青年の手が、少女の足を捉えた。
 そして一気に上に持ち上げ、開いた足の合間に身体を滑りこませる。
 そのまま上に圧し掛かり、少女を逃がさないように腕を掴んだ。

「あっ――い、いやです! シロウ、やめ、やめてください――!」

 悲痛な叫びは青年へと向けられ、だが願いは届く事無く、空間へ霧散する。
 それを聞いた青年が、狂ったように叫ぶ。

「くそっ――! 何で、何で動かない……っ!」

 歯を食いしばり、手足に意識を集中しても、自分の意思で四肢が動くことは
無い。
 腕は勝手に動き、右手で少女の左手首を、左手で右手首を掴み、床へ押し付
けている。
 身体は暴れる少女に圧し掛かり、逃げ場を完全に塞いでいた。

「いたっ、痛いです、あっ――は、くる、し……けほっ、あ――」
「畜生、畜生畜生畜生!動け、動けっ――――!」

 腕が動き、床に押さえていた手をセイバーの頭の上で交差させる。
 そして、交点部分を片手で押さえ、空いた方の手でセイバーの乳房を弄り始
めた。

「はっ――あ、や…ん、は、ぁ……う、シ、シロ、ウ……あ」

 先ほどまでの乱暴なものと打って変わって、繊細な指使いでセイバーを愛撫
していく。
 だが、当の本人には触感はあるものの、まるで自分の中に誰かが入り込んで
いて、勝手に身体を使われているような感覚しか無かった。
 確かに自分の身体なのに、自分の自由にならない――その事実に、士郎は改
めて恐怖を感じていた。

「ぐっ……! セイバー、頼む、俺を――蹴り飛ばしてくれ!
 何をしてもいいから、俺を突き放してくれっ……!」
「っ、だめ、です、シロウ――。今の私、には、そんな力が……うあっ!?」

 士郎の指が、セイバーの桜色の先端を摘み上げていた。
 その快楽に、セイバーは身体を仰け反らせる。

「無駄よ――今のセイバーには、歳相応な力しか残ってないわ。
 戦闘時のあの爆発力は、魔力を使ってのもの。既に存在ギリギリの魔力しか
残っていないセイバーには、そちらに回す余剰な魔力は無い。
 もう、打つ手は無いわよ……?」

 後ろで二人の様子を愉しげに眺めているキャスターが口を開いた。
 ゆっくりと、二人のいる場所まで近づいてくる。
 その間にも、二人の抵抗は続いていた。
 セイバーは士郎の身体を蹴り上げる。が、鍛えてある士郎はびくともしない。
 もし仮に、士郎が普通の一般人ならば、セイバーを抑え切れなかったかもし
れない。
 だが、長年の鍛錬によって鍛え上げられた肉体は、強靭な壁となってセイバー
の自由を奪っていた。

「ぐっ……くそっ――――!」

 士郎の全身に、汗が浮かんでいる。
 精神の力と、肉体の力がせめぎ合い、火花を散らす。
 その結果、脂汗が吹き出、身体を濡らしている。
 また、セイバーも激しく動いているせいか、全身に汗を浮かべている。
 だがセイバーの抵抗も、士郎の抵抗も、現時点では何の成果もあげることは
無かった。
 胸をまさぐっていてた手が、下腹部へと伸びていく。

「あっ、ひうっ! や、だめ――ひあっ、ふあ――」

 指先がクリトリスに触れ、細かく振動して愛撫する。
 快楽に襲われたセイバーの身体から、次第に力が抜けていく。

「畜生、やめろこのクソ腕―――!」

 必死に首を伸ばし、自らの腕に噛み付く。
 だが、歯が肉に食い込み、血を流しても腕の動きは止まらない。
 それに気付いたセイバーが、必死で士郎を止めようとする。

「はっ――ダメです、シロウ、あっ…自分の身体を、傷つけては……ひっ、い
け、ない……」

 喘ぎながらも、必死に士郎に語りかけるセイバー。
 それを見かねて、士郎は自分の腕から口を離す。
 口の端に付着した血が痛々しい。腕にもしっかりと歯型がつき、血を流して
いた。

「――自らの身を犠牲にして、愛しい人を守る。……ふふ、まるで正義の味方
ね、坊や」

 真横に立ち、二人の様子を眺めていたキャスターが、再び口を開く。
 顔にはとても愉しそうな――氷の微笑。

「だけど、そろそろ限界みたいね。セイバーと貴方、体力はどっちが上か――」

 確かに、セイバーの四肢には殆ど力が残っていない。
 散々犯され、何度も絶頂を迎えたセイバーには、本来の体力すら殆ど残って
いなかった。
 対して、士郎にはまだまだ有り余る体力がある。このまま行けば、士郎の身
体がセイバーを制圧するまで時間はかからないだろう。
 と、士郎の身体が新しい動きを見せた。
 セイバーの秘裂を弄っていた手を離し、セイバーの膝裏を腕で押し上げ、下
半身を上半身の上に持っていく。

「あっ、やっ……いや、こんな格好……」

 そして、腕を押さえていた手を一旦はずし、今度は右手と右足首、左手と左
足首をそれぞれの手で固定した。
 足が開かれ、セイバーの股間部が士郎の眼前に晒された。

「やっ、だめ、シロウ、見てはダメです……見ない、で……」

 だが、士郎の目は眼前に花開く薄桃色の割れ目に固定されていた。
 セイバーの、最も恥ずかしく、淫猥な部分――。
 うっすらと汗の匂いがして、それがさらに蟲惑的に性感を刺激する。
 そして、その奥からあふれ出ている透明な蜜。
 その蜜は既に肛門にまで垂れ、てらてらといやらしく光っていた。
 見られている、と感じるのか。セイバーの膣と肛門が、きゅっと収縮する。
 初めて見るセイバーのそこは、まるで超一流の芸術品のように美しく、綺麗
だった。

「あら……セイバーったら、貴方に見られて感じてるみたい……。
 ほら、お汁の量もこんなに……あ、また動いた……」
「――っ、だめ、見ないで……あっ、は……ぅ、ん……」

 キャスターに言葉で責められ、更に顔を赤くするセイバー。
 そして確かに、溢れ出る愛液の量は先ほどよりも増えていた。
 知らず、ごくり、と喉がなる。

「ほら……坊やも、もう我慢出来ないみたい……。
 たっぷり吸い付いて、綺麗にしてあげなさい……」

 横で見て興奮してきたのか、キャスターは生やした肉棒を擦りはじめた。
 そして、キャスターの命令を聞いた士郎の身体が、ゆっくりとセイバーの割
れ目に顔を近づけていく。
 肉体の支配が顔にまでまわったのか、もう声を出すことすら出来ない。
 そして、士郎の舌先が――セイバーの秘部へと、触れた。

「ひんっ! あ……ひゃうっ!」

 びくん、とセイバーが跳ねる。そして、更に愛液が噴出してくる。
 一滴も残さないとばかりに、士郎の舌が動く。
 ざらりとしたその感覚に、セイバーは何度も身を躍らせた。

「ひゃ、ん、あっ、ひっ、やんっ、あ……だめ、おかし、くっ、ひっ」

 更に舌先は、無防備に晒された肛門へと伸びていく。
 皺を丁寧にほぐすように、窄まりの周りが舐められていく。

「いやっ、シロ、そこはきたなっ、ひぅっ、あ――」

 やがて舌先が窄まりの中心に添えられ、突き刺さっていく。

「んあっ――はい、って、あう、や、んっ――!」

 恐ろしいほどの快楽の洪水に晒されて、セイバーの意識は半ば飛びかけてい
た。
 口内に溜まった涎が、口の端から滴って、自らの顔を汚している。
 その様子を眺めているキャスターが、更にいやらしく顔を歪め、身悶える。

「セイバー……あんなに、感じて……んっ、凄く、かわいい、っ」

 既にキャスターの肉棒も屹立し、先からは腺液が垂れていた。
 もう片方の手で胸を揉みつつ、潤んだ瞳で絡み合う二人を見つめている。
 士郎の舌が肛門から引き抜かれ、糸を引いた。
 そしてそのまま、セイバーのクリトリスを舐め上げる。

「あはっ――! んあ、らめ……ひゃうっ!」

 セイバーは快楽のためか、既に呂律が回っていない。
 そして士郎の舌先が、セイバーの尿道へと達した。
 つつくように、入り口付近を刺激してやる。

「いや、そこ、そこはだ、めっ――で、でる、でちゃう……!」

 ふるふる、と身を振るわせるセイバー。そして――

「や、いや、ぁ…………」

 股間から、黄金水が噴出した。
 だが即座に、士郎は尿道に口付け、それを飲み干していた。
 顔を更に真っ赤にして、セイバーが懇願する。

「なっ……シロウ、んっ、そんな、そんなきたな、あっ、やめて、やめてくだ
さい……!」

 だが、士郎は動かない。ごくごくと、溢れ出るそれを飲み干していく。
 やがて勢いが弱まり、小水が止まる。と、最後に士郎は尿道に口付けたまま、
勢いよく吸い出した。
 ちゅうう、という音が響く。

「いや、ぁ……はっ、んっ――――」

 既にセイバーは涙目で、顔は横を向いている。あまりの羞恥に、耐えられな
かったらしい。
 そんな様子を眺めながら、キャスターは言葉で二人を責める。

「あらあら……感じすぎてお漏らし? よほど良かったみたいね……?
 それに坊やも、一生懸命吸っちゃって……どう? セイバーのお小水は美味
しかったかしら?」

 二人には、もう言葉すら無かった。
 だが、身体はゆっくりと動いている。ついに、命じられた目的を達しようと
しているのだ。
 それに気付いた二人の表情が凍る。だが、身体の動きは止まらない。
 セイバーが諦めたように、士郎の顔を見――その、瞳に気がついた。
 確かな決意を秘めた、その瞳。

「シロ、ウ……?」

 そしてついに士郎の屹立した肉棒が、セイバーの雌の部分へ触れた。
 だが、そこから身体が動かない。固まったように――動かない。
 キャスターが怪訝そうに士郎を見上げた、その時。


 士郎の口から、赤い鮮血が零れ落ちていた。


「なっ――――――」

 セイバーとキャスター、二人の口から驚愕の言葉が漏れた。
 士郎は、自分の舌を噛み切って、身体に対する命令に耐えていた。
 自分勝手に死ぬことは出来ない――その命令には逆らえないが、一定以上の
自傷行為は出来る。それを知って、士郎は自分の舌を噛み切っていた。

「――呆れた精神力ね。既に目を動かすことすら、難しいでしょうに。
 ……ここまで来ると、素直に感心するしかないわね」
「あ……ああ………」

 キャスターが忌々しげに立ち上がる。セイバーは、士郎を見上げたまま動か
ない。
 だが、心の底から搾り出すようなセイバーの声が、無機質な聖堂へと響いた。

「あなっ、貴方はどこまでっ……! そうして自分を傷つけるのですか!
 もう私など、どうなったっていいのです! なのに、シロ、ウ、貴方は……
っ」

 どうしてそこまでして、私を守るのですか、と。
 涙で濡らした瞳で士郎を見上げ――問いた。
 それに対し、士郎は淡々と、しかし確かな意思を込めて答える。

「――違、う。俺は、そんな立派な人間じゃ、無い。
 自分でセイバーを汚すのが、怖い。それに対する恐怖からの、行動なんだ。
 ……でも、そうだとしても、俺はセイバーを、守りたい。
 令呪がなくたって、俺はセイバーの――マスター、なんだから」

 その思いが生み出した、僅かな奇跡。
 それがもたらした物は、青年と少女の間に生まれた、確かな感情。

 だがしかし、その思いすら踏みにじるために、魔女が動く。

「微々たる抵抗だけど、しっかり見せてもらったわ。エミヤシロウ。
 でも――残念ね。貴方の頑張りも、数秒の足止めにしかならない。
 ……そのまま、セイバーと一緒に堕ちなさい」

 頭上から聞こえる、冷え冷えとしたキャスターの声。
 そして、その足が、士郎の腰の上へと踏み降ろされた。
 ずぶり、と肉が裂け、異物が進入してくる感覚に、セイバーは身を震わせた。

「――――あ、はっ――――」

 一息で中程まで侵入した士郎の肉棒が、セイバーの処女膜を突き破る。
 十分濡れていたため、痛みは十分和らいでいるはずだった。だが、やはり強
制的に肉を割られる感覚に、激痛が走る。

「くっ……あ、うっ――――」

 だが、悲鳴は漏らさない。
 士郎は、自らを傷付けてまで耐えたのだ。この程度で、悲鳴を漏らすわけに
は――。
 しかし次の瞬間、更に肉棒が深く差し込まれた。
 一瞬で最奥へと達する。そして、内部を抉られる苦痛がセイバーを襲う。

「きっ………あ、ううう、う……っ」

 必死に悲鳴を押さえ込む。
 だが、間髪要れずに肉棒が引き抜かれ、ギリギリの位置で再び差し込まれた。

「うあっ……! は、いっ、や、あぁ……」

 そしてそのまま往復運動が始まる。
 最後の抵抗が破られた今、キャスターの命令を忠実に守る士郎の身体を止め
られるものはない。
 苦痛に歪むセイバーの顔を間近で見せられている士郎は、狂わんばかりに自
らを呪っていた。

(結局、止められなかった……この身で、セイバーを、犯して……)

 勝手に動く自分の身体の下で、必死に声を噛み殺す少女。
 他人でなく、他でもない自分がセイバーを犯している――その事実に、心の
根底が揺らぐ。
 守りたかったもの。守らねばならなかったもの。
 それを、自らで壊す。壊し、蹂躙していく。その事実に、士郎はかつて無い
ほどに打ちのめされた。
 そして、肉棒から伝わってくる、恐ろしい快楽。
 精神的ショックと、肉体的な快楽によって、士郎の思考はどんどん濁ってい
く。

「ぐ……うう、ふっ―――」
「あ……はっ、ん、んんっ、ふ、あ―――!」

 獣じみた声が、士郎から漏れる。
 セイバーは苦しげに息を吐き、短い叫びが口から漏れていた。
 その様子を見ながら、キャスターは自らの指で自慰をしている。

「んっ……二人とも、苦しそうに顔を歪ませて……はっ、必死に、耐えて……。
 いいわ……凄く、感じ、る……っ」

 その声は明らかに欲情しており、男根の先と秘裂から愛液が漏れ出ていた。
 と、士郎の腕がセイバーを固定した位置から離れ、セイバーの胸へと伸ばさ
れる。
 そのまま両手で両胸を弄りながら、腰を止める事無く動かしている。

「はっ……ん、は、あ……?」

 すると、それまで苦痛しか感じていなかったセイバーに、変化が現れ始めた。
 まだ苦痛の色合いが濃い表情と声に、僅かながら艶が混じり始める。

「あっ、はっ、んっ、あ、い、い……」

 胸から伝わる快感と、濡れた音を立てて往復するたびに伝わってくる刺激。
それが段々と、快楽に変わっていくのを、セイバーは感じていた。
 その表情を見て、キャスターが呟く。

「んっ……セイバーったら、もう、感じて……ふふ、んっ……いやらしい、わ
ね……」

 その顔に、益々興奮させられたのか。キャスターの手の動きがより激しくな
っていく。
 すると、今度はセイバーが自由になった手を士郎の首に絡ませ――

「シロ、シロウ――ん、ちゅ……は、ん……」

 自分から、士郎の唇を奪っていた。
 士郎は驚いた顔でセイバーを見る。と、セイバーは士郎の顔を見つつ、言っ
た。

「シロウ……そんなに、自分を、っ、責めないで、ください。
 んっ、私は、大丈夫、ですから、は、ぁ……だから」

 そんなに、悲しそうな顔をしないで――と、セイバーは囁いた。
 士郎の頭が真っ白になる。意識が吹き飛ぶ感覚――その台詞は、反則だと。
そう思いながら、士郎はセイバーの唇に自らの唇を重ねていた。

「ふむっ……は、んっ……あ、むっ……」

 少し苦しそうな、セイバーの声。だが、先ほどまでの罪悪感は薄れていた。
 いや、薄れたわけでは無い。ただ、今は後悔するよりも、セイバーの負担を
減らしたい――そう頭が切り替わっただけの話。
 一種の現実逃避にも似たその行動に、士郎は身を委ねていた。

「はっ……シロ、ウ、むっ……は、ぁ……」

 セイバーも、積極的に舌を絡ませてくる。
 と、セイバーが士郎の舌の一点を何度も舐めているのが感じられた。そこは、
先ほど自分で噛み切った傷跡。
 そこをやさしく、まるで獣が傷口を舐めるように――何度も、何度もセイバー
は舐めてくれていた。
 士郎も、お返しとばかりにセイバーの口内を刺激する。

「ん、ぁ……ふあ、ん……」

 夢見心地のように、目を細めながら、セイバーと士郎はお互いを舌で感じて
いた。
 しばらくそうしていると、セイバーの腕だけでは負担が大きいと思ったのか、
士郎が身体を持ち上げた。

「きゃ……あ、シロウ、この、格好は……」

 正常位から、座位へ移行する。
 お互いにとって、最も負担のかからない態勢になってから、二人は再び口付
けをした。

「あ、はっ……ん、や、ふか、いっ――――」

 体位が変わった影響か、セイバーの膣内を往復している肉棒が、微妙に角度
を変えていた。
 それにより、刺激される場所が変わるのか、セイバーの喘ぎ声が少しずつ大
きくなっていく。
 少しずつほぐれて来たのか、ぎゅうぎゅうと士郎の男根を締め付けていたセ
イバーの膣は、今も狭いものの――痛みではなく快楽を与えてくる。

「あっ、はっ、きもち、いい……あ……」
「くっ……セイ、バー……」

 突き上げるたびに、セイバーの膣はリズミカルに収縮し、内部の柔肉が肉棒
へと絡みつく。
 まるで、セイバーの内部は一つの生物のように、動き、絡まり、そして締め
上げてくる。
 だが、座位では大きな動きは出来ない。
 別の体位に移行しようとした士郎を、セイバーが止めた。

「んっ……シロウ…ばかり、ずるい、です、あっ……次は、わたし、にっ――」

 そういって、セイバーが士郎に圧し掛かっていく。

「ちょっ……セイ、バー……?」

 正常位から、座位へ。そして――騎乗位へと移行する。
 驚いている士郎の上で、セイバーが微笑んだ。

「今度は――私が、シロウを気持ちよくしてあげます、ね――」

 言って、大きく腰を動かす。
 最奥に入っていた肉棒が引き抜かれ、そしてまた膣内へと引き込まれていく。
 ぐちゃり、という大きい音と共に、士郎の肉棒が締め付けられる。
 まるで無数のミミズに巻きつかれているような、そんな錯覚に襲われる。

「ぐあ……っ、これ、すご―――」
「ああ、ん……ふか、い……っ!」

 セイバーも感じているのか、更に動きが激しくなってくる。
 その度に、肉棒が締め付けられ、代わりに膣内が抉られる。

「はっ、ん、やっ…あ……! シロウ、の、が――おくに、おなかまで、とど、
いて……っ!」
「くっ……締ま、る……」

 先ほどまでの行為が、まるで物足りないものに思われるような快感が、士郎
の中を突き抜けていく。
 肉と肉が擦れ、突き上げる度にセイバーからは声が漏れる。
 そんな反応を感じるたびに、更に自分からセイバーを求めたくなっていく。

――ああ、きっと多分、脳は身体と一緒に融けて、無くなってしまったんだろ
う。

 セイバーを穢してしまった、などという罪悪感は既に無い。
 自分が貫いてきた理想も、キャスターに対する憎しみも、セイバーが与えて
くる快楽に全て押し流されてしまった。
 今、エミヤシロウを動かしているのは、獣の欲望。
 倫理や人間としての価値観などといった煩わしいものは全て消え、ただ目の
前の雌を求める、原始的な本能。
 きっと、セイバーもそれに突き動かされているのだろう。

――ああ、なんだ。俺達はもうとっくの昔に。
 どうしようもないくらいに、コワレてしまっていたんだ。

「は、あっ、だめ、気持ち、よすぎ、る……っ!」
「っ――――」

 セイバーが、上から圧し掛かってくるのを感じながら、士郎はセイバーの背
後に立っている人物に目を奪われた。
 屹立した擬似男根を握ったキャスターが、セイバーの尻を撫でながら、うわ
言のように言った。

「んっ……私ももう、我慢できないわ……。
 セイバーの可愛いお尻、もう一度味合わせて頂戴……」

 そして、男根の先端をセイバーの肛門へと押し当てる。
 そのままゆっくりと体重をかけ、先端を潜り込ませていく。

「あっ……すご、い……さっきより、きもち、いっ―――」
「くぅ、あっ、ああ……おし、り、とけ、ちゃう――――!」

 全てが腸内に収まると、キャスターの擬似男根と士郎の肉棒が、薄皮を隔て
てぶつかるのがわかった。
 そして、二人は同時にセイバーのなかを犯し始める。

「あっ、やっ、だめ、だめ――! おか、おかしく、なる―――っ!」

 前と後ろの二箇所を貫かれ、セイバーが絶叫する。
 士郎によって膣内を、キャスターによって腸内を犯され、間に挟まれた粘膜
を通して二本の肉棒がぶつかり合う快感は、今までのどんな快感よりも強く、
急激にセイバーを絶頂へと押し上げていく。

「やっ、くる、すごいのが、くるっ―――! あ、んあ、ふああああああ!!」

 同時に、セイバーのなかが急激に締まった。
 入っている肉棒を締め付け、押しつぶさんとばかりに包まれる。

「あっ……すご、セイバー、貴女のなか、締まっ、て―――!」
「ぐ、ああ、あ……きつ、い……!」

 士郎とキャスターが、同時に声を漏らす。
 だが、二人の動きは止まらない。
 むしろ、より一層加速して、セイバーのなかを犯していく。

「っ、だめ、とめて、っ……! こん、な、続いたらっ……へんに、変にな、
るっ――――!」

 一度絶頂に達しても、更なる快楽によって、再び押し上げられていく。
 魔具が引き抜かれたときに感じた、あの恐ろしい快楽の津波が再び襲ってく
る――いや、あの時は一瞬だったからまだよかった。意識のブレーカーが落ち
れば、耐えることができたのだから。
 だが、この波は止まることを知らず、更に一定の時間差で襲ってくる。
 そんなものに何度も晒されてしまえば、本当に気が狂ってしまう――。

 だが、快楽を満たそうとする二人にとって、セイバーの都合などを察する余
裕は無い。
 更なる快楽を求めて、締まるセイバーの中を往復させる。

「ふあ、や、ん、あぅ、く、来る……っ! あ、ンん、あぁあああああ―――!」

 二度目の絶頂。
 それに伴って、更に激しくうねるセイバーの中。
 まさしく食いちぎらんばかりに締め付けてくる感覚に、二人の射精感が急激
に引き上げられた。
 二人の肉棒が、更に大きくなる。

「あっ、んっ、は、ぁ――すごいわ、セイバー……!」
「くっ――――セイ、バー……!」
「はっ、はっ、やああああ……! そん、な、まだおおき、くっ――――!?」

 ぎりぎりと締め付けてきたセイバーの内側で、更に膨らむ肉棒。
 その圧迫感に、セイバーの身体が弾ける。

「やっ、あ、ああっ、こわ、こわれる……っ! んぁ、んあああああ!」

 切羽詰った、二人の声が聖堂に響く。

「くっ、ああっ、だめ、もう――! 出すわ、セイバー……っ!」
「はっ――俺も、もうー―――!」


「あっ、ああっ! みんな、いっしょ、一緒にっ――――! ――くああああ
ああああっ!!」


 聖堂に、三人の絶叫が響き渡ったその瞬間。
 締め付けられ、引き上げられるようにして、前後の二人は射精し。
 間に挟まれたセイバーは、怒涛の如く押し寄せた欲望の塊を、身体の奥底で
受け止めていた。

――意識が白く染まっていく。

 三度目の絶頂を迎え、体内を熱い液体が満たしていくのを感じながら、セイ
バーはその意識を、手放した。

 薄れゆく意識の中で、紫色の魔女が、微笑んだ気がした。




 目を覚ました時に、最初に目に入ったものは、倒れているシロウの姿だった。
 そしてその傍らに立つ、キャスターの姿。

「あら、目を覚ましたのね、セイバー」

 その姿は、ローブを纏った魔術師としてのもの。
 そして片手を伸ばし、その先に魔力を集中させている。
 手の向けられている、その延長線上。
 そこに、シロウの姿があった。

「今からこの坊やを『加工』するわ。投影用の魔杖にね。
 どうやらアーチャーとそのマスターが、こちらに向かっているようだから。
その前に邪魔なものは片付けておかないと」

 加工。魔杖。向かっているアーチャー。そのマスター。片付ける。何を?

 思考がまとまらない。言っている意味がワカラナイ。
 それを必死に理解しようとして、私は一つの事に気がついた。


"―――令呪がなくたって、俺はセイバーの――マスター、なんだから―――



 その言葉に、自分がどれだけ救われた事か。
 全てに絶望してなお、救いというものはあるのだと、自分に教えてくれた、
その言葉。
 だが、その言葉を発した青年が、今消えようとしている。
 人間ではない、ただの道具へと成り下がろうとしている。

 そんな事は許せない。我慢が出来ない。
 哀れな道具を、最後の最後に救ってくれた"人間”を――道具になど、させ
ない。

 少女の瞳に宿るのは、確かな決意。
 少女を守ろうとして、最後まで抵抗した青年と同じ、決意の色。

「キャスター、貴女に……お願いが、あります」
「あら、貴女がおねだり? ……何を、望んでいるの?」

 キャスターが聞き返してくる。珍しい事を聞いた、と言う顔で、私の顔を見
つめてくる。
 私の瞳に宿る決意が伝わるように、キャスターの目をじっと見て、言った。

「私は今後一切、貴女には逆らわない。
 どんな命令もこなす。どんな事も受け入れる。
 貴女がそれを望まない限り、私は貴女に従い続けることを、誓う。
 その、代わりに」

 例えそれが、自分を道具へと変えてしまうとしても。


「シロウは――シロウだけは、人間のままで、いさせてください」


 彼は――自分の"マスター”だけは、守り通したかった。

 キャスターは、私の顔を見――何かを感じ取ったように、目を細めた。
 そして、一切の感情を排除した冷徹な顔で、私に言った。

「いいでしょう。貴女のその覚悟に免じて、この坊やは生かしておいてあげる。
 ――だけど、忘れないことね。貴女は自分で、自らを道具とすることを誓っ
た。
 その選択は、未来永劫――貴女を縛り、呪うことでしょう」

 キャスターの手が、私に向けられる。
 先ほどより更に強く、魔力が凝縮していく。

「では、さようなら。"人間”としての、貴女。
 そして初めまして。"道具”としての、貴女――」

 キャスターの横で眠る、自らのマスターの顔を見て。
 満足げに、セイバーは崩れ落ちた。




――それから後のことは、よく覚えていない。

 それは、私という存在が磨り減って磨り減って、薄っぺらなものになってし
まったからだと思う。


 シロウは、カプセルのようなものに閉じ込められ、だがしっかりと生きてい
た。
 けれど、中の液体に浮いているだけ。本当に、生きている『だけ』の存在。
 声をかけても、じっと見つめても、もう反応すらしてくれない。
 なのに私は、気付けばシロウの前に立っていて、

「ごめんなさい」

 という言葉を呟いている。


 キャスター――いや、マスターは、最近とても嬉しそうだ。
 この前の戦闘で、既にマスターと私以外のサーヴァントは全滅した。
 バーサーカーのマスターであったイリヤスフィールは既に聖杯として起動し、
無限の魔力をマスターに提供している。

 だが、アーチャーのマスターだったトオサカリンは、未だ行方が知れない。
 しかし、マスターはこの街を一つの『神殿』に作り変えた。
 これでこの街で起きる全ての事は、外界に影響を与えること無く、逆に外界
からの影響はすぐに感知され、マスターの手によって排除される。
 無限の魔力を利用した『完全な独立世界の形成』――それをマスターは行っ
ているのだ。
 じきに、トオサカリンも発見されることだろう。


「セイバー、今日は嬉しい知らせがあるわ」

 そういって、マスターがわたしの部屋に入ってきた。
 夜伽の時間にはまだ早い。一体どうしたのだろうか。

「実はね、貴女にも妹が出来る事になったのよ」

 イモウト。それは何だっただろうか。

「ほら、昨日魔術協会って所から派遣されてきた、一個小隊の魔術師達がいた
でしょう?」

 昨日。そうだ、確かに覚えている。
 魔術師という割には、魔術を行使することも無く肉塊へと変わっていった、
あの人たちの事だ。
 あっさりと捕獲され、聖杯の『養分』にされた哀れな子羊達。それがどうか
したのだろうか。

「その中に、見慣れた顔があったものだから。餌としてでなく、ペットとして
飼う事にしたのよ。
 ……貴女のイモウト、というのはそういう意味。
 どう? 嬉しい?」

 嬉しい、と聞かれても困ってしまう。
 マスターがわたしにしてくれる行為は、全て嬉しいことなのだから。
 身体の一部にピアスをつけられた時も、
 大人数に何度も何度も犯された時も、
 全ては快楽であり、嬉しいことであったのだから。
 きっと、この快楽を共有できるモノが増えるのも嬉しいことだ。

「そう。貴女も気に入ってくれているのね。嬉しいわ……。
 じゃあ紹介するわね。貴女も知っている顔だと思うけれど――」


 ドアが開き、赤い服の『彼女』が見えた。
 ああ、今後の生活は益々愉しくなることだろう――。
 そう思って、わたしは自分の「イモウト」を――暖かく出迎えた。


《fin》