しっかりとした重さが士郎の腕に伝わる。
 セイバーは身を委ねたまま、その手をそっと士郎の首へと回していた。柔ら
かい感触が少しくすぐったい。
 士郎はセイバーを抱きかかえていた。
 それは俗にお姫様だっこと呼ばれる格好。
 いつものセイバーであったら、多少の抵抗はあったかもしれないが、今の彼
女は完全に士郎へ全てを委ねている。
 なにせ。

「シロウ……甘えさせてもらえるのでしたら、その……運んでくれませんか?」

 そう言ったのは紛れも無くセイバーだったのだから。
 普段は絶対に言わぬであろう言葉を、セイバーが自分に言っている。甘えら
れているという実感が士郎の中に浸透し、笑みが零れ落ちてゆく。それにつら
れてセイバーも笑った。

 士郎の腕に抱き上げられているため、小柄なセイバーがますます小さく感じ
られる。まるで子犬を抱き上げているようだ。
 子犬と化したセイバーは期待と喜びと羞恥の入り混じった不思議な表情で士
郎を見上げる。
 その窺う仕草があまりにも可愛らしく、士郎は―――

「ん。セイバー」
「あっ、ふあ……」

 抱き上げたまま顔を寄せ、頬擦り。
 ぷにぷにとしたセイバーの頬の感触を楽しむ士郎。耳元で囁くように聞こえ
るのは、赤茶けた髪の毛と金が擦れあう音だ。

「セイバー、ほっぺたやわらけぇ」
「あ、は、はい、ありがとうございます、シロウ……」

 何だか間抜けな返答をしてしまうセイバー。だが、そんなことすら気にもな
らないほどに士郎は少女の頬の柔らかさに没頭していた。
 最初は撫でるように。
 そこから段々と押し付けてゆき、瑞々しさを頬で堪能する。

「んっ、シロウ。なんだか……あったかくて、はぁ、気持ちいいです」
「うん。俺も、気持ちいい。それに、くすぐったい」
「ふふ……私もです、シロウ」

 微かな囁きは喜悦の篭った色合い。
 お互いの肌を擦り合わせる行為は、まさに子犬がじゃれあっているようであ
った。ささやかな愛撫がゆっくり緩やかにセイバーの感情を溶かしてゆく。



 そうこうしているうちに、二人はあっさりと士郎の部屋まで辿り着いた。
 セイバーを抱き上げる経験なんて滅多に無いので、もう少しこうしていたか
ったが、衛宮邸はそれほど広くないので無理も言ってられない。
 襖を開けると、相変わらずの殺風景な部屋。
 さすがに畳の上ではセイバーの肌が傷んでしまう。そう思って士郎は彼女を
立たせて、布団の準備を始めた。

「すぐ敷くから、少し待ってて」
「は、はい……」

 改めてこれからする行為を、布団を敷くことによりぼんやりと実感する。そ
れはセイバーも同じなのか、彼女は頬を赤くして俯いてしまった。この準備に
取り掛かっている間が、妙に気まずい。
 そのまま流れるようにセイバーを抱きたかったが、さすがに布団を予め準備
しておくだけの手際は士郎にはなかった。
 それに布団が用意してあれば、それはそれで気まずかっただろう。

「―――セイバー」

 布団を敷き終えた士郎は、そんな気まずさを振りほどくようにセイバーの肩
へと手をやる。
 士郎の言葉に、セイバーはゆっくりと頷いた。

 抱き寄せた身体を、さらに抱き寄せて密着を深くする。
 溶け合うように腕を、胸を、腰を、気持ちを重ね合わせた二人。視線が絡み
合い、彼らは互いの意思を確認しあった。
 そして、くちびるが重なる。
 深い触れ合いの後、啄ばむように互いの唇を突付きあう士郎とセイバー。唾
液の艶が塗りたくられ、くちびるに湿った音が響く。

「ん……」

 頬とはまた異なった感触。唇で触れ合っているためだろうか、柔らかさだけ
でなく甘美な味わいも伝わってくる。それをもっと堪能したくて、士郎は己の
唇でセイバーの唇をはさんだり、吸い出したりする。
 その度に、ちゅ、という濡れた音色。

「あ……んんっ、ちゅ、ふぁ」
「んっ、セイバー」

 数回の唇の交わりを経て、士郎はそっと舌先でセイバーの閉じられた唇をこ
じ開ける。抵抗はなく、するりと受け入れられた。
 濡れたそこは蜜の膜が張ってあるようで、脳髄の奥から湧き立つような熱を
帯びさせる。

「ん――ちゅ、ぁ……」

 微かな吐息が口の端から零れ落ちる。
 積極的に口腔を舐め回す士郎の舌に対して、セイバーの舌は控えめにしか動
いていない。慣れていないのか、積極的になることに踏ん切りが付かない様子。

「んあ、せいばぁ……ちゅ、ん……」
「ふわぁぁ、し、ろぉ……ちゅ」

 強引にセイバーの舌を絡め取る。触れた瞬間に舌先が震えるが、それも一瞬
のことで士郎の舌先に促されるようにセイバーの舌も彼を求めた。
 ただの唾液なのに、好きな相手のものというだけで、こんなにも甘美な味わ
い。
 蜜のようなとろりとした粘質。

 そっと彼女の前髪をかき上げてやると、閉じていた瞳が開かれ至近距離で視
線が重なる。
 その瞳に込められた色合いは甘い。
 恍惚としたそれは主導権を士郎に委ねる印だろうか。舌の動きにも積極性と
いうよりは、軽く舌先をつついたり、少し舐めたりする程度の、愛撫を求める
といったものであった。
 互いに求め合って、満たし合って、強くお互いの存在を感じる。

「―――はぁ」

 つ、と唾液が二人の間で糸を引いた。
 身体が熱くなって、蕩けてゆく。

「―――あっ」

 かろうじて立っていたセイバーが、かくん、と腰を落とし脱力する。慌てて
それを受け止める士郎が声を震わせた。

「せ、セイバーっ」
「だ、大丈夫です……シロウが……」
「俺が?」
「は、はい……シロウのくちづけが、心地よくて、つい力が抜けてしまいまし
た」

 恥じるように逸らされた視線。
 まだ甘えることに身を任せ切れていない彼女は、一つ一つに不器用な感じが
してどこか可笑しい。

「シロウ。何も笑うことは……」
「ん、ごめん―――」

 士郎は笑いながら彼女を抱き上げ、そのまま布団に降ろした。
 もう身体をまっすぐ支えることも難しいのか、セイバーは身体を数度揺らす
と士郎の胸に身を預ける。
 何もセイバーは言わなかった。
 ただ、上目使いに士郎を見やって頬を染める。

「それじゃあ、セイバー……脱がすよ」
「は、はい……その一つ一つ言われると……」

 羞恥に俯くセイバーの頬にくちづけをして安心させてやる。体勢は後ろから
抱きかかえるように。恥ずかしさからか小さく縮こまったセイバーを抱締める
ことによって、さらに胸いっぱいに愛しい感情が広がってゆく。
 ブラウスをゆっくりと脱がし、花びらを捲るように下の肌を露にする。セイ
バーの緩やかな膨らみが窺え、火照った色合い。

「セイバー。ブラ……してないんだ」
「し、シロウ。そんな―――ひゃんっ!」
「セイバーの、ここ……柔らかい」

 セイバーの言葉を遮るように、士郎の指が彼女の胸をまさぐった。抱きかか
える体勢のために、セイバーの背筋がぞくぞくと震えるのを感じる。
 だが、それもセイバーのしっとりとした乳房を撫で、指を控えめに食い込ま
せてやると次第に彼女の身体が熱を帯びてゆく。
 士郎の手の中で胸の膨らみが形を変え、五指のすきまから乳肉が控えめに溢
れ出た。

「セイバーの触ってると、すごい、気持ちいいよ」
「っん、あ、しろぅ……」

 切なげに吐息を零すセイバーの表情には、申し訳なさそうな彩りが見えてい
る。おそらくは自分の胸が小さいことに対してのことだろう。
 そんなことない。
 士郎はそう答える代わりに、その胸を揉みしだく。
 掌に伝わる柔らかい胸と硬く尖った薄桃色の突起の感触。くすぐるような二
つの快感。

「はあっ、あ、シロウの指が……」
「んっ、セイバー……」
「シロウの、ゆびがこすれて、気持ちい――っ、ん」

 小ぶりではあったが、セイバーの胸は士郎の思うように形を変えた。掌でさ
すってやれば、同じように円を描くような動きをしたり。生地を捏ねるように
してやると、指が柔らかく食い込む感触も感じられる。
 その度にセイバーは吐息を零して身をよじるが、士郎に抱きかかえられてい
るために、その行動は胸の中だけ。
 白くて柔らかい肌が胸に伝わってくる。鍛えているとはいえ、やはり女の子
の肌をしており触れただけで気持ちよい。
 思わず食べてしまいたくなるような可愛らしさが、その仕草や肌の感触によ
って刺激される。

「ん、ちゅ」
「ひゃぁっ!」

 士郎の口がセイバーの首筋を咥えた。歯は立てずにあくまでも唇と舌だけの
甘噛みで、ちゅうちゅうと吸血鬼のようにセイバーの汗を味わう。

「ひあぅっ、んんっ……し、しろっ、首はっ、あぁ……」

 予期せぬ刺激に身を反るセイバーだったが、拒む素振ではないので士郎は彼
女への責めを止めはしない。
 彼女を味わいながら、士郎は空いた片手を下腹部へと滑り込ませた。
 スカートが意外なほど簡単に脱がされる。士郎の手に合わせてセイバーが身
体を浮かせたからだ。
 士郎の愛撫をセイバーが求めている証拠。
 それが嬉しくなり、士郎の唇がさらに激しくセイバーの首筋に吸い付く。

「ん――ちゅぅ、ぅぅ……ちゅっ」
「はぁ、ああぁぁっ、あつい、です、あついです、シロウ……」

 きゅぽんっ、という音がセイバーの耳元で響き、同時に士郎の唇が首筋から
離れる。セイバーからは首筋がどうなっているのか見えないが、尾を引く熱に
よって跡の存在は感じているだろう。
 そっと、首筋へ指を這わせる。

「あ……シロウ」
「跡を残しちまった……セイバーが、あんまりにも美味しかったから」
「これじゃあ、周りに言い訳できませんね……」
「いいさ、それでも」
「私も、それでいいです」

 言い合って二人は笑った。
 誰かの為にしか笑えない彼らだったが、今は目の前にその“誰か”がいる。
これで何度目になるかという、互いの気持ちの再確認。



 士郎の残滓は、セイバーの首筋に朱の色を浮かび上がらせていた。
 小さなその跡は、肌の瑞々しさもあってか小さな果実を思わせる。
 その色と香りに誘われるように顔を近づけ。
 つ―――と舌を這わす。

「ふああっ……」

 当然と言えば当然だが、その果実はしょっぱい。だが唇や口腔とは異なり味
だけでなく、肌からはセイバーの匂いが感じることができ、触覚、味覚に次い
で嗅覚を刺激する。

「シロウっ、まだ、入浴をすませてい―――あんっ」
「セイバーの……匂いがする」

 くすぐるような鼻息を察して身をよじるセイバーだったが、士郎の一言で朱
色をさらに濃くする。
 セイバーの抵抗はまるっきり身が入っていない表面上のものだった。愛され
たい、とは言いつつも律儀な本質を無視することは出来ないのだろう。
 しかし、そういう部分がまたセイバーらしい。

「しろっ、んっ……」
「そんなにお風呂、入りたいの?」

 問うと彼女は首を振った。
 ここで素直に頷いて中断するのも違和感やしこりが残るので、当然の反応。
 それを踏まえて、さらに問う。

「セイバーの匂いとか、味とか……すごいゾクゾクして、ドキドキする。だか
ら訊くけど……セイバーはどうなの?」
「その、わたしは……」

 答えに窮しているのを敏感に察する。
 すでに言うべき言葉は浮かんでいるが、いざ声となると出て来ないのだろう。

 そこで士郎は汗ばんだ指先でセイバーの唇を撫でた。
 すると誘われるようにセイバーの唇が開き、じんわりと浮かび上がった汗を
掬い取るように舐め始める。火照ったように熱を帯びた指先に、口腔の温かさ
を帯びた赤い舌先がちろちろと士郎の指を味わう。

「んちゅ―――ん、ん、しろぅ、ちゅ」

 涎を零しながらも懸命に指を啄ばむ姿は、先刻の質問に対する回答だろう。
士郎の指先だけでなく、その根元まで咥えて余すところ無く士郎を味わう。
 神経を直接舐められたかのように、肌が粟立つ。
 くすぐるような、優しいセイバーの奉仕は、士郎の興奮を煽るのには十分だ
った。

「セイバー、美味しい?」
「あ……はい、美味しいです。シロウの味がしますし、シロウの匂いもします」
「ドキドキする?」
「はい。こんなに涎を垂らして、はしたないと思われるかと思います。現に私
もそう思います」

 ですが、と彼女は一言加えて続けた。
 背中を士郎の胸に預け、金細工の髪が士郎の鼻先をくすぐる。

「シロウを想うと、こうなってしまうのです……今日は、シロウに甘えられる
と思うと……その、愛されると思うと……」

 甘い吐息と共に美しい音色が奏でられ、セイバーの心情が直に士郎を揺さぶ
る。彼女を愛したい、という気持ちが火花を散らすように加速し、士郎から余
裕を失わせてゆく。
 だが、セイバーを欲望の捌け口にするわけにはいかない。
 それは士郎としても望まぬことであった。

「俺もな、セイバー。お前に愛されていると思うと、すごく嬉しくて……大げ
さに聞こえるかもしれないけど、幸せなんだ」
「わたしもです、シロウ」
「うん。だから俺もセイバーへの気持ちを伝えたい―――愛しているから抱き
たい」

 セイバーに伝えるだけでなく、その言葉は士郎自身に言い聞かせるように紡
がれてゆく。その「抱きたい」という言葉は肉欲的な意味合いよりも、感情的
なもの。陳腐にも思える言葉だったが、今の二人にはそのくらいの方が丁度い
いのかもしれない。
 好きだから、愛したい。
 好きだから、愛してほしい。
 それだけの感情を互いに触れ合わせている。

 くてん、と力を抜いて士郎に寄りかかる少女の体躯。
 抱締めてやると、自然と身体が前のめりになってゆく。彼女が力を入れてい
ないために、士郎の思うがままにセイバーが身を揺らせる。
 士郎の体重が小柄な背中へと圧し掛かり、その身を預けていた少女を犬のよ
うに額づかせた。

「はぁ、あ……、しろぅ」

 はだけたブラウスに、黒ストッキングとショーツに覆われた下半身。そんな
格好のセイバーに対して、士郎は身を重ねながらズボンと下着を脱ぎ捨てた。
 露になった肉棒は硬く勃ち上がっており、反り返った陰茎をその体勢からか
セイバーの突き出された下腹部へと触れる。布を二枚隔てていたが、その感覚
に彼女は顔を上げて士郎を見ようとした。
 客観すれば、士郎にセイバーが押さえつけられているように見えたかもしれ
ない。
 だがセイバーの表情には怯えは無い。

 士郎の陰茎が、深く潜り込む。
 しかし、股間に入り込んだのではなかった。そこより僅かに下の太股の間に、
滑り込ませるように肉棒が入る。
 四肢をつくセイバーへ倒れこむ士郎に、セイバーの視線が絡まる。
 無理な体勢のため、横目で上目で。
 身を委ねた穏やかさはあるが、やはり不安は拭いきれていない。
 胸を床に伏せ、尻を突きあげるセイバーは雌犬のよう。
 だが、そこからは浅ましさなど微塵も感じられず、むしろ士郎に浮き立つの
はそれとは相反した愛しさであった。

「セイバー、大丈夫だから」
「は、はい。わかりっ、ました、あっ、あ」

 落ち着かせる声音の響きと同時に、ゆっくりと腰を動かし始める士郎。お互
いの性器が本当の結合のように擦れ合い、その刺激に応じたのかセイバーの秘
唇からは透き通った液がシミを作り出す。
 布越しに感じるセイバーの股間は、濡れてはいたが挿入するには少し早すぎ
るといったくらい。

「あふぁ、あ、あぁっ、シロウっ」
「んんっ、セイバー。布越しなのに、くうっ」

 黒ストッキングに包まれた太股は、セイバーの他のどの部分とも異なった感
触であった。柔らかさは感じるのだが、その触り心地が布生地のザラついたも
ので、未知の刺激を士郎へと与える。
 腰が打ち付けられるたびに、肉棒と花びらが擦れ、彼女の愛液が潤滑油とな
って溢れ出す。滑りがよくなったからか、士郎の動きも次第に激しくなってゆ
く。だが、それはセイバーを想った丁寧で緩やかな変化。
 捻り、捻じり込み、引き抜き、セイバーのいやらしい粘液が士郎の肉棒によ
って絞り出される。

「は――あ、せいばー」
「シロウ、すごく、か、硬くなっています……あぁ、あぅっ」

 このまま布を引き裂いて、セイバーへと挿れてしまいたい。
 湧き上がる興奮の中で士郎はその意思を未だ実行には移していなかった。前
後へと腰をスライドさせるが、布を破いたりはせずに、あくまでも性器を性器
で愛撫するように動かすのみ。
 こうすることで、自分の先走った欲望を吐き出そうというのだ。
 それと同時に、セイバーに感じてもらおうという考えも存在している。

 その体勢や性器同士の触れ合いから、その行為は結合に果てし無く近い。そ
して遠くもあった。
 セイバーの下腹部を包む黒ストッキングが、互いを隔てた壁のようにも感じ
られる。
 性器を擦り合わせる擬似結合という愛撫は、情欲をぶつけるには本来の結合
に比べて確かに物足りないかもしれない。だが、それが逆にお互いの気持ちに
若干の余裕を残している。
 忘我に陥るほどにお互いを求め合うのもいいだろう。
 しかし、どうせ後には余裕が無くなるほどに、愛しさが止まらなくなってし
まうのだ。
 それならば―――少なくとも今は二人とも、このままでいいと思っていた。

「セイバー、はぁっ、あっ、気持ちいい?」
「はぁっ、ああ、はぁっ、し、シロウっ、そんな恥ずかし―――」

 まだお互いに僅かながらの余裕が見える、やり取り。
 士郎とセイバーには、それがたまらなく心地よい。

 黒地の布に擦り付けるように前後する肉棒は、セイバーの液によって淫靡な
ツヤでコーティングされていた。それだけではない、士郎自身の腺液も快感に
搾り出されるように、ぬめり、溢れ出している。

「シロウ―――か、硬い、シロウの、が……ぴくぴく、してます」
「んっ―――くっ、セイバーだって、すごく、ふるえてる」
「ふぁぁっ、は、あんっ!」
「……んっ、せい、ばーっ!」

 士郎の声音のニュアンスを読み取って、セイバーの瞳が圧し掛かる少年の視
線を捉えた。
 快楽に吸い取られてしまったかのように、喉は渇ききっているために、言葉
よりも視線で意思を伝えた方が遥かに効率が良い状態となっている。
 士郎の意思を読み取ったセイバーが、伏したまま背後を仰ぎ頷く。

 歯止めの利きにくい欲望を抑えていた少年にとって、その小さな動作は堅く
塞がれた壁を決壊するものであった。少しでも亀裂が入れば、内側に溜め込ま
れたものによる圧力で一気に溢れ出す。

「くう、うっ、セイバーっ!」

 少年の口からうめき声が溢れ出た、腰の辺りに装填された衝動が、背筋を駆
ける痺れにも似た刺激によって一気に亀頭の先端から吐き出される。

 びゅっ、びゅるっ、びゅくくっ―――!

 肉棒は指を弾くように、撥ねて暴れまわった。勃起した陰茎から吐き出され
た熱いほとばしりは、セイバーの太股と秘唇に包み込まれたまま荒れ狂う。
 深く、激しい脈打ちと同時に吹き出した白濁液は、その勢いに反して飛沫が
舞い上がることは無かった。

「あ、はぁ―――あぁ、シロウ、熱いです」
「うん、セイバー。その格好じゃあ疲れただろ、ごめんな……楽な体勢でいい
から」

 四つん這いの体勢から、布団へ身を投げるように仰向けになるセイバー。
 彼女の表情は性器同士の愛撫によってすっかり蕩けてしまっていたが、それ
でも士郎の言葉には首を振った。
 士郎には非が無い、と。
 嬉しかった。士郎は素直にその感情を胸に燈す。先程の愛撫はこちらからの
一方通行ではない、セイバーはそう言ってくれている。

 仰向けになり、前身を曝け出したセイバーの下腹部。
 白く穢れた精液はそこの黒い布地に染みを。
 濁った色合いの染みでセイバーのストッキングがベトベトになっていた。内
側に飛び散った粘液で、黒布に包まれた下腹部に溜まるようにいやらしい匂い
が充満する。

 珠のような汗を浮かべ、しっとりとブラウスが肌に張り付く。
 上気した吐息と火照って朱を交えた白い肌。
 虚ろとまではいかないにしても、その表情は呆けた風。

 セイバーの艶姿に魅入られた士郎は、仰向けの彼女に覆い被さり、精液のこ
びり付いた黒ストッキングとショーツに手をかける。
 これも、抵抗無くあっさりと脱がせることが出来た。
 すらりとした脚。その付け根のなだらかで肉感的な丘は、先程の行為のため
薄くその口を開き始めている。
 だがセイバーは、その脚を閉じてしまい、士郎の視界からその部分を隠そう
と膝を曲げてしまう。

「セイバー。こんなに綺麗なのに……なんでさ」
「……そんな、恥ずか、しい……」
「むぅ……そんなこと言っても、セイバーだって仰向けになりながら、俺のを
見てたじゃないか」
「そ、それはっ、あんなに激しく……その、あの……」
「激しく?」

 少し意地悪そうに微笑んで、訊く。
 律儀な性格から、じゃれ合うような会話はこんな時でしか出来ない。
 だが、こんな時しか出来ないからこそ、くすぐられるように心地よい。
 身体を波打つ水面に浮かべるような、士郎とセイバーの情交。

「……は……激しく、し、射精するのにっ」
「うんうん……」
「い、意地悪しないでくださいっ」


(To Be Continued....)