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「兄さん、酷いです……」

 嗚咽。
 ぽろぽろと涙がこぼれる。
 大声を出して泣き叫ぶのではないが、とめどなく涙を流してしゃくり上げて
いる。

「泣くなよ」
「だって」
「そんなに欲しければ、そう言えば良かったろ」
「だって……、そうしたら、兄さんに……、に、兄さんに、抱いてもらえなく
なちゃう。私、そ、そんなの、そんなの気が狂っちゃう……」
「……」

 そうか。確かにしばらく抱いてやらない、そうは言ったけど。
 馬鹿正直に。
 ……。
 それであんなに必死で、他の事に気が回らないほど……。
 いいよ、わかった。
 そもそも、もう秋葉のおしおきの時間は終わっているのだから、これ以上ズ
ルして苛めるのはやめる。
 これ以上は俺のほうが辛くなる。

 負けた。
 何より凄く秋葉に負けた気がする。

 黙って、秋葉の上半身を起こした。
 顎に手をやって少し顔を上げさせて、唇を合わせる。

「兄さん、んんっふうんん……」

 さっきと違う快楽を引き出す為でなく、秋葉を感じる為のキス。
 そして秋葉にも俺を感じて貰う為のキス。
 舌を差し入れ、秋葉の柔らかい舌に擦り合わせるが、激しく動かすのではな
く、緩やかに感触を味わう。

 これはこれで唾液を交換しあい、舌を吸いあうキスとは違った気持ちよさが
ある。
 秋葉もそれを感じているのか、力を抜いて俺の舌と唇を受け入れている。
 くちゅという音だけが部屋にこぼれる。

 唇を離す。
 秋葉の涙は止まっていた。
 目尻の綺麗な雫を拭ってやった。

「秋葉、実はだな」
「はい」
「たった今、おまえのおしおきの時間が終わった」
「えっ」
「だから、今この瞬間からご褒美の時間だ。
 秋葉は何をして欲しい? もう心配せずにおねだりしろよ」

 秋葉は信じられないという顔をする。
 あくまで時間終了には気がつかず、俺が秋葉を想ってオマケしたとでも解釈
したのだろうかか、微笑みを浮かべた。
 嬉しそうに、幸せそうに。
 悪いことしたな、本当に。すまん、秋葉。

「どうしようか?」
「何も注文はないです。ただ、途中で止めたりして意地悪しないで、兄さんの
お好きなように可愛がってください」
「わかった、秋葉が満足するまで可愛がってやる」
 
 もう一度互いに唇を求め、一つになった。
 しばらく、本当に長い間、そうやって唇で繋がっていた。
 
 そして、キスしたまま、手を秋葉の秘処へ伸ばした。
 さっきまでの指での愛撫と、素股でのペニスの擦りつけとで、そこはすっか
りとろとろとしている。
 すんなりと指を受け入れる。
 一本、二本と。
 激しくは動かさない。
 入れる時は抵抗無く入ったのに、中に入ってからはきゅうきゅうと千切れて
しまうのではないかと思うほどきつく締め付けられる。
 無理をしないでゆっくりと出し入れをした。
 人差し指と中指を第一関節まで出しては、また根本まで挿入する。
 何度もこの中の感触を味わい、歓喜の果てを迎えているというのに、こんな
狭い処にペニスが入るのが信じられない。
 秋葉が興奮すればするほど、感じれば感じるほど、秋葉の意思に関わらず、
そこはきゅっと縮こまり、侵入者を優しくも激しく歓迎すると知っていても。

 秋葉が唇を離す。
 
「兄さん、お願い、私もう……、我慢できない」
 
 哀願。
 泣きそうな顔でこちらを向き、手に縋る。
 ……こちらももう限界だ。
 指を引き抜き、腰をつかんで、そのまま覆い被さって秋葉を貫いた。

「あああぁぁぁぁ」

 歓喜の声。
 ぎゅっと奥まで一気に入ったペニスが濡れ襞の収縮の洗礼を受ける。
 そのまま放出しそうな圧倒的な締め付けと脈動。
 
 歯を食いしばって、その大波をやりすごし、今度はこちらからお返しをする。
 秋葉は準備OKどころか、放っておくとそのままで達してしまいそうなので、
かまわずがんがんと腰を打ちつける。

「ああ、いいっ、兄さん、もっと、兄さんんんんッッッッ」

 軽くイったな。
 声と、秋葉の中の動きでわかる。
 そしてまたすぐに昇りつめようとしている。
 こちらも我慢せず、秋葉と同期化してさらに強く激しく動いた。
 ぐちゅぐちゅと、こぼれ落ちる秋葉の愛液に下半身を濡らしながら、出し入
れを繰り返す。

 ああ、久々の秋葉の中……、琥珀さんとも翡翠とも全然違う。
 頭の片隅が妙に冷静だったが、残りはすっかり秋葉からの快美感に酔い倒れ
ていた。
 秋葉がまた苦しげな表情をする。
 絶頂が近い。
 こちらもすぐにでも大丈夫だ。
 さらに激しく動いた。
 秋葉は声にならない悲鳴をあげる。

「兄さん、ダメ。もうダメです。あっ、あああ」
「いいよ、我慢するな、一緒だから」
「嬉しい、兄さ……」

 言葉にならず、ぎゅっと抱き締められた。
 クライマックス前にまた軽く来たようだ。
 力一杯して下さいと目が言っている。
 了解だ。
  
 うう、もうこちらも限界だな。
 何もしなくても、もう……。


「秋葉、行くぞ」
「はい、兄さん、私の中、いっぱい。ああ、うん……、あああぁァァ……」

 どぷ、どぷと。
 下半身全体がペニスになったような快感と放出感が満ちる。
 秋葉の中に吐き出すと言うより、秋葉になにもかも吸い尽くされたような激
しい射精感。
 秋葉の腰を支えると言うより縋るようにして、秋葉の中を俺はいっぱいに満
たした。
 何て満足感。
 秋葉も満ち足りた表情をしている。

 でも、秋葉も俺も、当然こんな一回程度では本当には満足はしない。
 つかの間の余韻の後、もっとさらにもっとという飢餓感で相手を求める。

「次は、秋葉にして貰おうかな」

 横たわる。
 そっくり返ったペニスを手で曲げる。
 真上を向かせて、少しひらひらとさせて見せる。

「秋葉、好きなようにしていいぞ」
「はい、兄さん。それでは……」

 秋葉が脚を広げ、跨いだ形から自ら女陰へとペニスを導く。
 ぽとぽとと今のを滴らせながら。
 呑み込まれる様を瞬きもせず見守り、秋葉が騎乗位で優雅に腰を振るのにあ
わせて、ブラウスの脇のところから指を差し入れて胸を弄る。

「ふう……」
「あン、うん、ん……」

 荒い息と嬌声が重なる。

「もっと強くします……」
「ああ、幾らでも来いよ、秋葉」

 秋葉の動きがさらに激しくなり、口からは啜り泣きにも似た声が洩れる。
 ああ、凄いぞ、秋葉。
 もっと、もっと一緒に楽しもうな。

 乳首を摘んで悲鳴を上げさせながら、こちらからも腰を突き上げ始めた。
 秋葉はにこりと奔馬を乗りこなす。
 そして……。


              ◇     ◇
 

 折り伏すように秋葉と体を重ねて、ぐったりと横たわる。
 かなり、疲れた。
 ちょっと燃えすぎて真っ白。

「兄さん、はしたない妹への飴と鞭は、もうおしまいですか?」
「終わり。これ以上やったら倒れるよ」

 それでも、顔を近づけ口づけしてやる。
 秋葉も嬉しそうに受ける。
 互いの性器の匂いが残る口づけ。

「でも、今日のおしおきは酷かったです」
「そうか、けっこう楽しそうだったぞ?」
「嘘です、そんなの。気持よくて、でも感じたら自分でも何を言うかわからな
いから、ずっと我慢してたんですよ。泣きそうになりながら。それなのに、い
つもよりずっと兄さんの手とか舌が……」
「そうか。でもその後はいつもより凄く気持ちよかっただろ?」
「はい、あんなに感じまくったの久しぶり」

 恥かしそうに秋葉は視線を少し外す。
 思い出しているな。
 そうだな、よくもまああさこまでお互いに……。

「そうだな、少しやりすぎたかな。秋葉は平気なのか?」
「はい、兄さんがお望みなら、もっと続けても大丈夫ですよ」
「さすがに、もう無理だって」

 しかし、何回くらい立て続けにしたんだろう。
 後ろからしたり、顔にこすりつけたりもしちゃったな、まあ嫌がってはいな
かったけど。それにあれか。
 あちこちキスマークが残る秋葉を見つめる。
 秋葉が嬉しそうに、酷使された谷間を指で触っている。
 すごいドロドロ。
 拭いたけど、全然足りないな。
 後から後からあんなに中から……。

「ふふふ」

 嬉しそうな秋葉の声。
 指で掬い取った白濁した粘液を舌でちろっと舐めて、それから躊躇い無く口
に含んだ。

「美味しい……」

 その行為に目を奪われる。
 多分に、こちらの目を意識した秋葉の嬌態。
 中からこぼれ出る精液と、それを舐める秋葉のいやらしさ。
 普段なら、すぐに高ぶって秋葉の体に手を伸ばす処だが、さすがにもう、そ
こまで体がついていかない。
 秋葉もそれに気付き、ちょっと残念そうな目を俺の股間に向ける。

「それにしても、随分と兄さんの興奮を誘いましたね、この格好って」
「……ノーコメント」
「ふうん」

 秋葉はすっかり皺だらけになって、所々いろいろな染みがついた服を引っ張
ってみせる。
 精液やら愛液やら汗で凄い事に。
 しかし、あれほど何度も激しくやっていながら、服はずっと着たままという
辺り、自分でもこだわりがちょっと怖い。
 最初からのーぱんだったから、用は足りると言えば足りるんだけど。
 普通は途中で脱がすよなあ、多分。
 でもそんな酷いのを秋葉は嬉しそうに着ているし。

「そう言えばさ、秋葉」
「なんです、露骨に話題を変えようとして」
「うるさい。ええとさ、さっき他にもいろいろ用意してたなんて言ってたじゃ
ないか」
「はい? ああ、この格好以外にですね」
「そう。のーぱん以外のやつ。どんなのがあったの?」

 軽い興味。
 あくまで、軽い興味だ。
 本当に軽い興味なんだってば。

「はい、学校で使っている体操服ですとか」
「なに」

 ちょっとインパクトが。
 秋葉の体操服か。いいかも……。
 胸の無い辺りが逆にそそるような。
 舐めていると、次第に乳首が透けて見えて……、いいよな。採用。

「巫女服とか」
「な、なんだと。なんでそんなのが出てくるんだ」
「遠野に縁のある神社のものです。祭儀の時に私用に作ったものが、まだあり
ますから」
「……」

 巫女服。
 秋葉が巫女服。
 紅い袴。
 似合うだろうなあ。
 あの黒髪で、後ろを束ねたりして……。
 秋葉なら、そのへんの巫女さん以上に気品と清楚さを見せてくれるだろうか
ら、それは見たいな。
 そしてその清らかな巫女さんが……、うん、これも採用。

「それと、遠野の資本が入った飲食関係のチェーン店の制服ですとか。兄さん、
そういうのお好きなようでしたので」
「そんなのまであるのか」
「はい、例えば……」

 秋葉が次々に名前を挙げていく。
 聞いているうちに、体が震えた。
 胸を強調した某店はともかく、ゴシックロリータ系のあそことか、もろメイ
ド服スタイルのあそことか、ミニスカートに黒ストッキングが魅力なあそこと
か、スカーフとエプロンの形が独特で可愛いあそことか。
 それが全部一堂に会していると?
 秋葉がそれを、日替わりでとか。
 パラダイスかここは。

「……」
「ふふふ、興味深々といったご様子ですね」

 完全にバレているのはわかっているが、兄として、男としての矜持から韜晦
を試みる。無駄とはわかっているが。

「それは、少しは……」
「へえ、少しは、ですか。でも体の方は正直ですよ」

 そう言いつつ、秋葉が四つん這いで近づく。
 顔を近づける。
 俺の下半身に。
 話を聞いていたらすっかり臨戦態勢になっている股間に。

 うんん。
 ペニスが温かい感触に包まれる。
 秋葉の口が、嬉しそうに咥えている。

 もごもごと口の中を動かし、舌で幹から亀頭を擦りあげる。
 くちゅくちゅと音がする。

「……っ、はあ。兄さん、飲ませてください。今日最後に兄さんの熱い美味し
い精液」
「秋葉が頑張った出るかもな」

 もう一滴も残っていないような気がするんだが。
 秋葉は大丈夫です、と目で返す。
 
「はい。兄さんが飲ませてくれたら、次の時に」
「次の時に?」
「次に私を抱かれる時に、兄さんのお望みの格好でお相手いたします。それで、
どうです?」
「……それは嬉しいな」

 俺の同意を得て、秋葉はまた顔を埋める。
 さらにむくりと反って、硬く大きくなっているのが自分でもわかる。
 熱心に口戯を始める。
 本当に、秋葉は舐める行為も、精液も好きだよな。
 頭を撫ぜてやりながら、そんな事を思った。

 秋葉は嬉しそうに、しゃぶっている。
 もしも出したくないと言っても、口一杯に弾けさすまで秋葉は咥えたままだ
ろうな。
 まあ、こんなに蕩けるような気持ちよさを堪能できて、おまけに素敵な特典
が付くのだから文句なんてないけど。

 さて、何をお願いしようかな。
 巫女服も良いけど、それはとっておきにして。 
 ゴスロリもいいけど、琥珀さん辺りに着て貰うのも、こっそりと。
 体操服も相当ポイントが高いしな。
 ……。
 迷うなあ。
 こういう事で頭を悩ませるなら大歓迎だけど。
 うーん、何にしようかなあ。
 やっぱり最初に巫女服を堪能して、いやいや。あえて制服姿と言うのも捨て
がたいよな。夏服と冬服両方試してみるのも。
 それとも……。
 うーん、うーん

 
 《FIN》





―――あとがき


 先に書いたのが薄味なので、少し濃い目にしてみました。
 設定が無理目な辺りが出来の悪いエロマンガテイストですね。
 
 巫女服な秋葉はちょっと、というかかなり見たいなあ。
 と言うか、これならのーぱんでも自然だし。
 変な儀式とかあってとか……。

 個人的には馬車道な秋葉とかけっこう良いと思いますが。

 けっきょくいろいろあって締め切り破り。
 読了多謝であります。

  by しにを(2002/6/7+α)