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「嫌か。それなら無理にとは言わない」
「……」
「そうだな、有間から見ればこんな女、ずっと年上で対象外か、すまんな、不
愉快な事を」
「違います。一子さん綺麗だし、小さい頃からちょっと憧れていたりもしたし、
ただそういう異性とかじゃなくて……、ええと何言っているんだろう」
「……とりあえず、嫌がられてはいないのかな。無碍に拒絶されている訳では
無いと思ってもいいかな」
「はい。嫌じゃないです、少なくとも」

 自分を落ち着かせる為、言葉を選びつつ答える。

「一子さんの事は嫌いじゃありません。いや嫌いどころかずっと小さい頃から
近い存在で、そうある意味有間の家族よりずっと身内みたいに感じていたし。
 その……、お姉さんと言うか」
「そうか、あたしも有間の事、弟みたいに思ってたりもしたよ」
「じゃあなんで唐突にその弟とこんな事しようって思ったんです?」
「嫌な聞き方だな。
 前からうっすらと意識はしていたんだが……」
「はい」
「あたしは男の子が好きなんだ」

 重々しく告白される。
 ?
 別に不思議な事ではないだろう。
 女の子が好きなんだと言われたらちょっとだけひくかもしれないけど。

「自分より小さな少年が好きなんだ」
「ああ、なるほど」

 前にアキラちゃんに聞いた事がある。
 確かショタとか何とか言う嗜好の……、ふうん、一子さんの意外な一面。

「有間の事をそういう目で見ていた訳じゃないんだ。さっきも言ったけど弟み
たいに思っていたし。
 ただね、有間の事、興味はあったんだよ。最初に有彦が連れて来てから何度
もこの家で過ごしてだんだんと成長していくのを見てて、可愛いなあってね。
 他人に必要以上の関心が無いのがあたし達姉弟の後天的な特徴だったんだけ
ど、有彦は有間の事だけは執着してたろ。そんな処も似てるらしい。
別にそのままの関係で良かったんだけど、最近、有間変わったから」
「変わった、俺が?」
「ああ。遠野の家に戻ってから、明らかに変わった。それを見てたら少し悔し
い様な、寂しい様な、変な気持ちになってね。
 せめて今の有間が欲しいなって、憶えておきたいなってそう思ったんだ。
 もうすぐ少年じゃなくなっちゃうし……」

 変わったかもしれないな。
 遠野の家に戻ってあんな事件に巻き込まれて、自分が今まで信じていた足場
が崩れて……。
 有彦や一子さんから見れば変貌しているのだろう、遠野志貴は。

 でも何処までが本気なんだろう。
 寂しいって言った時の表情は嘘じゃないと思うけど。
 有間の家にいるんだから、おまえは有間だと頑として他の呼び名を使わなか
った一子さんが、遠野に戻ってだいぶ経つのに依然として有間と呼ぶのは、も
しかしてそういう事なんだろうか。
 単呼びなれていて変えるの面倒くさいと言っていたのは本当の理由でなくて、
前の俺に執着していたから。
 そういう事だったんだろうか……。
 

「でも、イチゴさん」
「一子と呼んでくれ」
「へ?」
「こんな話している時は一子と呼んでくれ。今だってそう呼んでいたろ。新鮮
でいい感じだった。
「わかりました、一子さん。
 あの、俺どう言ったらいいかわからないけど」

 口ごもる。
 その様子を見て一子さんが口を開く。質問が飛んできた。

「嫌じゃないと言ったろう」
「言いました」
「有間から見て、あたしは女とての魅力は皆無?」
「そんな事無いです。凄く魅力的です」
「別に恋人になってくれとか言っている訳じゃないぞ」
「はい……」
「後腐れも無いし、遊びだと思って……」
「一子さん」
「な、なに」
「遊びで一子さんの事なんか抱けません」
「じゃあ、今だけ真剣に、本当に好きな人だと思って抱いてくれ、駄目か?」
「……わかりました」

 一子さんの顔が近づく。
 意図を察してじっと待つ。
 唇が合わさる。
 一呼吸の間、そうしていて、唇が離れた。
 
 くすりと笑った。

「何か変だったか、有間?」
「いえ、煙草の香りがするなって」

 困った顔をする一子さん。
 意外と可愛い。

「嫌いじゃないからいいですよ。だから、ね、もう一回」

 二度目は自分からせがんでみる
 また一子さんの顔が近づく。
 こちららも出迎える。
 今度はもう少し強く、そして長く。

「有間……」
「一子さん……」

 一子さんは脱ぎ掛けだったジーンズを完全に脱ぎ捨ててブラジャーとショー
ツだけの姿になる。

 ……見惚れた。
 普段が異性を感じさせないだけに、そうやって女を正面に出した姿で、少々
照れを見せている姿は、ドキドキする。
 白に限りなく近いが赤というかピンクがかったレースのついたブラジャーと
ショーツ。
 ふうん、一子さんもっとシンプルなの着けてるかと思ったら、意外……。
 あ、でもさっきシャワーを浴びてから、この時の為に選んだものだ、これ。
 要するに俺の為に選択した下着。
 そう思うとより感慨を覚えて、まじまじとその一子さんの魅力的な処を隠し
ている小さな布切れを見つめる。
 
「あまり、見つめるな」
「だって綺麗だから」
「……」

 引き寄せられるように一子さんの隣に体を横たえる。
 抱き締めた。
 胸に顔を埋めるようにして。
 柔らかい。
 いつの間にか背は追い越してしまって俺の方がずっと大きくなったけれど、
最初に会った時は一子さんは年上で、頭を上げて見上げる存在だった。
 こうしていると自分がもっと小さい頃に戻って逆に抱き締められているみた
いに思える。
 ああ、本当に柔らかくて気持ちいい。
 大きく息を吸うとどこか甘い匂いがする。
 一子さんは強い香水とかにまったく縁がないから、これは一子さん自身の体
の匂いなのだろう。

「そうしていると子供みたいだな、有間」
 
 顔を上げると穏やかな笑みの一子さんの顔が近い。
 
「こういう方がいいんでしょ、一子さん」
「さてね。でもこっちは子供じゃないみたいだけど?」

 俺に体を起こさせると、一子さんは四つん這いでにじり寄って来た。
 
「取り合えず、こういう手順かな」

 トランクスのゴムに一子さんの手が掛けられる。
 恥ずかしくなるが抵抗はしない。一子さんが脱がせてくれるのをむしろ手助
けして、腰を上げる。
 当然ながら、布地の下に隠されていたソレが出現する。
 俺の興奮と期待とを一心に受けた既に臨戦体制な股間の肉棒。

「え、もう、何もしてないのにこんなに大きいの?」

 呆然とした一子さんの声にかあっと頬が熱くなる。
 なんだかんだ言ってても本当はやりたくて仕方がないです、と明言している
ようなものだ。
 でも、高校生なんてこんなものなんです。

 恐る恐ると言った様子で一子さんの手が触れてくる。
 柔らかい手の感触。
 自分で触れるのとは全然違う。
 ビクンと肉棒が動く。
 驚いたように一子さんが手を離し、危害を加えないと判断してまた手を伸ば
してくる。

 手で気持ちよくしてくれるのかな、と少々期待していると、期待以上の事を
一子さんは始めてくれた。
 唐突に温かい濡れた感触に肉棒の先が包まれた。
 一子さんの口がいきなり咥えていたのだ。

「な、一子さん」
「ん……」

 口の中でもごもごと一子さんが答えて、当然声にはならなかったが、その動
きに俺の一番敏感な辺りが翻弄される。
 舌がねじる様に動くのが……。
 
「……なんだ、有間?」
「いきなりですか」
「変か?」

 どうだろう。
 少なくとも嬉しいし気持ちいいですけど。
 と言うか、なんでそんな不安そうな顔なんですか、一子さん。

「いえ人それぞれかなって思いますけど。俺は嫌じゃないです」
「なら、続ける。ああ、でも実はこんな事するの初めてなんで多分あまり気持
ち良くないと思うけど我慢してくれ」
「今のだけでも相当きましたけど……」

 一子さんの初フェラの相手が俺と言うのはちょっと、いや凄く嬉しい。
 感激している俺の顔をじっと見て、一子さんはまた唾液にまみれた肉棒を口
に含む。舌が動く。
 
 技術的にはそう巧くはないと思う。
 本人が言う様に初めてなんだし。
 でも、ぎこちないながらも唇の感触、口の中のなんとも言えない温かさ、舌
でぴちゃと舐める動き、それらは確実に俺の性感を高めていった。
 それに一子さんが俺なんかのものを熱心にしゃぶっているという、信じがた
い事実。
 その表情と、口から洩れる吐息だけで尋常でない興奮を覚える。
 しばらくこうしてこの心地よさを味わっていたかったけれど、ぐんぐんと高
まっていく。
 こんな完全な受身状態、ただ快楽を受け入れるだけの立場だとペースを落と
して抑える事も出来ない。
 
 駄目だ、あっけなくも限界が近づく。
 徐々にではなく、いきなりぐいぐいと高まり頂上へ突き進んでいく。

「一子さん、放して。
 ちょっと、もう出ちゃいますってば。ああっ、うんんん」

 一子さんは放してくれない。
 むしろ口腔での動きが活発化する。
 舌がようやく俺の勘所を掴んだのか、先端と、くびれの裏を重点的に嘗め回
す。びくびくと肉棒が踊る。
 こぼれそうな口の中の唾液を啜り飲む動作が期せずして、肉棒をストローに
して吸い上げる様な動きになる。
 うわ、駄目だ。
 最後の数瞬は一子さんから離れようとする意志が微弱になった。
 この蕩けそうな快感に浸っていたい、その想いの方が遥かに強かった。

「出すよ、一子さん」

 いきなり一子さんの口に出すのだけは避けるべく、声を掛けた。
 抗うのを止めて喉を突かない程度に、さらに奥へと入ろうと腰が動く。
 
 腰の方からぶるっと震えた。
 もうこみ上げてくるものを抑えられない。
 どくんと、白濁した塊が吐出された。

 ああ……、一子さんの口を汚しちゃった。
 
 一子さんはの口の奥深くに俺のを含んだまま動きが止まっている。
 しばらくそうやって固まっていて、ようやく顔を上げる。
 濁った糸を引きながらまだ勢いが減じない肉棒が現れる。
 唾液と今のでどろどろになっているそれが一子さんの口から現れるさまに、
また興奮を覚える。
 一子さんは少し頬を膨らませ、きつく口を閉じている。
 僅かに唇の端から白いものを垂らしているが、大部分をまだ呑み込んでいな
い。
 と言う事はあの口の中にまだ俺が出したのが……。
 そう考えるとますます……。
 うわっ、勢いが衰えないどころか、もっと反り返ってきた。

 一子さんはどうしようと困った顔をしている。
 初めてで口内発射されたら、それは後始末に困るだろう。呑み込むのは抵抗
あるだろうし。
 吐きだそうともしないし、もしかして呑まなくちゃいけないとか思っている
のかな。

「一子さん、いいから早く口から出しちゃって」

 俺の助け舟に一子さんは素直に乗る。安堵した顔で一子さんはさっきの服か
らハンカチを取り出して、口にあてる。
 唾液を含んだ白濁した粘液がじゅるりと口から垂れ落ちる。
 僅かに残ったのがあるのだろうか。口をもごもごさせながら呑み込んでいる。

「ごめんね、全部呑めなくて……。とか言ったらいいのかな」

 口直しに傍らのペットボトルの水を一口飲んでから、一子さんは幾分冗談め
かして言う。
 僅かに涙目。

「無理して最後までしなくても良かったのに」
「やりたかったんだ。別に無理はしてない。口の中でもっと大きくなったり、
あんなにいっぱい勢いよく出るとは思わなかったから驚いたけど……、嫌じゃ
なかったよ。有間が口の中で気持ち良くなってくれて嬉しかったから」

 思わずぎゅっと抱きしめた。 
 そしてさっきまで俺を気持ち良くしてくれた唇に口づけする。
 一子さんは驚いた顔をして、そして俺の舌を受け入れる。

「普通はこういうのした後、キスしないものじゃないのか?」
「なんでです? あんなに一生懸命してくれたのに」
「でもヘタクソだっただろ」
「ううん、気持ちよかったです。凄く。ありがとう、一子さん」
「そう言ってくれるなら、してよかったな」

 ふと、一子さんが視線を下に向ける。
 今、下半身に当たる感触に驚いたのだろう、きっと。

「一回出したら少し時間が掛かるものじゃないのか?」

 凶悪に次を求めている俺の股間のそれをまじまじと見つめて、一子さんがポ
ツリと呟く。
 驚いている。
 そうだよな、出したばかりなのに痛いほど猛り狂ってるもの。

「一子さんが可愛いからいけないんですよ」
「ええっ」

                                      《つづく》