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 シュルルルルルルル

 ボクッ!

「はうっ!?」





 結論から言うと『鏡』は役に立った。
 鈍器というか、飛び道具として。
 ……鏡の意味ないなあ。

 ではっ! 気を取り直して呪詛第二弾 Go!!










「貴様を別人に見立てる訳だからな。呪詛には怨念のほかにイメージが大切な
んだ、イメージがっ!」
「イ、イメージ? …というと…」










「これで勝ったと思うなよ…」

 がっくりと膝を着く義経。刀を手にゆっくりと近づく景清。

「ふん、いつまで強がりを言えるかな」
「くっ、ひと思いに殺せ!」

 睨み付ける義経を涼しい顔で見返し、景清は己の刀を振り上げる。
 そして、一気に振り下ろされた。
 思わず目を瞑った義経が再び目を見開くと、自らの身体には傷一つ無い。
 ただ、薄物一枚を残して全ての鎧装束と着衣が切り裂かれ、小柄な細い身体
がむき出しとなっていた。

「何のつもりだ!」
「くっくっくっ、義経…」

 景清の指がグイッと義経の華奢な顎を持ち上げる。

「な、何を…」
「分からぬか?うぬがこれよりどうなるか……」

 景清の手が義経の纏った薄物の下へと潜り込み、妖しく蠢く。

「ひっ!やめろ、やめぬかっ!」
「義経…拙者はかねてより貴様のことを……」

 義経は抵抗するが、傷ついた身体は容易く景清の言いなりとなる。

「さあ、めくるめく世界へと共に旅立とうぞぉぉぉぉっ!!」
「や、やめ! あ、ああ、あああああああっ!!」










「殺してしんぜよう! 拙者の肉槍で。……クフフフ……」
「……こちらが陵辱されているような気がするのは何故だろう……」










 ――こうして晶の『お尻』と引き換えにその次月。景清×義経 本

 『亡者の戯れ 悦楽の源平合戦』

 が刊行された。

 B5判、40ページ、四百円。イベントオンリーで販売中。










 走る、走る、ひた走る。
 秋葉めざしてひた走る。
 狙うはその首唯一つ!
 ……なのだが。

「一体、何処にいるのやら…」

 この『丑の刻参り』ルックで寄宿舎を走り回って捜す訳にはいかない。これ
だとチャンスは一度だ。恐らくは自室が一番高確率。だが外せば……
 適当な娘の服を奪った方が早いか?

「ぬ、あれは…」

 その時、一人の娘が寄宿舎を出て、こちらに歩いてきた。
 その特徴的なビン底眼鏡は…たしか、高雅瀬とか……

「よしよし…」

 一旦茂みに隠れてやり過ごす。
 そして何処からも目の届かないところで後ろから…

「ゲェーット!」
「な!なにモゴッ!?」

 口を押さえて小脇に抱え、一目散に林の奥へとひた走る。
 くくく、それがしにとっては雑作もないことよ。

「モ、モゴッ、モガッ!」

 せいぜい今のうちに暴れておけ。










 林の奥へと到達し、そこでドサリと高雅瀬を投げ出した。

「だ、誰……四条?なんのつもり!」

 青い顔をしていたのが、顔見知りと知って強気に変わる。
 しかああし!


「…拙者 四条つかさであって、つかさに非ず…」
「……やば、追い詰めすぎた!?」


 一転して妙に心配そうな顔をされる。
 ……普段どう思われてるんだ、つかさ……

「その正体は!800年の時を越えて復活した平 景清なりぃぃぃっ!!」
「…………四条…」

「これでつかさの性能は数倍に跳ね上がるっ!恐れ崇めよっ!」
「……四条……やっぱりストレスで……」

 酸素欠乏症の親父を見るような目で見られたり。
 なぜか、大丈夫、恐くないから見てもらいに行こう、ね、等と猫なで声で言
われた挙句、腕を引っ張られたり。
 ……なんか、苦労してるようだな、つかさ。

 とはいえこれでは……やはりアレが手っ取り早いか?

 「四条?」

 それには答えずに腕を思いっきり引っ張り返した。
 そしてたたらを踏む高雅瀬の手をそのままそれがしの股間へ…

 瞬間、高雅瀬の全ての動きが止まった。

 朝のつかさのごとくギギギギッと音がしそうなくらいぎこちなく首を回し、
視線が自らの手の先へと下がっていく。
 クスリと口の端を吊り上げ、片手を回して襦袢の帯をスルッと外した。
 そして。





「見ろおおおおおおっ!」
「おわああああああっ!?」





 襦袢の前を思いっきり開いた。
 ……なにか、快感だな露出。
 なにより相手の驚愕がクセに…

 閑話休題

 拙者本来の物ではない、つかさの女の、いや娘の体。
 丸みを帯びているものの、未だ若干の堅さが失われていない張り詰めたよう
な娘の身体。
 その中で一際異彩を放つ、異形の雄雄しいイチモツ。

 ……ククク、本体が女の子の身体なだけに禍々しくもたくましいのぉ。

 そして拙者が高雅瀬の小さめの手には巨大すぎるビクビクと脈打つ猛り狂っ
たモノを握らせている光景も陽光の元にさらされた。

「離して、離してったら!」
「ふふふ、逃がさん、逃がさんぞぉぉぉっ!」

 あわててソレから手を離そうとする高雅瀬の手を掴み、無理矢理もう一度握
らせる。
 おお、恐怖の表情にたぎる、たぎるぜぇぇぇっ!!
 秋葉の髪の毛をぺしっと張り付けてっと。

 呪詛第三弾 Go!!










「と、いう訳で遠野秋葉を捜しているのだが」
「…四条にアレが…データに無い…」

 なにか放心状態らしく返事がない。
 高雅瀬が情報通なのはつかさの記憶にあるのだが…
 ふと地面を見ると、先ほど最中に落ちたらしい眼鏡と手帳が。
 両方拾い上げて、とりあえず手帳の方を見る。


 『攻略本』


 ……どういう手帳だ。
 とりあえず開いてみる。





 ≪ 蒼香×羽居
トキメキ度 MAX
   今日もデート
   本日 番長戦イベント
   『袖龍』を上手く防御するのがポイント ≫





 パタン。
 ……見てはいけないものを見てしまったような……
 やっぱり本人から聞こう。

「…おい、娘」
「ひっ!?」

 今度は反応あり。尻に『剣』を押し付けておくと違うらしい。

「遠野秋葉はどこだ?」

 お尻をツンツンと突付くと…

「げ、現在校舎の生徒会室右奥の机で書類整理中。書類内容は苦情が三件に校
内行事が一つ。95%は完成済み。終了後寄宿舎に戻ってお茶を飲むつもりな
ので20分後には退室し、寄宿舎へと向かう予定。人数は一人。ルートは……」

 マシンガンのようにしゃべりまくる。
 ……ありがたいことはありがたい情報なのだが詳細すぎ…
 とにかく聞くべきことは聞いた。

「協力感謝する」
「は、早くお尻の、どけて…」

 それには取り合わず、眼鏡を差し出した。

「ああ、落ちていたぞ。掛けろ」
「あ、ありがとう。でも…なぜ?」

 眼鏡をかけつつ、尋ねるのに答えてやる。

「それはね、選択肢を選ぶ為さ」
「…選択肢?」
「つまり……」





『2.眼鏡をしていない高雅瀬なんて高雅瀬じゃないっ』





「……という事だぁぁぁっ!さあ、しり行くぞ!尻ぃぃぃっ!!」
「いやあぁぁぁっ!強姦魔のお尻マニアがぁぁぁっ!!」





 誰が尻マニアかっ!?










 林の中、待ち伏せしている。
 もうすぐだ。
 もうすぐ遠野秋葉がここを通る。

 ドクン

 高鳴る心臓に落ち着け、と繰り返す。
 敵は三度に渡る呪詛によってダメージを受けて……はいないような気はする
のだが……プランとしては。

 @ とりあえず不意打ちする
 A あんなことやこんなことをする
 B 尻

 という完璧なプランを……

 ……待て、首を取るんじゃなかったのか?目的を見失ってるぞ。
 なにか手段と目的が入れ替わってるし。

「まあ、それもこれもこの『草薙の剣』あってのことだが…」

 今もビンビンにスタンバッていたりする。
 ふ、いかな名刀も女を三人切れば切れ味が鈍るという定説を覆す勢いよ。
 とはいえ、首を取るのが最終目標だ。
 計画変更。

 @ とりあえず不意打ちする
 A あんなことやこんなことをする
 B 尻
 C 更にそんなことまでする
 ............
 Q 首をとる

 完璧だ。
 そしてそれがしは前方に秋葉の姿を確認し、襲い掛かった。

 この時、それがしは先ほどつかさの身体を確認したにも関わらず、うっかり
自分自身の身体のようなつもりでいた。
 この身体では微妙な違いがあったのだ。
 『三種の神器』をそろえれば勝てるかもしれないといわれた訳だが、有るの
は『剣』と『鏡』と……










 ≪ 注:主催者様の凸公式見解を参照≫










 そう『タマ』が無かったのだ、この身体には。





 ……ガーディアン『平 景清』 玉無しのため散る。

        ………情けなや………






                                      《つづく》