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 羽居の唇が寄って、小さな乳首を捉える。そしてそのまま舌でその乳首を舐
める。
 硬く尖った蒼香の乳首は、ぬらりと唾液に湿った舌に触れられると――今ま
でにない強い刺激を発する。思わず身体を逃げるように動かす蒼香を羽居は抱
きしめながら、まると赤子が母親の乳房を欲しがるようにちゅうちゅうと吸う。

 闇の中でしめやかな濡れた音と、蒼香の押し殺した吐息のみが響き渡る。

「はぁ……んぅ……あ、あああ……そんな……」
「もうカチカチに蒼香ちゃんの乳首、なっちゃってるよ……ねね、蒼香ちゃん?」

 僅かにベッドを軋ませて羽居は体を起こす。
 ぼんやりとその姿を青白く浮かばせる羽居を、蒼香はぼんやりと見つめる。
自分の身体の上にのっかってこうしてパジャマの上着を脱ぐ羽居を見るのは初
めてのことではない。
 だが、この他の人がいるのにこうして羽居の姿を見るのは、まるで初めての
体験の様に思える。自分は胸をはだけていて、羽居はぷるんと瑞々しい乳房を
露わにする……慣れた光景の筈だったのに、不思議に胸が高鳴る。

 蒼香の呆気にとられたような瞳に見られながら、羽居は微笑んで胸の下で腕
を組む。そして両腕で押し上げると、むっちりとしたその乳房は持ち上がり、
ピンク色の突起が近寄ってひどく肉感的な光景を作り出す。

 そして蒼香は再び身体を倒して、今度は蒼香の顔にその胸を剥ける。
 蒼香は腕を伸ばして果実を受け取るようにその丸い乳房を受け止め、豊穣な
実りに感謝する祈りのように目を閉じ、その先に口づけする。

 肌を重ね、胸に触れて蒼香は分かった。
 自分と同じくらい、この同室の少女も胸を高鳴らせていると言うことを。
 トクントクンという早い鼓動、しっとりと汗ばむ肌、そして唇の中にある乳
首は自分のそれと同じくらい、快感を待ちぞのんでいる。
 蒼香は目を閉じたまま、ただひたすらにその肌、その胸、その鼓動を感じ取
るかのように、舌を、唇を、そして……

「ぁ……ぃぃよ、そこ……唇で噛んで……」
「羽居……ぁぁ……羽居の身体が熱い……」

 二人とも声を殺しながら囁くが、どんな声で叫ぶよりも二人に確実にお互い
の言葉を感じ取れた。むしろ言葉など要らない、ただ唇を動かし、指を操り、
その身体に触れ合っているだけでお互いの心臓が指先に繋がっていくかのように。

「ん……ぁぁ……ふぅ、ひゃ……」

 蒼香は顔を動かし、双胸の乳首を愛撫していく。腕でたわわな胸を支えなが
ら、自分の持てる限りの技量で羽居の身体から快感を引き出そうとする。
 首をおりまげ、胸の底までぞくぞくと広がる快感に羽居は声を堪える。本当
は首を振りながら心ゆくまで嬌声を上げたかった。ただそれがならない以上我
慢していると、余計に官能の熱は自分の身体を内側から灼くような感じすらする。

 蒼香の胸を弄りながらも、羽居は自分のショーツの中がしっとりと濡れてい
ることを感じていた。蒼香の舌が動くたびに、じゅん、と秘裂の中から熱い淫
液が染みだしてくるように思え、このままだと下半身が淫液でどろどろに浸り
そうなほどに思えるぐらい。

 羽居ははぁ、と長い吐息を吐き出す。そして、胸に夢中でしゃぶり付いてい
る蒼香にそっと呼びかけた。

「ね……蒼香ちゃん、濡れてる?」
「濡れる……ってそれは……その……」

 突然聞かれた言葉に蒼香は素に返り、つい答えるのを躊躇してしまう。今ま
でこういう、直裁的なようで相手が連想に連想を重ねた末に出て来たような言
葉を察して答えるのも慣れたつもりだった。
 だが、久しぶりの体験でその辺に蒼香の臨機応変な答えに後れをとって口ご
もってしまう。

 羽居はむー、と頬を膨らませる。お互いに身も心も許しあった中なのに、今
更遠慮した態度をとられるのはちょっと心外だったからだ。
 表情の変化も読みとりにくい薄暗闇のなかであったが、蒼香はそんな羽居の
様子に気がつく。慌てて何かを答えようとするが、気の利いた言葉は浮かばない。

「もー、蒼香ちゃんったら……今日は蒼香ちゃんを気持ちよくさせて上げる日なのに」
「いや……その、羽居の胸があんまりにも綺麗だったから、つい」
「だーめ。じゃ、蒼香ちゃんのを確かめちゃう」

 羽居はするっと身体を動かすと、両手で蒼香のパジャマのズボンを掴む。
 そして、身体の位置を変えると下のショーツを掴んだまま、するりとズボン
を抜く。

「あー」

 ギシ!とベッドの垂木がきしみと悲鳴を上げる。
 その瞬間、二人は身動きも、息すらも殺していた。蒼香は仰向け腰を持ちあ
げるような恰好で、羽居はそのお尻の方に座り込んでズボンを脱がそうとして
いる。二人とも思わず立ててしまった音が止むままで凍り付く。

 それに、二人の耳は同室の住人の動静を探っていた。

 もう一つのベッドに眠る秋葉は……しばらく寝相をかえているかのように、
ごそごそと動く音がする。それに従ってキュッキュと木材が鳴く音を立てる。
 秋葉は気が付いていない――そう感じ取ると、二人とも胸を撫で下ろす。だ
がそれは羽居の行動再開を同時に意味していて……

 しゅるり、と衣擦れの音を立てて、蒼香のショーツとズボンは太股まで脱が
される。
 ぁぁ……と小さく声を上げる蒼香。腰を高く掲げるような恰好になっていて
、羽居の眼前にむき出しになった秘所が露わになっているかと思うと、声を漏
らさずには居られない。
 羽居は自分の目の前にある、蒼香の足の付け根に目を凝らす。柔らかい恥毛
に被われた秘裂は闇の中でも明らかに濡れた艶を放っていたが……

「ん?ちょっと蒼香ちゃんが濡れてるかどうか分からないー」

 悪戯そうにそう言うと、ぎくっとして身じろぎをする蒼香よりも先に、羽居
の指が蒼香の内股を掴んでいた。
 脂肪の薄い、筋肉の流れが分かるような細い足。その肌を愛おしみながら羽居
はすすと手を下げて、ついには両足を股間から押し広げるような姿勢になる。

「羽、居……ぅ……ぁぁ……」
「ふふ、蒼香ちゃんのあそこ、濡れてるかどうか確かめて上げるね」
「ば……んぅ!」

 蒼香は口に手を当てて上がる悲鳴を押さえる。
 羽居の指は、むにりと蒼香の秘裂に宛われ、両脇から押し広げていた。恥毛
に彩られた大陰唇は濡れて羽居の指に絡みつき、くつろげられた女性器の中の
襞が粘液に濡れていやらしい。
 羽居はその、広げられた蒼香の女陰に顔を近づける。そして蒼香の身体の奥
に宿る、この秘肉の粘膜に唇をそっとつけて――

「蒼香ちゃん、ちょっと我慢してね……声」
「そんな……ふぅんっ、ぁっ、ぁあああああぅ……」

 ぴちゃりぴちゃりと羽居の舌は、蒼香の華のような秘部に這い回る。
 ラビアの内側を伝ったかと思うと、転じて奥にくぼんだ膣口をつつく。ぷく
りと盛り上がった尿道口を伝って舌は上がり、そして皮に包まれた性感の結晶
のような陰核の上を……

 ぴちゃぴちゃ、と舌が唾液と淫液を混ぜ合わせる音が響く。
 羽居は目を閉じ、全神経をこの舌と指先だけに集中させていた。指でラビア
を押し開き、舌を尖らせて膣口の中に差し伸べようともする。舌先にちろりと
膜のような肉の感覚を感じると、蒼香は脚を突っ張らせ、鼻から熱い息をもらす。

 ぴちゃり、ちょぷり
 はー、はー、はー、はー

 水音と押し殺した熱い息。そして思い出したようなベッドのきしみ。
 きしみの音は次第に二つ聞こえる様になっていた、が、お互いの身体に夢中
の二人は意にも止めない。

「蒼香ちゃん、もうとろとろだよ……やっぱり感じ易いんだぁ」
「お前が……こんな身体にしたくせに……そう言うお前はどうなんだよ」

 責められっぱなしの蒼香が、身体の下から僅かに不満そうに答える。
 羽居は蒼香を責める指と舌を止め、僅かに躊躇ったかと思うと、蒼香の身体
を寝台の上に解放した。

 途端に自由になった蒼香がベッドの上で体を起こすと、その目の前には立て
膝になった羽居が居た。上半身は裸で、つんと突き立った乳首と丸い乳房の曲
線が美しい。肩まで垂れた髪は闇目にも柔らかで、細く直線的な身体を晒して
いる蒼香は引け目すら感じる。

 蒼香がそんな羽居の身体を四つん這いになって見つめていると、羽居の指が
パジャマのズボンに懸かる。そして蒼香の前でストリップを演じるように、
するすると緩やかに、そして徐々に下がっていく。

 同性の蒼香ですら思わず息を飲むほどに羽居の身体は官能的であった。
 そして、ショーツ一枚になった羽居は、立て膝の姿勢のままそっと呼びかけ
た。脚を軽く広げ、ショーツの作るこんもりとした女性の丘の曲線が艶めかしい。

「蒼香ちゃん……蒼香ちゃんも確かめてみて。私の……あそこ」
「わ、……わかった」

 蒼香は高鳴る鼓動の中で唾を飲む。目の前にいるのはルームメイトの少女で
はなく、豊穣を約束する女神のようであり、自分は胸を高鳴らせ、その足下に
跪くばかりであるようにも感じていた。
 蒼香はそっと羽居のショーツに手を伸ばすと、ちらりとその顔を見上げる。

 羽居は嬉しそうに、恥ずかしそうに……微笑んでいた。

「いいよ……見て……」

 蒼香は口から心臓が飛び出そうに感じていた。指はショーツの脇を腰から太
股に下げていき、リボンの着いた可愛らしい布はするり、と下がっていく。目
は自然の闇の中で瞳孔を開かせ、目の前の羽居の股間に注がれる。

 ショーツを下げていくと、ぴちょ、と小さな音がしたように蒼香は思った。

「濡れ……てるな……羽居……」
「あ……蒼香ちゃん……」

 ショーツの内側は滴るほどに愛液で濡れていた。濡れた陰毛の黒々とした茂
みに、蒼香は唇を寄せる。まるで偶像に祈りを捧げるかのように、瞳を閉じて
その柔らかい翳りに唇を押しつける。
 しゃ、とした柔らかい恥毛の感触と、その奥に濡れた羽居の女性の中心が宿っ
ているかと思うと――蒼香はやおら舌を延ばし、ぷっくりと膨らんだ羽居の秘
裂に舌を差し入れる。

「は……ぁあ……ん、あ……蒼香ちゃん」
「羽居……お前のも……」

 ひそひそと睦事を囁き合いながら、二人は身体を寄せる。
 立膝の羽居の腰に抱きつくようにして、蒼香は羽居の秘所を口舌で愛撫する
。先ほどさんざんされた舌使いを真似て、羽居の感じやすい肉の襞を探り、僅
かに顔を覗かせたクリトリスを舌の先で撫でる。

 羽居は指を噛んで声を堪え忍んでいたが、身体を前に倒す様にして羽居の身
体に被さる。そして腕を伸ばすと、薄い羽居のお尻を両手で触る。
 そのまま羽居は身体を振るわせながら、指を次第に蒼香のむき出しのお尻の
奥に近づけていき……

「んぅあ!羽居、そこは……」
「蒼香ちゃん……こっちも感じるようになっちゃったんだぁ」

 羽居の指はくりくりと、お尻の底の菊門を撫ででいた。息をする度に僅かに
蠢くその窄まりに指を添え、ぷにぷにと指を動かすたびに、蒼香は羽居の腰を
抱く腕を抱き寄せる。
 お尻の穴を刺激されるのは、前の女性器を刺激されるよりも恥ずかしく、ま
るで身体の中心を握られてしまったかのような頼りのない感じを蒼香に憶えさ
せる。片方の羽居の腕も身体をまわりこみ、お腹の方から秘所を揉み始める。

 蒼香はそんな快感に酔いながら、ただ夢中で羽居の女華を吸い続けた。
 
「はぁ……んぅ……あは、蒼香ちゃんにももう一回しちゃうね」

 くたっと羽居が身体を倒し、蒼香の身体の横に転がる。
 蒼香は羽居のなすがままに任せていた。ちょうど頭と脚を互い違いにする恰
好になったが、今度は羽居は蒼香の身体の下に回り込む。
 そして、二人はお互いの脚の間に顔を埋め合う、69の姿勢になった。

 羽居の顔の上には、すんなりとした蒼香の秘裂があった。
 蒼香の下には、濡れて蠢く妖しい羽居の秘裂があった。
 二人はどちらがはじめるでもなく、その太股の間に顔を埋めると……

「ひゃう……ぁぁ……ん……」
「ぅ……ぁ……いい……羽居……」

 快楽を求めて絡み合う蛇のような蒼香と羽居の身体。
 二人はベッドの上でお互いの愛液と唾液を混ぜ合い、舌と唇で突起と襞を愛
撫し続けていた。二人とも身体の動きはすくなく、ただ秘めやかな舌の音だけ
がする――

 ギシキシという、ベッドが軋む音だけが、何故か続いていた。

 その音に気が付いたのは羽居だった。唇で蒼香の会陰部を刺激しながら、自
分たちのベッドでないきしみの音に気が付き、耳をそばだてる。
 蒼香は魅入られたように、羽居の豊満な身体に酔っていた。久方ぶりの肉欲
に酔いしれるかのように……

「あは……」

 やがてその正体に気が付いた羽居は、小さな笑い声を上げる。
 官能の為の喘ぎではない羽居の声には敏感に反応する蒼香であった。蒼香も
舌の動きを止め、顔をずらして身体の下の羽居に振り向こうとする。

 羽居は不思議なほどするっと身体を抜くと、ベッドの上を音も立てずに動い
て蒼香と同じ向きに横たわる。蒼香はきょとんとした顔で行為を中断した羽居
を見つめるが、その笑いに何かを気が付いたようだった。

 キシキシとベッドが……もう一つのベッドが規則正しい音を立てる。

「羽居……?」
「えへへ、ね?秋葉ちゃんもしちゃってるよ……独りで」


                                      《つづく》