「じゃ、続きを始めましょうか」

再び秋葉は琥珀と翡翠とが自分の体を翻弄し始めようとしているのを感じ、
叫んだ。

「やめて、琥珀、翡翠。もういいでしょう」

琥珀の声が耳元で囁く。

「これは罰なんですから、秋葉さまは黙って受けて頂かないと。それに、もう
少し素直になられたら、如何です? 秋葉さま、本当に嫌なんですか?」
「……嫌よ。もう、やめなさい」
「翡翠ちゃん、始めて」

言葉と同時に、先ほどまで琥珀が舐め上げていた処をなぞる様に、翡翠の舌が
触れた。
軽く、軽く、ほとんど触れるか触れないかというタッチであったが、触れた処
に熱さが残る。襞の一つ一つを翡翠が通り過ぎ、どうしようもない疼きが残る。

「翡翠ちゃんの舌とちょっとしたお薬ですけど、気持ち良くはありませんか?」
「んん……、だ…、だ、めぇ」
「翡翠ちゃん、もっとしっかり御奉仕しないと秋葉さまはご満足されないみたいよ」

さっきまでの翡翠の動きがそよ風だったとすれば、風の強さが嵐に向い始めた。
ほっそりとした手が太股やお尻の方を撫でさすり、舌もただ秋葉の花弁に触れ
るだけでなく、重なる深奥を探り、こぼれる花蜜をピチャピチャと舐め啜る。
先の琥珀の働きでツンと存在感を増した敏感な突起を舌でつつき、指でそうっ
と包皮を剥きさらに強い刺激を与える。
その一つ一つに秋葉は反応し、体を左右にくねらせ、ただただ声だけは漏らす
まいと唇を噛み締めていた。

琥珀は、その間、秋葉を拘束する枷をカチャカチャといじっていた。
ほどなく、手首の鎖が解かれる。

「秋葉さま、手は御自由になりました。もうお望みなら目隠しを取って、私達
を薙ぎ払う事も出来ますよ。でも、目隠しを外したら、もう気持ち良くしてあ
げませんからね」

そう言うと、琥珀もまた秋葉に身を寄せていった。
秋葉は何も言わず、何もせず横たわっていた。

先程までの、体の向きの固定が無くなった為、琥珀と翡翠の愛撫はよりバリ
エーションに富んだものとなっていた。
秋葉はの体は左に向けられ、くるりと逆にねじられ、うつ伏せにされ、曲げ
られ、一体自分でもどんな体勢にあるのか分からなくなっていた。
今、耳たぶを甘噛みしながら、胸に手を伸ばしているのが琥珀なのか翡翠な
のか、トロトロになった膣口に差し込まれている舌と、その下のさらに恥ずか
しい個所をツンツンと突ついている舌はどっちがどっちのものなのか、自分が
触れているのは何なのか…。
手は自由になったのだから、自分に対するもう一つの拘束、視覚を奪ってい
るそれを外せば分かるのだが、高まった性感のに翻弄されながら、秋葉はそう
しようとはしなかった。
軽い絶頂を何度も迎え、より高みへと上りつめようとして…。

その時、世界が動きを止めた。

琥珀と翡翠が忽然と姿を消したかのように、秋葉の体をつま弾いていた手も舌
もすっと、離れた。
沈黙のまま数秒の時が流れ、突然快楽の波を中断され戸惑った秋葉が声を上げる。

「どうしたの、琥珀、翡翠」
「すみません、秋葉さま。今更ながら、なんてとんでもない事をしたのだろうと。
秋葉さまの命を違えるような真似も。でも悪いのは私で翡翠ち」

妙に平坦な声で琥珀は謝罪の言葉を口にしていた。
言葉と裏腹に何ら申し訳なさの欠片も見られない。

「……けて」
「はい?」
「続けて。止めちゃ嫌。お願いだから、琥珀、翡翠。こんな状態で止められた
ら狂っちゃう…」
「……御自分の意志で、お望みになられるのですね?」
「そうよ、お願い、はやく、お願いだから」

再び、琥珀と翡翠の体が秋葉を挟む。中断で少し冷めた熱を取り戻すように、
再び秋葉の体は琥珀と翡翠の手によってより激しく火が点された。
心の枷が外れたかのように、秋葉は二人の動きの一つ一つに過敏に反応し、性
感を滾らせていった。翻弄の中、あえぎ声が断続的に洩れ、時折すすり泣くよう
な声が混じる。

「秋葉さま……」

間近に聞こえた翡翠の声に、秋葉は顔を向け、求めるように唇をつき出した。
すぐに翡翠の唇が重ねられ、舌が秋葉のそれと絡み付く。

「んんんっっっ…」

どちらのものともつかぬ、あるいは双方の吐息がこぼれる。
秋葉も積極的に舌を翡翠の口内でうごめかせ、互いに唾液を送りすすり込む。
そっと秋葉は翡翠の背に手を回し上半身を引き寄せた。翡翠も口付けを続けた
まま、柔らかい体を秋葉に預けてきた。
全寮制の女子校という特殊環境で生活をしていたから、同性とのキスは経験が
あったが、より親しい少女とこういう行為をして嫌悪感が無いのは不思議とい
えば不思議だった。
それにしても、何も知らないように見えて翡翠……。悪いお姉さんを持ったか
らかしら?
ちらとまた、そんな疑問が湧いて消える。

すでにどういう動きになっているのかわからない琥珀の手練手管で、下半身は
蕩け、もはや戻りようの無い限界に近づいていた。
未知の感覚に恐怖すら覚える。

「もう、駄目……」

ふっと、体が浮く。
体がのけぞり、全ての力が抜けて行く。
自分でも分からぬうちに、叫び声をあげ、秋葉は絶頂を迎え……
意識を果てに飛ばした。




どのくらい空白を漂っていたのだろうか。
うつ伏せにシーツに頬を埋めながら、まだ快美の中を漂う余韻に浸る。
ぐったりと体を動かす気力も無く、息だけを荒くしている。

「気持ち良かったですか、秋葉さま?」

そこへ、琥珀の声が届いた。

「気持ち良かった。……こんなの、初めて」
「だいぶ、素直になられましたね」

穏やかな声で、琥珀は言う。
すっと、まだピクピクと敏感になっている背に琥珀の手が触れた。
そのまま、秋葉の乱れた髪を梳くようにまとめた。

しばらく、静かな時が流れ、
再び琥珀から言葉を紡いだ。

「私達姉妹は、年少の頃からの秋葉さまの志貴さんへの思いを承知しておりま
す。だから、せっかくお戻りになった志貴さんを新参者に掠め取られて、どれ
ほど悲しく悔しいのか分かるつもりです」
「………」
「なのに、何もせず使用人に八つ当たりしているだけなんて、おかしくはあり
ませんか? 秋葉さまはもっと誇り高くお強い方のはずです」
「……何が言いたいの?」
「取られたなら、取り戻せばよいのです。ただ、今のままだと無理ですね。志
貴さんはいろいろ美点のある方ですけど、少々鈍い処がおありですから。秋葉
さまには、もう少し素直に志貴さんへの思いを表に出して頂かないと、振り返
るどころか、気づいてすら貰えません」
「………」
「今のお姿なんて凄く可愛いかったですよ、秋葉さま。そうお思うでしょ、翡
翠ちゃん …さん?」

今、何て言ったの?

琥珀の優しいと言ってよい響きの声が、一転して少し意地悪い調子の声に変わった。

「ところで、そろそろ最後のお薬が効いてきたと思うのですが、如何です、秋
葉さま?」
「お薬って、……何?」

心の中に暗雲が広がって行く。

「いえ、今回秋葉さまにはいろいろお薬を摂っていただいておりまして。睡眠
薬、筋肉弛緩剤、特製の精神安定剤、媚薬に、その他諸々。もちろん、秋葉さ
まのお体に害を与えるものはありませんが、用が済んだ以上、さっさと排出し
た方がお体に良いのは確かなんです」
「どういう事?」
「一番簡単な方法が、排泄物として体外に出す方法で、簡単に言うとおしっこ
として排出してしまうって事です。で、どうせなら効果と時間を計算させて始
末した方が良いので、遅効性の利尿剤をお呑み頂いていたのですが…。そろそ
ろ効いている筈なんですけど、したくありません?」
「利尿剤……」

意識が戻ってからまったく自覚が無かった感覚が、琥珀の言葉で初めて形になっ
たかのように、いきなり痛痒感として現れた。
ああっ、何これ。

「琥珀、トイレに行かせて。はやく……」
「あいにく、ここにはトイレありませんし、また枷を嵌めてしまってすぐには
外せません」
「えっ…」

うつ伏せになって脱力したままの体勢でいたから気づかなかったが、慌てて手
を動かしてみると再び両手が鎖でつながれているのが分った。
それでも起き上がろうとして、さらに気づく。
先程はなかったものが加わっている。右足首にもなにか嵌められ、鎖がジャラ
ジャラいっている。
せいぜい、肘と膝を立てて四つん這いになるくらいの体勢しか取れない。

「これは、何」
「いえ、正気に戻った秋葉さま相手ですから念の為。しかし困りましたね。今
すぐおしっこしたくてたまりませんよね?」

琥珀の言葉に、秋葉は痛みすら感じた。

「しかたありませんね、このままなさるしかありませんね。申し訳ありませんが」

平然とした琥珀の声。
いや、かすかに笑いの成分が混じっているような気がする。
それで初めて秋葉は気がついた。薬の排出云々の真偽はともかく、今こうやっ
て放尿を促しているのは、最初からの琥珀の意図なのだと。

「なんで…、こんな、こと、させるの」

もう言葉が満足に喋れない。

「誇り高いお嬢様が、使用人の前でおもらしなんて、ちょっと面白いかなあ、
なんて」

そう言いながら、琥珀の指は先程の名残で濡れそぼった処へ伸びて行く。
敏感な肉芽との膣口間の窪みをちょんと突つく。

「ひっ」

突然の刺激に反射的に堰を切りそうになり、必死になって秋葉は耐え切った。
脂汗すら浮かべながらも。

「我慢なさらなくていいんですよ、秋葉様」

(To Be Continued....)