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「六方塞がり」
                             古守久万




 はあっ……んー、お布団気持ちいいなぁ……
 うーん……はぁ

 ……ふふふ
 今日も楽しかったなぁ

 志貴さんとデートして、たくさんお話ししちゃった
 なんか思い出すだけで嬉しくて、恥ずかしくなっちゃう
 でも、でも……公園で待ち合わせて、映画見て、喫茶店行って……
 それだけだったけど、ずっと志貴さんと一緒にいられたから幸せだったなぁ

 待ち合わせに少しだけ遅れて謝ってる顔
 映画を見てるときの真剣な横顔
 美味しそうにストロベリーパイを食べる顔
 ……ちょっとだけ勇気を出して、手を握ったり腕を組んだりした時の驚いた
顔と、すぐに優しく微笑んでくれた顔

 どんな志貴さんの顔でもすぐに思い出せて、今も心臓がドキドキいってる……


 ……でも、志貴さん
 気付いていました?
 志貴さんに話しかけられるたびに、わたしが少しだけ震えていたのを

 『アキラちゃん』って呼ばれるたびに、わたし……
 志貴さんに触れるたびに、わたし……

 ここを、こんなにびくびくって大きくさせちゃっていたんです……


 ……ん、あっ……!

 やだ、思い出しただけで……
 わたしの……痛いくらいにおっきくなっちゃってます……
 ああっ、ダメなのに、ダメなのに……

 んっ、志貴さぁん……
 わたしがこんなおんなのこだってわかったら、軽蔑しますか?
 わたしに志貴さんと同じものがついてるって知ったら、嫌いになりますか?

 んっ、んっ……きもちいいよぉ……
 この擦っている手が、志貴さんの手だったら……
 志貴さんのあの声で『気持ちいい?』って言われたら……んんっ!

 あっ……もう先っぽがぬるぬるしてきちゃってる……
 ……こっちも、いっぱい濡れちゃってる……
 んっ、指がすぐに入っちゃうよぉ……
 さっき帰ってきたときも、おちんちんとあそこがいっぱい濡れちゃってたの
に、またこんなに……
 いつもよりすごい敏感になってる……っ
 はしたないって思わないでください、志貴さぁん……っ!
 志貴さんがいけないんですから……

 志貴さんの姿……
 志貴さんの声……

 『アキラちゃん、もうこんなにして……』
 『アキラちゃんのここ、ビクビクいってるよ、苦しい?』
 『アキラちゃんがもっと擦ってるところ、いっぱい見せてよ……』

 はい、志貴さん……見てください
 わたしの恥ずかしい姿を、もっといっぱいいっぱい見てくださぁい……
 ああっ……はっ、あふっ……はあっ……

 『アキラちゃん、いっぱいエッチなお汁が出てきてるよ?』
 『ほら、上も下もこんなにいっぱい……』
 『俺の事考えながらいつもこうしてるの? アキラちゃんは変態さんだね……』

 はい、わたしは変態さんですぅ……
 志貴さんに言葉で責められる事を想像して、いっつもこうやってエッチな事
をしてるんです……
 志貴さんにわたしのおちんちんを握られて、上下に擦られてるって想いなが
ら……
 志貴さんのおっきなそれを、わたしのあそこに入れられてるって……んあっ!

 はあっ、止まらないよぉ……
 志貴さぁんっ……
 だめ、だめ……!

 『アキラちゃん、もうイっちゃうの?』

 はい、もう……がまんできないです……!

 『いいよ、アキラちゃんがイっちゃう所、見ててあげる』

 はい、見て……下さい……わたしがいっぱい気持ちよくなっちゃうところ……
 ……んっ、あっ、はあっ……ああっ
 ……志貴さん、志貴さん……志貴さぁんっ……!


 あっ、んああああああああっ!



 んっ、はぁ、はぁ、はぁ……

 ……出ちゃった
 ん……すごくきもちよかった……
 でも……手が精液でベトベト……早く拭かなきゃ……

 ……んっ、いつもよりいっぱい出てるみたい……
 拭き取ったのにまだ滲んでるし、それに全然治まらないよぉ……
 んあっ! また、きもちいい……このまま、もう一度いじっちゃうよ……

 わたし、おかしい? 本当に変態さんになっちゃったの?
 今日志貴さんに会ったばかりだから?
 志貴さんを思い出せちゃうから?

 がまんできないよ……
 志貴さん……助けて……
 助けて……

 助けて……先輩
 先輩なら、助けてくれる……
 わたしの事分かってくれるから、助けてくれますよね……?

 先輩……
 わたしのここ、鎮めさせてください……
 んっ……はぁっ……





「瀬尾、あなた何を……」

 力の入らないように、先輩がそれでも抵抗するようにわたしを睨め付ける。
 目の前には、手足を縛られて身動きが出来ない先輩がいる。わたしはそんな
先輩でさえも綺麗だと思った。もがいているつもりでも、力が入らないからま
るで快感に悶えているように見えてしまい、すこしだけぽーっとしたその瞳と
相まって凄く妖艶な姿に見えてしまう。
 そう、それはまるでわたしを誘っているかのような……

「先輩、ごめんなさい……でも、我慢できないんです……」
 わたしは口では謝っているのに、身体はそうでなかった。先輩の香りに鼓動
は早く、たまらなく、もっと近くで感じたいと思う。
 同じ女の子なのに、先輩なのに、こんな不思議な気持ちになるのは。
 きっと先輩を通して志貴さんを感じているからなの……?

 わたしはすっと身体を先輩が倒れているベッドに寄せると、その首筋に唇を
寄せた。
「ああっ……。瀬尾……冗談はよしなさい……んっ」
 先輩は一瞬、酷く官能的な声をあげた。きっとそれは、誰にも聞かせた事の
ない様な声。お茶に混ぜた媚薬がもう効き始めているのか、それとも先輩の弱
いところなのか、わたしはもっと先輩を啼かせたくてそこを責める。
「んっ……はぁ……やぁ……」
 先輩の声は力無く、とっても甘い音色。
「冗談なんかじゃないです。先輩の身体でわたしの火照った体を鎮めさせてく
ださい……」
 そう自分の唇から漏れる言葉までもが、わたしを酔わせていくように感じる。
 ネコのように先輩の首筋を舐めるぴちゃぴちゃという音までも。
 その舌から感じる先輩の僅かな汗の味までも。
 全てがわたしを狂わそうと浸食していく。
 それをわたしは享受し、そして従っていく。
 だって、そうしないと身体が沸騰するほど熱いから。
 誰かにこの熱を伝えないと、溶けてしまう。

「あっ……んん……」
 先輩は懸命に声を押し殺しているけど、それでも漏れ出る振動がかえってい
やらしい。
 そんな声を聞きながら、ふっと冷静になってしまう。

 先輩……
 志貴さんに抱かれているときも、こんな声を出すのですか?
 志貴さんにこうやって、こうやって気持ちよくして貰って……
 兄さん、兄さんって……背徳的な交わりに悦びの声をあげて……

 先輩と志貴さんがほんとうの兄妹じゃないって知っている。
 けど、そんな禁忌を想像すると……余計に体が熱くなってるのがわかった。
 じゅんっと、湿るような感覚と
 じいんと、震えるような感覚
「先輩……わたしを感じてください……」
 そんな志貴さんの跡をたどるようにして、わたしは先輩の唇を奪った。そし
てわたしの跡をつけるようにして、舌を絡める。
「んんっ……」
 嫌がる様子もなく、先輩はただされるがままにわたしの唾液を受け取ってく
れる。それは本格的に痺れ薬が効いて抵抗できないからかもしれないけど、嬉
しくて余計に先輩の唇をねぶった。
 熱い吐息が口の中に広がると、わたしはうっとりとして先輩の熱さに溶けそ
うになる。
 とろとろと上から流し込む唾液が、先輩の唇から垂れ落ちて光の筋を作る。
先輩はそれを吐き出す事も出来ずに、ただ呼吸をしようと嚥下してくれるのだ
が、その光景でさえわたしの熱を膨らませる仕草だった。

「はぁ……せん……ぱい……きれい、です……」
 唇を離して先輩を改めて見下ろすと、唾液で口元が妖しく濡れていて、うっ
すらと汗を流している額が光っていた。
 わたしはその神々しき姿に息をのんだ。
 とても自分には出来ない艶姿。
 それは先輩だからこそ出来る高貴の証とも思えた。
「先輩……」
 柔らかそうな先輩の身体にわたしは埋もれるように身体を上から重ねてみる。
 暖かくていい匂いの先輩を抱きしめて、その胸をまさぐりたいと思った。

 しかし……
「な……瀬尾……そ、れ……」
「あ……」

                                      《つづく》