[an error occurred while processing this directive]


琥珀とお風呂と黒猫と

                                                   稀鱗




 かちゃかちゃかちゃかちゃ

 台所から、軽快な食器を洗う音が聞こえる。時折、少し外れた鼻歌が聞こえ
るのはご愛嬌と言うものだろう。

 「志貴さんは今日もちゃんと食べてくれましたね。こう毎日、たくさん食べ
ていただけると、私も張り切っちゃいます。」

 琥珀は次々と食器を洗い上げていく。きれいに洗い上げた食器を一つ一つ拭
き、積んでいく。

 「あっ。」

 と、琥珀が声をあげる。それと同時に、

 がしゃーん

 と、何かが割れるような音が聞こえた。琥珀の足元には、真っ白な登記の破
片が散らばっている。どうやら、拭いていた皿を落としてしまったようである。

 「あちゃ〜、またやってしまいました。どうして私は、こうも掃除とか食器
荒いとかが苦手なんでしょう。」

 琥珀は屈んで床に散らばった破片を拾い集める。細かい物は、箒を持ってき
て……

 「…と、ここで私がするとまた割ってしまいますね。はぁ…。」

 琥珀は小さく溜息をついた。そして、

 「ひっすいちゃ〜ん。ちょっと来て〜。」

 と、大きな声を出して翡翠を呼ぶ。すると、ぱたぱたと早足でかけてくる足
音が聞こえる。台所の入り口から、ひょっこりと翡翠が顔を出した。

 「どうしたのですか、姉さん。」
 「ああ、翡翠ちゃん。ちょっとお願いがあるの〜。」

 琥珀は翡翠を拝むように、両手を合わせてお願いする。翡翠は怪訝な顔をし
て、琥珀の後ろの床を見ている。

 「姉さん、また割ってしまったのですね。」

 あきれたように翡翠は琥珀を見ている。翡翠は何も言わずに、台所から出る
とすぐに箒と塵取りを持ってやってきた。翡翠は床に散らばった小さな破片を
集め、掃きとっていく。掃除上手の翡翠によって見る見るうちに床がきれいに
なっていく。

 「姉さん、終わりました。」

 翡翠は振り返って琥珀にそう言った。

 「ありがとう、翡翠ちゃん。ね、一つ聞いて良いかな。」
 「何ですか、姉さん。」
 「お掃除道具は離れたところにあるのに、どうしてそこにあったのかな。」

 翡翠は琥珀の質問に淡々と答えた。

 「姉さんが私を呼ぶのは掃除関係がほとんどですから、いつも姉さんの目の
届かないところに用意していますから。」
 「ひ、翡翠ちゃん。」

 琥珀は、よよよ、と泣くふりをしながら翡翠に抱きついた。翡翠は特に気に
した様子も無く、琥珀さんに抱きつかれたままになる。すると、翡翠の顔がほ
んのりと紅く染まってくる。

 「ひすいちゃ〜ん。すりすり。」
 「ね、姉さん。やめてください。」

 琥珀は、翡翠の胸に頬を摺り寄せている。琥珀はとどまることを知らず、手
が翡翠のお尻に伸びる。
 琥珀はゆっくりと撫でるようにスカートの上から触る。翡翠が琥珀の手から
逃げようと身体をくねらせる。

 「姉さん、やめてください。姉さん、……姉さん……。」

 ふと、翡翠の声色が下がった。琥珀は翡翠の声の変化に気づいて、恐る恐る
顔を上げる。
すると、翡翠が無表情で琥珀を見ている。

 「ひ、翡翠ちゃん……。」

 翡翠の強烈な威圧感に額に汗を浮かべて、固まっている。翡翠はその姿を見
て、口を開く。

 「姉さん、いつまでそうしているつもりですか。」
 「あ、あ、あ、あ、あ、あ、…。ご、ごめんね、翡翠ちゃん。ね、ほんの、
おちゃめなの。ね、ね、翡翠ちゃんは分かってくれるよね。」

 琥珀は必死になって、翡翠に対して弁明する。すると、翡翠は琥珀に、

 「分かってくれれば良いんです。ただ、レンちゃんがあまりにも可愛いから
と言って、このようなことをレンちゃんにしないようにして下さい、姉さん。」

 翡翠はそう言うと、積んであった食器を片付けて台所から去っていた。
 残された琥珀は翡翠の姿を黙って見送るしかなかった。





 外はお世辞にもいい天気とはいえなかった。少し雲が多い。風も冷たく少し
強いくらいだろうか。その風が、木々についた残り少ない枯葉を拾ったのだろ
う、地面は落ち葉で埋もれている。
 琥珀は庭の掃除をしていた。竹箒を振り回して、掃除をしているのかそれと
も遊んでいるのか分からない動きをしている。それでも時折、集めた落ち葉な
どを回収し庭園の方へと持っていく。おそらく肥料でも作っているのだろう。
 琥珀が庭園から戻ってくると、茂みからがさがさと音がしている。良く見る
と黒いリボンが茂みの影から見え隠れしている。

 「レンちゃん?」

 琥珀が名前を呼ぶと、茂みの中から黒ずくめの少女が現れた。レンは琥珀の
ところまでゆっくりと歩いてくると、じっ、と琥珀を見上げた。

 「どうしたんですかレンちゃん、志貴さんは今は、学校に行っていますから
いませんよ。」

 レンはさらに、じっ、と琥珀を見つめて来た。すると、く〜〜、と可愛らし
い音聞こえた。少し顔を紅らめながら、レンは眼で何かを訴えている。

 「あら、レンちゃん、お腹がすいているんですか。」
 「……(コクコク)」

 レンは首を縦に振った。するとまた、く〜〜とレンのお腹がなった。

 「……(真っ赤)」

 レンはますます顔を紅く染めて俯いてしまう。よほど恥ずかしいのだろう。
 
 “はう〜、レンちゃんの仕草が可愛すぎですよ〜。”

 琥珀はレンの姿を見て、トリップしている。すると琥珀は、レンの手を引っ
張って、

 「ささ、レンちゃん、いらっしゃいな。」

 とレンを誘う。使用人の勝手口から入って、レンを居間のソファーに座らせ
た。琥珀は台所へ行き、ケーキの乗った皿を乗せたトレイを持ってくる。その
ケーキと、フォークををレンの前に置いた。

 「さぁ、レンちゃん。いっぱい食べてくださいね。」
 「……(嬉)」

 レンは、フォークを持って一生懸命にケーキを食べている。口の周りを生ク
リームでべたべたにしながらも食べる勢いは止まらない。

 「あらあら、レンちゃん、口の周りにクリームが付いていますよ。」

 琥珀はナプキンを持ってきてレンの口の周りに付いている生クリームをぬぐ
ってあげた。レンは逆らわず、琥珀の行為に身を任す。

 「もう、レンちゃんは物凄く可愛いですね〜。」

 琥珀はレンを後ろから抱きしめてふにふにと密かに胸を触っている。そんな
こともお構いなしにレンはケーキを食べている。ケーキを食べ終わったレンは
物足りなさそうに琥珀を見ている。

 「レンちゃん、まだ食べますか。」
 「……(コクコク)」

 レンは頷き、それを見た琥珀は再びケーキを持ってきた。
 それを、レンは、はむはむと平らげていく。

 「あは、レンちゃん、そんなに急がなくてもケーキは逃げませんし、まだあ
りますから。」

 琥珀はレンの可愛いしぐさに、ぽ〜っとした表情で見ている。レンはそんな
ことは気にもとめず目の前のケーキと格闘している。食べ終わるごとに、琥珀
はレンの口元をぬぐってやる。
 レンが4つめのケーキを食べていた時のことだった。

 「…ぁ…」

 レンが聞こえないほど小さな声をあげたかと思うと、ケーキがレンの服の上
に落ちた。黒い服に白い生クリームの斑点ができる。

 「あらあら、レンちゃん。お洋服が汚れてしまいましたね。」

 しかし、レンはさほど気にした様子も無く、残っていたケーキを食べている。
琥珀はレンの頭を撫でながら、

 「レンちゃん、お風呂に入りましょうか。ついでに着ている服もお洗濯しま
しょう。」

 と、レンに言った。レンは、首をかしげ、その後に、

 「……(コクコク)」

 と頷いた。

 「じゃ、いきましょう。少し待っていてくださいね。」

 食べ終わった皿を片付けて、琥珀は一旦部屋へと戻った。

 「ね、念願のレンちゃんと一緒にお風呂が実現ですよ〜。」

狂喜乱舞しながら部屋の中を漁り、タオルとレンに似合いそうな洋服を探し出
した。早まる気持ちを抑えながら、それを持って、レンの待つ居間へと戻った。

 「レンちゃん、お待たせしました。さぁ、行きましょう。」

 琥珀はレンの手を取って、浴場まで歩いていく。
 この時、琥珀の顔はにやけていたというのは言うまでもない。



 浴場の脱衣所で、琥珀は帯を外し、着物を脱ぐ。その後で、レンの服を脱が
し、リボンを取った。二人とも、一糸纏わぬ姿になる。そのまま浴室に入ると、
そこは湯気で真っ白だった。湯気に包まれた琥珀のスレンダーな身体とレンの
まだ幼さを多分に残した身体がじっとりと汗ばむ。琥珀はレンを浴槽の近くま
で連れてくると、レンを座らせた。そして、洗面器を手に持ち、

 「レンちゃん、熱かったら言ってくださいね。」

と、琥珀はお湯をすくってレンの肩から少しづつかけてやる。初め、レンは熱
いのか、お湯が掛かるたびに身体が、びくっと動いていたが、熱さになれたせ
いかお湯がかかる度に気持ち良さそうに目を細める。

 “ううっ、か、可愛い”

 琥珀はレンの仕草に、たまらず飛びつきそうな勢いだった。それを辛うじて
理性で抑えている。一通り、レンの体にお湯をかけると、シャンプーで頭を洗
い、お湯で流した。

 「レンちゃん、次は身体洗いますからね〜。」

 と、琥珀はスポンジにボディソープを垂らし、泡立てる。見る見るうちに琥
珀の手の中のスポンジが真っ白な泡で隠れてしまう。それを、ゆっくりとレン
の身体に付け、擦っていく。琥珀は丹念にレンの身体を洗っていく。

「レンちゃん、気持ち良いですか?」
 「……(ぼー)」

 レンは答えず、目を細めたまま、ぼーっとしている。琥珀はそんなレンを見
て、

 “あう〜、翡翠ちゃん並に可愛いですよ〜。このまま、たべちゃいたいです。


にやにや、と琥珀の顔がにやけている。琥珀はレンの身体を隅々まで洗って、
お湯で泡を流した。時折、胸やお尻を触っていたのは言うまでもない。

「はい、レンちゃん終わりましたよ。じゃ、じゃあ、一緒に、湯船に浸かりま
しょうね。じゅる…。」

琥珀はレンを抱えて、湯船に入ろうとする。さすがに、ネコの習性なのか、そ
れとも琥珀に危機感を抱いたのかレンは逃げようとする。それでも琥珀は、

 「大丈夫ですよ、レンちゃん。私にしがみ付いていれば良いですから。」

と、レンを抱いたまま湯船に湯に浸かった。入ると、レンは大人しくなり、琥
珀に抱かれて気持ち良さそうにしている。
すると突然、レンがくるりと琥珀の方に向き直った。

「どうしたんですか、レンちゃん。」
「……」

レンは琥珀の顔を見た後、じーっと琥珀の胸を見ていた。するとレンはいきな
り、琥珀に抱きつく。いや、抱きついたのではない。レンは琥珀の胸に口をつ
けた。

「レンちゃん!?」

いきなりのことに驚いた琥珀だったが、レンをそのままにさせる。ちゅっ、ち
ゅっと音を立てて琥珀の胸をレンが吸っていく。それは、まるで仔猫が母猫か
らミルクを吸いだすようにゆっくりと優しく吸っていく。その姿に、琥珀は優
しく微笑みながらレンを抱きしめた。

「……」

レンはゆっくりと琥珀の胸を味わうかのように吸いつつける。時折、胸の先端
にレンの舌が触れる。その度に、琥珀の身体に甘い痺れが走り抜ける。いつし
か、レンの吸うは舐めるという行為に変わる。レンは丹念に琥珀の胸を舐めて
いく。人とは違う、ざらついた舌の感覚に琥珀は知らず知らずに声が洩れてい
た。

「ああ、あん、レンちゃん。だめ、これ以上は…。」

しかし、レンは琥珀の言葉など聞かず、舐めつづける。レンの舐めるスピード
が上がるにつれて琥珀の吐息も荒くなる。レンを抱きしめている琥珀の腕に力
がこもる。

「ふぁぁ、レンちゃん。レン、ちゃぁ……。」

琥珀の身体がびくっと震え、レンを抱く腕の力が抜ける。琥珀は。はぁはぁと
大きく息をしている。レンは、胸から口を離し、琥珀を見上げる。琥珀はレン
の唇に自らの唇と重ねた。レンの口の中に舌を差し入れ、レンの口内を犯す。
卑猥な唾液音が浴室の中に響き渡る。琥珀はレンの唇から離れ、

「もう、悪い子ですね、レンちゃんは。そんなにおっぱいが欲しかったんです
か?」

別に怒った風でも無く、琥珀はレンに問い掛ける。

「そんな悪い子には、お・し・お・き、です。」

と、琥珀はレンを抱き上げて浴槽の淵に座らせた。琥珀は、レンの足を開き小
さな秘裂
に舌を這わせた。

「……!!」

琥珀が舌を這わせる度にレンの身体が浮き上がる。その動きを静止させるかの
ように琥珀はレンの腰に腕を回して押さえつける。やがて、レンの秘裂からぬ
めりを帯びた液が漏れ始めた。琥珀はそれを丁寧に舐めとっていく。それでも、
レンの秘裂から溢れる液はとどまることを知らない。

「レンちゃんはエッチな子ですね。ここをこんなにして…。」

つぷっ、と秘裂に舌を差し込む。琥珀の舌は、レンの秘裂に吸い込まれていく。
中の襞を掻き分けて、奥へと進む。これ以上はいらなくなると、琥珀は舌で内
壁を擦る。擦るたびにだんだんと液量が増加してくる。

「……(///)」

レンは顔を紅くしながら、いやいやというふうに頭を振る。その姿を見た琥珀
は、

“も、もうだめですよ〜。可愛過ぎますよ〜。レ、レンちゃんと一緒に…”

琥珀は、湯船から出てレンの上に覆い被さる。

「!!」
「レンちゃん、一緒に気持ちよくなりましょう。」

琥珀はレンの股の間に入り、自らの秘裂をレンの秘裂と擦り合わせる。レンの
秘裂から溢れ出た液が潤滑油になり滑らかに滑る。レンの顔が真っ赤に染まり、
半開きになった口からは涎がたれている。琥珀は、擦り合わせるのを一旦止め、
レンの口から溢れ出る唾液を舐め取っていく。そして、優しくキスをする。
すると、今度はレンから擦り合わせてきた。それを感じた琥珀はさらに激しく、
秘裂を擦り合せる。二人の動きはますます激しくなり、

「レンちゃん、レンちゃん……イ、イクゥッ…」
「………(ん〜)」

二人の身体が大きく震える。琥珀は、はぁはぁと大きく肩で息をしている。
琥珀の下腹部に、温かいものが打ち付ける。それはやがて、弱くなり打ち付け
た後の温かさだけが琥珀の肌に残る。

「レンちゃん……おもらし、しちゃったんですか。」
「……(真っ赤)」

どうやら、レンは絶頂に達した瞬間、漏らしてしまったらしい。レンは恥ずか
しさのあまり真っ赤になっている。すると、琥珀が

「大丈夫ですよ、レンちゃん。誰にも言いませんから。さ、もう一回身体を洗
って、温まってでちゃいましょう。」
「……(コクコク)」

琥珀とレンは仲良く洗いっこをしてお風呂から上がった。





お風呂から上がった二人は、服を着て一旦、琥珀の部屋に向かう。
 琥珀はレンをベッドに座らせて、髪の毛を乾かしている。乾かし終わると、
今度はレンのリボンを付け直す。

 「……(うつらうつら)」

 レンの頭が前後に揺れる。

 「レンちゃん、眠くなっちゃいましたか。」

 琥珀はレンに聞くが、レンの瞼はもうほとんど開いていない。琥珀との行為
でよほど疲れたのであろう。そのまま、ぽてっ、と横になってしまった。

 「すぅ〜、すぅ〜…。」

 と、レンの寝息が聞こえて来た。身体を丸め、猫が丸まって寝る時のような
格好をして
いる。それを見た琥珀は、レンに毛布をかけて部屋を出て行こうとした。不意
に、琥珀の服の裾をレンが掴んだ。

「あら、あら。」

琥珀さんはそっとレンの手を外そうとするが、レンは強く握って離そうとはし
なかった。琥珀は、レンが傍にいて欲しいと思いそのままレンの寝ている横に
寝転んだ。

「レンちゃん、今日はずっといっしょにいてあげますからね、志貴さんの代わ
りに…。志貴さんが帰ってきたら一緒に甘えちゃいましょう。」

そう言ってレンを優しく撫で、そっと抱いて琥珀は目を閉じた。



「あ、翡翠。琥珀さんはどこに行ったのかな。」
「恐らく、部屋にいるのではないかと思います。私も、姉さんに用があります
ので一緒に行きますか。」
と、翡翠は志貴に聞く。志貴は二つ返事で、

「ああ、そうさね。」

と答えて、志貴と翡翠は琥珀の部屋に向かった。琥珀の部屋のドアをノックし
た。

「姉さん、いませんか。」

部屋の中からの返事は無い。翡翠はもう一度ドアをノックしたが反応は無い。
志貴と翡翠は顔を合わせて、目で言葉を交わす。

「姉さん、入りますよ。」

翡翠は琥珀の部屋のドアを開けて、中に入った。翡翠の後に志貴も部屋の中に
入る。琥珀さんの部屋の中は、いつものように綺麗ではなく、引っ張り出した
と思われる服が床に散らばっている。

「まさか、琥珀さんが…。」

志貴は声を荒げた。すると、

「志貴さま、静かにしてください。」

翡翠が志貴の声を制止した。

「志貴さま。」

翡翠がベッドの傍に立って、指を指している。志貴はベッドの傍までいって、
翡翠の刺す指の先を見た。
そこには、気持ち良さそうに眠る琥珀とレンの姿があった。琥珀は、我が子を
抱くかのようにレンを優しく抱いている。その顔は、本当に幸せそうで、志貴
も翡翠も見たことの無いような琥珀の優しい顔があった。その姿を見ていると、
こっちまで心が温かくなってくる。

「志貴さま、どうされますか。」

翡翠は、志貴に聞いてくる。志貴は悩むことなくこう答えた。

「このまま、寝かせてあげよう。起こすのは可哀想だし。それに、こんなにい
い顔をしている琥珀さんは初めて見たよ。」
「そうですね。」

翡翠は微笑んで琥珀の寝顔を見ている。少しの間、琥珀さんの寝顔を拝んだ志
貴と翡翠は、琥珀の部屋を後にした。


「ん………。レ、ンちゃん……。」

琥珀は、そのままレンを抱いて眠りつづけた。

                                   
 <了>


おまけ
 ―――夕方

「兄さん。琥珀はどうしたんですかぁっ。」
「いや、部屋で寝ていて、その、起こしづらくて。」
「夕食はどうするんですか!」
「その心配は要りません。私が姉さんの代わりにおつくり致します。」
「そ、それだけは、勘弁して。」

修羅場の夕食…………合掌。


あとがき

琥珀さんSS…私にとっては非常に難産でした。どう書いても、ほのぼのになら
ない。こ、こんなに難しかったのか!と感じました。
今作は琥珀さんSSなのにレンが非常に目立っているような気がします。
自分の力不足がもろに出ちゃいました。オチていませんし…。

少しでも、楽しんでいただければ幸いです。
ここまで、読んで下さった方に敬意を込めて。

                                   
 稀鱗