「んんっ、ふぁ……」
上半身を前に傾けながら、アルクェイドが動きを再開した。
体重を掛けながら、腰をゆっくりと沈めていく。
ゆっくりと、ゆっくりと。
その動きで、呑み込まれたペニス全体が、ぬめりをおびた襞に擦り上げられ
ていく。
もどかしくも、蕩けそうな快感。
苦しそうだな。
アルクェイドが歯を食い締めているのがわかる。
尋常でなく、ペニス全体がぎりぎりと締め付けられている。
狭道を無理やりに押し開いているようなきつさ。
遠野くんともそう何度も何度も交わった訳ではないそうだから、ほとんど処
女と変わらないのかもしれない。
奥で、少し柔肉とは違った感触に先端が触れた。
「ふぅ、ぜん…ぶ……、入ったぁ。うんん、動くね、はぅぅ……」
呼気が途切れ途切れ。
でも、アルクェイドは崩れそうな体を立て直して、わたしのペニスを軸に、
上下に腰を動かし始めた。
じゅぷ、にゅぷと湿りを含んだ音が洩れる。
それに混じってアルクェイドの吐息。
苦しそうな顔。
でもアルクェイドの顔は、常と違う艶やかさを見せている。
それに、魅せられた。
わたしは腰全体が痺れるような快感をただ寝転がって享受しながら、それを
もたらすべく奉仕しているアルクェイドの端整な顔を、馬鹿みたいに見つめて
いた。
わたしも我を忘れるほど快感を得ているのに、何故か、全然別の歯車が廻っ
て、わたしの頭の隅に埋もれていた記憶の扉が開いた。
思い出す。
忘れえない過去に、ロアに体をいいように使われていた頃を。
退屈しのぎに、無数の女性を快楽の道具として犯し交わり淫行の限りを尽く
した頃を。
思い出す。
年端もいかない少女を感覚を鋭敏にして弄び、絶頂させ続け苦しさに絶叫す
るのを眺めた事を。
逆にある一定までで何をしても達する事が出来ないようにされた清楚な貴族
の娘が、もどかしさに泣き叫び、最低の娼婦でも拒むような真似を嬉々とする
のを嘲笑った事を。
思い出す。
無数の性行為という領域を逸脱した、グロテスクな行為を。
自ら行ったり、意識のある操り人形を使って眺めて楽しんだ日々を。
ただ、悲鳴をあげていたあの頃と違い、今のわたしはそれをより憎む。
ロアが新たな体を得ては、また繰り返す慰み。
その為に供された数知れぬ犠牲。
全ては、ロアにとって意味あるただ一人との邂逅までの、ほんの退屈しのぎ
に過ぎないと知るが故に。
真祖アルクェイド・ブリュンスタッド。
数え切れぬ災厄をまき散らして、手に入れようとして、そしてついにロアに
は手の届かなかった遠き存在。
その彼女が、自らわたしのペニスを手にとり、貫き、動いている。
どう思うだろうか、死したアカシャの蛇は?
かつて、彼が魂を宿していた抜け殻が、彼が覚えていた魔術で、真祖の姫と
交わっている事を。
「シエル、どうしたの……?」
さっきのぎこちなさが薄れ、リズムのある動きになっていた。
余裕も出来たのだろう、アルクェイドが問うようにわたしを見ている。
「わたしの中、変? それとも下手くそで気持ち良くないの?」
「いえ、まあ、少しは楽しめますかね。
ただ、この程度で休むようだと遠野くんは満足させられませんよ」
「う、うん」
動きが早まる。
平然としているのが、困難になってきましたね。
前でぶるぶると弾む胸もなんしも魅惑的で美味しそう。
ロアの事など脳裏から消して、こちらに集中した。
手を伸ばして、胸を掴む。
凄い、弾力と張りはあるのに、指が沈み込む。
「ふぁぁ、シエル、何……」
「いいから、続けなさい」
体の揺すりで、何もしなくても、手の平で胸が歪み、潰れ、形を変えていく。
ふっと浮いては、またその重みが伝わる。
乳首も小さくて可愛いこと。
指で摘んでみると、びっくりするほどアルクェイドは喘ぎ、嬌声を洩らした。
ふーん、随分感度かいいんだ。
ずっとは弄らないで、アルクェイドの動きに合わせて、適度に刺激を与える
と面白いほど反応を返す。
何度目、何十回目だっただろうか。
だいぶアルクェイドが高まったのを見て、しばらく強い刺激は控えていた。
だが、深く腰を落とすのに呼応させて、わたしはぎゅっと痛いほどに両の乳
首を抓りあげた。
「あ、ああぅぅぁッッ……、ッッんん」
力が抜けたのか、ずんと体重全部がかかってアルクェイドの体が勢い良く落
ちた。当然、屹立に強く深く貫かれ……、アルクェイドは軽く達した。
一瞬硬直し、ぐったりと脱力して崩れ落ちる。
上半身が前に倒れ込んだ。
「おや、一人で気持ち良くなって」
「はぅ…、ふぅ……」
荒い息だけで、声にならない。
でも、その状態からアルクェイドは僅かではあっても体を動かした。
体全体を押し付けた状態で、抽送される。
すず、と汗ばんだ肉が密着し擦れる感触。
まったく、可愛いこと……。
「もう少しだから、手伝ってあげるから、一緒に……」
彼女の耳元で囁く。
自分でも不思議だったが、何故か優しい声を出していた。
アルクェイドは頷き、手を床について上半身を起こした。
そして、ついた手を支えとして、腰を動かす。
動く度に、悲鳴じみた艶かしい声が洩れる。
わたしは、下から彼女の動きに合わせて自分でも腰を突き上げた。
より強く、より激しくペニスがアルクェイドを貫く。
幹もその周りもアルクェイドの淫液に濡れている。
わたしの秘裂もまた、男としての刺激に同化して濡れそぼっていた。
「シエル、もう、ダメ。お願い、シエル……」
泣きそうな声。
潤んだ瞳。
わたしも限界だった。
アルクェイドを抱き締め、その唇を奪った。
痛いほど抱き締められ、舌でねぶられ、アルクェイドの膣内は今まででいち
ばん強くわたしを締め付けた。
ッッああ。
きつく体を抱き締めているのに、体が離れたいと望んでいるかのように、反
ってしまう。
「あ、もうダメ。アルクェイド。あ、あああァァァッッッ」
しばらく味わっていなかった膣奥へ全てを迸らせる快感。
全てが消え失せる果てしない瞬間。
びゅくびゅくと凄まじい勢いで、アルクェイドの奥に精液が迸った。
「ああ、イったのね。わかる、シエルの熱いのいっぱい。嬉しい。シエル」
アルクェイドが乱れ、叫んでいる。
なんて綺麗。
幸せそうな顔で、アルクェイドはびくびくと体を痙攣させ、わたしの体の上
に崩れ落ちた。
わたしもまた、脱力したまま、馬鹿みたいに笑みを浮かべていた。
本当に、蕩けるような快感。
〈続く〉
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