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「いやあっ!ゼリーマンはいやあっ!!」

 自分の叫び声で目が覚めると、そこは自分の部屋だった。

「なんだ、夢か。ものすごい悪夢だったなぁ」





「……誰にとっての悪夢かしらね」





 え?と思って声の方向を向こうとしたが身体が…動かない!?
 あわてて確認すると、私は簀巻きにされていた。
 何これ?どういうこと?
 パニックに陥りかけていると、身体ごと向きを変えられる。
 視界に入ったのは環に高雅瀬、それに晶。珍しい取り合わせだ。
 みんな一様に不機嫌な顔をしている。そして全員立ったままである。
 何となく気になって聞いてしまう。

「座ったら?」
「痛くて座れるかっ」

 と言うことは……ひょっとして全員……

「……痔?」
「「「誰のせいよっ」だっ」ですかっ」

 ……良く分からない。私に原因のある痔?

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 不意にサーッと血の気が引くのを感じた。
 もしや、あまりに馬鹿馬鹿しいから夢だと思ってたけど…
 ……夢だと思いたいけど……
 ……けど説明つかないし……





「……ひょっとして、夢じゃ…なかった…とか…」





 恐る恐る聞いてみる。
 結果 全員重々しくうなづいた。


 ……ああああ、現実の方が悪夢だぁ……


「わ、私をどうする気!?」


 うう、絶対ただじゃすまないよう…


「とりあえず『伝説の木』とやらに行こうか」
「でもって、倍返しでチャラな」
「と、言うことです」


 いやぁぁぁっ!そんなのいやぁぁぁぁっ!!
 私、壊れちゃうよおっ!


「だ、誰かたすムグッ!」

 猿轡を噛まされ、三人がかりで簀巻きのまま運ばれていく私。





「ムグーーーーッ!!」





 くぐもった呻き声だけがこだましたのであった……。























「ただいま。…なあ、なにかあったのか?簀巻きの四条が運ばれていくのとす
れ違ったんだが…」
「おかえり。……特に何も無かったわよ」


 私に関してはね、と口の中だけで呟きつつ遠野秋葉は微笑んだ。


「ところで何その格好。そっちこそなにかあったの?」
「いや。別に」





 ミスリルの学ラン、炎のTシャツ、番長帽を装備した『銀河番長』は平然と
うそぶいた。













 この日、私、四条つかさはトラウマをかなりの数増やすハメになった。
 あまり思い出したくないが、まあ、簡単に言えば…


「……触手(ボソッ)」
「ひぃぃぃっ!?」


 …といった感じである。
 他、ちんちん、伝説の木、餡婆、源平○魔伝、等等。
 結局の所は全て私の『呪い』に端を発しており、客観的に考えて遠野さんの
時と同じく加害者は私の方なのであるが…

 格言があるくらいだから、世界には『人を呪わば穴二つ』という言葉を骨身
に染みた人は多くいるのだと思う。
 しかし。










「……三人なんてあんまりだ……」

 『穴三つ』な目に会った人はどのくらいいるんだろうな……


























 これで終わっておけばまだいいものを……

「さ、入って」
「う、うん」

 その日、私は環の部屋を訪れた。
 目的は聞きたいことがあったから。
 あの日以後も環は変わらず接してくれている。
 確かにあの時チャラとは言っていたが、実際問題として強姦同然に、という
かそのもので前後の処女を散らした相手に普通に接することが出来る物なのだ
ろうか?……自責の分かっている私でも未だ夢に見てうなされるのに。まあ、
私の場合はちょっと特殊な情況だったが、彼女も充分特殊な情況だったことは
言うまでも無い。
 それは他の二人も同様だが、特に温厚な常識人で接点が多いだけにこう…い
たたまれない時があるのだ。
 言いたい事があるなら本音をぶつけて欲しい、できる限りのことはするし、
絶交されても仕方ない。
 そう思っていたのだが。
 私の話をじっと聞いた末に環は…

「いいわよ、チャラで」
「へ?」

 いとも簡単にそう言った。

「奪ったのはお互い様だし。…少なくとも私は、ね」

 ……そういやあの夜、やけに順番にこだわってるな、とは思ったが。
 あれは環だったのか。

「で、でも痛かったり、ショックだったり、怒りを覚えたり、それにそれに初
めては好きな人に、とか!」

「……そうね……」


 環は窓の側によって、開けてあった窓を閉めた。


「非常に痛かったのは確かだわ」


 更にカーテンを閉める。


「それにショックだったのも本当」


 そして今度は扉の前に移動する。


「だって遠野さんの身代わりだ、なんていうんですもの」





 ――― へっ?





「おまえが欲しいって言われて嬉しかったのに…」


 環の後ろでカチリと扉に鍵のかかる音がした。





 ――― な、なにか…変な気が?





「怒りを覚えたのはあのときかな。私の目の前で他の女の子を追いかけていち
ゃった時」





 ――― 他の女の子って……ソレ言う相手は普通……





「でも、あの日は嬉しいこともあったわよ?」


 そう言って一歩こちらに踏み出す。
 私は訳も分からないまま、一歩あとずさった。


「朝、洗面所であなたを抱きしめられたし」


 更に一歩。
 私も一歩。


「お昼には、あなたは気絶してたけど膝枕してあげられた」


 更に一歩。
 私も……壁? もう下がれない!?

 一歩距離が縮まった。


「それに…」


 更に一歩。


「何といっても…」


 更に一歩。





「好きな人に初めてを捧げたんだから」





 更に一歩。…そして距離ゼロ。


「え、ええええええっ!?」


 パニクる私に環がギュッと抱き着く。


「ずっと前から好きだったの」


「でも、あなたは遠野さんしか見てなかったから…」


「だから、一度は身を引こうって」


「一月の時にはつかさのこと遠野さんに頼んだの」


「でも…」


 ひょいと私に体重が掛かった。半ば放心していた私が気がついたときには、
二人してベットの上だった。


「振られたんでしょ?ならわたしにも目はあるわよね?」
「な、なんとーっ!?」


 何をおっしゃってますか?環さん。


「あ、あ、あの一月のをどう?…」
「つかさが遠野さんにアタックかけて失敗」


 間違っちゃいない。間違っちゃいないが当ってもないぃっ!


「本当はもう、今のままでもいいかなー、とあきらめてたんだけど…」


 じゃ、じゃあそうしてくれればっ。


「でも言いたいことを本音で言ってくれって…」


 つ、つまり……
 ……また、墓穴か、私……


「つかさ、好きよ。愛してる!もう離さない!」
「あ、あわ、あわわっ」





 知らなかった、知らなかったよ!
 環が百合だったなんて!

 抱きしめられたりほお擦りされたりの合間に少しずつ服を脱がされながら胡
乱にそんな事を考えていた。





「誰が知ってるっちゅーんだ、こんな事ぉっ!」














「―― 私は知っていたなー」

 扉の前にはメモを取る高雅瀬の姿が在ったという。















 こうして私の人間関係はより複雑になり、それにつれて心労もたまり…
 『人を呪って二つ』だけれども、その……

「あーっ、つかさちゃん、もう一個できてるよー!」


 ……シクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシク……



























 そして数ヵ月後

 『ちんちん』トラウマだし百合もいいかなー、なんて考えてる自分を発見し
てまた頭を抱えたり。……三つ目が出来ませんように。



「わたしをうばった責任取ってもらうからねーっ(はあと)」



                      <了>





後書き

 よ、よーやく終わった。何も考えず勢いのまま書き始めたので偉い物に仕上
がりました。
 何も考えずに書いただけに二つ名通りのものになってますねえ。
 曰く『脇役ますたー』 …見ての通りです。
 曰く『48の反則技』 …オンパレードです。
 曰く『主催者泣かせ』 …遅刻してごめんなさい(平謝)。
 …いや、三つ目は常々返上したいと…(泣
 
 ところで、ギャグSSって短いもの多いですよね?書く方も読む方もテンシ
ョンもたないからかと思いますが、…今回どのあたりでダレましたか?
正直に答えてもらって結構です。ええ、割とそういう実験兼ねて長くしてみま
した。…人様の所で遅刻しながら『実験』とかするから『主催者泣かせ』と…
(土下座)。
 内容についても突っ込み所満載というか、キャラ立てから構成、個々の細部
に至るまで突っ込めない所はない!と豪語できます(笑
 是非突っ込んでやってください。
 では、またお目にかかれますよう(拝) 




                                      《つづく》