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「血の――薫りがするわ」

 秋葉が詰問の口調ではなく、微かにうっとりしたような口調でそう言うのを
聞き、晶は背筋が粟立つ。
 血が流れているのは――自分の身体だ。
 そして血を流しているのは――

「……せ、せんぱい、その……」
「この血の薫りは……私じゃなくて瀬尾、貴女ね。
 でも、あなたが月の物ではないようね」

 にこりともせず秋葉は女性の身体の生理のことを口にする。まだ始まってい
ないんです、とも言えない晶が赤くなって俯くと、秋葉はなおも鼻をうごめか
せる。
 なんで先輩は血の薫りにそんなに敏感なのか――晶は不思議に思っていたが、
そのことを口に出して聞ける状況ではない。

「この血は……そうね、傷から流れる血の薫りね。瀬尾、どこか怪我をしてい
るんじゃなくって?」
「そ、そ、そんなことありません!」

 秋葉に知られることを恐れて慌てて抵抗しようとする晶であったが、手を振っ
て秋葉を突き放す事は出来なかった。ただ秋葉の身体を軽く押すだけで、却っ
て秋葉の疑惑と……嗜虐心に火を付けるばかりである。

 晶の抵抗を感じながらも秋葉は腕を離さずの晶の身体を上から下まで見回し
て、血の薫りの元を探る。そして、元から分かっていたにも関わらず、その場
所を見つけだして驚くような振りをしながら声を掛ける。
 秋葉は片手を顎から離す。
 

「……瀬尾。貴女が傷を負っているのはここね」

 秋葉はそう言いながら、指を――ぎゅっと膝に力を入れて閉ざしている脚の
間の、股間の茂みに差し込む。
 晶の股間に秋葉の人差し指が侵入し、敏感な部分を指の腹で撫でると文字通
り晶の身体が跳ね上がる。

「きゃぁっ!」
「あら……こんな所から血が……大丈夫?瀬尾」

 秋葉は襞の内側まで指を伸ばし、こそぐようにして指先にぬらりと湿ったも
のをかき集める。そして指を晶の身体から離し、目前に掲げてみせた。
 晶と秋葉が見守る中で、現れたのは……血に濡れた秋葉の指。
 それは処女の破瓜の血に赤く濡れた――

「せんぱいっ、その、これはそんな傷なんかじゃなくって……」
「でも傷は傷よ、瀬尾。手当しないと」

 秋葉はそう断ずると、戯れに困じたような素振りを見せる。
 晶が言葉を続けられずにいると、小首を傾げた秋葉は指先にまとわりついた
血を、そっと口に運んだ。
 あ――と晶が小さな声を上げる。秋葉が、血を口に運んだの目の当たりにし
たのだから。

 まるでチョコか何かのように秋葉は血を舐めながら、不意に甘く囁く。

「そうね……困ったわ、ここには生憎と救急箱はないから、こうするしかない
わね、瀬尾」
「え?先輩……ひゃぁぁ!」

 晶は首から手を離されたのでほっとするが、たちまちに悲鳴が上がる。
 秋葉は洗面台の前に跪くと、顔を晶の股間の前に合わせる。そして両手で晶
の膝を握ると無造作に脇に広げる。

 不意の秋葉の行動に対応しきれずに晶は、秋葉の前に……秘裂を晒してしまう。
 洗面台に腰掛け、足を開き、先輩の前に自分の破瓜の血に濡れた秘所を見せ
ている――死んでしまいたいほどの恥ずかしさに、晶は身体を仰け反らせる。

「いやっ、先輩っ、見ないで下さいっ」
「あら、こんなに大変な傷なのに……ふふ、手当して上げるわ
 安心して、瀬尾。優しくしてあげるから……」

 脚の奥で濡れる襞に、秋葉は唇を近づける。
 傷口を舐めて消毒するかのように、秋葉の唇と舌は晶の秘所に近づくと……

「そんな……ひゃぅ!」

 秋葉の舌はぬらりと血をぬぐう。そしてその破瓜の血を唇に送り込み、ちゅ
うちゅうと音を立てて吸う。
 そして秋葉の舌は、綻びた晶の処女膜を探り、傷口からまるで血を吸い出す
ように動く。

「せ、先輩……そんなぁ……ひっ、あああっ!」

 秋葉の舌は、ただ傷を清めるだけではなく、晶の女陰を愛撫していた。
 膝を押さえて顔を晶の股間に宛うと、秋葉の口はその花弁を吸い続けた。時
には舌は横の襞をなぞり、陰核の上をも探る。その度に――

「ひゃ……ひっ……あああああ」

 晶は身悶えして悲鳴を漏らす。腕は突っ張って洗面台の上を握り、身体を洗
面台の上へ上へと刺激から逃げて逃れようとするが、秋葉の腕はそれを許さない。
 やがて太股から腰を回すようにして深く秋葉は吸い付くと、陶然とした顔で
晶を見上げる。

「ふふ……美味しいわ、瀬尾の血は。こんなに……」
「せ、先輩……?」

 思いも寄らぬ事を呟き始めた秋葉を、晶は訝しがる瞳で見る。
 だがそれも秘所への唇の愛撫でかき消され、声を上げてぎゅっと腹筋を締め
る晶は、腹の奥からせせり上がってきたその感覚に思わず戦慄する。

 どろり、と志貴に奥深く注がれた精液が、晶の膣を下り出す。

 そしてその先には秋葉の口がある――

「やっ、やだっ、だめっ、先輩っ、やめてぇぇっ!!」
「あら、どうしたの瀬尾……あら……うふふふ……」

 秋葉は晶の懇願を一蹴すると、その変化に微笑みを浮かべる。
 晶の小さな膣口がひくひくとうごめいたかと思うと、思わぬ白い粘着質の液
体が漏れだしてきた。秋葉は何の疑問もなく、その白い液体を舌に絡める。

 途端に秋葉の顔は、アルコールを喫したかのように赤みがさす。

「瀬尾……兄さんにたっぷり中まで注いで貰ったのね」
「先輩……その……ごめんなさい」
「兄さんに処女を捧げたのね?そして、兄さんのおちんちんにここを貫かれた
のね?瀬尾……ふふふふふ」

 秋葉は血と白濁液を絡めながら舐め続ける。
 志貴と晶のカクテルは、秋葉をしたたかに酔わせたようであった。ぴちゃぴ
ちゃと殊更に大きな音を立てて舐めてみせる秋葉に、晶は涙声で話しかける。

「ごめんなさい……先輩に言わないで……志貴さんと……先輩のお家で……」
「……ふふふ、瀬尾?」
「ひゃうううう!」
 
 ずちゅうう、と秋葉の唇は、晶の秘部を吸い上げる。
 そして舌を繰り、晶の小さなクリトリスの皮をこそぐようにねじりこむと……

「ひゃっ、ああああああああ!」

 強い刺激に晶の身体は震える。
 腕を思わず秋葉の頭に宛い、仰け反って――絶頂に達していた。
 洗面台の上で全裸の姿で、敬慕する先輩に裏切りの血と精を吸われながら。

「あら、イっちゃったのね?瀬尾。兄さんは瀬尾のことをちゃんとイかせたの
かしら……自分勝手な人ですからね、兄さんは」

 そう話しながらも秋葉は晶が聞いていることを期待せずいた。案の定、晶は
くたっと洗面台の上に足を広げて崩れ落ち、胸と肩で浅く間隔の短い息を吐い
ている。
 秋葉は立ち上がると、口をハンカチで拭いながら改めて晶の身体を見下ろした。

 細い、だが女性らしさを秘めた身体。
 だが全てが秋葉の前にさらけ出されている――

「……瀬尾?貴女は私に謝りたかったというのは……そう言うことなの?」
「はぅ……はぁはぁ……」
「私に無断で兄さんと性交したことを……ふ、おかしな娘ね」

 秋葉は笑いながら晶に手をさしのべ、身体を洗面台の上から起こす。晶の脚
は脱衣所の床に着くが、力がこもらずそのままふらりと倒れ込んでしまう。
 秋葉が手を引いている以上、自然と晶は……秋葉の腕の中に身をゆだねてしまう。

「……先輩……ごめんなさい……」
「馬鹿な娘。そんな、私が兄さんと貴女の性交にまで口を出すわけがないじゃない」
「はい……じゃぁ、先輩は……」

 なんとか体を起こして晶は、秋葉の顔を見ようとする。
 その声は笑っているようであり、もしかしたら自分と志貴のことを許してく
れるのかも――晶は微かな期待を胸に晶を眼にすると……

 そこにあったのは、冷たい笑いであった。

「でも、兄さんと貴女が付き合うのは遠野の家の問題もあるから、私が許さな
くては駄目」

 晶はその答えを、秋葉による拒絶と取った。
 駄目……遠野先輩は許してくれない……でも私は志貴さんと初めてのセック
スを……そう考えると答えのない迷いと悩みの迷宮の中に晶の意識ははまりこ
んでしまう。秋葉のもたらしたジレンマの中で交流電灯の電子のように激しく
晶の意識は震え、そのまま気を失って崩れ落ちてしまいそうになるが。

 秋葉の腕が、ぐっと晶を支える。

「でも、晶……貴女なら特別に、兄さんと付き合うことを許して上げてよ。でも」

 秋葉は晶の腕を引き、ガラス戸の浴室の方に向かう。
 もつれる脚で晶は秋葉に引っぱられて後を追う。秋葉は無言で扉を引き、晶
を中に連れ込む。そして浴室の洗い場でぱっと腕を離した。

「あ……」

 晶は脚をもつれさせて、その場でしゃがみ込む。
 タイルが下肢に触れ、ひんやりした硬質の冷たさが伝わる。暗い浴室に一瞬
戸惑うが、すぐに秋葉が灯した照明に照らし出される。

「せ、先輩?」

 晶が自分を導いた秋葉を振り返ると、そこには……おもむろに洋服を脱ぎ出
す秋葉があった。晶が見守る前で靴を脱ぎ、ブラウスを脱いでスカートを下ろ
し、開けた風呂場の扉の向こうに置いていく。
 このストリップ劇にに掛ける言葉がない晶の前で、スリップ一枚の姿になっ
た秋葉は、思い出したように口を開く。

「でも瀬尾、それには条件があるわ」

                                      《つづく》