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「……いたずらしちゃうぞー?」

 ぴくり、と都古の身体が動いたような気がした。
 だがそれでも志貴に背を向けて眠る都古は答えをしなかった。志貴はふぅ、
と一息をつくと――

 わしゃわしゃわしゃわしゃ

 志貴の手は、都古の脇の下をくすぐり上げる。
 それも、指の先をバラバラにに動かして、敏感な脇の下から横腹までをくま
なく、揉むでも無くつねるでも無く、肌一枚を刺激しながら……

 わしゃわしゃわしゃわしゃ、と

「………………………………………!!」

 流石に実力行使に出た志貴に、都古も無反応では入れなかった。
 眠っているところをいきなりくすぐられ、息も着けない発作じみた身震いに
襲われる。だが両脇はすでに志貴に握られ、容赦なくくすぐられている。

「…………………………っっっっ」

 だが、都古は声を上げずに身悶えしながら志貴の指先の刺激に耐えていた。
 布団の中で甘酸っぱく煩悶する都古の身体を感じ、志貴は興奮を憶えていた。
我慢するんだったらこっちだって本気だ、と志貴は思って指先をさらに奔放に繰る。

「ふふふ、早く起きないともっとしちゃうぞー」
「………………………………………!!」

 わしゃわしゃわしゃわしゃ、と

 志貴の絶妙なくすぐりが都古の身体を駆けめぐる。
 人間の感覚では、くすぐりと言うものは過度にやりすぎると拷問に近くなる。
ましてや笑うのを堪えているような今の都古であれば効果は覿面であり――

 脇を握られた都古は、何度と無く布団の中から跳ね上がって手から逃れよう
とした。
 身体は汗ばみ、髪のほのかな芳香が志貴の鼻腔をくすぐる。
 熱くなった都古の身体を抱え込むようにしてくすぐる志貴は、意固地になっ
てくすぐる。だが、くすぐると云うよりも次第に熱情を込めた愛撫のように変
わってきて……

「ほーらほらほら……!!」
「ひゃ、ひゃぁぁぁぁん!」

 とうとう都古の口から声が漏れた。だがそれは笑い声ではなかった。
 弾みで志貴の腕が外れ、真っ正面から都古の未成熟な胸を揉んでしまう。
 志貴は指に、まだ堅い乳房の感覚を感じて思わずそれを……

 まるで未成熟の果実のような。

「……………」
「ひゃぅ……志貴お兄ちゃん……はぁーはーはぁーはぁー」

 志貴の腕は、都古の胸を後ろからしっかと抱きしめていた。
 そしてその腕の中で、甘酸っぱい薫りの都古が息を荒げてぐったりしていた。
 志貴は思わずその手を外すことを忘れて――悔悟に顔を歪める。

 ――いけない、やりすぎた。嫌われちゃうな

 そう思った瞬間、志貴は寝台の上で跳ね起きていた。
 布団の上で立ち膝になって後ろを向く志貴に、のろのろと起きあがる。

「御免……都古ちゃん。調子に乗りすぎた」

 志貴は苦く吐き捨てる。
 喩え他人の布団の中に間違って潜り込んだにしても、志貴は自分の行動にや
りすぎを感じていた。それも、女の子の胸を最後はしっかりと握りしめるよう
な破廉恥な真似を……

「……部屋につれてくよ、悪かった」

 そう言って志貴は振り返り、都古を抱きかかえようとすると……

 ドスッ!と衝撃を感じて志貴は仰向けに倒れた。
 何が起こったかを理解する暇もなく、胸に飛び込んできた何かにベッドの上
に押し倒されていた。やがてそれが都古の身体であり、ベッドの上でゼロ距離
でタックルを食らったのだと知った。

 勢いで波打つベッドの中で、志貴は横たわる。

「都古ちゃん?」
「……イヤじゃなかったよ、志貴お兄ちゃん……志貴お兄ちゃんに、触られて」

 仰向けで呆然とする志貴の胸に、ぴたっと寄り添った都古は囁く。
 胸に感じる身体は熱い……脈がトクリトクリと速く打ち、腕の中でこの少女
の身体がとろけてしまいそうな錯覚にすら志貴は捕らわれていた。
 そして都古の言葉は続く。

「今までは、こんな風にはしてくれなかったから……だから謝ることなんかな
いよ」
「……御免」

 ただ、訳も分からずに謝りの言葉を口にする志貴。
 都古は胸の頭を寄せ、ふるふると頭を振る。

「お兄ちゃんは……本当に、私のお兄ちゃんになってくれなかったんだね」

 思い出した様に呟く言葉に、志貴は胸を締め付けられる。
 自分も昔、そんな言葉を口にしたような気がした……それは黒髪の大人しい
少女であり、今腕の中にある都古にもそう言った様な気がした。

 残酷な、記憶の、科白。

「お兄ちゃんの事、好きだったよ……やさしくて好きだった、好きだから私の
『特別な』お兄ちゃんになってくれるんだと思ってた。ずっと」
「…………」
 
 志貴にはすでに発する言葉がない。ただ、腕を伸ばして都古の身体を慰める
ように抱いた。
 ほっそりとした、少女の成熟前の肌の薄い身体の感触。
 志貴は身震いをする都古が、泣いている――様に感じた。

「志貴お兄ちゃんには、大切な秋葉お姉ちゃんが私が生まれる前から居たから……
私、お兄ちゃんの妹にはなれなかった。だからどうしようか、ずっと考えてた」

 都古はそこまで言うと、すっと静かになった。
 ただ震えて黙り込む、胸の上の都古を心配げに志貴は伺う。そして小さい都
古の言葉が流れる。

「お兄ちゃんの……お兄ちゃんの『特別な』人にして?志貴お兄ちゃん」
「トクベツな……?」

 志貴は都古の言葉を繰り返す。
 だが、志貴にはわからなかった。何を都古が望むのか、なにが『特別』なのか。
 都古はその言葉を口にすると、すっと志貴の胸から顔を離した。

 仰向けになったままの志貴が見上げる薄暗闇の部屋の中で、都古の影が立つ。
 そしてその影は、胸元に手を当てて、何かを外している……

 ――わからない

「都古ちゃん?」

 ぷちぷちと音を立てながら、都古はパジャマのボタンを外す。
 そしてしゅるり、と衣擦れの音を立てて袖から腕を抜く。
 白い裸体が、浮かび上がる――

「お兄ちゃん……私に……えっちなことして……」

 そう語りかけられて、志貴の脳髄は真っ白になっていた。
 目の前で妹だと思っていた少女が、あられもない言葉で自分を誘っている。
 志貴は身体を起こすことも忘れて、その少女の身体を見つめている。

「えっちなことをして……お兄ちゃんの特別な女の子に、都古をして……」

 ――分からない

 そう、志貴は首を微かに振りながら思う。
 何故、こんな事になってしまったのか。己の過ち故なのか。
 それに、志貴はすでにシエルやアルクェイドと付き合い、無垢ではない身体
であることを知っている。だから都古を汚してはいけないとなけなしの理性で
自制しようとする。

 そんな志貴の、驚愕にも似た表情を見つめていた都古が、くすり、と笑った。
 勇気を決して思いの丈を述べた恋する少女には、もう恐れる物はなかった。

「志貴お兄ちゃんは、私に悪戯したよね……起きなきゃ悪戯するって」
「…………御免」
「お返し。お兄ちゃんが私にえっちなことをしなきゃ、お兄ちゃんを悪戯しちゃう」

 そう言って都古は膝立ちになり、志貴の寝間着の腰に手を当てる。
 そして止める暇もなく、トランクスまで一緒に掴んでズルッっと押し下げてしまう。
 志貴がぎょっとして体を起こそうとしたが、すでに遅く――

「…………!」
「あー、お兄ちゃん、こんなにおっきくしてる」

 都古のたおやかな手には、すでに志貴の股間の一物が握られていた。
 竿に手を添えられ、睾丸を握られてしまっては志貴には抵抗のすべはなかった。
男の弱点を握られ、それも都古に硬く勃起したところを見られてしまっては……

「……男の人ってこうなってるんだ、ふーん……あは」

 都古は暗闇の中を透かして見ながら、志貴の肉棒を握る。
 その感触にう、と志貴は声を上げる。だが制止の言葉を口にする前に、都古
は志貴の腰元にうずくまって動き始めていた。

「こう……すると、男の人ってキモチイイの?」
「ぅぁ……ぁああ……」

 ごしゅごしゅと、無遠慮に志貴の肉竿を都古の手がしごき上げていた。
 この辺は経験のあるシエルやアルクェイドであれば優しいタッチになってい
たのだが、子供で機敏が分からない都古には情け容赦がない。
 その手に力を入れてごしごしと亀頭を擦り上げると、志貴は悲鳴を上げる。

「み、都古ちゃん、そんな乱暴に……あああ!」
「だんだん硬くなってきたよー、ほら……びくんびくん脈打って」

 都古は目を輝かせながら、志貴の一物を擦る。
 志貴は快感と苦痛のない交ぜになった感触に、背を仰け反らせて呻く。
 都古の身体を払いのけることもせず、志貴がベッドの上で仰向けになって喘
いでいると、都古はまた志貴に話しかけてくる。

「ね、お兄ちゃん……お兄ちゃんのさきっぽがめくれ上がっちゃって……」
「……ぅぅぅ」
「ふふふふー、えい!」



                                      《つづく》