男とゴマの油は
阿羅本 景
承前『LiquidValentine』
遠野秋葉は、しなれない行動にしばし首を捻りながらも着実に用意を進めていた。
三月の宵の空気はまだ冬の名残を残し、障子を風が揺らすとそのすきま風も
寒く感じる。秋葉は足袋裸足で畳の上を歩きながら、足下の布団を確かめた。
そして、開け放たれた押入の中に手を差し入れて、中から布団を抱え出す。
「……これで良いのかしら?」
秋葉は綿の掛け布団を抱えながら独語する。
いつもはベッドの上に眠っている秋葉は布団の上げ下ろしは得意とするとこ
ろではない。そもそもベッドメイキングは翡翠の仕事であり、主人がやってし
まっては話にならない。
中学時代は浅上の寮にいたが、それでも二段ベッドであった。新入生の頃は
朝晩と寮監のシスターが来てベッドのシーツの折り目を確かめて回っていたが、
二年三年となるとそれも甘くなった。高校になると自宅通学が認められたので、
その記憶も薄れている。
秋葉は布団を下ろすと、取りあえず敷き布団の上に載せて四隅を正す。
一歩離れて布団が歪んでないかを確かめると、秋葉はふふふ、と笑いながら
押入に再び向かう。そしてとりだしたのは――
「兄さん……うふふふふ」
秋葉が腕にとっていたのは、蕎麦殻の枕だった……それも二つ。
腕に抱いた枕に顔を押し当て、うふふふふ、とさも嬉しげに笑いながら秋葉
は背中を震わせる。男と女、一つの布団に枕は二つ、たとえ二人が兄妹であっ
てもそれが物語るのは一つの行為しかない。
そう、それに備えて秋葉はこの離れで、白無垢の襦袢一枚で待ちかまえていた
のであった。
枕を二つ仲良く布団に並べると、そのまま……柔らかい早春のお日様を吸い
込んだ布団の上に突っ伏して、うふふうはははと怪しい笑いを浮かべ始める秋葉。
その光景はさぞかし異様であったが、幸い障子を覗く者とていない。
この深い遠野の森の中にある離れは、静まり返った夜の空気の中にあった。
「兄さん……約束ですものね、ええ……」
そっと呟く秋葉の顔は、満面の笑みに彩られていた。
時は三月の十四日。一ヶ月前はバレンタインデーという俗な習慣であった。
そして、今日この日はホワイトデーという。俗な習慣の俗な返しであった。
だが、そんな物には鼻も引っかけない筈の秋葉だったが、今日だけは違った。
なにしろ兄であり愛しい恋人である志貴が秋葉にホワイトデーの約束をしたので
あったのだから。
それも、秋葉が手作りで上げたチョコレートのお返しとして……
「うふふふふふふふふ」
そこまで思い出すと、またもや秋葉は堪らずに布団の上に突っ伏す。
しばしそうして動かなかったかと思った秋葉であったが、そのうち秋葉はご
ろごろと布団の上に転がり出す。まるで子供が夜を楽しみにしているかのよう
な、他愛ない喜び方。
だが秋葉が喜んでいる訳というのは、そんな無邪気で童心に満ちた物ではない。
志貴は約束してくれたのだった。
ホワイトデーだけあって、志貴の白い濃厚な体液をお返ししてくれると。
白濁液と言おうか、スペルマというか……つまり精液であった。
もちろん、ペットボトルに入れてはいよ、と渡されるわけではない。
男が女に精液を私というのは必然的に……性交を意味している。
「……はっ、いけないいけない……」
志貴の熱い精を身体に注がれることを想像して秋葉は身震いし、そのまま身
体を熱く火照りだしそうにまで感じてしまう。義理であるとはいえ兄である志
貴とこのような交わりを結ぶのは世間では畜生の行いと言われるのかも知れな
いが、愛してしまった物はしょうがない、と秋葉は思う。
そのまま陶然と志貴との情交の思い出に耽り、疼きだした身体を慰めてしま
おうか――と思った秋葉は、慌てて立ち上がった。そして自分が転がり回った
布団を直し、乱れた襟口を治す。
ホワイトデーのお返しは花束かキャンディーか、それが世間の相場であると
秋葉は学習していた。そこで恋人の精をねだるというのはあまりにも常識外れ
であり破廉恥である、が……
秋葉は知っていた。志貴にはホワイトデーを返すにはそれしか手段がないと。
何故か?
簡単である。志貴の財政を掌握しているのは秋葉であり、秋葉はホワイトデー
に何かを買う資金を志貴に与えなかったのである。
哀れ志貴は、ホワイトデーを身体で返さざるを得ない状況に追い込まれたの
であった。まったくもって資本主義であり、志貴の涙と秋葉の高笑いはプロレ
タリアートに対する資本家の勝利を意味していた。
更にはこの一月の間、この日に備えて滋養強壮の食事を志貴にとらせる事す
らした秋葉である。志貴の財源を断ったのは、昼食にまで琥珀特製の強壮弁当
を食べさせコンディションを整えるという効果すらもあったのだった。
それに琥珀は嬉々として従い、志貴の身の回りを抑える翡翠すら協力の色を
表していた。
――その結果、有彦に志貴が「お前のこの弁当はAV男優かジゴロなんかの
飯か?」と言われたなどという事を知る秋葉でもないし、気に留める秋葉でも
ない。
その掉尾を飾るべく、秋葉はこの愛の隠れ家、遠野家の離れで準備を進めて
いた。
いつもなら翡翠にでも用意させるのであるが、今日この日は秋葉自ら愛の蓐
を用意していた。まるで初夜を迎える新妻の心地である。
ここまで用意したのだ、秋葉が何もしないでも満面喜悦で笑い出すのを抑え
ることは出来まい。
「……それにしても兄さんは、遅いわね」
秋葉は畳の上に正座すると、ちらりと柱の時計を見つめて呟く。
約束の時間は十五分あまり過ぎ去ろうとしていた。それにおかしな事といえば
、帰宅した時から使用人の翡翠と琥珀は姿を見せなかった……故に秋葉は一人で
準備をしていたわけでもあるが。
さらに言うと、志貴の帰宅も遅れていた。用があるとは聞いていた秋葉である
が、自分の約束を忘れるはずはないと確信している以上、大して気に留めていな
かった
秋葉はそのまま待ち、しびれを切らせて兄を迎えに行こうかと思った時、外に
物音を聞いた。
冬から春に移り変わろうとする乾いた下生えを掻き分ける足音。それは兄の到
来を告げていた――筈だった。
「……?」
興奮を押し殺して待ちかまえる秋葉は、耳ざとくその異変に気が付いていた。
足音は一人ではなく、複数。それも小走りに駆けてくる。
耳を澄ます秋葉には、さらに別の音が聞こえた。人の声である。
「翡翠ちゃん、そっちを下げると志貴さんが……」
「姉さんこそ前をちゃんと見て下さい、ああ……」
「どうして……翡翠と琥珀が?」
秋葉はその声色が使用人、翡翠と琥珀であると気が付いて思わず首を傾げる。
ここに来るのは志貴だけの筈であり、二人には用はない筈であった。
もしかして午後の不在を詫びに来たのか……と秋葉は思い、取りあえずは二
人を待つことにした。慌ててこの恰好で、寒い夜空に飛び出すの馬鹿げている。
秋葉は正座する影を障子に映し、縁側に足音が回るのを聞く。よく聞くと二
人は足取りを合わせているようであり、まるで二人掛かりで荷物を運んでいる
かのような。
どさ、と縁側に何かが下ろされたかと思うと、暗闇の中から白い腕が伸び、
障子を軽く鳴らせる。
「秋葉さま……」
「何の用?琥珀。ここには兄さんを呼んだ筈よ」
「ええ、ですので志貴さまをお届け参りました」
不可思議なことを口にする琥珀であった。秋葉は首を捻りながら、障子に向
かってにじり進む。そして縁側で控える二人にぽんと手を打って合図すると――
「失礼いたします。秋葉さま」
この和室に不似合いにも思えるメイド服の翡翠が、すすす、と障子を開く。
暗い春の森を背負った縁側の風景を秋葉は怪訝な顔で見つめ、そのまま……
瞠目する。
そこには和服姿の琥珀と、何故か担架が置かれており……その上にいるのは。
「そ……そ、それは一体どうしたの?翡翠!琥珀!」
それを見てしまった秋葉は、知らず声を荒げていた。
秋葉の恫喝にびくん、を身を竦ませる翡翠であったが、そんな翡翠に目配せ
する琥珀は落ち着いて一礼し、秋葉に応える。
「はい、志貴さまより今夜がお約束の刻限であると伺い、この通りお連れいた
しましたが……」
「そんなことは分かっているわよ琥珀。私が聞きたいのは、なんで兄さんがそ
のような有様になっているか!なの」
秋葉はすっくりと立ち上がり、腕を組みながら琥珀を見下ろす。
琥珀は動じず、その横には身体を縮こませる翡翠と、そして志貴が居た。
担架の上に横たわり、乾涸らびてはいたが。
「……秋葉さまはご存じ無かったのでしょうか?その……」
「何が?琥珀」
「その……本日はトリプルブッキングだったんですねー、志貴さんは」
ちらと頬がこけ、虚ろな瞳で宙を睨む志貴に眼を向けたかと思った琥珀だっ
たが、そう言ってなんとも仕方なさそうにあははははー、と乾いた笑いを浮か
べる。
トリプルブッキング?と呟く秋葉は訳が分からなかったが、ようやく翡翠が
常態の冷静さをを取り戻してその秋葉の抱える謎に答え始めた。
「志貴さまはアルクェイドさまとシエルさまにもホワイトデーの約束をされて
いまして」
「……それはどう言うこと?翡翠」
「ホワイトデーの約束を果たす順番が、まず朝にアルクェイドさま、夕刻にシ
エルさま、それに晩に秋葉さま……と言う順番にされていたのです」
翡翠のその答えに、秋葉はあんぐりと口を開く。
そして、半ば混乱にある秋葉がうろたえながら口にした言葉と言えば……
「そんな、兄さんはその二人に普通にホワイトデーを返せば」
「……そうなされたかったのかも知れませんが、志貴さまの財源を断たれたの
は秋葉さまですから……いえ、このようなことを申し上げるのは使用人として
の分を越えます。お許し下さい」
そう言って翡翠は手を付いて深々と頭を下げて許しを請う。見事なぐらい慇
懃無礼であり、秋葉はつっこみどころを失ってぐ、と悔しげな声を漏らす。
秋葉はその指摘に地団駄を踏みたい思いであった。忘れていた……兄にアル
クェイドとシエルという虫がついていて、よもや二人ともバレンタインにそん
な行動をとり、あまつさえ自分と同じ願いを口にするとは、と。
それに気が付かなかった己の口惜しさのあまり、思わず貧血すら憶える秋葉。
さらに、そこで志貴をそのホワイトデーのお返しに追い込んでしまったのは
秋葉の計略であった。藪をつついて蛇を出す、というか策士策におぼれるとい
うか、そう言う口惜しさを秋葉は奥歯で噛み締める羽目になっていた。
離れの和室に立ち尽くす秋葉は、仁王立ちのままでぎりぎりと歯軋りをする。
そんな気まずい主人の様子を危険と感じたのか、琥珀は慌てて弁明めいた言
葉を口にし始めた。
「でもその、志貴さまは頑張られたのですよー、せっかく夜に秋葉さまもお待
ちなられていると仰って、それはもう朝から……」
琥珀は翡翠の袖を引いたかと思うと、秋葉の前で二人でひそひそ話を始めた。
翡翠も大人しくその話に耳を傾けていたかと思うと、口元をゆがめて顔を引
きつらせる秋葉の前で軽く咳払いする。そして、二人の姉妹は軽くアイコンタ
クトを取ったかと思うとやおら……
§ §
「おはよー、志貴……こんなに朝早くぅどーしたのぉ?」
「よぅ、アルクェイド……朝からYシャツ一枚とはまた艶っぽいな、んむふふ
ふふふー」
「そぉ……パジャマ買った方がいいのかなぁ……え?志貴、どうしたの……鼻
息荒いよ?風邪ひいたの……って、なに志貴ニンニクくさい……」
「ふ、ふふふ……アルクェイド、今日は何の日か知ってるか?」
「……なんだったっけ?えーっと……」
「ホワイトデー……どぉりゃぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁ!志貴、そんな、朝早くからぁぁ」
「約束通りお前に白いのをアルクェイドのお腹の奥にたっぷりとお見舞いして
やるぅ、お前が朝からそんなに色っぽいから悪いんだぁぁぁ!」
「やっ、そんな激しく……優しくしてぇ……」
§ §
「流石に1ヶ月に渡る強精プログラムと、翡翠ちゃんが見張りのお手柄の禁欲
生活があったから序盤は志貴さんも快調で良かったんですけどねぇ」
「志貴さまは愚鈍ですから、とみに女性の方でペース配分は出来ません」
腕を組んで頷く琥珀と、姿勢を正してひどいことを口にする翡翠。
「で、ここでまず3回で……勢い、量ともすごくて、もう志貴さんたら、鬼で
すねぇ」
「……そして、夕刻のシエル様ですが……」
§ §
「先輩……はぁ……シャワー借りても良いかな?」
「あれ?遠野くんにしては珍しいことを言い出しますね?それに元気がないで
すね……そんなときにはカレーでも食べて元気にならないと」
「いやその……じゃぁ、先輩はベッドルームで待ってて、ね?」
「…………遠野くん……りゃっせぇぇぇぇい!」
「うわわ!先輩!なにを」
「遠野くん……遠野くんからあのいやらしい淫乱吸血鬼の香りがします」
「う……いやその先輩それは誤解で……」
「ふふふ……あの泥棒猫にさんざん注いできたのですね?せっかくのホワイト
デーなのにそんな精液の無駄遣いを……」
「……せ、せ、先輩……」
「でも安心して下さい。私の手管で搾り取って上げますから……最初は胸が良
いですか?それともお口?うふふふふ……」
「あーれー……」
§ §
「こうしてシエルさまで合計6ラウンド……流石に志貴さんも体力の限界だっ
たそうで、出てくるなりばったりと倒れて大変なことに」
「太陽が黄色いとか七夜の母さんがお迎えがやってきたとかその、譫言を仰ら
れて……」
寸劇が終わると、ぱちんと手を叩いて琥珀が説明する。
今までアルクェイドと志貴の真似をしていた翡翠は、さんざ恥ずかしい事を
喋っただけあって真っ赤になって俯いている。一方やる気満々なサイドを演じ
た琥珀はさも楽しそうにはしゃいでいた。
一方、説明される秋葉は腕をだらりと下げ、唖然としてこの寸劇を聞くばか
りであった。
それはそうだ、事情の説明をされるかと思いきやいきなり使用人達が寸劇を
演じ始めれば、普通誰だって呆気にとられるだろう。秋葉とて例外ではない。
――しかし、どうして……
秋葉は思ったままの疑問を口にする。
「どうしてあなた達、兄さんがそんなことをやったと知ってるのよ」
「それはもう、今日は志貴さんが大変なことになるだろうなーって思って前もっ
てピットクルーとして同行していましたから」
「志貴さまはシエルさまの家から出られたところでお倒れになられまして……
私たち二人で運んで参りました」
――聞いていたの……
俯く翡翠と楽しそうな琥珀。対照的な表情の二人を前に秋葉は間が抜けた表
情を止めて、しかめつらしい顔を作って顔を横たわる志貴に向ける。
まるで志貴はミイラのようであった。腕は宙を掴むかのように掲げ上げられ
て凍り、眼も眼鏡の奥底で落ちくぼみ、肌はかさかさに乾いている。一日にこ
れほどに消耗しきるとは、如何にアルクェイドとシエルが志貴から精力を搾り
取ったのか想像に難くない。
普通の人間ならそのまま腎虚で死んでもおかしくなかっただろう。そこは絶
倫超人志貴だけあってなんとか命を取り留めたが、今の志貴というのはまるっ
きり抜け殻のようであり……
――これでは兄さんからせっかくのホワイトデーが貰えない
秋葉はそう思うと口惜しくてならない。
せっかくのホワイトデーを貰い損ねること。
さらにアルクェイドとシエル、二人のライバルに後れをとったこと。
愛する兄の志貴が自分より二人のあーぱーと陰険娘を先にしたこと。
使用人二人がそのことを知っていても、自分が蚊帳の外に置かれたこと。
――遠野秋葉の名に賭けてもここで引き下がるわけにはいかない!
黒々とした感情が秋葉の中で渦巻き、黒は朱に変じで脊髄を怒りとなって駆
けめぐる。
ざわり、と秋葉の中の鬼が蠢きだしていた。髪は自然と鴉羽の黒から熾火の
朱を含み、ふわりと風に逆らって舞い始める。
――自分だけ兄さんの精液を貰えないのは、我慢できない
せっかくここまで準備したのに……
怒りと欲望の入り交じった感情に己の本能をゆだねる秋葉。
そんな秋葉の様子に気が付いた琥珀と翡翠は、二人で志貴の身体を担架から
布団に移し、そのまま宙を睨んで鬼種の血を滾らせつつある秋葉に頭を下げる。
二人とも口早に申す様には曰く
「それではお二人のお時間、お楽しみ下さいねー」
「秋葉さま、それでは私たちはお邪魔となりますので失礼いたします」
「お待ちなさい!」
急いで身を翻して逃げようとした翡翠と琥珀は、後ろから襟口をがしっと取
られた。
秋葉から手が届く範囲ではないのに……だが、秋葉は檻髪を操ると器用に襟
首を掴み、そのまま畳の上をずるずると引きずっていく。
檻髪を舞わせる秋葉はうふふふふふふ、と長く影を含んだ笑いを口から漏ら
すと、恐慌の顔で引きずられてくる二人の姉妹に命じる。
「翡翠、琥珀?あなた達は知ってて黙っていたんでしょう?」
「そ、そ、そんなことはないですよー」
「嘘仰い。きっと先にあなた達だけ兄さんに注いで貰ったのね?精液を」
その言葉に文字通り凍り付く翡翠と琥珀。
いまや生殺与奪はこの無類の勘を発揮する秋葉に握られており、頷いても殺
され、首を振っても殺される。そんな状況の中で二人が何を一体出来たという
のであろうか。
「……どうしてそのことを、秋葉さま……」
掘らなくて良いのにしっかりと墓穴を掘る翡翠と、自らの死刑宣告書面にし
たような発言に文字通り頭を抱える琥珀。
だが秋葉はそのまま檻髪で絞め殺すことはせず、ふふん、と笑うと……
「ならば翡翠?琥珀……も手伝いなさい……せめてもの罪滅ぼしにね」
「あ、秋葉さま……志貴さんはもうすっからかんに乾涸らびているのに、いく
らお手伝いをしろと申されましても」
「だまらっしゃい!あなた達の共感の力があればそんなことちょちょいのちょ
いでしょが!それにね、琥珀……ふふふ、翡翠?」
ひとしきり怒鳴ったかと思うと、一転して怪しい笑みを漏らす秋葉。
翡翠も琥珀も、もはやお互いの身体を抱きしめ合って震えるばかり。
「男の人と胡麻の油はね、絞れば絞るほど出るものよ」
「「秋葉さま……ご、ご容赦下さい!」」
「聞く耳持ちません!さぁごちゃごちゃ言わずにさっさとやる!」
秋葉はぐわっと檻髪を広げるとそのまま――
§ §
「ふぅ、兄さん……素敵でしたわ。お風呂先に借りますね」
「ううう……くすん、姉さん、汚されちゃった……」
「ぉぉぉ……死ぬ……止めてくれ秋葉……もう……どぐぴゅっ!」
「あはは、志貴さんったらもう、髪の毛真っ白ですねぇー、これがホントのホ
ワイトデー……ぅあ」
パタリ。
後書き
どうも、阿羅本です。皆様、お楽しみ頂けましたでしょうか?
前回はバレンタインデーSSが好評だったので、やはりこれも続編を書こうと
思いまして……3/3の雛祭りは?とか色々考えたのですがやはりホワイトデーは
ホワイトデーで書いてみることに致しました。
で、やはりそうなると前作『LiquidValentine』のお話の続きに……志貴のトリ
プルブッキングをネタにせずばなるまいな、と(笑)。志貴を追っかけていって3
人分のHを書こうかと思ったのですが、それも冗長なので一番最後の秋葉に視点
を据えてコメディに仕上げてみました。
いや、なんというのか……自分で書いても誰も幸せになってない話だな、と……
いや、秋葉は幸せなのか、これは(笑)
ナンセンスな話になってしまいましたが、これも女の子に三回出さないといけない
志貴が悪いんですよあはははー、と琥珀さん笑いしてみたりも……でも、やっぱり9
発は無謀だと思います、ええ、半分だって阿羅本はよー出ません(爆)
そんなこんなでございますが、お気に入り入りいただければ有り難く存じます。
それではまた他のSSでお会いいたしましょう。
でわでわ!!
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