「してくれないと、蒼ちゃんの処女貰ってあげない」
そうだな。
羽居が手を動かし脚を閉じそうになるのを堪えているのがわかる。
怖がっているんだ。
でも、必死に我慢している。
それなのにあたしが躊躇してちゃダメだよな。
「いくよ」
精一杯、優しい声を出して力づけ、腰を動かした。
みしみしとペニスが埋まっていく。
その中の温かさと柔らかさ。
それでいて入るそばからひしと抱きつかれるような締め付け。
気持ちいい。
蕩けるほど気持ちいい。
同時に、体内へ異物を挿入される恐怖と痛みとを我が事のように感じる。
あたしは女だから。
経験はないけど、何度もそんな事を想像していたから。
そして羽居の苦痛に歪んだ顔。
「羽居、大丈夫か」
ぶるぶると首を横に振る。
「痛い、痛いよ、蒼ちゃん」
大声でなく、小さく押し殺した声だった。
かえって、羽居の受けている痛みを強く感じる。
思わず抜こうとしたら、羽居に腕を掴まれた。
「やだ、最後までして」
「でも……」
「蒼ちゃん」
叱るような声。
それに促され、再び羽居の体を突き貫く。
もう少し、もう少し……。
きつい。
でも、これで……。
「全部…入ったよ、羽居ぁ」
「本当……?」
「ああ、あたしの羽居の中に全部呑み込まれた。凄く、気持ちいい」
「よかった」
苦痛に歪んだ口から洩れる、間違いない喜びの声。
しかし、今は酷いことにその苦痛の色もあたしの心を引かなかった。
感激。
身が震え、どうにかなりそうな感情の高ぶりがあたしを支配していた。
羽居と一つになっている。
羽居の奥深くでつながっている。
羽居の初めてを、あたしが、あたしが……。
羽居とは何度もキスをして、体を重ねて、互いに相手の体に触れて気持ち良
くして、声をあげて達した事もある。
でも高みの中で幾度となく羽居に望まれても、膣口から奥に指を入れたり、
怪しげな性具で純潔を奪う真似はしなかった。
あたし自身も処女だったから、そこまでの未知の行き過ぎた行為に怖れがあ
ったし、羽居にそんな事で初めてを捨てて欲しくなかったから。
女同士なんて、やっぱり、変だと思っていたから。
だけど、それは、ずっと心の奥底の願望を沈めていただけなんだ。
だって今、こんなに泣くほど嬉しいもの。
羽居に苦痛を与えているというのに。
こんな、異常な行為で羽居の処女を散らしたのに。
「動くぞ、羽居」
返事を待たずに、あたしはぎこちなく腰を動かした。
挿入に比べれば楽だけど、戻る行為もきつく力を使う。
抜く寸前まで腰を浮かせて、また奥へと戻る。
何度も、何度も、抜きかけては貫いた。
羽居はその度に仰け反り、声を洩らし、苦痛に顔を歪める。
ごめん、羽居ごめん。
でも止まらない。
次はあたしの番。
その時にどんなに痛くても我慢するから。
羽居のしたいようにしていいから。
だから、今は。
ごめん……。
「いいよ、蒼ちゃん」
「え……」
「蒼ちゃんだって、初めてそーにゅーしてるんだから、気持ち良くなって」
健気にも羽居は微かに笑みすら浮かべた。
「それに、さっきより…うんん、平気になってきたみたい」
そうかもしれない。
あたしもむやみに動くのでなくて、力を入れ過ぎずにスムーズに動けるよう
になっていたし、羽居の中がただきついのでなくて、少しにゅるにゅるとした
感じが強まっている。
少し、表情も柔らかくなっている。
でもまだ絶対に痛みはある筈なのに。
「蒼ちゃんがなかにいると思っただけで、嬉しい……」
本当に、可愛い事を言うんだな、おまえ。
その言葉だけで頭がおかしくなりそう。
上半身を寄せて、その半開きの唇をちゅっと吸った。
「もっといろいろしてあげればいいんだろうけど、そろそろ出ちゃいそう」
「そのまま、抜かなくていいよ」
「大丈夫なのか?」
「うん、平気。それに初めてはそのままして欲しいから」
「うん、あたしもだ」
さっきのむずむずとした感じがまた起こっている。
放っておいたら、また精液が飛び出すのだろう。
先延ばししたかったけど、ずっとこうしていたかったけど、どうやって我慢
したらいいかすら、わからない。
ただ、腰を動かして、その衝動に従う。
「あ……」
突然だった。
どくんと腰から放ったのがわかった。
今度は、それが快感だとわかる。
男としての激しい快感。
そして、羽居の中に出したという感激。
あたしのを羽居の中に弾けさせたという歓喜。
「蒼ちゃんのが、びちゃって広がったのがわかった」
羽居もまた酔ったように呟いた。
ゆっくりとペニスを抜いた。
どろどろになったペニス。
羽居の秘裂もまた、白濁液と自分の愛液でびちゃびちゃになっていた。
そして、こぼれる白に混ざる、うっすらとした紅。
それはなんとも淫靡で、そして感動を誘う眺めだった。
◇
「じゃあ、今度は蒼ちゃんの番だけど……」
「今更止めるなんて言うなよ」
「言わないけど、いいの?」
いざ始めるとなると、今度は羽居が躊躇いを見せた。
自分の股間の屹立と、あたしの秘裂を交互に見て首を傾げている。
ある意味、あたしよりあたしの中について詳しいから、指以上に太く長いペ
ニスの存在にあたし以上の恐れを感じているようだった。
そんな羽居にあたしはあえて悲しそうな顔をして見せた。
「そんなに、羽居があたしとするの嫌がるなんてショックだな……」
「ち、違うよ。でも、本当に痛いんだよ」
「そうみたいだな。でも羽居だって我慢出来たろう?」
「蒼ちゃんの方がここも小さいし、きっとあたしより痛いよ」
「そんな、先に注射済ませて、列の後ろの奴を脅かすような事を言うな」
とは言え、羽居のペニスの方が大きい。
こうして見るとずっと大きく見える。
ダメだ、ただでさえ怖いのに、羽居に増幅されつつある。
「平気だ。羽居のだから平気だ」
「わかったよ」
羽居が頷くのを見て、あたしは寝転んだ。
さっきの羽居のように、仰向けで待つ。
「これでいいか?」
「うん。これなら、そのまま入れても大丈夫かな」
羽居はあたしの秘裂をじっと見つめて呟いた。
さっきので、充分に興奮してしまっている。
ピンク色の粘膜は赤みを増し、恥ずかしくなるほど濡れてしまっていた。
あたしに羽居が体を重ねるのを待つ。
が、羽居はいきなりぐいとあたしの足を持ち上げた。
ほとんどでんぐり返しみたいな格好にさせられる。
当然ながら、激しく自己主張を続けるペニスだけでなく、その下の濡れた秘
裂やさらに下のすぼまりまでが、一直線に並ぶ様に突き出されてしまう。
「やだ、羽居、何するんだ」
「わぁ、凄い眺め。えっちな感じ」
じたばたとするあたしを、羽居は意外に強い力で拘束する。
そもそも腰を折って足をつかまれていると、多少暴れても何も出来ない。
「これなら、入れやすいでしょ」
羽居は宥めるように言って、片手を離してあたしのあそこに触れた。
指でそっと開かれる。
「ここに、入っちゃうんだ。
あたしのが、蒼ちゃんの中に……」
呟いて、あたしの顔をまっすぐに見る。
あたしは抵抗を止めた。
ここまで来たら、後は羽居の好きにしてもらうしかない。
羽居が腰を浮かせて、先端を当てた。
さすがに体が硬くなる。
が、羽居は先端を擦るように動かすのみ。
さっきのあたしと違って、うまく出来ないのではなくて意図的に。
谷間を浅く行き来している。
ぬちゅ、ぬちゅと水音がする。
羽居のペニスにあたしの愛液がまとわりつく音。
羽居のペニスからこぼれる露液があたしにこすりつけられる音。
それは気持ち良かった。
確かに気持ち良かったのだけど……、物足りなかった。
「羽居……」
「うん?」
「入れて」
なるべく軽く、言った。
でも、それで羽居はぱっと顔を輝かせた。
「うふふ。蒼ちゃんに、お願いさせたかったんだ」
うわ。
顔が紅くなる。
でも、それを笑ったりはせず、羽居は逆にいつになく真面目な顔になった。
一瞬の沈黙。
目と目を合わせてする会話。
「入れるね」
「うん」
さっきと違う。
まっすぐ、正しいのかわからないけど、まっすぐ羽居が来るのがわかった。
広がる。
羽居が進んでいる。
「きつい……、蒼ちゃん、ちょっと我慢してね」
「気にしなくていいから」
「うん……」
ずんと、強く、みりみりと。
ッッあああ。
ひィッッ…………ッッ。
シーツをぎゅっと掴んだ。
下の布団ごと強く握り締めた。
痛い。
痛い。
痛いよ。
体が裂かれる。
やだ、やだ。
異物感。
体が千切れる、壊れちゃう。
お腹の奥まで、ぐちゃぐちゃにされちゃう。
でも……。
「蒼ちゃん」
耳元で声がした。
「全部、入ったから」
「う、うん、痛い、痛いよ、羽居」
涙がこぼれた。
子供みたいに、抑制無く泣いている。
「ごめんね」
謝らなくていい。
まだ痛いけど、でも、嬉しいんだから。
羽居が中に入ったのは、凄く嬉しいんだから。
「だ、大丈夫……、でも、少し抱きしめて……」
《つづく》
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