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『ふっふっふ、何を隠そう!私が伝説の木の精だあぁ!』


 ...あ、なんか一気に緊張感が失せた。
 どっと疲れた様な気がしているあたしを他所に緊張感のないやりとりが続く。

「じゃあ、ずっと前からここに居るの?」
『いや、X年前からちょっと縁があって』
「さびしくない?」
『うーん、新しいジャンルとか情報が入らないのが辛いかな』

 ...ちょっと待て。つまりこいつは。

「…地縛霊?」
『そうとも言う』

 ヌケヌケと言いやがった。

「そうとも言う、じゃない!」

 あ、思わず怒鳴ってしまった。幽霊とは思えんなこいつ。

「ねえねえ、精霊さん。お願い聞いてくれるの?」

 羽居は羽居でマイペースだし。

『うむ、汝が願いを言え』

 いまさら威厳があるっぽく言っても、とは思ったが羽居が珍しく神妙な顔を
しているので言わない事にした。

「えーと、蒼ちゃんと一緒になりたいです」

 ...なんか一緒に居たいと一緒になりたいは意味違わないか?と思ったの
だが、奴は高らかに宣言した。

『その願い、叶えてしんぜよー』

 しかも

『ふっふっふ、二人が一つになれるようにしてやろう!』

 更に意味変わってるし!

「な、ちょっと」

 待て、という前に身体に違和感が走った。何かが出てくるようなムズムズと
した違和感。しかも下腹部、更に下。

「…まさか」

 あわててスカートのその部分に手を伸ばしてみる。



 グニッ



 制服のスカートの上から押さえた下腹部(のもうちょっと下)に、なんとい
うか予想通り、本来有り得ない肉の塊の感触が有った。
 恐る恐るスカートを捲くってみると、やはり。

「…おちんちん?」



 羽居の言うとおりのものが不自然に膨らんだ下着の上部からはみ出していた。



『さあ、本能のままにGo!』
「Goじゃない!元にもどせぇ!」
『お願いが叶わないと戻らないんだけど』

 ...ということは

「つまり」
『やることやんないと戻んない』
「…まじ?」
『マジ』

 ちょっと頭の中が真っ白になった。
 男らしいと言われることもあるが、あたしだって女だ。処女を失う日の事を
考えたことがないとは言わない。でも、人のバージン奪う日の事なぞ、考えた
ことは全く無い。それも自前で。
 なんでこんな事になったのやら。

「恨みでもあるのか…」
『失礼な。願いをかなえてやったんじゃないか』

 羽居の願い、あたしとずっと一緒に居ること。それ自体はあたしの望みでも
ある。依存はない。
 しかし、よしんば望みが一緒になることだとしても...

「何か微妙にお願いとずれてないか?」
『気のせい気のせい』
「…本当に?」
『…いや、最近ネタ切れだったし』
「……」
『いいネタになるかなあ、と。テヘ♪』
「そっちが本音かぁ!」

 喚いてみたが、どうやらどうにもならないらしい。
 どうしたものかと考えるがどうしてよいやら。
 と、背中に柔らかい感触。
 そのまま手が廻され、背中から抱きしめられた。

「羽居?」
「…うん」

 ギュッと手に力が込められた。

「わたし、蒼ちゃんのこと好き。だから」
「羽居!」

 思わず語気が強まるが、回された手に籠められた力は変わらない。肩にコツ
ンと羽居の頭が当る感触。触れる額が熱く感じた。

「さっきからずっと考えてたの。ううん、本当はもっとずうっと前から考えて
た。蒼ちゃんにわたしの初めてあげられたらどんなにいいだろうって」

 そう言われると弱い。だってあたしは女だから。あたしも同じ事考えたから。
よく、分かってしまう。羽居がどんな気持ちでそう言っているかが。

「だから、ね、蒼ちゃん。わたしの初めてもらって。…お願い」

 羽居の声が震えている。
 あたしは...

「分かった」

 そう言った。

「え、じゃあ…」
「もらってやる」

 宣言した。

「初めても何もかも、羽居を全部もらってやる」
「うわーい、蒼ちゃん大好きー」
「こら、力入れすぎだ」

 廻された手にそっと片手を重ね、もう一方の手で頭を撫でてやった。

「えへへー」

 羽居はされるがままに撫でられている。その涙を湛えた笑顔が愛しい。
 これからあたしは羽居の初めてをもらうのだと思うと何故か胸が奮えた。出
来ればあたしの初めても羽居にあげたかったんだけど。
 ...そういえば何でお願いした羽居でなくてあたしに生えた?あの地縛霊
はどうやってそれを決めた?まあ、羽居の方が外見からして女の子らしいしな。

『いやそうでなくて、女の子の方が告白するというのが世界の選択』

 いきなり返事が有るし。

「どこの世界だ!それに人の思考を勝手に読むな!」
『伝説の木の下で告白する世界の選択というか』

 よく分からない返事だし。
 気のせいだろうが頭痛までしてきた。思わず額を押さえる。
 確かに羽居に告白された訳だが。 
 世界の選択でちんちん生えてたまるか。そんな間違った世界はいらん。
 ...なんかやる気が盛り下がった。

『そんな時にはコレ。倦怠期のお供に触手プレイ』

 足元からニョロニョロと細い根っこが...

「うだらああああぁ!」



 バシバシバシバシバシ!



 叫んで全部踏み潰す。
 ハアハアと肩で息をしていると羽居がよしよしと背中をさすってくれた。
 相手が見えないので伝説の木をビシッと指す。

「いいから余計な事するなぁ!倦怠期も何もまだホヤホヤもホヤホヤだ!」

 ...なんか指摘する場所を間違っている、ような気はする。

「うん、蒼ちゃんとわたしはアツアツのラブラブー」

 羽居はニコニコと宣言して、えへへと笑った。
 その幸せそうな顔をもっと見ていたい。ふとそう思った。

『そうそう、制服は脱がさないでねー』
「…あんた、少し黙れ」

 盛り下がることおびただしいから。










 まだ視線は感じるが、とりあえずよしとしよう。
 座っている羽居のとなりに自分も座り込んだ。やれやれ変なことになってし
まったなあ。
 
「えへへー、何か照れちゃうねー」

 だと言うのに羽居はやっぱり幸せそうだ。
 つい和みそうになるのを引き締める。

「やめるなら今のうちだぞ」

 分かっているのに確認してしまう。自分がこんなに往生際が悪いとは思わな
かった。

「大丈夫だよ、蒼ちゃん」
「滅茶苦茶痛いかもしれないぞ」

 かもしれないじゃなくて、絶対にすごく痛い。...多分、予想では。
 ましてや、こっちも初めてである。上手くは出来ないだろう。
 人の十倍痛がりの羽居に泣かれたらあたしはうろたえてしまいそうだ。
 そういや、

「おい地縛霊。あんた経験あるか」
『いやその、描いたことはあるけど…』

 晶と変わらんな。
 そういやいつぞや目をキラキラさせてお寺といえば衆道ですよねっ、とか聞
かれたっけか。強制沈黙させたけど。
 怪しげな事は知ってるだろうがナビゲーターにはなりゃしないだろう。

「…やっぱり痛い、と思うぞ」

 あたしが尻込みしてどうする、とは思いつつも腹が据わらないったらありゃ
しない。これで羽居が動揺してればお流れになったのだろうが。

「うーん、痛いのはいやだけど我慢するー。蒼ちゃんと一緒なら耐えられるの
だ」

 はっきりと応えた。こうなれば(暫定的ながら)一部男の身としては腹を据
えるしかないか。

「…よし」

 抱き寄せてもう一度唇を合わせた。

「んん…」

 今度は触れ合わせるだけじゃなく羽居の唇を舌で舐める。
 応じるように差し出された舌があたしを舐め、絡まりあった。
 お互いの唾液を舐めあい、甘い唾液を求めて羽居の舌が口の中へと入ってく
る。

「ん、う…」

 羽居の舌があたしの唇を、歯を、舌を、歯茎を、舌の裏を、口の中のいたる
ところを動き回る。
 この繊細な動きを何と言えば良いか。
 愛撫。そう愛撫と言うべきだろう。
 舌が絡み合う度に、愛撫を受ける度に、頭の中が痺れていく。

「はふう」

 唇をはなすとつうと透明な橋がかかった。
 その光景に誘われるようにもう一度羽居の唇を貪る。
 今度はお返し。
 目を潤ませる羽居の唇を割って舌をもぐりこませた。羽居の口の中全てを優
しく愛撫する。思いっきり唇を吸った。
 そして手を羽居の大きな胸へと伸ばした。

「ん、んー」

 服の上からでもわかる柔らかい胸に触れると、熱い吐息を漏らした。だがそ
の口はあたしがふさいでいる為に言葉にはならない。
 そのまま柔らかい胸に指を這わせ、ゆっくりとこね回す。次第にブラと制服
の上からでも硬く起つものが感じられた。尖った物を中心に指を動かす。
 うーむ何か燃えるものがあるな。
 乳にこだわる男が多いのもうなづける。
 なんてことを考えていたら、下腹部をゾクリとした感覚が走り抜けた。

「んん!?」

 思わず手と舌が止まる。

「…ぷはっ」

 その隙に羽居はチュポンと唇を離して酸欠を免れた。
 見ると羽居の左手があたしのスカートの前に添えられていた。ゆっくりとそ
の手が上下に動くと、その度にゾクゾクとしたモノが駆け上がる。

「蒼ちゃんのおちんちん大きくなってる」

 羽居の言うとおりあたしに付いた男のものはスカートの下で大きく存在を主
張していた。その盛り上がりを羽居の手が擦るたびに女には未知の、恐らくは
男の感じる快感であろう感覚があたしの中に生まれていく。

「ねぇ気持ちいい?」

                                      《つづく》