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「変な匂い……」


 鼻先で匂いを嗅ぐと、決して芳しい香りなどは湛えていなかった。
 だけど、不快ではない。
 羽居のだと思うと、なおさらに……。
 ティッシュをとって胸と手を拭う。

「羽居もはやく拭いて……、おい、羽居、何をしているんだよ」

 驚き、最後は思わず叫んでいた。
 妙に静かだなと思って顔を上げた時、羽居は掌に顔を寄せて、舌で舐めてい
る所だった。
 羽居が、あたしの精液を舐めている。
 ぽかんと思考停止になって、それから慌てた。

「ええとね、蒼ちゃんの出したせーえきをね」
「そんなのは見てわかる。そんなの舐めるな」
「蒼ちゃん、そういう言い方はダメだよ。この中には、蒼ちゃんの未来の子供
がいっぱい……、ああん」

 強引に手を取って拭いてしまった。
 羽居はあたしの邪魔だてに不満そうだったが、気を取り直して逆にあたしの
体を同じように拭いてくれたりもした。
 簡単な後始末をすると、二人で放心したようにへたり込んだ。

「凄かったね」
「そう、だな。その……、違うものだな」
「いつもと? そうだよね、いきなりでびっくりしちゃった」
「ああ。しかし、それにしても……」
「何?」

 いや、そのな。

「よくは知らないけど、一回出せばおさまるものじゃないのか?」
「どうなんだろ。でも、全然ちっちゃくならないね、二人とも」

 羽居とあたしの視線が、二人の股間を行き来する。
 そこは、勃起したままのペニスがさっきからまったく衰えを見せず屹立して
いる。
 小さくなるどころか、さっきよりなんだか大きくなっているみたい。
 見ているとさっきのぎりぎり途中までの甘美な感覚を思い出す。
 それに、もう一度最後までしたら、今度はどうなんだろう、そんな事を考え
てしまう。

「ねえ、蒼ちゃん」
「うん?」
 
 ぼんやりとした夢想を羽居の声が破った。
 いつものアルファ波が出ているような声でない。
 どこか思いつめた声……。

「蒼ちゃん、どれだけわたしがお願いしても、わたしの初めて貰ってくれない
よね。誰か好きな男が出来てからして貰えって言って。
 指とか道具でやったら勿体無いだろって、そう言っていたよね」
「言った」

 ああ、わかった。
 羽居が何を言うのか。
 その視線があたしのペニスをじっと見つめている。

「あたし、初めては蒼ちゃんがいい。
 これでするのなら、いいでしょう。ちゃんとした本物だよ?」
「羽居……、ダメだよ、そんな」
「絶対に後悔しないから。
 でもね、もしも今しないで、これが消えちゃったら、わたし絶対に後悔する。
 そうしたら、外に出て誰でも良いから処女あげちゃうんだから」

 羽居はそれだけ強く言うと、うってかわって懇願するような顔であたしの答
えるのを待つ。
 その顔、弱いんだよな……。

「ずいぶんと酷い脅迫だな」
「蒼ちゃん」
「そんな何処の馬の骨とも知れない男に、羽居を好きにさせる訳にはいかない
よな、おまえが良くてもあたしは許さない」

 羽居の顔が少し変わる。
 何かを期待するような、そんな色が浮かんでいた。

 いいのか。
 言ってしまっていいのか?
 ……。
 いい。

「それ位なら、あたしが羽居を貰う」
「嬉しい……」
「ただし、条件がある」
「うん、何でもする。言ってよ」
「その代わり、あたしの初めては羽居に貰って欲しい」

 羽居の顔を見てゆっくりと言葉を口にした。
 その声はしっかりと耳に届いた筈だ。
 しかし羽居は驚いた顔であたしを問い返すように見た。

「聴こえなかったか?
 あたしの此処に……」
「聴こえてる、聴こえているよ。でも……、いいの?」
「ああ」
「わたし男の人じゃないよ。女の子だよ」
「知ってる」

 羽居は狼狽したようにあたしに問い掛ける。
 あたしは平然と答える。
 
「だって、でも」
「羽居がいいんだ。いや、羽居じゃなくて嫌だ。
 羽居の初めてを捧げてくれるんなら、あたしも羽居に貰って欲しい。
 それとも、あたしのなんか嫌か?」
「嫌じゃないよ。でも、でも……」
「一緒に……。羽居と一緒がいいんだ。お願いだから」

 羽居の目に涙が浮かんだ。
 あーあ、あたしのキャラじゃないのに、こういうの。
 でも、ここで変に格好つけるのは、馬鹿だ。

「蒼ちゃん、嬉しい……」
「泣くなって」

 羽居の体を抱き締めた。
 何度もこうしたけど、いつもとは意味が異なる気がする。
 しばらく何もせず、じっとしていて、どちらともなく身を離した。

 うん、と頷きあって、制服の上も脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿になる。

「蒼ちゃん、綺麗な体……」
「それは皮肉か?」
「ううん、違うよ。ほっそりしてそれでいて丸みがあって、ちょっと男の子み
たいだけど、しっかり女の子で、私大好きだよ」
「あたしは、羽居の柔らかい女の子らしい体が好きだよ。触り心地も最高だし」

 でも、今はその、大きな胸、滑らかな肌の曲線に、不似合いなものがあるの
が、何とも違和感があって、でも、不思議に目を奪われる。
 グロテスクだけど、むしろそれ故にぞくりとするような感覚。

「どうする、先にどちらがする?」
「それは、わたしが先に頼んだんだもん、わたしからだよ。いいよね?」
「わかった」

 うんと大きく頷くと、羽居はベッドに横たわった。
 仰向けであたしを見る。
 促されるようにあたしもベッドを軋ませた。

「こうで、いいのかなあ」
「さて……、どうなんだろう」

 羽居が脚を広げる。
 何度も見た場所だというのに、特別の感慨がある為か、どきどきとする鼓動
が強く感じられる。
 今日は直接触れてはいないのに、すでに羽居の谷間は潤いに満ちていた。
 吸い込まれるように、そこに顔を寄せる。
 むわっとするような羽居の匂い。
 それに混じって、さっき嗅いだ青臭い匂いが混じっている。
 羽居の女の匂いと男の匂い。

 舌先を濡れた秘処に近づける。
 間近にそっくり返ったペニスがあるのが何とも変な感じ。
 頭や頬に触れる幹。
 その根元にも、ちゅっと口づけして、羽居の可愛い処を指で広げる。
 つーっと愛液がこぼれ落ちた。

 可愛い反応。
 ねっとりとした蜜に舌を塗れさせる。
 音を立てて啜りあげる。
 羽居が、喘ぎ声をあげる。
 可愛い。
 本当に可愛い。

「だめ、蒼ちゃん」
「なんだ、いつもは、もっとってせがむのに」
「今日だけはダメ。このままだといつもみたいに指と唇でイっちゃうから。
 蒼ちゃんので幸せになりたい」
「そうだな。でも、脅かす訳じゃないけど痛いだけかもしれないぞ」
「それでも、幸せになれるの」
「うん」

 身を起こして、ちゅっと羽居とキスした。
 さっきあたしの精液を舐めていた唇。
 今羽居の愛液に濡れている唇。

「いくよ」
「……」

 少し恥ずかしすぎる格好かもしれないけど、お互い初めてで勝手がわからな
いので、羽居の脚を掴んで大きく開かさせて貰った。
 濡れた性器もお尻の穴も、隠れる事無く晒される。

「恥ずかしいよ、蒼ちゃん」
「我慢してくれ」
「うん……」

 緊張と羞恥、その二つでいっぱいの羽居。
 あたしもまた、心臓をばくばくと言わせていた。

「入れるよ」
 
 根元を持って体を被せる。
 腰を浮かせて目で確認しつつ、そこへ近づける。

 にゅるっ。
 
 羽居の花弁があたしのペニスの先に触れた。
 ふあ……。
 これだけで、なんて気持ちいい。
 呻き声を抑えつつ、それは置いておいて入れるべき処を探す。
 さんざん見慣れているのに、いざとなると勝手がわからない。
 いたずらに気持ちのいいねばねばに敏感なペニスの先を擦りつけているよう
な有り様で、慌てる。
 このまだと、また出てしまいそうだった。
 慌てながらも、こんな格好でペニスを前に倒すのって変な格好、といつもの
あたしが何処かで冷静に断を下す。

「蒼ちゃん、ここ」

 羽居の手が重ねられた。
 頷いて、腰を落とした。
 さっきとは感触が違う。
 滑る感じがなくて、前に進む。
 でも、すぐに圧迫感で遮られる。

「羽居……」

 声が震える。
 まだ、止められる。まだ……。
 しかし、羽居はあたしの戸惑いを察して首を横に振る。

「してくれないと、蒼ちゃんの処女貰ってあげない」


                                      《つづく》