「ふぅ」
「凄かった、あんなの初めてかもしれない」
「ふうん、遠野くんよりも良かったと?」
「志貴とはまた違うよ」

 まだアルクェイドと抱き合ったまま。
 ついでに言うと、まだアルクェイドの中。
 余韻に浸っている最中。

「ふうん、でも前に遠野くんとして見せて貰った時より乱れていたような気が
しましたけど?」
「そんな事ないもん、志貴がいちばんだもの」
「本当に?」
「……」

 何故、考え込むんです。

「ええと、今だって志貴だと思って頑張ったんだもの」
「なるほど、一理ありますね。だ、そうですよ、遠野くん?」
「え?」

 わあ、初めて見ました。
 アルクェイド、あなたのそんなに死ぬほど驚愕した顔。
 目が言い尽くせぬほどの色の変化を見せ、ゆっくりとアルクェイドは顔を上
げて、後ろを振り向いた。

「……ああああ、な、な、なんで志貴起きてるのよ」
「なんでって言われても」

 遠野くんもちょっと困ったような、お間抜けさんな可愛い顔をしている。
 あれだけ、間近で声を出していたら無理もないと思いますよ、アルクェイド。
 わたわたとアルクェイドが身を離す。
 にゅぷん。
 そして慌てて、ベッドからシーツを剥ぎ取って体を隠した。
 こてんとひっくり返る遠野くん。
 って、そんなに恥ずかしかったのか。
 泣きそうになりながらわたしの背中に隠れなくても……。

「起きたら、先輩とアルクェイドが……。
 夢かと思ったよ」
「ふうん、そうですか。でも声も掛けないで最後まで見てたなんて、遠野くん
も趣味が悪い……、ってなんでそんなに落ち込んでるんですか?」

 落ち込んでいると言うと変だけど、少し顔に翳りがあるような。
 あんな光景を見せられたらもっと興奮状態にあるかと思ったのに……。
 見ると、股間のものも微妙な勃ち具合。

「どうしました、遠野くん?」
「うん……、今さ、アルクェイドがシエル先輩の名を呼んでイッただろ?」
「そうでしたね」
「それに、あんなに艶かしい声出してさ。
 ……なんだか、凄く複雑な気分」
「寝取られたみたいですか、ふふふ……」
「そうじゃないけど、いや、そうなのかな?」

 わたしの冗談めかした言葉に、遠野くんは余り冗談でない反応を返した。
 こちらにしてみれば、そこで遠野くんが悩む方が、複雑なんですけど。
 でも、そんな顔をされると申し訳ない気分に。
 ならば……。
 
「慰めてあげますよ、遠野くん」
「シエル、先輩?」

 四つん這いで近づき侍るようにして、顔を寄せる。
 濃厚なオスの匂いに鼻をひくつかせる。
 足をつかんで大きく開いてしまう。
 いきなりなので、抵抗なく思い通りの格好になった。
 ふふふ、いただきます。
 
 唇に粘液が触れ、滑る。
 口がぬるぬると汚れるのに構わず舌を……。
 と、ここでやっと我に返ったのか、叫び声が上がった。

「やだ、シエル、何しているのよ」

 悲鳴のようなアルクェイドの声。
 そう、わたしは遠野くんではなく、アルクェイドを攻め始めたのだ。
 その濡れに濡れて充血した秘裂に顔を埋め、舌を躍らせ一舐めした処で、顔
を上げた。
 アルクェイドが狼狽した顔をしている。
 なんだか彼女のうろたえた様は可愛い……。

「見ればわかるでしょう。遠野君の精液を舐めているんですよ」

 邪魔しないで下さいという意思を込めた声で答える。

「だって、そんな」
「はいはい、少し黙っていなさい」

 再び彼女のクリトリスを、ちぎれそうなほどか細い小陰唇のびらびらを、柔
らかな襞の重なりを、舌で舐める。
 大きく彼女の足を広げ、指で鮮やかなピンク色の花弁の奥を剥き出しにして、
私の背後からの視線に晒す。
 遠野くんが息を呑むのがわかる。

 そうです、もっと見てください。
 アルクェイドがはしたなく愛液を分泌するのを。
 わたしがたっぷりと出した精液がなかからこぽりと垂れ落ちるのを。
 そして恥ずかしがる彼女の紅潮した顔を。
 私の舌でアルクェイドがはしたなく乱れるのを。

「ふふ、こんな処まで垂らしちゃって。
 これは、今流しているみたいですよ、遠野くん」

 遠野くん、という言葉でまたとろりとアルクェイドの秘裂から蜜が滴る。
 それを追って舌を前へ突き出す。
 遠野くんに見えるように、なるべく舌を伸ばして。

「やだ、やだ。なんで、そんな処……」

 じたばた暴れるアルクェイドを押さえつけて舌でちろちろと可愛がる。
 ふふふ、きゅって収縮してる。
 ダメです、中も味わってあげます。
 一しきり舌での愛撫を終えて顔を上げた。

「あなたは排泄行為を行わないじゃないですか。
 それに、今ので広げられて、少し赤みが増して、可愛いですよ、ここ」

 そう言って、愛液と唾液でふやけたアルクェイドの後ろの穴を指で突付く。
 
「ね、遠野くんを見て御覧なさい」
「え?」

 アルクェイドに囁くと、素直に彼女は従う。
 あっ、と小さな声。

「ふふ、あなたの恥ずかしがってる顔と、こんな行為を受けている姿で、すっ
かり興奮していますよ」
「う、うん、志貴の……」
「それに食い入るようにわたし達を見ちゃって」
「先輩……」

 遠野くんが切なそうな顔でこちらを見る。
 さっきうなだれかけていたペニスがこちこちになってひくひくと震えている。

「いいですよ、二人で遠野君を気持ち良くしてあげますからね」

 アルクェイドに耳打ちして、遠野君に身を摺り寄せた。
 二人で遠野くんにキスして押し倒す。
 体を押し付けながら、胸から腰へと降りていく。
 そして、そこに辿り着く。
 遠野くんの隆起に。
 
 二人で側面から遠野くんに体を押し付ける。
 胸がはさまれて潰れてしまう。
 アルクェイドには負けますけど、わたしも決して小さい方ではありませんし、
どうです、遠野くん。
 ふふふ、アルクェイドも押し付けたり少し動かしたりして刺激してますね。
 わたしも……。
 うんん、乳首が擦れるのが、気持ちいい……。
 どうですか。
 あらあら呻き声。

 ぬめぬめとした粘液で胸が汚される。
 でも、アルクェイドもわたしもむしろそれを嬉しそうにして、競う様に遠野
くんのペニスに胸を擦りつけた。
 その熱く硬い肉の棒に嬲られるのも、アルクェイドの柔らかい胸と擦られる
感触もたまらなく快感だった。

 いつしか、無秩序だった動きが変化してきた。
 アルクェイドと息を合わせた動きになってきていた。
 ほとんどアルクェイドと抱き合うようにして遠野くんをサンドイッチにした
り、自分の胸を外から潰すようにして突き出た胸の先で遠野くんを擦り上げて
みたり。

 わたしが始める動作にすぐにアルクェイドは追従し、アルクェイドの愛撫に
わたしはすぐ歩調を合わせた。

 決してわたし一人でも、アルクェイドだけでも出来ない異種の快感を遠野く
んに与える。
 反応はと見ると、遠野くんは可愛く乱れている。
 これは本気で感じてしまって、どうにもならなくなっている。

 根元から、ペニスは暴れるように動き、よりいっそうはちきれそうになって
いる。腰がびくつき、荒い息に押し殺した声が混じる。

「アルクェイド」

 声を掛ける。
 アルクェイドは頷き、わたしの無言の指示に従う。
 よりいっそう胸を押し付け、そして上下に擦り上げる。
 わたしが根元から先端に動く時は、アルクェイドがその逆に。
 もみくちゃになって、今何をしているのかわからなくなる。
 ただ、熱い遠野くんのペニスの場所だけは見誤る事はない。
 わたしとアルクェイドの胸にすっぽりと埋もれて、時折その充血しきった先
端を覗かせるだけだったけれど。
 そして……。

「ああぁぁぁッッッ」

 呻き声と共に遠野くんが射精した。
 さすがにそれほど濃厚ではないけれど、驚くほどの量。
 同時に、わたし達もぐったりと崩れる。
 イった訳ではないけれど、髪も顔も胸も遠野くんの匂いに包まれ、何ともい
えない酩酊にも似た多幸感に脱力しきっていた。


                 ◇


「お待たせしました」

 一応、わたしもアルクェイドもバスタオルできちんと肌を隠している。
 女の子なんだから、慎みは大事だと思う。
 もう、股間の異物も引っ込めてしまいましたし。
 でも、剥き出しの肩や脚は上気している様を隠さず見せている。
 遠野くんは、わたしとアルクェイドを交互に見ている。

 わたしとアルクェイドはお風呂上りだった。
 遠野くんも含めて、汗とか、その他の恥ずかしい粘液でへとべとになってし
まったから、体を清めたのだ。
 さすがに三人で同時というのは不可能なので、遠野くんに勧められてまずわ
たし達が先に入らせて貰った。

「志貴ったら、また食い入るように見てる」
「そうですね」

 はっとしたように遠野くんは目を逸らしかけ、そしてそのままわたし達を見
つめた。

「綺麗だからさ、二人とも」
「わ、珍しいね、志貴がそんな事言うなんて」
「そうですね、ふふ、真っ赤」

 揶揄されて、耳まで赤くなった遠野くん。
 タオルを掴んでやわら立ち上がる。
 
「じゃ、じゃあお風呂借りるよ、シエル先輩」

 あ、逃げられちゃった。

「はいはい、ゆっくり温まって下さいね」
 
 笑顔で遠野くんを送って、ふと顔を正面に戻すと、アルクェイドが神妙な顔
をしてこちらを見ていた。

「どうしました、アルクェイド?」
「答えをまだ聞いてないから」
「答え?」

 アルクェイドがむぅという顔をして言う。

「だから、わたしを試してシエルが合格をだしたかどうか」
「ああ。上手くなりましたね」
「え、じゃ」

 ぱっと顔が輝く。

「認められませんね、残念でした」
「え、なんでよ。シエルずるい」

 知りませんねという澄まし顔で、ぶーぶー文句を言うアルクェイドをやり過
ごす……、とこれくらいでいいかな。

「あたりまえでしょう。遠野くんの恋人として、他の女に対して遠野くんに抱
かれる価値ありなんて死んでも認められるものですか」
「じゃあ、最初からそのつもりだったの」
「嘘はついていませんよ。ちゃんと試してあげて、そして考えてダメと言って
るんですから。
 ただし……」

 思わせぶりな顔で彼女の目を見つめる。

「わたしは遠野くんにめろめろですからねえ。
 もしも遠野くんがどうしてもと言ったら、浮気は許しませんけど、わたし達
の愛の営みに混ぜてくれって頼まれたら、断れないかもしれませんねえ」

 一瞬、意味がわからず戸惑ったアルクェイドが、嬉しそうな笑顔になるのを
眺めながら、ちょっとだけ嘆息した。
 敵であるアルクェイドとなら決してこんな事にならなかったのに。
 変に馴染まれて、だから……、ふう。

 陥落させられちゃったかなあ。
 まあ、それもいいかなと思っているわたしも何処かにいるのだけど。
 認めたくないけれど。
 ……。


 まあ、いいでしょう。
 でも、いいですか。
 正妻の座は譲りませんからね、アルクェイド。
 いいですね?


  FIN.









―――あとがき

 MoonGazer様、100万HITおめでとう作品という事で書いてみました。
 今日現在で、もうすぐ120万とかになりそうですけど……。
 まあ、こういうのは心が大切ですよね。

 で、これは前に寄稿させて頂いたアルクェイド&シエル&志貴のSSの続き
になります。
 わりあいこの異端の組合せが好きなので、楽しく書けました。
 まただらだらと長くなったので少しは整理したのですが、まだ垂れ流しです
ね、すみません。
「二回も遠野くんに処女を捧げられるんですよ。幸せですよ、あなたは」なん
て展開も考えたんですけど。


 少しまっとうにお祝いを。阿羅本さんの存在がなければ、自分でサイト持っ
たり18禁SS書いたりと、道を踏み外す事もなかったです。少なくとも私の
人生行路に影響を与えてくれました。きっとそういう人は他にもいらっしゃる
でしょう。
 
 これからも、ご活躍期待しております。
 願わくはもっと多くの人間の運命を次々と狂わせん事を。

   by しにを(2002/11/07)