「………もう、まったく信じられないわよ……あんなのこと」
ぶつぶつ呟く遠坂の声を、俺はそっぽを向いて聞いていた。いや、そっぽと
いうか半分湯船の中に浸かり、僕は半魚人、人間の言葉はワカリマセーン、と
しらばっくれるように。
「いえ、ですがこれは今までにない成功だと思います、凛」
「ええ、そんなこと分かっているわよ、分かっているから腹が立つのよ。これ
で失敗したらそこの馬鹿を湯船に頭の天辺まで漬けて殺すだけだから」
――遠坂様は怖いことをおっしゃる。
いっそ自分で湯船の中に浸かり、遠坂に殺される前に馬鹿が恥じて入水自殺
しました、と身を以て示さないと収まりがつかないような。
お湯が温かいから、入水自殺じゃなくて湯当たりで死ぬのだろうか?ほら、
入水自殺って溺死よりも心臓麻痺が多いって言うからこのお湯の温かさは。
「……何か言いなさいよ、士郎」
髪をタオルに纏め、全身を石鹸の泡に包まれた遠坂が俺を睨む。
その背中にごしごしと泡立てたタオルで肌を拭っているのが、セイバーだっ
た。二人とも裸で、それと一緒に風呂に入っているというのは……気にしない
と言い聞かせるか、いっそ辛抱堪らんわ!と叫びながら股間をいきり立たせて
仁王立ちになるかのどっちかしかないと思う。
……で、あんな事やこんな事の後だから、後者はやりすぎ。
やりすぎ、よくない。うん。
「え?なんか言った?」
「だから、なんであんな暴走したかって聞いてるのよ。この儀式はセイバーの
魔力補充のための疑似聖杯の試験なのに、あんなこと……」
勢い込んで俺をなじり始めた凛が、そこで言葉が続かず言葉尻が落ちる。
そりゃぁそうだ、うん。俺とセイバーで3Pで、中出しされてセイバーにそ
れを飲まれるだなんて想像もしてなかっただろう。俺も計画してなかった、そ
こまでは。
遠坂を脇目でみると、恥ずかしさと怒りが混じり合って何とも言えない気ま
ずい可愛さを感じる。やっぱり風呂桶から飛び出して泡だらけの遠坂を抱きし
めたくなるほどに。
「というか、何回もやってたんだろ?だから新しいアプローチを」
どうも、魔術師としては文句なしにすごいと思う遠坂だったけども、セイバー
を養うのは大変なようだった。バイトしながら気が付くと半分藤ねえを喰わせ
ている俺みたいなもんだ。
人間困ると知恵が湧くもので、遠坂は古文書をひっぱりだして何とかそれを
補充する方法を考えていたらしい。その結果、セイバーと聖杯の縁と、聖杯作
製の初期段階の備忘録からこんな疑似聖杯の方法で、この地脈を掘り出してセ
イバーに与えるという方法を編み出した。
この辺はすごいと思う。文句抜きに。
でも、そんな遠坂でもきわめてこれは難しいようだった。あの聖杯を黄金の
聖餐杯に比べれば、これは石器で彫った木彫りの器もいいところで穴が開いて
居なければそれで十分、という感じ……らしい。
「そうよ。だからセイバーとの縁がある士郎も混ぜて実験してたんじゃない。
何度も繰り返せばそのうち習熟してきっと……」
遠坂は俺にいつもの勢いで説教しようとするけども、裸でおまけにセイバー
にごしごしやられている最中だと剣幕も勢いが弱い。
つまりは、聖杯の基本の基本の真似事で、遠坂の家の地脈を器に汲む。でも、
それは生の太源なので加工しきれないので、遠坂という力の変換の専門家を通
してセイバーに与える。満ちた器の中身が、あの蜜だったという。
……なにか、簡単のようで難しい。ただ結構それを遠坂はケーキ作りのよう
に説明するけど、オーブンから出してみるまで焼き上がるのがどうだか分から
ない大魔術なんだな、とは思う……いや、儀式魔術なんだからそりゃすごいわ
けで。
で、その儀式というのがあれ。趣味はどうかと思うけど、一番効率的な形だ
とか。
最初はセイバーと二人っきりだったというけども、どうにもうまくいかない
から俺も参加することになって早数回。それで、今回はとうとう新しいステッ
プに――
「ああ、凛、腕を上げてください。まだここを洗っていません」
「あ、うん……というか、セイバーも何か言いなさい!あなたあんなモノやこ
んなモノまで飲まされてるのよ?そ、それも私のあそこから士郎を飲ませるな
んて趣味が悪いも良い所よ」
などと説教を呉れながら、腕を上げてごしごしと洗われている遠坂。セイバー
もタオルで髪を包んで何か湯女を真剣にやっている。ぶりてんの偉大なおおさ
まに体を洗わせているのはやっぱりこう、こいつも頭の中どっか飛んでるな、
と。
セイバーはそうでしょうか?と小さく答えていた。
……というか、やっぱり二人とも目の毒だ。裸でそんなごしごししてると、
腕が伸びた線にすっと胸が合わさるの見えて、石鹸の泡と二人の肌の違いとか
が分かって……その、やはり健康な男子であれば勃たずにいられない。
三人何とかはいれる大きな風呂場を作ってくれた、遠坂の先祖に感謝だ。
「きっとねセイバー、士郎はそんなのをえっちな漫画からとか呼んでやりたい
と思ってたのよきっと。それにあれ、美味しいだなんて……うう……」
「はぁ……私は読んだことがないのでよくわかりませんが、読むべきものなの
ですか?」
なにか俺をこてんぱんに良いながらも、恥ずかしさに口ごもる凛。それにナ
チュラルにとんでもないことを口走るセイバー。手も止めずにごしごしと……
な、何聞いてるんだおまえ、セイバー……
「いや!いい!読まなくて良いし探さなくても良い!」
「そうシロウがいうのであれば分かりました。興味はあるのですが……それに、
実際混じり合った蜜は力に満ちていましたから美味に感じました。身体によい
モノはどうあれそれは美味しいものだ、というのはシロウから聞きましたので」
セイバーが至極真面目な顔でそんなことを言う。
………まぁ、セイバーも元気そうに見えるし、あんなことを囁きながら凛の
身体を舐めていたって言うのも嘘みたいで、これも成功だったのかな……
な?遠坂?と無言に目で問う。
遠坂はむーっと細目で俺を睨んでいる。納得いかない、私はあんなの美味し
いって絶対認めないって瞳が……なんか、論点ずれてる気がするな。
へんな対峙の後、遠坂はふんと鼻を鳴らして言う。
「……ふん。今回もちょっと士郎の思いつきも悪くはなかったって思ってるわ。
確かに性交を忌避したのが良くなかったわね、うん、これの研究を生かせば少
しはセイバーへの供給が安定化するから……うーん……もっと効率化して、精
度を上げてにして……ああん、もう学院に入れば分かるかも知れないんだけど、
そんなこと知れたら弾劾審問もの……」
そのままぶつぶつと遠坂が訳の分からないことを呟き出す。まぁ、魔術師は
大変だ。
……とりあえず、ちょっと無理はしたけども今回はちゃんとうまくいった、
ということでいいんだろう。俺は気持ちよかったので激しく大満足、いや今も
……
「………それでは流します、凛」
「ん?ん?ちょっと待ってセイバー」
シャワーを手に取ったセイバーに、凛が振り返る。
そしてそのままセイバーの手を取る。うわ、なんか二人とも裸で一体何をす
る……
「なんでしょうか?」
「セイバー、あなた……して貰ってないわよね?あんなに力をこんな形で入れ
たんだから体火照ってない?じんじんお腹の底が疼くとか」
――と、遠坂、その、俺が居るんだぞ!
って叫びたいけど、風呂桶の俺の出来ることはもう一度お湯の中に潜ること
だった。でも顔だけ出していると遠坂がセイバーの両手を掴んで、セイバーの
顔が文字通り仰天している。頬が赤いし、二人とも泡まみれで。
「そ、そんなことはありません、凛!」
「嘘。そんな身体を持て余して無防備にしてるとと士郎に食べられちゃうわよー、
ほら、まだ士郎はボク出したりないんですって顔してるし」
「だだぁぁぁ!な、遠坂!お前何を拙者にしつれーなことをおっしゃるか!」
敬語で怒鳴るって矛盾した俺だけど、何が悪いのかわかんない。
セイバーを組み伏せつつ、にやっと不敵な遠坂の瞳が俺を見る。きらりん、
とあの悪魔の瞳が輝いている。
「あら、でも衛宮くんもやりたい盛りのお年頃じゃなーい、あんなに射精しち
ゃったら妊娠しちゃいそうだったわよ?私もやっぱり魔術師である前に生身の
女の子なんだし」
「なっ、あっ、あああああああああー!」
「あ、でもセイバーを慰めるのは私がやって上げるから。士郎は地下室掃除し
ておいてね?あ、あと洗濯と二人の着替えも持ってきて?」
口早にこの、俺様の立場を粉砕したことを言う遠坂。意地悪だ、いぢわる。
こうなったら俺も出来るところを見せつけてやるー!
「ぬぁぁぁぁ!」
「し、シロウ!ぁ……あ……」
「よし分かった遠坂!見ていろよ、あの地下室で舞踏会出来るくらい掃除して
やるし、洗濯だって完璧にして服のコーディネートも唸らせてやる!がふがふ
がふ!」
「……そんな風に開き直らないでよ、士郎……」
《おしまい》
《あとがき》
どうも、阿羅本です。今回はお楽しみ頂けましたでしょうか?
……なんかこう、どこが裏凛なのかな?セイバーさんもなんかやる気ですよ?これも3Pですか?という不思議な感じですが……とりあえず主にしてるしされているのが凛様なので凛作品ということにしてください(笑)
阿羅本はこう、粘液系なエロスというのはなかなか苦手でして……こう、さらさらすべすべが好きなんですよ、で、ドロドロねとねとがエロスだろうハフゥーン?!とか言われても困るのですが、そんななかで敢えてねとねとでエロスを狙ってみました……こう、苦しんでるな俺、とよく分かる所存です(笑)
なんでしょう、こう、今回は魔術っぽくしていますがそんなことをしなくても士郎からセイバーに魔力をそそぐのってちゅーっと簡単にいきそうな気がするんですが、そこはそれ、これも凛様の楽しみの一環であるということで!ことで平にご容赦を(笑)
というか、凛派・セイバー派の皆さんから石投げられそうな……堪忍してやってください、こういうエロが好きだと言うことで、ひとつ。
それでは皆さん、これからもよろしく御願い致します。
でわでわ!!
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