「士郎……士郎……虐めてあげる……だから私にももっと……えっちなことで
虐めて……」
う、あっ。漏らしたはずの声が、頭の中でしか聞こえない。
押しつけられた唇が、痺れるように。
舐められ、しゃぶられ、接吻され、時には甘噛みすらされたのに、この唇が
触れたその瞬間の刺激には及ばなかった。粘膜がくっつき、血が混ぜ合わされ、
末端の神経が絡み合って俺と遠坂の内なる回路がつなぎ合わされたような。
――私にもえっちなことで虐めて
それがどんなことなのか、無限に想像できるけどもまったくなにもわからな
い。ただ、それが身体の細胞のひとつひとつ、神経の隅々、血の一滴一滴をな
にか、違うモノにしてしまう。遠坂という存在が染み渡り、感じ、それが何よ
り、歓喜の中に我を忘れ、ただ求めて得られなかったなにかを握るように。
「――ああ」
射精し、迸らせたことすらも遠い感覚に、過去の何かのように感じる。
遠坂の唇に噴き出し、口の中と顔を白濁で汚し、陶然とすらする遠坂の艶姿
を瞳に収める俺は、体の中で魂があり得ぬほどに激しく回っていた。肌は薫り
を感じるほどに敏感なのに、臍の下の内臓がどこかに寄ってしまっている。熱
いのは背中ではなくその肌と骨の下を通る神経そのもの。汗も肌で乾いていき
そうだ。
「んっ……んう……士郎……たくさん、こんな……」
遠坂が俺の精を受け、呟く。
その声を聞いて、ようやく身体と時間が戻ってくる。絞り出した二回目の精
液が遠坂を白く彩り、その頬に、唇に、喉にしたたり落ちる様を見る。
粘る液体が遠坂に伝うのは、その肌を犯しているような印象だった。遠坂の
舌が俺の身体を支配する様に、遠坂に俺が掛かることでそこから俺の薫りが染
みこんでいく気がする。むわりと俺の精臭が漂い、息苦しいほどだ。遠坂には
直に感じているんだろう、俺の薫りを。
「はぁ………あ、ああ」
思い出したように、俺の息が戻ってくる。
遠坂が体を起こすのが見えた。指で頬に伝う精液を拭い、こびり付いたその
白濁液をとろけるような眼差しで見つめている。舌が唇を伝い、俺の味を感じ
ているようで――
「ん……ん……やっぱり変な味……士郎の……」
指を舐め、白濁液を吸う遠坂の漏らした声。
少し嫌がっているようで、でも悦びを隠しきれない。唇から漏れた俺の名前、
士郎……それがまだ荒く毛羽立った神経に漏れ伝ってくる。髪を下ろした遠坂
の、瞳は柔らかで、その身体のしなう様が全て俺を誘っているみたいだった。
胸にこぼれ落ちる精液、膨らんだ乳房、お臍と正座した膝、裸身の複雑な曲線
が俺を……
――私にもえっちなことで虐めて
あの言葉が、遠坂の回りに漂っている。ちゅぷりと指を舐める様も、俺に秋
波を送ってくるその眼差しもみんな、俺に虐められたいという素振りなのかと。
我田引水なのかもしれないけど、そうとしか思えない。俺の神経の先端は尖り、
それが集まった男性の部分は危険なぐらい修まる気配がない。
息を吸う。なま暖かく、肺の中で灼ける空気。それが情欲を鎮めるわけでは
ない。
むしろ、俺と遠坂の混じった薫りは媚薬の様で、まだ遠坂に満足にしていな
いと言う焦りがじりじりと心を蝕む。えっちなことで虐めて、という言霊が宿
り、俺を突き動かそうとする。
「遠坂……」
ゆっくりとベッドの上で起きる。マットレスがきし、と軋む。
遠坂との間は僅か、手を伸ばせばすぐにその肩に触れる。遠坂にどうするの
か、頭の中で考えが回る。優しくするのか、激しくするのか――可愛がるのか、
虐めるのか。どっちにしてもえっちな事をする、それが頭の中にがんがんと鳴
っている。
「……あ……士郎……うん……」
だから手を伸ばして――遠坂の肩じゃなく、膝頭を掴んでいてた。
それも両手で、両の膝を。指を膝の裏に差し込んでそのままころりと遠坂を
転ばせる。
遠坂の驚いた瞳が転んでいった。そして俺は遠坂の脚を掴むと拡げ、そのま
ま剥き出しの遠坂の足の付け根を割って顔を差し込む。
「えっ、士郎……そこ……はぁぁああっ!」
遠坂の甘美な悲鳴が聞こえるけど、止められるはずもない。
膝が閉じて俺を拒もうとするけども、俺を挟んで止めることが出来ない。た
だ窮屈な遠坂の太股の間を捻らせながら進み、その奥底に顔を触れる。
しゃり、と唇に濡れた痴毛が触れた。
遠坂の腰を抱え込むようにして、俺は遠坂の割れ目に唇を触れていた。指で
触ることはあっても、こうして唇で触れるのは初めての――潤った遠坂の一番
恥ずかしい部分。
「やっ、士郎、そんなとこ口で……だめ……」
「駄目なもんか……遠坂のこと、えっちに虐めてやるんだから……ん……」
遠坂がぎゅっと俺の頭を退けようと手を伸ばし、髪をわしゃわしゃとかき混
ぜる。
唇に遠坂の割れ目が当たっている。恥丘の茂みとは違い、割れ目の脇はちゃ
んと手入れされていて唇にはつるりとした濡れた柔らかな肌が当たる。でも、
舌を伸ばして押し広げるようにして、顔をすり寄せて中に進入する。
舌と唇に、塩辛いようで生臭い、不思議な味がする。
近寄った鼻に濃厚に遠坂の香りが漂ってくる。鼻の奥が麻痺しそうになる、
息苦しいほどの香り。その中に俺の匂いも混じり、あじはまるで遠坂だけじゃ
なくて――そこで、思い出した。
だが、慌てない。なぜかひどく当然のことをしていると頷くような思いで口
走る。
「ん……遠坂の中に俺が混じった味がする……こんなの飲んでたんだ、遠坂」
「ば……馬鹿、そこさっき士郎がした……あ、で……やだ……は……」
この舌に感じているのは、遠坂の愛液と俺の精。
いつもなら吐き出してしまうような味だけど、なにかどきどきするような味
だった。頭のどこかが遠坂に当てられておかしくなってるのかも知れない、で
も遠坂は俺を舐めたんだから、俺も俺を舐めてもおかしくない。
遠坂が身体を捩って逃げる。でも、逃がしはしない。
そのあがき、悶える様もまた色っぽく感じる。頭をぎゅっと締め付け、そし
ていやいやと身体をくねらせる。そんな遠坂の腰を押さえ込んでこんな風に舐
めているというのは……その事実だけでも興奮するのに
「ん……ん……」
遠坂の濡れた花弁に舌を触れる。ここは温かく湿っていて、俺の舌にぷにり
と襞の複雑な形が柔らかさになって伝わる。味と温もりとむんむんする遠坂の
香り、そして俺の抱える肌よりも熱い――そこを、舐める。
舌を動かし、襞の中を揺り動かすようにして――ぐしゅぐしゅと。
「士郎……そんな、綺麗にしてからじゃ……私、恥ずかし……あ、ん……」
遠坂の声が、肌を伝わって聞こえる。
俺の舌が少しでも動くと、増幅されたように遠坂が跳ねる。襞を舌でくねら
せれば、腰がふるふると震え、その中がじんじんと疼いているみたいで……遠
坂がどんな顔をしているのかが見えないのがちょっと悔しい。
でも、そんな暇があればこそ遠坂のあそこに溺れていく。
唇に俺の精がごぼりと溢れてくるけど、それも構わない。その中に混じる遠
坂の味を知り、ふにりとした淫肉を舐め、しゃぶり、唇で摘み、舌でかき混ぜ
る。ちゃぷちゃぷと――まるで猫が皿を舐めるみたいな音がする。
「やっ……舐めて……士郎が、そこ……そんなに……あ、はぁ……」
俺の吐く息も、そんな香りと熱に染まっていく。遠坂と俺がこの秘所と口で
繋がってるみたいな感じがする、そう、遠坂に舐められた俺が感じたみたいに
――敏感すぎる部分が触れあっていて、どこかにその自他のがずれていきそう
な気もする。
見ているのは遠坂の下腹部だけ、ぼんやりと白くていつの間に俺の顎が遠坂
の中にめり込んでいてもおかしくない――だから、じゅると舌を舐め上げてみ
た。
舌の腹に複雑な形の遠坂が触れる。肌の大陰唇と粘膜の内側の襞、そして窪
んだり出っぱったりしている遠坂の部分を通りすぎで。
「ひゃぁっぁ!士郎、そんなこと……や、はぁ、ああ……」
遠坂がびくびくと、面白いほどに震える。こんなに敏感なところが脚の間に
隠していたら、いつも大変なことになるんじゃないんだろうか?誰も触れない
けども、俺が舐めるとこんなに泣き出しそうになるだなんて。
淫らに遠坂を虐めたかった。唇が触れるこの花びらが、なによりそれに近い。
だから、舌を埋めていく。遠坂の身体より乱れて、まるで俺の舌を別の生き
物に変えて這わせるみたいに。ぐちゃりぐちゃりと立つ水音が高く、俺の体の
中に木霊する。
「や、強……そこ、そんなにしたら私……ん……はぁ、ああ……」
「どうだ?遠坂……舐められてそんなに感じているんだな……」
顔は見えないけど、きっと真っ赤になってるに違いない。遠坂の声色は揺れ
ていて、如何にも惑わされているみたいだった。俺の舌に、遠坂の内臓の揺れ
を感じる。
太股を押さえ込んでいた手を動かし、遠坂の脚を持ち上げるようにしてお尻
に触れる。脂肪のかたまりのように柔らかいんじゃなくて、しっかりと肉に支
えられたしなやかさを感じるお尻だった。それを撫で愉しむ間もなく、そのま
ま親指を差し込んで割って――
「もっと、してあげるから、遠坂……」
「し、士郎!そんなこと……あああああっ!」
むりむりと皮が割れる音が聞こえるのは、心象の幻聴だろう。
お尻の方から遠坂の脚の間の肉を、秘唇を割り広げる、唇に触れるその芯の
部分がいっそう鮮やかに形を分からせる。襞が上と下で集まって、すらりと割
り広げられている。その中はどろりと湿っているのは、俺と遠坂が濡らしてい
ったから。
そんな、剥き出しの貝みたいな遠坂の秘所を舐めた。
冷静になればあんな綺麗な遠坂に、こんなグロテスクな部分があるのは完全
無欠な像についた傷みたいに思える、でも、そんなところがすごくぞくぞくす
る、見てはいけない、触ってはいけない遠坂の秘密を見て触れているのだと思
うと――
くちゃりくちゃりと、舐めそぼらせる。遠坂の中から液を掻きだし、俺の唾
液と混ぜて塗り合わせる。
「ふぁっ、ああ、やだ、そんなの……私、は、ああ……く……いい……」
「痛い?遠坂?」
「痛くないけど……けど、こんなの私……やぁぁ!」
一番感じるみたいなクリトリスに鼻の頭が触れると、一際大きく遠坂が鳴っ
た。
鳴った、と楽器みたいに言うけども、それが一番相応しい言い方だった。張
りつめた弦を指で弾けば、その胴に高い音が共鳴する。それほど、遠坂は感じ
ていた。
今度は舌で、遠坂をかき鳴らす。
「やっ、はっ、ああっ、ひ……ああ。あん……あんあん……ああ……あああ!」
遠坂の息が乱れ、その中に喘ぎ声が混じる。
聞きながら、俺も興奮してくる。舌にはぽちっと盛り上がった遠坂の核が触
れ、こんなに小さいところにそんなに感じるところがあるのは嘘だ、と思って
しまうほど。でも、遠坂が背筋を仰け反らせるほどに感じていれば――
「し、士郎……私……こんなに、虐められ……はぁ、う、あああ……あんあん
ああ!
「遠坂……遠坂……は、う、ん……ん、ああ……」
頭がどろりと融けて、遠坂の脚の間で溜まりそうだ。
でも、俺の舌は魔力と鋼で動き、その表面を粘膜と滑りで覆った無限機関の
様に動き、遠坂をむしゃぶる。遠坂を永遠に愉しませる為に、この舌だけの存
在になって遠坂に四六時中張り付いていたい。遠坂を快感以外何も考えない淫
らな身体にしたい、その為に舌だけの虫になり、ショーツの中で動き回りたい、
時にクリトリスを這い、陰門にめり込み、したたる愛液を養分にして遠坂を感
じさせる淫らな液を滴らせ、歩く遠坂の腰をがくがく言わせる、そんな――
「遠坂……あ、はぁ、ああ……」
味が、香りが、快感が俺を崩しそうになる。
あり得ぬ淫らなモノになってしまいたい、そんな欲望を禁じられないほどに
危険な官能に浸っていた。舌を触れているところだけがリアル、聞く声だけだ
が俺の全ての音、そして遠坂の背中の震えが、撓いが、ただ頭の中に刻まれ、
線の振る舞いとして浮かぶ。
「士郎……私……や、く……はっ、ああっ、ああああああー!」
遠坂が、ぐっと俺を押しつけるように突っ張ってきて――
それに応えるように、俺もまた遠坂を舐める。舌と唇を最大限に使って、ど
うしてそんなことが出来るのか頭では分からないけど、ただ、出来るように舐
めた。
目を閉じ、集中して――いや、集中でもない、ただ、この神経と細胞が覚え
ている全てをするだけだった。じゃぶりじゃぶりと浸すほどに滴らせ、垂らし、
俺は遠坂を感じていた。もう味覚は麻痺していて、俺が感じているこの快も本
物なのか、ただ無意味に高ぶっているだけなのかも分からない。
分からないから、俺は溺れていく、肺に満ちるのは空気ではなく、愛欲の淫
らなしたたり、喉まで達すれば楽になれる、でも今は苦しい、気持ちよくなり
たいのに――
「遠坂――ああ、うぁ……」
遠坂の愛液の中で、窒息死したいほど。
俺は遠坂を舐め、そして、その舌を遠坂に押し込んだ――
「やっ、あっ、あああああーーーっ!」
遠坂が一声、高く違った声を上げるのを聞いた。
身体が弓に張る。遠坂の体の中に、快感が爆発して鳴り響き、それが俺もび
りびり振るわせるみたいで。ヴァイオリンが弦を鳴らせるような、あり得ない
ほどの強い衝撃。
それが、遠坂のオルガイズムだと……分かった。
中からぐぽ、と収縮してまた何かがこぼれ落ちてくる。遠坂の背中はベッド
から持ち上がっていたけど、すぐにどすんと落ちて――長く深い息づかいに、
なって、いって。
「あ……はぁ……」
遠坂から、唇を離す。くちゃりと絡みつく液体の筋。粘って、糸を引くほど
で。
口元を拭い、遠坂の身体を横たえて眺める。やっと、遠坂の顔を見る。ベッ
ドに座り込んで、遠坂の艶姿を目に収め――
「し……ろう……」
て――
「私、士郎にこんなに……はぁ、あ、ああ……」
――慣れたと思っていた。
何度か遠坂の身体を見ていた。だから、それが艶めかしいと分かっていたは
ずだけど、それは分かっていたんじゃなくて片づけていただけで。
遠坂の胸に散る黒い髪、白い肌とのコントラスト、汗に濡れ上気した胸の尖
り、唇が薄く開かれ、そこから漏れる息も俺にはしっかり見えそうなほど、濃
そう。それに、快感に潤んだ瞳は俺を見て、その視線がぐにゃっと俺の目の中
に歪むようで、で……
滑らかなお腹とすこし飛び出た座骨の線、しどけなく開かれた足、太股は濡
れて、こんなに俺を誘っている……誘っているというより、ここに行かないと、
俺の全てが駄目になりそうだった。
「士郎……ね……」
思わず口元を押さえ、何かが口から飛び出るのを押さえる。
吐き気に似ていたけど、違う。快感を求める余り、体の中の異物を吐き出し
たくなる――衝動というか、本能というか、嵐の中で受ける追い風に、この背
中が軋みそうになるほどの。
俺が、遠坂をこんなに欲しいと思っている。欲しいと言うより、まだ、した
い。
体の中の血が、まだ動く。どれだけ流しても涸れる事はないけども、ただそ
の中の熱さで沸き立ちそう。血管は悲鳴を上げ、それをただ一カ所に導く。血
がない俺の脳が、早くその血を取り戻せと呻きを上げる。ならば鎮まるには、
するしかない。
「私……こんなにされちゃって……士郎に、えっちに……」
まだ、したい。遠坂と、したい。
ただ、突き動かされるだけだと獣にも悖る。だから、出来る限り抑えこもう
とする。獣ではなく、牡になるのはいいんだ、だから――
「遠坂……約束だったよ、な」
その言葉を出すのに、すごく力が要った気がする。
遠坂に覆い被さる。腕が震える、力が抜けるんじゃなくて、こうしないと折
れそうに遠坂を掻き抱くから。だから、テンションの掛かりすぎたジャッキを
操るみたいに、ゆっくりと。
「約束……?」
遠坂が見上げる。綺麗な、真珠みたいな顔だった。瞳はただ俺だけを見てい
る、それが身体に響く――遠坂が欲しいのに、遠坂を感じると病気みたいにな
る。でも、ゆっくり、ゆっくりと遠坂に被さる。鼻と鼻、唇と唇が触れ合うほ
ど、近く。
「約束……さっきはえっちに虐めてやるって。だけど、その前に……優しくす
るって。だから」
その言葉に遠坂が理解の色を示すよりも早く。
俺から遠坂の唇を奪った。重なる唇は、ああ――まるでマシュマロみたいに、
甘くて。
遠坂に触れたどんな所よりも、ここは柔らかだった。こんなに柔らかいと傷
つけてしまいそうで、でも、離したくない。
遠坂の唇も、動く。僅かな、触れるか触れないかの隙間。
「士郎……約束まもって……痛くしないで……ね」
「……………」
もう一度、唇を塞ぐ。
そして遠坂の身体に重なり、俺は……その中に、進んでいく。遠坂の脚が絡
む。
俺の固いものが、ゆっくりと遠坂に触れる。腕の力が滑り、遠坂を抱きしめ
ると遠坂も俺の背中を強く、まるでしがみつく見たいに。触れる肌は温かく、
すごく、よくて。
遠坂の中は、柔らかく融け、でも俺に絡みついて。
「遠坂……どうだ……あ、はぁ……」
「士郎……入ってきて……る……いい……は、ああ……ん……」
肩に遠坂が触れる。こくこく、と頷くのは大丈夫な証なのか。
それを感じると、ゆっくり遠坂の中を動き出す。きつくて狭く、俺の中を快
感に染め抜こうとする強いあの締め付けじゃなくて、遠坂もほどよく緊張を解
いているみたいで。
その繋がる、感覚が、どうしてこんなに――
「遠坂、遠坂……」
「して、もっと……私、きもちい……い、士郎ので……こんなに、は……ああ
……」
その声を、喘ぎとして吐くわけでもない。
動きはゆっくりと、声は密やかに、そして何よりも近寄って、抱きしめて、
繋がって。俺と遠坂がこうして生まれてきたかった、それに、こうしてずっと
いたいと思うほどに。伝わる感触は潮が静かに満ちるみたいに――心地よい、
灼けた器官が解れていくみたい。
遠坂の膣も、俺を受け入れてくれる。犯す、というんじゃなくて、迎える、
と言う感じで。ぴったりと触れたその肉と襞が、溶け合うよう。
ゆっくりと、でも深く、確かに遠坂を抱く。
遠坂も俺を抱き、その指を背中に埋める。何度も互いの名を呼び、確かめ、
そして――
「士郎……きて……私……」
「いく……遠坂、俺……あ、は……」
遠坂の中で果てて、満たしていくのも、穏やかで。
抱き合い、俺は遠坂を感じていた。優しく抱くのも、こうすれば……いい、
な、と。
そんな風に、俺と遠坂は感じていた。ずっと、ベッドで抱き合って。
「士郎……あ……ん……よかった……これから、こうして……ね」
「うん……あー……約束、ちゃんと守れて、俺……」
よかった、それだけが去来して。
でも、口に出すよりも、遠坂をこの手で、身体で、心で感じたかった。
沈黙の中で、ただ感じるのはお互いの呼吸と息遣いだけ――
《fin》
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