在るべきところ
竜次
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1節ごとに一人称が志貴と秋葉で交代しています。
秋葉トゥルールートで「命を返す」選択後、画面ホワイトアウトからの分岐です。
志貴とシキも命を共有していたという解釈です。
秋葉が目覚めた時、昏睡状態の志貴が倒れていた、という設定です。
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1
白い月。
海原のような草原。
かつて大切な事を学んだ所。
月光の下、万物が静かに一時の安息に浸る世界。
現世で望み得るはずの無い世界。
「俺は死んだはずなのに……」
死を体験したことがが無ければ、ここが死後の世界と思ったかもしれない。
だが、生憎と俺は死というものを良く見知っている。
体験した事さえある。
だからここが死後の世界では無い事が分かる。だが、ここが生者の住まう世界
でも無い事も分かってしまう。
「ここはどこだ?」
そう、秋葉に命を返す為に確かに自らの体の死の線を切った。
あの、死という闇に落ち込ん……でいない。
そうだ、あの瞬間、俺の意識を包み込んだのは、全てを溶かし込む漆黒の死
の闇ではない。あれは白い闇。輝きの果てに陰影を消してしまう光輝という闇。
あの時、俺は死ぬつもりで死んでいない。
「死んでいないなら、ここはどこだ?」
声に出したところで、答えが返って来る訳が無い。だから自分で考えて探す
しかない。
ここは死後の世界ではない。だから志貴は死んでいない。
ここは現実の世界ではない。だから志貴は現実の世界にはいない。
死んでいないのだから、志貴には命がある。
死んだはずなのに生きているのは何故?他人の命を貰ったから?
槙久はシキを殺した。シキは志貴の命を奪った。志貴は秋葉の命を分けて貰った。
槙久は死んだ。シキは志貴に命を奪われた。志貴は秋葉に命を返した。
だからシキは死んだ。
だから志貴は命がある。
だから秋葉は元に戻った。
命があるのだから志貴は生きている。
生きているなら何をしなければならない?
約束を守らなければならない。
約束を守るには秋葉のもとに行かなければならない。
では、どうすれば帰れる?
あの時、秋葉に見させてもらっていた生という夢を見るのを止めようとして
ここにきた。ならば生は夢。胡蝶の夢。今度は自分で夢を見れば良い。
気を楽にして草原に寝転び、ゆっくりと目を閉じる。
(To Be Continued....)
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