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「今日は一緒に寝よう」

 あまりに衝撃的な事を、さも当たり前のように言ってきた。

「え!ええっ!?」

 私は突然の申し出に手をばたばたとさせてしまう。
 一緒に寝るって……!?

「だって、ベッドは1つですよ?」

 私は自分の腰掛けるベッドを差しながら言うが

「うん、でもたっぷりキングサイズはあるだろうから、2人くらい寝ても大丈
夫さ。俺は寝相も悪くないし」

 志貴さんは全然お構い無しのようだ。

「そうじゃなくって……」

 もっと違うところに問題があるはずなのに、それを考える事を志貴さんは許
さない。

「だって、寝てる間にも未来視が起こるかも知れないでしょ?それに性質上そ
れが夢に出てくる可能性も考えられる」

 確かに、その可能性は否定できない。でも……

「でも、それと一緒に寝るのは別じゃ……」

 しどろもどろになりながらも分かって貰おうとするが

「アキラちゃん、俺も寝かせてよ。秋葉が明日もあんな調子だったら耐えられ
ないって」

 と、ジョーク混じりに受け流してしまう。

「そうだ。俺も夢を見たらアキラちゃんに話してあげるよ。そうすれば未来視
との違いとか、何か手がかりになるかも知れないから」

 そういうと、一人用の枕を持って部屋のクローゼットを開け、ロングサイズ
の枕を用意する。

「ほら、これなら狭くならないし」

 枕を持ってにっこりする志貴さん。なんだかお泊まりに来た少年みたいで私
はクラクラしてしまう。


「ほんとに、このまま寝るんですか?」

 しんと静まりかえった部屋。
 ベッドの脇のライトが、部屋をほのかに照らしている。
 窓の外には月。その光が更に部屋を青白く染めているようだった。

 心臓がドキドキと物凄い速さで打っている。布団を被る以上に熱が体をまと
っているようだった。

「もちろん」

 志貴さんは同じ布団の中で、私に微笑みかけながら頷く。

「……わかりました」

 もう、これ以上逃げられなかった。
 結局志貴さんに押し切られる格好で、こうして同じ布団に二人入ってしまっ
ている。ドキドキと心臓の鳴る音が志貴さんに聞こえてしまいそうで、丸くな
りながら布団の端に逃げていってしまう。

「ほら、もっとこっちおいで」

 と、志貴さんが私を引き寄せる。志貴さんの胸元に飛び込むような形になっ
て、私は体を強ばらせてしまう。

「あっ……」

 志貴さんの胸に手を置いてしまう。

 こんなに接近して男性と寝る事なんて、お父さん以外はもちろん初めてで
、それは何かを連想させてしまいそうで……

「こ、こんな所遠野先輩に見られたら……」

 と、最悪のシナリオを思い浮かべてしまう。

「大丈夫、秋葉ならあの後すぐに部屋に帰っていったよ。よほどお酒が回って
たんじゃないのかな。今頃はきっと、ぐっすり夢の中さ」

 そう、それなら安心……じゃなくて。

「ふあぁ……ゴメン、もう眠くなって来ちゃった。もっとお話ししたいけど、
それは夢の中でって事で」

 志貴さんはそう言うと、私の頭をふわりと抱きかかえてきた。

「お休み、アキラちゃん」

 そう言うと、志貴さんは本当に目を閉じてしまった。

「あ……」

 僅かの逡巡の後、志貴さんはスースーと寝息を立てていた。


 何か、大事な事を言っていた気がする。
 夢の中……
 でも、志貴さんに包まれる感覚と、確実に訪れてきた眠気がそれを考えさせ
なかった。

 やはりお酒を頂いたからか、いつも以上に眠気が襲ってくる。美味しかった
から実は飲み過ぎて、さらにお風呂で暖まって血行が良くなってしまったんだ
ろう。


「ん……」

 瞼が、ゆっくりと落ちてくる感覚。
 志貴さんに抱かれて最初はどきどきしていた緊張感も、次第にそれが和らぎ、
今は逆に安心感に変わっていた事も手伝っていた。
 すう、と意識レベルが落ちていく。

「志貴さん、お休みなさい……」

 最後に、部屋の隅に小さな影を見たような気をしながら、私は深い眠りに落
ちていった……。



「ん……」

 なんだか暖かさが少し愛おしくなって、目を覚ましてしまう。

「あ……れ?」

 ふと、目の前にいて私を包んでいたはずの存在が消失している事に気付く。

「志……貴さん?」

 私は体を起こそうとした時だった。


「呼んだかい、アキラちゃん?」

 その声は、ベッドの横、少し離れたところから聞こえた。

「あ……」

 志貴さんは、そこにいた。
 さっきの椅子に腰掛けて、まるで何事もなかったように。
 そして、その傍らには……

「……レン、ちゃん?」

 猫の姿ではないけれど、その姿、その雰囲気、そしてその目から私は直感した。

「正解。やっぱり惹かれ合うものがあるのかな、レン?」

 と、すぐ横にいる可愛い少女に微笑みかける。レンちゃんはにっこり微笑ん
で、私と志貴さんを交互に見ている。

「どうして……?」

 私は、寝起きの頭の上に、説明の付かないそれに困惑するばかりだった。


「アキラちゃん、夢の世界へようこそ」


 志貴さんは、さも当たり前のようにそう口にする。

「夢の……世界?」

 私は訳が分からず、そう繰り返すだけになる。

「そう。ここは、アキラちゃんの夢の中だよ」

 そう言って、志貴さんは椅子に腰掛け直す。

「どう……して?」
「うん、この娘の能力、とでも言えばいいのかな?」

 と、傍らのレンちゃんの頭を優しくなでさする。

「レンは、人に夢を見せるんだ。でもそれは、レンの意思のみで働くそれじゃ
ない。その人の夢を見たいって思いに、ちょっと手助けして後押しする役目を
持っているんだ」

 志貴さんは、訳の分からない説明を始める。

「だからこれは、アキラちゃんが見ている夢。アキラちゃんの心の奥で、見た
いと思った夢だと思うよ」

 そこまでは俺には言えないけど、と志貴さんが笑う。隣ではレンちゃんが笑
顔で志貴さんを見つめている。

 私の……夢?

 私の心の奧の……それは……「欲望」?

「そう」

 まるで読心術のように、志貴さんが肯定する。

「夢は、人間の無意識での欲望をよりよく表していると考えられるんだ。夢は
言葉と一緒で、欲望の表現手段。夢を見る事でそれを充足するんだ」

 夢というものが、そう言う面を持っているというのは何となく知ってはいた
が、はっきりとそう言われたのは初めてだった。

「まぁこれも、実はレンの受け売りなんだけどね。レンが俺に教えてくれたよ
うなものさ」

 な、と隣の少女に話しかける。レンちゃんは何も言わない、が志貴さんには
その言葉が伝わっているようで、苦笑する。

「教えて貰った事を偉そうに言うなって?それもそうだな」

 そうして、こちらを向き直る。

「だから、これはアキラちゃんの夢の中。もちろん俺は現実では隣で眠ってい
るよ。だけど少しだけ干渉して、アキラちゃんの夢にお邪魔してるだけ」

 その語り口は何だか、私に理解を与えてくれなかった。

「俺は未来視は見れなくても、夢なら視る事が出来る。アキラちゃんの場合、
これは夢だけど、実は未来視のビジョンになるんじゃないかな?」

 志貴さんの言葉が、ようやく掴みかける地点まで来た。

「じゃぁ……これは、私の未来視を志貴さんに見せている……」
「そうとも言える。でもちょっと違う」

 志貴さんが私の言葉の先を止める。

「確かに未来視かも知れない。でもこれは夢。夢はあくまで過去の記憶からし
か生まれない。俺が考えるにこれは、アキラちゃんの未来視の「過去の記憶」
を表しているんじゃないのかな?って思うんだ」

 志貴さんの理論も、二転三転とまではいかないけど危うい感じがする。そ
れを掴みあぐねている感じがする。でも……

「と、言う事は……」
「そう、アキラちゃんが忘れている未来視、がこれかも知れない」

 そう言う志貴さんは悪戯っぽく笑い推測する。が

「いや、これは未来視だね」

 断定に変わる。

「アキラちゃん、夢は欲望の表現手段だよね?つまりこれは、アキラちゃんが
こうしたい、って思った一番最近の未来視、と考える事が出来る筈だよね?」

 そう言われて、何も分からなかった風だったはずなのに、「一番最近の未来
視」という言葉が、私を貫いた。

「あ……それは……」

 私は、恐れていた事を口にしそうになる。が、それより早く

「そう」

 志貴さんが、笑いながらゆっくり頷いた。


「正直、アキラちゃんがどんな未来視を見て、どうしたいのかって分からなかっ
た。それは教えて貰えなかったから仕方のない事。でも、この夢に来てそれが分
かった。いいや、分かってしまったんだ」

 それ以上言わないで……
 私は、恥ずかしさに逃げ出したくなった。なのに体は思うように動かず、た
だ志貴さんを見つめる事しかできなかった。
 そうして、志貴さんが唇を動かす。

「俺がアキラちゃんに「何をしてあげればいいのか」ということを……」


 私は、完全に心を志貴さんに知られてしまった。
 口に出せなかった機能の未来視の事。
 そしてそこで私が志貴さんに何をされたかと言う事を……

「でもね、それをそのまま実現してあげるだけじゃ、つまらないからね」
「えっ……」
「ちょっとだけ、意地悪させて」

 そう言うと、体を横に向けて

「おいで……レン」

 そう、彼女を呼んだ。

 レンちゃんは、ゆっくりと志貴さんに近付く。丁度座る志貴さんと頭の高さ
が合う感じだ。
 志貴さんは、ゆっくりと目だけこちらを向ける。

「アキラちゃんのしたかった事は、こういう事だよね?」

 そして、志貴さんの真正面に立ったレンちゃんも私を見つめていた。

 それは、今までの可愛いや子供っぽい様な目ではなく……艶のある目。
 何か、私を貫くような妖しげな目をしていた。

 そして……

「……!?」

 二人は互いに抱き合うと、さも当たり前のように口づけを交わした。
 舌を出し入れし、お互いを慈しむように舐め合っている。
 ぴちゃぴちゃ、その湿った音だけが部屋に響いていた。

「あ……あ……」

 私は、声を失っていた。目の前で、レンちゃんの服が脱がされている。私よ
りもずっと子供で、まだ女性らしさが全く見られないその体。
 なのに、レンちゃんは服を脱がされるとその足下に跪き、手慣れた手つきで
志貴さんのズボンを下ろしていた。
 目を離そうとするが、体が動かない。いつの間にか金縛りにあったように、
体の感覚が喪失していた。

「これはアキラちゃんの夢だけど、僅かだけ俺の夢でもあるんだ。今は俺が少
しだけレンに力を借りてアキラちゃんの体を自由にさせて貰ってるよ」

 志貴さんがこともなげに説明する。

「そん……な」

 ぱくぱくと、感覚の無い体に混乱して、ただそれしか言葉が出ない。

 そうしている間にも、レンちゃんによって志貴さんのそそり立ったものが露
わにされていた。

「きゃっ……」

 初めて見るそれは、大きくて、太くて、そして少しグロテスクに見えた。
 目をそらす事が出来ず、凝視するかたちになる。
 が、体や視線を動かす事が出来ても、それをしていたのだろうか。分からな
かった。

 レンちゃんは、そのペニスに両手を添え、愛おしくさすった後、ペロペロと
愛撫し始めた。
 そして、ゆっくりと口を開くと
 ず、ず、ず
 音がしそうなくらいの動きで、それを根本まで銜えようとしていた。

「う……いいよ……レン」

 そう呻く志貴さんは、レンちゃんの可愛い頭に手を当てる。
 レンちゃんの口では、志貴さんの大きなものが全てが入りきらずに、喉の奥
まで一杯に吸い込んでもなお、その一部はまだ手にいじられていた。その幹と
唇の端を伝って、レンちゃんの唾液が滴る。

 しばらく、志貴さんのうめき声と、レンちゃんの愛撫の音だけが響いた。

「ん……レン……そろそろ」

 志貴さんが少し詰まった声を上げる。するとレンちゃんは了解しきっている
かのように唇をペニスから離す。
 そして、立ち上がると、志貴さんに覆い被さるように抱きついた。

「脚をあげて……レン」

 そう言うと、志貴さんはレンちゃんに唯一残っているパンティにそっと手を
かけ、ゆっくりと下ろしていった。

 信じられなかった。
 
 レンちゃんは、まだあんな姿だというのに、その股間から愛液を滴らせてい
るのが見えた。
 その淫靡な光景に、言葉を発する事を忘れていた。
 片足を上げ、抜いたパンティをかけたままレンちゃんが志貴さんの股間に上
がりこむ。
 まだ閉じた貝の様なそれは、今や志貴さんのペニスの真上に来ていた。
 志貴さんは、そんなレンちゃんの腰を掴むと、それこそ当たり前かのように……
腰を落としていった。
 
 ずぶ、ずぶ……

 決してそんな音が聞こえる訳ではない。が、その状況はそれを意識させてし
まうような、強烈な光景だった。
 あの志貴さんのペニスが、少しずつレンちゃんの体の中に入っていく……
 二人は目をつぶっていて、その表情は快感を享受しているというそのもの
だった。
 全てが収まると、ゆっくりと志貴さんの腰が上下し出す。と同時に、レン
ちゃんの体も跳ねる。
 
「あ……あ……」

 ギシギシと動く2つのからだ。ただそれを見つめていて……ようやく我に
返ると

「おかしい……おかしいです……」

 やっとの思いでそれだけ口に出せた。
 志貴さんはこちらを見やると

「どうして?」

 不思議そうな目をして言う。

「だって……そんな小さな女の子と……」

 ここに来て、そんな倫理的な事を言っている自分が、酷く場違いのようだった。

「大丈夫だよ」

 何が大丈夫なのか、志貴さんは続ける。

「俺はレンの「契約者」なんだ。レンは精を媒体として俺と繋がっている。そ
んな二人がセックスするなんて、当然だよ」
「そんな……」

 そうか、当然なんだ……
 この狂った状況で、私はそれを意図も容易く受け入れてしまった。

「アキラちゃん、いい事を教えてあげる。……くっ。夢には「機知」と呼ばれ
るものがあるんだ」

 腰を揺らし、レンちゃんと唇を重ねながら志貴さんは話をする。

「夢は、それでも制約を受けている。そして、夢の映像には圧縮がかけられて
いるんだ」
「圧……縮?」
「そう。簡単に言えば人物の重ね合わせとかがそれになる」

 そう言って、一段と志貴さんの動きが激しくなる。それに合わせるようにし
てレンちゃんが声にならない叫びを上げている。

「アキラちゃんは、こうして抱かれたいって思った。でも実際はレンが抱かれている」

 そう言うと、志貴さんは目をきつく閉じながらいっそう激しく腰を振る。

「でも、それは圧縮があるから、アキラちゃんの代わりに俺が誰を抱いたって
それはアキラちゃんの代わりになる。だからこれも夢としては間違っていない……
んだ……っ!!」

 そう言うと、志貴さんとレンちゃんの動きが止まった。
 志貴さんは腰をレンちゃんの割れ目に擦りつけるような動きをしている。レ
ンちゃんも波打つように、快感を全身で表現していた。
 やがてそれが収まると、志貴さんはゆっくりとそのペニスを膣から引き抜いた。

 ごぼ……

 二人を繋いでた場所から、大量の白濁液が流れ出る。

 その間、私は何も言えなかった。口がからからに渇き、その二人の行為に目
を完全に奪われていた。
 
「はぁ……はぁ……」

 志貴さんが息を整えると、こちらを見る。ドキリとして体を反らそうとする
が、まだ動かない。

「どう、アキラちゃん?」

 何も、言えない。でも、体の奥底に明らかに今の行為を見せられて沸き立つ
ものがあった。

「……ちょっと、いじわるだったかな?」

 志貴さんはそう言うと、レンちゃんを下ろして、そのまま立ち上がった。
 ゆっくり、私のいる方へ……

「だから、今度はアキラちゃんにしてあげるよ……」
「え……っ?」

 そうしているウチに、私の布団は剥ぎ取られていた。
 動けない筈のからだが、意思とは勝手に動き出し大の字になっていく。志貴
さんがそれを見下ろしている

「ふふっ、アキラちゃん、可愛いよ……」

                                      《つづく》