の瞳。
その彼女の瞳に、虚ろに霞んでいた私の思考が、弾かれたように、かぁー、と熱くなった。
だって。
自分だけ、声を殺して喘ぐ羽居を、見ているなんて。
自分だけ、目を閉じて、一心に舌を動かす私を見ているなんて。そんなの。
そんなの。そんなの。
「―――そんなの、ずるいよ―――蒼香ぁ―――」
自分でもぞっとするほど、熱を纏った私の言葉に、蒼香の瞳が、揺れる。
「あ...遠野...」
呟く蒼香の言葉を聞きながら、私は、視線を動かして―――羽居を見た。
彼女の制服も、シーツも汗で信じられないほどに濡れていた。
私が唇を離しても、彼女の股間から生えたモノはどくどくと脈打つことを止めない。
だから、誰も触れていないのに、羽居は固く瞳を閉じて、シーツを両手で必死に掴んで、ただ耐えている。
頬を、耳を、体中を紅潮させて。固く閉ざした瞼から、涙をこぼして。
食いしばった口の隙間から、抑えきれずに漏れる声と涎を流しながら。
呼吸を必死で押さえつけながら、耐えている。
・・・多分、動いて、悶えて、私たちを困らせないように。
「―――つらい? 羽居――――」
固く握られた羽居の手に、そっとわたしは手を重ねた。
「え―――?」
それに驚いたのか、羽居が瞼を開いて、私を見つめた。
荒い呼吸と涙に震える彼女の瞳に、笑みを浮かべて頷きを返す。
「いい―――無理しないで。
これは、治療なんだから...ちゃんと、気持ちよくなっていいんだから・・・ね?」
「あ...うん...」
らしくもない私の言葉に、戸惑いの色が羽居の瞳に浮かんだ。でも、それは一瞬で消えて。
「へへへ...あきはちゃんに、心配してもらっちゃった――――」
この期に及んでまで、羽居はそう笑う。
その笑顔が、何故か、ひどく胸に痛くて、私はすがるような思いで
再び蒼香に視線を向けた。
「――――蒼香...?」
呆然とした蒼香の視線。
それを真っ直ぐに見返して、私の口から、
彼女を促す言葉が、まるでうわ言のように零れ出る。
「はやく、楽に、してあげよう? ―――ね?」
「あ―――ごめん―――私――――うん...」
ぺたん、とまるで糸が切れた人形のように、蒼香はその場に膝をついた。
まだ、動揺を色濃く覗かせる瞳に決意の光を込めて、私を、そして羽ピンを見る蒼香。
「蒼ちゃん―――あ、無理しちゃ、だめだよう―――?」
「無理をしてるのは、お前だろ――――ごめんな。直ぐに、楽にしてやるから」
そうして蒼香は、私に向かって頷くと。
逡巡と恥じらいに顔を赤らめながらも、
私の涎と、羽居の汗で濡れた『モノ』に、眼を閉じて、ゆっくりと唇を当てた。
「くっ...うぅぅっ...!」
蒼香の顔と、舌の動きにあわせて快感が押し寄せてくるのだろう。
ぎり、と音が聞こえるのではないかと思うほど、羽居が歯を食いしばっていた。
―――その姿が、どうしようもなく、私の胸を締め付ける。
「羽居―――」
だから、私は、ぎりし、とベットを軋ませて。
「え―――?」
近づく気配に潤んだ瞳を開く羽居の、その頬に、そっと手を伸ばして、
優しく、彼女の頬に口付けた。
柔らかくて、熱い感触を唇に残したまま、そっと耳元で囁いく。
「――――我慢しちゃ、だめだって、言ったでしょう?」
身を固くして快感に抵抗する羽居の、頭を、頬を、首を、そして手を、優しく、両手で撫でながら。
「秋葉、ちゃん――――で、でも...っ、くっぅ...あぁ」
生えた『モノ』への蒼香の愛撫に、汗を浮かべて耐える羽居。
その汗に湿った彼女の制服の下に手を差し入れて、興奮に上気した彼女の乳房をぎゅっと、握った。
刹那。
「あ、ぁああ――――――くあああああ!!!」
全身を痙攣させて、初めて絶叫に近い声を、羽居があげた。
「羽居、胸が弱いって、言ってたもんね?」
耳元で、囁いて、今度はすでに固くなっている乳首を、強く、指でつねり上げる。
「ふ、あぁぁああああああ――――だ、だめえええ―――!!!」
私から、蒼香から、そして快感から逃げようと全身をくねらせる、羽居。
でも、その彼女を押さえつけて、私は一気に、ブラジャーごと服をめくり上げた、
いつも、ねたましい思いで見つめていた、やわらかでふっくらとした彼女の胸が、
今は胸を締め付けるほど――――愛しく思えたのはどうしてだろう。
さっき、強くつねり上げた乳首を、今度はそっと唇で挟み込み、舌先で刺激した。
「ふっ――――っ―――――ああああっぁぁぁぁぁ――――!!」
「気持ちよくなって、いいんだよ―――羽居?」
もう、羽居は、顔を隠すこともできず、両手でシーツを握り締め、
必死で襲い掛かる感覚に、快楽に、耐えていた。
でも、多分、もう限界。
右の乳首を吸い上げ、片方の乳房を強く、揉みしだく。
「ひぐっぅうう――あ、あきは、ちゃあん―――あ、あ、あ――――い、あ、くあぁぁぁ......!!」
ぎしり、とベットを軋ませながら、泣き叫び、体をくねらす羽居。
「気持ち、良い? 羽居――――?」
私は、乳首から口を離して、彼女の眼前で囁く。
その言葉に―――羽居は、涙をこぼして、間断なく蒼香の愛撫に悶えながらも、頷いた。
「き、気持ち、良いよぅ――――あ、あきはちゃん、そうちゃああん!!」
「そう、良い子だよ、羽居。
もう少し、だけ。もう少しだけ、気持ちよくなろう――――ね?」
囁いて、もう一度、頬に口付けて。
熱く火照った彼女の体をなぞるように、そのまま唇を動かした。
頬、首、乳房から、腰をなぞって、再び、羽居の『モノ』まで。
強い汗の匂いと、どこか甘い香り。
「く...あ、あ、あぁぁぁぁあ...!!」
些細な刺激にも、強い愛撫にも、羽居の体は痙攣し、仰け反るように、跳ね上がり。
「ひぃっ...くあぅ...あ、く、うぅぅうう!!」
時には愛撫から逃げるように、腰を退くことを繰り返す、羽居。
だけど、そんなことでは、私と蒼香の行為は止められない。
...もう、止められるはずも、無かった。
逃げる羽居の体に覆い被さるようにして、私は執拗に愛撫を繰り返し、
やがて、再び、羽居の『モノ』にたどり着く。
赤く、どくり、どくりと脈打つ、羽居のモノを挟んで、
熱に浮かされたように、一心不乱にソレを舐めつづける蒼香と視線がぶつかった。
だらしなく零れる涎をそのままに、彼女が私に囁く。
「―――とおの、一緒に――――?」
「うん、一緒に―――しよう」
その言葉に、ごく自然にわたしは首を縦にふると。
蒼香の唾液に塗れた、羽居の『モノ』に再び、舌で触れた。
「ひっぃ・・・くあああああ―――ああぁぁぁ――――っ!!!」
どくん、どくん、どくん。
脈動する『ソレ』にあわせて、羽居が絶叫する。
でも、その叫びすら、もう、あまり私の耳には遠かった。
「わ、私―――も、もぅ――――だめええええ――――!!」
頭の中の理性が、融けて、思考がカタチを作らない。
どんなに強いアルコールを口にしたときより、ずっと、体が火照っているのが分かる。
羽居のモノ上で、灼けるほど熱い蒼香の舌と私の舌が、触れる。
でも、私たちはそれを避けることなく
羽居の汗と、互いの唾液を、互いから奪い取るかのように、
舌を絡め合わせる。
ごくり、と喉を焼き、体の中に伝い落ちる、私たちの体液。
それは、まるで、媚薬のようで。
「あ、うぅ...や、やあ...やぁあぁ―――!!」
全身を汗に濡らし、くねらせながら喘ぐ、羽居の声。
一際、悲痛な彼女の声が、限界を告げる。
私はもう、眼を閉じて一心不乱に、羽居を愛撫して、蒼香を求めた。
「あー――、あきはちゃん、蒼ちゃん――――私、私――――!!」
遠くで、近くで、私の、蒼香の名を呼ぶ羽居のこえがする。
鼻腔を刺激するのは、濃厚なまでの汗と涎と精の匂い。
その叫びに呼応して、その匂いに包まれて、どくんどくん、と彼女のモノが脈動する。
ああ、多分。どくどくといっているのは、わたしなのかも、しれない。
きっと、舌を通して、羽居の気持ちよさが、私にも伝染ってしまってるんだ。
だって。
「や...あ...あ、あ、あぁ...あ、あ、あ、あああああ!」
文字通り、弓のように仰け反る羽居の手を握り締めて、私も――――達してしまう寸前なんだから――――。
「やっ...くぅう、だ、めぇぇ―――あきはちゃん、蒼ちゃん――――私、私――――!!」
限界を告げる羽居の叫び。
ドクン!!
爆発するように、脈動した羽居の『モノ』
白い何かが、放たれてのが、眼で見なくとも鮮明に脳裏に焼きついた。
「う、あ―――あ、あ、ぁぁああああああああ――――――!!」
それは、誰かの絶頂の、声。
その声を上げたのは、自分だと気付きもせずに。
私の意識は、押し寄せてくる感覚の波に飲まれて――――消えた。
《つづく》
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