「え……」

 呆けたような、秋葉の声。
 そう、最初は後ろから抱きしめられているだけだったはずだった。
 けれど、いつのまにか志貴の両手はブラウスを通して、秋葉のささやかな膨
らみをゆっくりと撫でている。明らかに、性的な刺激を与える動き。
 その感触に、秋葉はこれまでとは違う意味合いで混乱する。

「兄さん! 何を……」
「言ってるだろう? 俺は秋葉の兄貴じゃない」

 冷たい声。
 思わず口篭もってしまった秋葉の乳房を集めるように、志貴は指を動かす。
そこに伝わってくるのはまだ硬さの残る、だけど悪くはない弾力。
 
「は……っ……ぁぁ」

 そういうコトをされているのだと気付いた秋葉は、律儀に志貴の手から逃れ
ようと身を捩って抵抗する。
 けれど、秋葉の口から漏れた声に志貴が小さく笑みを洩らした。

「ふうん、服の上からでも感じるんだ。いやらしいな、秋葉は」
「なっっ! そんな、コトぁ……やっ!」

 
 こり、と志貴が耳たぶに歯を立てる。
 発せられかけた言葉は、途端に意味を失った。 

「っ……こんな、の。……い、や」

 もとより秋葉の哀願を聞き届けるつもりなど志貴にはない。
 耳孔に舌を挿し入れれば、秋葉の肩に震えが走る。ここまで敏感な身体であ
るとは志貴も予想していなかった。そんな反応を見ていると、服越しの刺激で
は満足できなくなる。今すぐに、もっと秋葉が狂うところを見てみたい。
 欲望の赴くままに、志貴は右手の爪を白いブラウスの表面に走る「線」にそ
って滑らせる。
 決して質の悪くないその服は、それだけでふわりと千切れ落ちた。
 
「……あ」

 秋葉の口から呆然としたような声がこぼれる。
 両手は拘束されたまま。だから、脱がされたのではない。
 けれど、引き裂かれたのでもないことは静寂が教えてくれている。
 何をされたのか判断がつくよりも早く、志貴の指が秋葉の胸元を押さえる。
小さな胸の裾野を確かめるようなその動きに、秋葉の顔が羞恥に染まった。

「いっ……いやあっ!」
「何がいやなんだい?」

 ゆっくりと円を描くように、志貴の指が肌の上を滑る。その度に波打つ秋葉
の薄い腹の筋肉の動きを目を細めて眺める。その肌が確実に熱を帯びてきてい
るのが確かに感じ取れた。
 一方で、秋葉にとって志貴の仕草は、まるで胸の大きさを確かめているかの
ように感じられる。

「止め、てください。むね、は、いや……!」
「どうして? こんなに可愛いのに?」
「嘘ですっ、兄さんは、そうやって、また、私を、弄る、んですね」

 切れ切れの声。  
 志貴の言葉や、その指の刺激は甘苦い毒のように秋葉の胸を浸していく。
 けれど、秋葉の意識を支配するのは同年代の女性と比べてあまりにもささや
かなその膨らみへのコンプレックス。志貴の愛撫が執拗で丁寧なほどに、秋葉
の苦しみは増し、それは痺れるような快楽をもたらす。
 自分の精神がもたらしている刺激をも志貴の所為と断じて、秋葉は首を捻ろ
うとする。
 そんな、紅潮している秋葉の横顔を満足そうに眺めると、志貴はその頬に軽
いキスをする。そうして、真後ろから秋葉の乳首を摘み上げた。

「ひっ!」
 
 直接の強い衝撃に背筋がぴんと反り返る。
 腰が砕けて秋葉の身体は崩れようとする。けれど、天井から吊り下げられた
鎖は、秋葉に休息を与えはしない。
 今も志貴の手が自分の素肌に触れている感触に、秋葉は必死で身をよじる。
けれど、逆に志貴の両手は秋葉の胸を力強く掴んだ。

「ぎぃっ……!」

 苦悶の叫びを上げた秋葉の眦に涙が浮かぶ。
 志貴は僅かに力を緩めると、先程摘み上げた、その存在を強く主張している
突起に掌を添えた。その硬い感触を確かめてほくそえむ。

「痛い? でもさ、ここはこんなに硬くなってる」

 そろり、撫でるように表面をなぞると秋葉の上半身は痺れたような反応を見
せる。やはり、志貴の想像をはるかに越えた反応。
 けれど、悪くない。
 あの気の強い秋葉が、抵抗らしい抵抗もしないままに自分の両手に身をゆだ
ねている。抵抗を自分で封じたことすら忘れて、志貴は行為に没頭する。

「ふああっ……!」

 秋葉の漏らす声が志貴の脳髄を痺れさせ、更なる陵辱に駆り立てる。
 両手の指を使って、その米粒のような乳首を責め立てれば、秋葉の声はいよ
いよ切羽詰ったものになる。志貴は身体を屈めると、秋葉の脇を舐め上げた。

「ひっ……兄さん、そっ、そんなっっ……!」

 それだけでも、秋葉は達したような声を漏らす。
 はだけられた上半身はうっすらと汗ばんで、甘い香りを振りまいている。
 
「本当に弄びたくもなる、それほどに秋葉の胸はかわいいんだよ」

 志貴が優しく囁きかける。
 事実、中途半端な硬さの残る秋葉の胸は少女のような幼さで志貴の心に背徳
感に根ざした刺激を与えてくれる。

「やあっ……だめ、だって、小さいから、苛めないでください」
「馬鹿だな、小さいからいいんじゃないか。秋葉らしい、かわいい胸だよ」
「そっ、そんなっ……無茶っ……」

 秋葉の哀願も、まるで志貴には届かない。
 けれど、ほめるたびに秋葉の身体から余計な力が抜けていく。志貴の目には
既に秋葉に抵抗の意思は残されていないように見えた。

「それに、秋葉だって分かってるんだろう? 自分の乳首がどんなに感じちゃ
ってるかってコトは」

 そう言うと、不意に硬さを増している桃色の突起を爪弾いた。
 痛いほどに張り詰めた乳首が、秋葉の全身に痺れを伝えていく。秋葉から判
断力を根こそぎ奪っていく、甘い刺激。

「はっ! はああああ……!」 

 息が詰まったような声の後、悲鳴にも似た声を秋葉は漏らす。
 けれど、そこには羞恥よりも快楽の色が濃く現れていた。  
 志貴が両手で膨らみ全体を揉みしだくようにしてやると、その度に秋葉の身
体が跳ね上がる。志貴はリズミカルにそのささやかな膨らみを撫で、頂きをし
ごきあげた。
 そのたびに小さな痙攣を繰り返していた秋葉の首が大きく仰け反った。

「も、もう、駄目、駄目になってしまいます……っっ!」

 そう、秋葉が甲高い声をあげた時だった。
 何も言わず、志貴は不意に秋葉の胸から離れる。
 弾けそうになっていた感覚の行き場を失って、秋葉が激しく首を振る。
 身体を丸めて逃げようとする絶頂感を繋ぎ止めようとする。けれど、自由を
奪われた身体では、最後の刺激を与える事など叶うはずもなかった。
 狂おしく秋葉は髪を振り乱して志貴の姿を探す。

「……えっ、やあ、兄さん、いやぁ……っ!」
「胸だけでイくほど、秋葉ははしたない子じゃないよね?」

 志貴は静かに声を掛けると、再び秋葉を背後から抱きすくめる。
 ひんやりとした、素肌の感触に秋葉が上ずった声をあげて首を巡らせる。

「兄さん、何を……!」
「決まってる。秋葉をもっと気持ち良くさせてあげるのさ」

 対する志貴の声はあくまでも冷静。
 火照った秋葉の背中に、まるで氷のような志貴の体が押し付けられる。けれ
ど、自分以上の体温を持つ部分もあることを秋葉は感じ取ってしまった。
 灼熱の溶岩のような熱さと鋼のような硬さが感じられる「それ」に秋葉の神
経が集中する。じんわりと、それの意味するところが理解されてくる。

「あ……」

 犯される。身体の自由を奪われたままで、まるで獣のように。
 きりきりと締め付ける革の手枷が擦り切れそうなほどに、力を込めて秋葉は
四肢を激しくばたつかせた。

「やぁ、離して、離してください、こんなの嫌です!」
「ふうん。秋葉の身体はそうは言ってないみたいだけど」

 スカートの脇から差し入れた志貴の手は、そこに熱い滑りを感じ取る。軽く
一度擦り上げでやると、秋葉がびくりと動きを止めた。そっとその部分の形を
なぞるように志貴は指を滑らせる。

「ひっ……ひぃっ!」

 ぴったりと肌に密着した絹の下着は、既にその用を果たしてはいない。僅か
に脂肪がついて膨らんだ丘が指先に感じられた。撫で上げればそれだけで秋葉
の身体の内で再び欲望が疼きはじめる。

「っ……はっ……はあっ……ああああっっ!」
「本当、知らなかったな、秋葉がこんなにイヤらしい身体をしてたなんて」

 滑らかな絹の下に少し引っかかる肉粒を見つけた志貴が、少し強くその部分
を擦る。まるで身体に火が点いたかのように、秋葉の身体が痙攣をはじめる。

「あっ……ああっっ……あくっ……くうっ」

 秋葉の声が頂点を極める前に、志貴は指を逃れさせる。
 そうして、志貴はその細い腰を持ち上げると秋葉の両足の間に身体を押し込
んだ。

「あ……に、いさん、な、に?」
「まだイくのは早いよ」

 志貴の手が宙吊りで抵抗できない秋葉の下着にかかる。
 自分の秘所がなす術もなくさらけ出される瞬間に、秋葉は顔を真赤に染める。

「そっっ……イヤぁっ」
「俺に見られるのは嫌?」
「そっ……そんな、コト……」 

 不意に顔を上げた志貴に真顔で問い掛けられて、秋葉は視線を逸らす。何も
かも見通したような蒼い瞳から逃れるように。
 沈黙を承諾と受けとって、志貴が行為を再開する。
 絹の下着を剥ぎ取ると、薄明かりに光る秋葉の秘所が明らかになる。これま
での刺激で既に潤み、わずかに花弁が開いている。

「キレイだよ……秋葉」

 志貴の声がスカートの中から聞こえてきて、秋葉は唇を噛み締めた。
 そんな秋葉には構わず、志貴は直接花弁を弄る。途端に秋葉の意志とは関係
なく跳ねる腰。

「やあっ、やっ、だめっ……ぁぁっ」
「ほら、溢れてきた」

 親指と人差し指で押し開くと、秋葉の秘所はねっとりとした液体をこぼす。
 塗り広げるように、秋葉の開かれた股間をなで上げて行く。
 自分ではどうしようもない刺激に秋葉の息が乱れる。

「くっ……意地悪、ですっっ……」
「そうだよ? 俺は人でなしだからね」

 繰り返しているうちに秋葉の瞳には薄い幕が下りていく。
 既に濁ったぬめりは秋葉の股間から尻までまんべんなく広げられている。て
らてらと光る薄茶色のすぼまりに、志貴は自らの小指を添えた。
 異様な刺激に、秋葉の眼が見開かれる。

「に、兄さん、ソコは違うっ!」
「本当かな?」

 狼狽する秋葉の反応を確かめるように、細い指が押し込まれてくる。
 秋葉が必死にアヌスを引き締めて抵抗する。
 けれど、そんな秋葉の必死の努力を嘲笑うように、志貴は空いた方の手でク
リトリスを剥き上げる。敏感な部分を二つ同時に刺激されて、秋葉の脳髄が焼
ききれそうなほどの快楽に染め上げられる。
 気が遠くなりそうな感覚の中、押しこまれてくる志貴の指を尻で感じて、秋
葉が狂ったように叫ぶ。

「やあっ! 駄目っ! 本当に駄目ぇっ!!」

 叫びながら、無茶苦茶に足を振りまわす。けれど、器用に志貴はその力を殺
しながら、秋葉を抱えこんで無理矢理刺激を送り込んで行く。
 何度となく押しこまれ、抜き去られる指。一方では極めて敏感な器官を乱暴
に揉み込まれる。

「はあっ……はぁ……あぁぁっ!」

 志貴の顔が押し付けられる。尖らせた舌を肉の割れ目に突き刺す為に。もう、
秋葉には自分がどのように責められているかすら解らなくなっていた。
 秋葉は意味をなさない叫び声を喉の限り振り絞る。

「ぁぁぁぁぁ!!!」

 志貴の舌が、指が、強く締め付けられる。
 秋葉の震えが、肩に乗せた両足から伝わる。
 
「指と舌だけで十分に気持ち良かったんだ、秋葉?」

 確認するような、志貴の台詞。
 長いスカートから出した表情をまともに見る事も出来なくて、秋葉は固く目
を閉じて首を振る。

「もう……もう……許して、兄さん」
「そうだな、こっちもそろそろ限界だし、挿れるよ」

 涙混じりで懇願する秋葉の眦に志貴は口付ける。既にじっとりと汗ばんだ生
え際に舌を這わせ、すっかり蕩けている唇を奪う。
 待っていたのか、今度は秋葉のほうから舌を差し入れてくる。

「ん……兄さん……す、き……」

 既に秋葉に理性はない。もともと志貴に抱かれることを望んでいた身体や感
情は、いとも容易く理性を屈服させてしまっていた。

「もう、欲しい、んです。兄さんの……そ、れ……っ」

 そうして切ない声をあげる秋葉に、いつもの凛とした表情は残っていない。
 少しだけ不満そうな顔をして志貴が中指を一本だけ花弁に沈めた。途端に激
しく秋葉の腰が波打った。

「はぁっ……ちが、ちがう、の……ソレじゃ、ない!」
「でも、こんなにきつく締め付けてきてるよ?」

 志貴がわずかに指を前後させた。ぎちぎち、という音が静寂の中にやけに大
きく響いた。抜いた指で膣口をくすぐって、今度は人差し指も束ねて一息に押
し込んでやる。

「ひ……ひいっ、痛っ!」

 身体の中心を杭が貫くような異物感を感じて、秋葉が首をのけぞらせた。
 訝しげに指を止めた志貴に体を預けて、秋葉は荒い息を整えた。

「おねがい、ですっ。せめて、優しく……っっ!」
「優しくすればいいの?」
「は……はい! もともと、兄さんのために、とっておいたんですからっ!」

 秋葉の言葉を聞いて、志貴がなんとも複雑そうな顔をした。
 やがて、表情を消した志貴は激しく二本の指を操って秋葉を攻め上げる。ざ
らついた秋葉の体内を擦り上げながら、もう片方の手も股間へと伸ばされる。

「やあっ……そ、それ、きつい……」

 新しく加わった指がクリトリスを捉えたことをいやというほどに感じ、秋葉
が泣き声をあげた。けれど、そんな事にはお構いなしに志貴は器用に硬くしこ
っているその突起を剥きあげると秋葉を高みへと押し上げる。

「もう、いや、駄目っ……駄目えぇぇぇっっ!!」

 差し込んだままの志貴の指に熱い飛沫が感じられた。同時に一際大きく全身
を震わせ、秋葉の四肢が完全に脱力した。荒い呼吸音だけが空間を満たす。い
つしか志貴も小刻みな呼吸を繰り返していた。
 股間のものも、すぐにでも発射できそうなほどに昂ぶっている。

「はぁ……兄さん?」

 自分のおかれている状況を理解できないまま、兄を呼んだ秋葉の花弁に志貴
は自分のモノを押し当てる。ほんのわずかにはみだした柔肉を擦りあげてやる
と、思い出したように秋葉の身体が痙攣した。

「や、ヤだ、こんな格好……」

 宙吊りのまま、自由もなく大きく足を広げた自分の姿勢に秋葉が羞恥の声を
あげた。同時に秘所に押し当てられている、熱いモノの正体にも思い至る。

「もうぬるぬるだね。これならすぐにでも挿れられるよ」
 
 ゆっくりと上下に擦り上げると、白く濁った液体が染み出してくる。既に志
貴のモノは秋葉の漏らす愛液でてらてらと濡れそぼっていた。

「ほら、いくよ」
「ぁ……」

 掛けられた声に、秋葉は心持ち尻を持ち上げて協力する。散々弄られた身体
は一度の絶頂では静まったりはしていなかった。目を閉じて、訪れるであろう
瞬間を待ちわびる。
 一息に。
 志貴の剛直が深々と秋葉の体奥を抉る。それは先程の指とは比べ物にならな
いほどの衝撃。めりめりと引き剥がされる純潔の証を感じ取りながら秋葉は涙
をこぼした。
 必死に呻き声を押し殺す秋葉の乳首を暖かな舌が撫でた。
 ぞくぞくとした震えが背中から広がる。

「あうっ……そこ……いぃ」
「素直な秋葉は好きだよ」

 小さく笑い声を漏らすと、志貴は丹念に小粒な頂きに口を寄せて吸い上げる。 
 そうして、自分の腰を大きく動かす。桃色の粘液に染め抜かれた剛直が姿を
見せた。雁口の辺りまで引き上げ、秋葉が深く息をついたところで一息に打ち
付ける。

「ひいっっ!!」

 正しく生傷を抉られる激痛に、秋葉が鋭く悲鳴を漏らす。身体を弓なりにの
けぞらせるが、衝撃を逃す場所はどこにもない。
 しかし、快楽に染められていた秋葉の肉体は、すぐにその痛みを痺れに、そ
して紛れもない快感に変換しようとする。まるで志貴の与える衝撃を余さず味
わおうとする秋葉の心に応えるかのように。

「うっ……ううっ……ぐうっっ」
 
 漏れ始めたはしたない声を押し殺すように、秋葉は首を振る。生まれて初め
ての衝撃は着実に秋葉の脳髄を支配しようとしていた。
 泣いているようにも聞こえる秋葉の声に、志貴の表情が変化する。

「秋葉……痛いかい?」
「い……いいえ、いいえっ……がまん、します、からっ!」  

 志貴の問いかけに、秋葉はだらしなく口の端から唾液をこぼしながら答える。
 自分の中に志貴の分身を迎え入れること、それは秋葉の望み。たとえそれが
夢想していた情景とは違っても、この状況に秋葉が異議を漏らす筋合いなど、
なかった。

「続けて下さい。私はずっと、ずっと、兄さんのことを……」

 愛していたんですから、と喘ぐように言葉を漏らしかけた秋葉の尻を掴み、
志貴が激しく腰を振った。
 何の感情も浮かべていない表情のまま、秋葉の身体を崩す。
 それは、思いのほかにきつい秋葉の膣を自分好みの広さに貫くため。志貴の
動きに、秋葉の中に残された純潔の残滓がこそぎとられる。鈍い痛みと、それ
に連動する快感を伴って。

「いぃっ、兄さん、や、っ!」

 意識が飛びそうなほどの恍惚に、首を半分傾けて秋葉が懇願する。
 一方で、秋葉の体内は志貴を激しく締め付ける。すでに慣れたのか熱いぬめ
りを吸い付いかせてくる感触に、志貴も感嘆の吐息を漏らした。

「気持ちいいよ、秋葉のここは」
「やだ、や……あっっ!」

 伸びてきた志貴の手がクリトリスを捉えると、秋葉はさらに激しく乱れる。
布団に半分埋もれたその横顔は、悩ましくも官能的な赤に染められている。

「いいよ。思いっきり気持ちよくなってごらん」
「くっっ……ふあっ……あっ、あああっっ……」

 敏感な突起を乱暴に押し込まれ、揉み込まれて、秋葉が派手な喘ぎ声を上げ
る。それは、酷く優しさの欠如した愛撫だった。けれど、興奮した秋葉の理性
はそのことに気付くこともない。ただ、快楽を追い求めるだけ。
 既に志貴は条件反射のようにひたすら抜き差しを繰り返している。
 けれど、その単調な動きは確実に秋葉を追い詰める。

「ひっっ……もうっっ……もう……だめぇっっ!」

 全身を震わせながら秋葉が叫んだ瞬間、志貴は分身を秋葉の奥深くに突き入
れた。こつん、と袋小路に行き当たったところで志貴の我慢も限界を迎えた。

「くっ……!」
「ひぁ……! あぁ、兄さ……ん……」

 昂ぶりが弾ける。
 子宮に広がる熱い迸りを感じながら、秋葉はその意識を手放した。
 志貴の顔に浮かんだ哀しげな表情にも気付かないままに。

 浅く呼吸をしている事を確認して、秋葉の身体を手放す。
 火照ったままの肌は甘い香りを立ち上らせる。ゆっくりと自分の分身を引き
抜くと、ごぼりと薄桃色の粘液が溢れ出す。それが秋葉の純潔の証だった。

「兄さん、か」

 呟くと、志貴は静かに微笑む。
 冷え冷えとした光を宿す、蒼い双眸。
 そこには秋葉の知っている遠野志貴は存在していなかった。

「結局、さ……俺には秋葉の兄貴の資格なんてないんだよな」

 そう言って、僅かに開いている入り口のドアに向けて振り向く。
 そこにあったのは、一対の血色の瞳。
 再生を果たしたシキが、無表情に志貴を見返していた。
                                         
                                       《続く》