[an error occurred while processing this directive]



 口元が不穏な笑みに歪むのが分かる。どうにも人が良くない俺。
 琥珀さんの身体から手を離すと、くるりとひっくり返す。琥珀さんはなすが
ままで俺の腕の中で回り、俺に背中を向ける格好になる。
 顔がなんとか俺を追おうとするけども、すでに背中に回り込んでいているか
ら…… 
 
 琥珀さんの背中にキスをする。手でも滅多に触れない、肩胛骨の間。

「ああっ!」

 やはり性感帯がここにもあったらしく、琥珀さんの首筋がひくん、と反った。
 いや、琥珀さんの身体はどこも感じるみたいだから、唇さえ着ければ面白い
ように反応するんだけども……俺もこんな背中の真ん中を指でつつかれたら、
きっと琥珀さんと同じ様に震えてしまうだろう。

 琥珀さんの背中は、肩胛骨の盛り上がりや脊椎のしなやかな稜線の流れと、
染み一つない肌でまるで新雪が積もった後の平原を見る様だった。それに俺は
足跡ではなく、口づけの後を転々と、兎の足跡のように飛びながら残していく。

「志貴、さん……ああっ、ふぁ……あああ……」

 腰の窪みの辺りまで唇は進んでいく。琥珀さんは背中への愛撫の刺激を、布
団を掴みながら堪えている様だった。白いリボンが揺れる様は、薄闇の中でも
肌と同じくぼうっと浮かび上がってくるようで――
 俺は唇と手を、琥珀さんの背中に這わせていた。そしてそれはお尻の方へと
――

「柔らかい……琥珀さんのお尻……」
「あっ……し、志貴さん、そんなことしないでくださ……ああんっ」

 俺は琥珀さんの細腰を抱え込むと、つるんとした桃の実のような琥珀さんの
お尻に頬摺りをしていた。胸の無条件なまでの柔らかさと違って、お尻はほど
よい緊張と面積があってすりすると頬摺りをしていると――ずっとこうしてい
たくなる。

 琥珀さんは四つんばいになり、腰だけを掲げる様な格好だった。お尻に頬摺
りされるのがよほど感じるのか、何度もそのお尻の筋肉にきゅっと力が入って
動くのを感じる。

「お、お尻に……志貴さんが私のお尻にお顔を……んああ……」
「綺麗だよ、琥珀さん……こんなに柔らかくてもう……ちゅ……」
「ふっあ!?」

 俺のキスは、琥珀さんのお尻の、というよりもお尻の谷間に印された。その
きわどい位置に琥珀さんが恥ずかしがったのか、驚くような声が上がる。
 琥珀さんが逃げないのを察して腰を押さえる手を離し、お尻を掌でなで回す。
こんな所の肌なのに吸い付くように柔らかく、甘いと思える触感がある。

 琥珀さんをもっと恥ずかしがらせたい――そう、俺が琥珀さんのお尻の触っ
たときに考えたことを、今しようとして。
 俺は両手の指を琥珀さんのお尻に触れ、その柔肉を優しくだけど確実に掴む。
 そして、琥珀さんのお尻の真っ正面に顔を向けると、その指を両脇に――

 むりむりむりっ、と果実の実を割開く、水気の多い音が聞こえるような。

「ああっ、あああ!し、志貴さん、そこは……はぁぁああ!」
「見えるよ……琥珀さんのお尻の穴……」
「や、志貴さん……志貴さんが私の、そんな所を……うん……ああ……」

 琥珀さんのお尻の筋肉がきゅっと締まって、俺の手から最奥部の秘密の窄ま
りを隠そうとする。でも、それはむなしく俺の手の中でお尻をひくつかせるだ
けだった。

 むりり、と割開かれた琥珀さんのお尻の底に、はしばみ色の肛門が見える。
 それはきゅっと口を閉ざした綺麗な菊の花のような姿をした、排泄器官の出
口とも思えない姿を見せていた。セックスの間に触れることもあったけど、目
の前からまじまじと見つめることもなかったので――でも、肛門の姿も琥珀さ
んは愛らしく思えた。

「綺麗だよ、お尻の穴……ほら、結構お尻の穴って女の人は大変なことになっ
てるって聞くけども、筋が数えられるほど綺麗に窄まってて……」
「し、志貴さん……そんな、説明しないでください……ふ、ぁあ……」

 琥珀さんのお尻の穴を見ていると、ついそんな言葉が口を突く。
 お尻を掲げる姿勢で、俺の目の前に肛門を晒している琥珀さんはなんとも言
えない艶をその身体に帯びていた。このままもっと強引に琥珀さんを責めて虐
めたい、という衝動にも駆られるけどもぐっと我慢して――

 目を下に下げると、濡れた秘裂がお尻の肉に引っ張られて顔を見せていた。
 その琥珀さんの花園も魅惑的だってけども、俺には――お尻の穴に誘われて
いた。少しづつ顔を近づけると、息が触れるのか琥珀さんのお尻の肉がひくひ
くと震える。

「志貴さんっ、そんなところに……ああああん!」

 お尻の肉の間に、口を潜り込ませるような格好で俺は、お尻の穴にキスして
いた。
 お尻の穴に口づけするという倒錯的な行為だったけども、それによって屈辱
を感じるとかそんなことは無かった。むしろ、俺が琥珀さんの秘密の奥底に唇
を触れるという喜悦の方が占め、唇に感じる微かな風合いも敏感に感じ取る。

「ああっ……あん、ああう……ふあっ、ああ……」

 唇だけでは物足りなかった。舌を伸ばし、琥珀さんの肛門をつつく。 
 舌の先に琥珀さんの菊門が当たる。それはひくんと震えて――お尻の肉がき
ゅっきゅと小気味よく収縮する。琥珀さんのお尻に口を埋め、肛門を口舌愛撫
する。

「ん……んちゅ……ふぅ……ん……」
「ひぃ……ひぁっ、ああ……志貴さんが私の、私のお尻の……そこに……はぁ
ぁ……」

 琥珀さんの腰が何度も跳ね上がりそうになる。俺が舌の先を細めて琥珀さん
の肛門を押し込んだからだった。琥珀さんのお尻の穴のかすかな味と、むわり
と立つ女性の肌と汗の薫りが俺を夢中にさせる。

「志貴さん、はぁ……いいああっ!」

 お留守になっていた手を、肛門の下にある秘裂に伸ばす。
 琥珀さんの小振りな割れ目をゆっくりと擦る。その割れ目の縁に映えた陰毛
のしゃりしゃりとした指触りを確かめると、そのままぬるりと――中の粘膜の
襞に潜り込ませる。

 そこは温かく、ぬるりと濡れていた。前の琥珀さんとの行為で残した俺の精
液が、琥珀さんの愛液と混じり合ってぬるぬるとしていて……それが俺の指を
動かす潤滑油となる。

「はぁ……ふぅ、ああ……んっ、はぁ……ああ……いいっ」

 琥珀さんの両方の秘所を責める。指が触れている女性器の複雑な形に比べる
と、唇にある肛門は随分とシンプルな形に思える。舌の先を動かし、小刻みに
震わせて肛門をほぐそうとする様に――指もまた膣口の回りの複雑な襞のくぼ
みを探る。

「琥珀さん――いくよ――」
「志貴さ……あぁ……はぁぁあああーっ」

 琥珀さんの背中がくーっと歪む。
 俺はゆっくりと琥珀さんの膣に指を差し込んでいた。指が中に忍び込むと、
満たされた精液が漏れ溢れて俺の手を汚す。そして入り口の、まるで太いゴム
輪みたいな括約筋の抵抗がぎゅっと俺の指を締め付ける。

 琥珀さんのあそこがこんなに締め付けるのだったら――そんな陽炎のように
ゆらりと立つ興味と欲望が俺を煽る。だが、乱暴にしては行けない。二度三度
と肩で息をして落ち着くと、俺は琥珀さんの肛門から舌を離した。

「はぁ……お○んこの中に志貴さんの指が……はぅん……あん……」

 俺は片手の指を琥珀さんの秘所に近づけ、溢れ出した粘液を指にまとわりつ
かせる。そして、琥珀さんの腰に囁きかける。

「お○んこの中だけじゃなくて……ここにも俺の指を入れてあげるから」
「え……志貴さん……ど、どこに……はぁ……っ!?」
「息を抜いて、琥珀さん……」

 俺が指を宛ったのは、琥珀さんの肛門だった。
 すでに琥珀さんの割れ目の中に、襞を巻き込みそうに俺の指が埋もれている
淫らな光景が見える。それに加え、綺麗に窄まり唾液に濡れた肛門の上に俺の
指が触れ、そのまま中心にくっと指を突き立てた――

 秘所とは比べ物にならない強い抵抗。流石に無理か、無理なら――と俺は諦
めようかと思う。だが次の瞬間に抵抗はゆるくなり、俺の指はゆっくりと琥珀
さんの肛門を押し広げ、侵入を開始する。
 ず、ずと進む指。それは徐々にであるが確実に――そして甘く強い琥珀さん
のあえぎが和している。

「はぁ……お尻……お尻に志貴さんがぁ……ふぁぁ……」
「入ってく……すごく強くて……おお……」 

 お尻の入り口の抵抗は強く、指が鬱血し千切られそうになる。第一関節から
第二関節の間までがお尻の中に入るのが精一杯なほどで、それ以上を押し込む
のは無理ではないけども、忍びない。

 俺の目の前で、琥珀さんの前後の門に指が埋め込まれていた。深く奥まで入
る膣口と、浅くしか入らない肛門。この二つの穴を俺に塞がれている琥珀さん
のお尻。
 腰を掲げた琥珀さんが震えるのを感じる。そして俺は、琥珀さんに――

「琥珀さん?おしりとお○んこ、どっちが感じる?」
「え……そんな……んぅぁ……あああ……」

 ちょっと意地悪な質問を口にする俺。琥珀さんは戸惑いを覚えたようだった。
 でも、答えるまでもないような気がする。琥珀さんのお尻に指こそ入れてい
るけども、堪えているという感じで秘所ほどの快感を感じているかどうかが怪
しい。それに俺もお尻の穴に指を居られれれば痛いだろうし。

「……志貴さん……その……まだ、私はお尻の方は……でも、志貴さんがもし
そちらの方をお望みであれば……我慢しますから、どうぞ――」

 そんな健気な琥珀さんの答え。
 それを耳にすると、俺は居たたまれなくなる。琥珀さんのお尻の穴から指を
抜き、膣口の中の指も抜き去る。そして、両穴を責められた琥珀さんがくった
りと横たわる姿を見つめながら、再び琥珀さんの横に寄り添う。

「志貴――さん?」
「御免……琥珀さん、意地悪しちゃって……」

 指を伸ばし、琥珀さんの頬に触れようとする。この指が拒絶されたら俺の立
つ瀬がなかったが、琥珀さんは微かに潤んだ瞳で俺を見つめる。俺の指は琥珀
さんの肌に触れて――
 琥珀さんが手を伸ばして、俺の手を頬にぎゅっと押しつけた。それはしっと
りと木目の細かな肌の感触と柔らかさを覚えさせる。

「……痛くなかった?琥珀さん」
「……いえ、平気ですから……でも、ほんの少しお尻の方でも……」

 琥珀さんが静かに言うのを、俺は聞いていた。
 そして腕を差し伸べ、琥珀さんを胸の内に収める。抱きしめると琥珀さんの
身体の小ささが分かる。こんなに細く――という、腕の中に収めた実感。

 しばらくこうして琥珀さんを抱きしめ、じっとしていたかった。
 それは琥珀さんの敏感な部分を責めるよりも、心の中の充足感があって……
 胸の上の琥珀さんが、抱きしめている俺の顔をちらりと見つめる。

 外の嵐の音が大きいけども、それは耳には入らない。

「志貴さん……どうかこのまま……その、前でも後ろでも志貴さまのことを…
…」
「琥珀さん、その……やっぱりお尻の方は俺の意地悪だったから……でも、琥
珀さんがいいのなら……琥珀さんと繋がりたい」

 そう口にすると、俺の体温がかっと上がった。
 言葉を口から出すと、心臓が急にどくどくと鼓動を打ち始める。琥珀さんと
合った瞳と視線が交差し、その向こうのほんわりと微笑み、俺を受け入れてく
れる優しさを感じる。

「どうぞ……私も志貴さんにしてほしかったので……」

 琥珀さんがもぞりと身体を動かすと、俺の身体の下で足を広げ、腰と太股に
巻き付けるように回してくる。
 俺は硬く勃起しているペニスを片手で触り、琥珀さんとの腰の位置を確かめ
る。正面正常位だから、思ったより腰を深く組み合わせないと届かない……
 琥珀さんも腰を曲げて、丁度俺を迎え入れる姿勢になる。腕が俺の首に回り、
項で組み合わされる。亀頭がぬらりと濡れた粘膜の窪みに触れると、俺は手を
離して布団の上に腕立て伏せをするように突いて――

「いくよ、琥珀さん――」
「はぁ……んっ、志貴さん――はぁ――っ――」

 腰が進む。そして俺の男性自身はぬるりと締め付けられながら、粘膜の柔肉
の中に埋もれていく。琥珀さんの腰の奥深くに、俺の身体を埋め込む。二人の
身体が繋がるこの快感というのは――何にも代え難い。

 琥珀さんが腕に力を入れ、俺に抱きついてくる。白いリボンが揺れる。
 すでに一回中で放った琥珀さんの膣道の中を貫いていく。それは回りから締
め付ける襞の寄った内側の道の妙なる快感であり、俺は腰を奥深くに突き入れ
る。

「入った……琥珀さん……動かすよ……」
「来てください、志貴さん……はっ、あ、ああ……」

 俺は細波が次第に波頭を上げてくるようにリズムとストロークを変えて腰を
動かし出す。密着する琥珀さんの身体は熱いくらいで、二人の汗と微かなお香
の薫りが混じり合う空気を吸う。俺は腕で身体を立て、琥珀さんの中を動く。

「あ……ん……あんあんあん……ああ……うっ」

 こんこん、と腰骨をたたき合わせるようなストライド。そして琥珀さんの中
でどんどんピッチを上げていく。玉袋が琥珀さんの会陰部を叩くのが分かるほ
どに――そして琥珀さんも俺の肩に指を立てて、甘い喘ぎ声を漏らしながら。
 俺は琥珀さんの中を貫き、快感のボルテージを上げていく。動きに複雑なひ
ねりを加え、こそげるように抜く行程を強調したりしながら……それを琥珀さ
んの膣道は何も逃さない様にまとわりついてくる。

 止まることなく、俺はひたすらにピストン運動を続けられるような気がした。
 でも、そんな意志とは裏腹に腰の中が爆発しそうな快感がこみ上げてくる。
琥珀さんが俺のお尻に回す足もぎゅっと力が籠もってきて――喘ぎ声に明確な
意味を持たない、ギリギリの状態の息が多く混じってくる。

 二人ともじっとり汗を掻き、湯気が立ちそうになりながら。
 吹き付ける風が揺らす枝葉の音を本能のどこかで聞きながら、俺は……腰に
蟠るこの快感の熱い液体を、スプリントを駆けて排出しないとどうにかなって
しまうかのように激しく――

「琥珀さんっ……琥珀さんっ、ああ……っ」
「志貴さん、いいです、私ももう……中に……私の中に志貴さんの熱いのを…
…ああ!」

 ぐぅっと身体が反るような強い快感。琥珀さんも俺と布団の間に挟まれてい
たが、びくびくと痙攣しているかのように――そして、管を通って俺の精液が
沸騰しそうなほどの熱い快感を放ちながら、琥珀さんの中で――

「ああっ……う……はぁ……」
「ああ……いいっ……は、ああ……」

 二人ともイってしまって――中で放つと、その穴を塞ぐかのように流れ込む
琥珀さんの温かい力を感じる。琥珀さんを押しつぶしてしまわないようにしな
がら、俺は。
 精を放った後なのに、行為後の疲れとむなしさにも似た虚脱が襲いかかるこ
とはなかった。俺はそっと顔を下げて、琥珀さんの頬にキスをして――

「琥珀さん……素敵だったよ――」
「志貴、さん……」

 ゆっくりと抱きしめ合いながら横たわる。
 お互いの身体を感じながら抱きしめていると、外の風の音なんか聞こえない
――そんな気分になってくる。今、大事な人がこうして寄り添ってくれるのは
何より心強くて、温かくて。

 ごうごうと風が唸り、屋根に吹き付けて柱と梁を軋ませても、それに怯える
ことなく、俺は静かに目を閉じた。ああ、風が――吹くなぁ――


            §            §

 その瞬間、瞼の裏が爆発したように明るくなった。
 痛いぐらいの光に腕を回して目を守ろうとする。そして規則正しいたーん、
たーんという木の滑り、たたき合わされる音……これは雨戸を開ける音か?
 なんとか目を開けようとする。眼鏡は掛けっぱなしで眠っていたのは危ない
ことだった――フレームを曲げるといろいろ大変なことになる。

 強い明かりに徐々に目が慣れてくる。腕の陰で俺は辺りの状況を確認する。
 寝室の南に面した雨戸が開け放たれていた。今まで暗かったこの部屋に、神々
しいぐらい強い光が差し込んで……って、台風が来てたんじゃないのか?

 目を細める俺の眼の中に飛び込んできたのは、晴れ上がった農村の庭の光景
だった。まだ地面は濡れて、吹き抜けた風によって乱れた落ち葉の跡などが残
されていたが、今は間違いなく晴れていて――まるで嘘みたいに。

 体を起こすと、外の風が心地よく涼しい。寝巻きもなく裸であったからか…
…この格好で思い出して横を見ると、琥珀さんは居なかった。
 いや、でもそれを驚き慌てることはない。だって、今こうして雨戸を開けて
いるのは――

「おはようございます、志貴さん!朝ですけどちゃんとお風呂入ってますよー?」
「あ、ああ……おはよう、琥珀さん」

 洋服にエプロンの琥珀さんは、日差しを背に朗らかに笑っていて――白いリ
ボンが陽の光を溶かしたように眩しい。俺はぼうっとその姿を見つめていて―


「お風呂が上がられましたらお食事用意してますからねー」
「あ……ああ……台風じゃないんだ、今朝は」
「ええ、掠っただけで通過したみたいですね。朝のラジオで聞きましたよー」

 琥珀さんがんぅー、と気持ちよさそうに背筋を伸ばす。
 ふぅっと俺にも微笑みが漏れるけども――ふと、思いついた言葉があった。
それはこの台風一過の晴れ空に触発されたのか。わからないけども。

「でも、嵐だったら志貴さんを足止めできたのに残念ですね」
「ん……まぁ、確かに名残惜しいけどね。でも琥珀さん、ほら――風が嵐を押
し流してくれれば、こんなに日差しは眩しくて世界が美しくて……今の俺たち
も……俺が風ならこんな風に今は晴れ上がってるのかな」

 そんな、言葉。

 琥珀さんは俺を一瞬怯んだような瞳で見たが、それは俺の錯覚だったのか…
…すぐにぷ、と吹き出して、肩を振るわせて笑い始めて。

「もう、昨日の夜から志貴さんはおかしーですよー!」
「う、うう……せっかくロマンチックな朝の挨拶をしたかっただけなのに、ひ
どいや琥珀さん」
「嫌いじゃないですけど、志貴さんだとどうもキザっぽいですよー、はいはい、
起きてくださいお布団片付けますからー」

                                      《fin》