その言葉を口にするのが余程の抵抗だった、凛の首がぐっと前に垂れる。
 だけど、その言葉を聞きたかった。我慢できない、遠坂の中に俺の精液を吐
き出す。こんなに高ぶった俺がどれくらい出るのかが、もう分からない。でも、
それでもいい、だくだく溢れるほどに中を俺の精液で満たしてやろう、それは
どことはなく胸を張って威張りたくなるような、遠坂を抱く誇らしさと、悦び
に満ちている。

 腰の動きを変える。角度を深くして、もう鋼のように硬くなった俺のペニス
を遠坂の中に――

「ふっ、あ……ああああっ」

 抵抗を覚えたけど、遠坂の膣口は俺のペニスを噛んで飲み込んでいった。指
二本も入らないのに、たっぷり滑らせたのかいつもより容易に遠坂の中に入っ
ていく。それでも内側から肉をみちみちと広げる、あのきつい肉道の感触はそ
のままだ。

 後背位で、遠坂の貫く。腰をぴったり密着させるように深く、奥にねじりこ
む。こんな犯すような暴力的なのは好きじゃないんだけど、この玄室の暗さは
俺の中の獣性ともいうものを解き放つかのようだった。それに、ちらちらと瞬
く蝋燭の光が、原始の洞窟の中の記憶を俺から呼び起こそうとするのか。

 ずずっ、と奥に進む。胸の辺りを掴んでいた手は、腰にあらためて宛う。
 細い遠坂の腰は汚れた指でずるっと滑ってしまいそうだったけども、それで
もはっきり腰骨に当たるのは分かった。

「ああ……はいって、る……士郎のおちん○ん……私の中に……んん!」
「はい、士郎のがしっかりと根本にまで入ってます、私からも見えます……は
ぁ……」

 そんなことをセイバーにまで追い打ちされて言うのだから、適わない。
 股間は今すぐにでも遠坂の中で暴発しそうになる。不規則な遠坂の呼吸と喘
ぎ、それに期待と快感に酔うセイバーの声、そしてこの過大な身体の快感。ど
れもこれも一回で俺を狂わせそうになるのに、こんなになんで一緒にいつもや
ってくるんだか……

「遠坂……いく、ぞ」
「やっ、んっ、うごいて……ごつごつって士郎のが……中でおちん○んこすれ
て……」

 遠坂の声を聞き、その背中に浮かぶ汗の玉を見ながら腰を穿つ。
 ずん、ずん、と下から遠坂の身体を突き上げる様に、俺の腰と遠坂のお尻を
ぱんぱんと肉がするほどぶつけて、愛液をまき散らす様に。ペニスの快感より、
この遠坂との身体の刻むリズムが俺の脊髄を酔わせる。

「はぁ……素敵です、凛。士郎も逞しい。士郎のおちん○んが凛のあそこの中
を剔ってるのが見えます」

 ほう、と漏らすセイバーの声。
 でも、あの美しい声でそんな赤裸々な実況中継をされるのは――いつもなら
それで萎縮してしまうんだけど、今は違う。その声はまるで高い鍵盤のキーを
叩き上げていくような狂騒の響きがある。

「やっ、セイバー、見ないで……恥ずかしい……そんな、私が士郎にされてる
の……ふぁん!」
「さぁ、士郎……私に飲ませてください、凛と、士郎の本当の味を――」

 そんなことを言われるまでもない、いや、言われると余計に頑張りたくなる。
 遠坂の内側をずんずんと進む。まるで子供の手が中にあって、ぎゅーっと握
りしめてくる様な膣の感触と、その奥にぬるっとぶつかる感じ。奥はなんとも
温かく、ここの亀頭の感触はまさにここで出さないといけないって分からせて
くれる。

 いや、ずっと前から、細胞の一つ一つがここで俺が射精をすべきだと知って
いるようで。
 それでも、俺は遠坂の身体に我を忘れるほどに愉しんでいた。薫りも、姿も、
手触りも、そしてこの足と足が絡み合うような、奇妙なダンスのような格好も、
そしてそれをセイバーに見つめられているということも、みんな一気に俺の中
を駆け上がっていく。

「はっ、はっ、はっ、遠坂……どうだ……いいか?遠坂……」
「いい……いいの……だんだん良くなってきて、こんなの私、私じゃ……はっ
ぁぁ……」

 その言葉が喉に詰まって締まったのかと思う、ブルブルと震える遠坂の身体。
 だけど、窒息することなくその言葉を吐き出した――

「こんなの私の身体じゃなくなっちゃうみたいで、士郎のことすごく感じてて、
だめ、そんな、奥を突かないで……はっ、はぁ、はぁ……」

 遠坂の頭が揺れる。あのツーテールの髪も、赤く静かな光の中で舞う。
 それはまるで夜と夕日の戯れのようで、混じり合う闇と赤のグラデーション
が美しいと思った。熱くない光と、柔らかな闇の優しさと。それを身体に纏う
遠坂が、すごく綺麗だと思った。

「遠坂――いいんだよ、感じても」

 抱き寄せたいほど美しくて、それを俺は抱いていて。
 ぎゅん、とペニスが一段激しくふくれあがるような気がする。水風船にどん
どん水道水を流し込むのに、何時までも破裂しないような、どこか不安になる
けど誇らしい感じ。それが今の俺の亀頭で、抜いてみたらきっと真っ赤な血だ
まりになってるんじゃないかと思うほど。

 でも、遠坂を貫くのを止めようと思わない。
 いや、むしろこの遠坂の体の中に何もかも出し切ったら、どんなに幸せなの
かと目眩がするほどにおもって――

「はっ、あっ、あっ、う、あ……」

 俺は舌を出し、熱い息を吐き、渾身の力で遠坂を突き上げ続けた。
 そんなに力が無くても良いのかも知れないけど、そうしないと中で止まって
しまうんじゃないかと思うほどに遠坂の締め付ける力は強く感じる。
 時に遠坂の足が浮いて、俺は身体を持ち上げるほどに強く。

「ああ、はぁ……いい……士郎……私、もう、士郎のおちんちんで……はぁっ
……あ……」
「遠坂……遠坂、もう、遠坂もいいんだ、だから俺も――」

 ペニスが薄すぎる皮になって、その中に粘り気のある熱い血が噴き出しそう
に堪っているような。それなのに腰の奥からどんどん上がってくる情熱は危険
で、それが一瞬の、瞬きするほどの何かで破裂しそうだった。

 俺も踵が経つほどに遠坂の突き上げている。スパートは限界で、息なんかし
ていない。
 息を飲み込めば、俺の方が先に爆発してしまう。それは股間ではなく、肺と
心臓が。

 肉の打つ音と、俺たちの声にならない喘ぎの息が響く。
 そんな壊れた耳に、こんなときに――

「……お願いです、凛、シロウ。私にもっと飲ませてください――」

 そんなのを聞いたら、駄目になる。

 血が、興奮のあまり一気に色を変える。赤から赤黒く、そして色が抜けて白
に。
 視野は痙攣し、腕に力が弾けそうに籠もる。そしてその血は精となってとう
とう弾け散った。

 ペニスの先が弾け、解れ、、中身の破裂する風船のように――

「うぁあああああおおおお!」
「士郎っ、きてっ、私の中に――士郎の精液をたっぷり……ああああ!」

 ものすごくたくさん俺の中から、出てはいけないものが出てしまったような。
 射精と言うより、内臓を飛び散らせてしまったような、俺の膀胱と腎臓まで
引っこ抜かれたような、そんな快感。それを遠坂の声が上書きして、それに遅
れてどくどくっという射精の感触が伝わってくる。

 じーんと尻の穴が痺れるような射精の快感が、一番遅れてやってきた。
 それを脳が俺の感覚だと分かるまで、一体どれだけ時間があって、一体どれ
だけ遠坂の中に射精したの。やっぱり、出てはいけない何かを出してるような
気もする。

 でもそんな感慨を振り払う。
 射精後の余韻を味わうのは、これからだ。それに、まだセイバーは満足して
ない。俺の身体にぐったりと遠坂の身体が寄りかかってくる。

 足に力が無く、俺のペニスで串刺しにされて身体を保たせているみたいだっ
た。
 だから、これから俺がすることもしやすくなる。

「遠坂――セイバーに、飲ませなきゃ」
「あ……はぁ……あ……たくさん……こんなに奥に……士郎が出して……る…
…」

 遠坂の頭がフラフラしている。ほとんど忘我の状態だった。
 だから俺は遠坂の足を、膝の辺りから掴む。そして何をするのかというと、
遠坂の身体を持ち上げて……

「ああんっ、何するの!士郎!」
「だから、セイバーに飲ませなきゃいけないだろ?ほら、こうすれば……」

 腰にずーんと来そうだったけども、流石鍛えたもので遠坂の身体をひょいと
持ち上げる。
 そう、ちょうど背中から足を掴んで抱き上げた、子供におしっこをさせるよ
うな格好で遠坂を抱いた。でも、ちょうどそうなると俺と遠坂の接合部の目の
前にいるのは……

「溢れてます、シロウの白い精液……」
「やっ、そんなの、セイバーに……だめっ、だめっ、士郎……」

 遠坂の首はいやいやと振るけども、俺に抱き上げられてるからなすがまま。
 膝を持ち上げて、開脚する格好で宙に吊り上げられている遠坂。腕に力を込
め、そんな遠坂から俺は肉棒を引き抜く。

 ぬず、ぬずずと。むしろ入れたときよりも緩慢で、抜けなくなった穴からゆ
っくり指を引き抜くように。遠坂の膣道は俺をぴったり締め付けていて、その
奥にたまったどろどろとしたモノも一緒に下がっていく。そして、入り口の一
番きつい部分に雁首が通る。

 そんな俺の軸に、ぞくっとするなま暖かい感触があった。

「はぁ……シロウ……」

 舌を伸ばして、セイバーが俺自身を舐めていた。
 遠坂の中ではなって鋭敏になっているここに、舌を感じるとまた暴発しそう
になる。最後の一息で抜け掛かった亀頭にまたどくん、と流れ込んで……

「やっ、抜けちゃう、そんなのだめっ、セイバー、そんな所にいたら……はぁ
あああっ、ああ!」「ほら、セイバー……これが俺の精だ、遠坂と混じってた
くさんあるからな……」
「はい……シロウ、どうか私に飲ませてください」

 きゅぽん、と栓を抜くような音がした気がした。
 その喩えなら、俺のペニスはコルクみたいに抜けてもまだ硬く、抜かれた遠
坂は逆さにしたボトルで、その細い道から溢れる――

 溢れる。
 遠坂の中に放った、俺の精が

 ごぷどぷっと音を立てながら

「やっはっ、ああああああああああ!」

 また遠坂が身体を痙攣させた。腕の中で暴れる遠坂。
 俺が抜いた遠坂の秘華からは、どろどろと今まさに俺の精液がしたたり落ち
ているんだろう。その証拠に……

 ちゅぷ、ちゅぷり、ぴちゃ、と唇が立てる音が、響いた。

 この玄室の空気をゆっくりとかき混ぜる、マドラーの立てる音のように。そ
れはセイバーが遠坂のあそこに口をつけ、啜る音の他ならない。
 ちゅるちゅると時にはすする音を立てながら、それにこんな言葉を交えなが
ら。

「はぁ……あああ……こんなに美味しいモノを中に放って貰ったのですね、凛
は」
「ああ……ん……ば、ばか……や、ほんと……ほんとに飲んでる、セイバー…
…士郎の精液……」
「美味しいです。士郎のは、凛と混じり合ってこんなに……はぁ……」

 なおも唇達の戯れの音が聞こえる。
 これで満たしたはずだった。どこか身体の中に脱力するモノを感じていたけ
ども、まだまだ続けられそうな気がする。セイバーの唇の音が小さくなって、
俺が次にどうしてくれようかと考えていた、その時。

 ふっと、蝋燭が消えた。
 気が付かなかったけど、今まで見ていた蝋燭は最後の一本で、それも燃え尽
きて部屋は綾目も分からない闇の中に包まれる。だが、それは温かく、まるで
微睡みに俺を誘うようで。
 腕の中で、遠坂の力がふっと抜ける。体重が俄に重くなる。

「あー……ああ。消えた」

 それはまるで、幕が下りた舞台の後のようで。
 なにか、その照明が消えたことを心の中でほっとした。このまま永遠に明か
りに照らし続けられていたら、俺も俺じゃない何か別の獣になりそうだったか
ら。そんな獣は借りた衣装で、幕が下りればまた衛宮士郎にもどれる、という
みたいに。

 ほ、と息が戻る。赤く熱く狂う血が、闇というラジエターに冷やされるのを
感じていた。

「凛……気を失ったのですか?」
「そう、みたいだな。刺激が強すぎたのかなぁ……セイバー、手伝って?」
「分かりました。士郎」


(To Be Continued....)