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【 寒い日は――― 】
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「ううっ、寒いな」
白い息を吐きながら、自室から廊下に出た。
ただでさえ広い廊下なのに、外壁のほとんどが大きな窓で占められているため、
保温効果は無いに等しい。
雪で真っ白に染まった外の外気とほぼ同じ室温。
「これは、部屋を移動するだけでもコートが要るな」
でも、さすがにいくら金持ちだからと言って、四人しか住んでないこのでかい
屋敷全体に、暖房を入れるほど秋葉も無神経じゃない。

寒さに耐えながら、手をすり合わせ小走りで食堂に向かう。

この時間だと秋葉はもう出かけていて、翡翠は屋敷の掃除。
つまり、水音のするキッチンに居るのは――――

水道の前に着物の後姿を確認すると、近付いて声をかける。
「琥珀さん」
その声に反応して振り向くと同時に、琥珀さんを抱きしめた。
すっぽりと腕の中に収まった琥珀さんは少しびっくりしたようだが、すぐに身
体をあずけてくる。

「おはようございます。志貴さん」
腕の中の琥珀さんが顔を上げる。
抱きしめているから、お互いの顔が触れるほど近くにある。

二人の間から琥珀さんの両手が頬に伸びて、そっと添えるように触れる。
「志貴さんの顔、冷たいです」
「廊下を通ってきたからね」
「では、暖めてあげます」
顔から手を離して、琥珀さんも抱きしめてくる。
密着していた身体が、さらにぴったりと密着して、頬と頬が触れ合う。

着物越しに、柔らかな体の感触と暖かい体温が、伝わってくる…
「どうです。暖まりましたか?」
ふふっ と笑うと、抱きしめられていた圧迫感が無くなる。

「さ、朝食を暖めますからちょっと持っててくださいね」
手を離した琥珀さんが、そう言って離れようとするが、両手は琥珀さんを抱き
しめたままだ。

「まだ、寒いよ…」
ぎゅっと抱き締めながら、体のラインをなぞる様に弄る。
「志貴さん。今は駄目です」
ソノ気になった事に気付いた琥珀さんが、胸板を押し返す。
「まって、待ってください」
抵抗に構わず、ぐいと引き寄せて抱き締める。
腕の中で抵抗する琥珀さんは、何か新鮮で可愛らしく感じる。
いつも主導権をとられてるからかな。



抱きしめる事で、琥珀さんの動きを封じているわけだから、手を緩める事がで
きない。
なんとか動かせる手首から先を使って、器用にお尻側の裾をたくし上げる。

「あっ」
声を上げてびくっと反応する琥珀さん。
どうやら何をしているのか気付いた様だ。
少しずつ少しずつ、もったいぶった緞帳の様に着物の裾が上がってゆく。

「止めてくださいっ」
じたばたと動いているけど、これだけ密着していると上手く力が入らず、抵抗
らしい抵抗もできないみたいだ。


そうこうしている内に、なんとか裾を手元まで引き上げる。
琥珀さんの肩越しに、背中側を覗くと綺麗なラインの生脚が眩しい。
手首に裾を引っ掛けて、掌で肌理細やかなフトモモの心地良い手触りを楽しむ。

そして、手はそのままフトモモに沿って上へ――――

ざわり。

なんか、変な手触り。
「あの、琥珀さん。これ…」
さわり、さわり。
手触りを確めるべく、手の平で何度も尻の表面をなぞる。
「あん、志貴さん。そんな、撫で回さないでください」
いつもの滑らかな手触りのじゃない… あの肌を滑るような下着の感触とは程
遠い。
ましてや、しっとりと吸い付くような琥珀さんの生素肌では絶対に無い。

まるで「毛」…
そう。細かな毛がびっしりと生えてるみたいだ。

正体を確かめるべく、下から着物の中に差し込んだ手と背中に回した手に力を
込めて、膝の裏と背中を支えて持ち上げる。
「え、あの…」
お姫様だっこに戸惑う琥珀さんを台の上に乗せると、膝頭に手をかけて開くよ
うに力を加える。
「あ、だめです。後生ですから、今はだめっ…」
一生懸命膝を閉じている様だが、不安定な体制に加えて力の入りにくい膝。
じりじりと裾の合わせ目が、カーテンの様に開いてゆく。

「志貴さん。それ以上すると、怒りますからね」
必死に着物を手で押さえて抗議するが、その半分怒った顔も今の興奮状態では
火に油だ。

ぐぐっ
膝を掴んだ志貴の手に力が入る。
ゆっくりと震える膝が開き、影の中だった着物の内側に光が差し込む。

白くしなやかに伸びた太腿の先。
そこには――――
「琥珀さん。これって……」






あっけにとられて力の抜けた志貴から脱すると、ぎゅっと裾を押さえつけて、
見えていたソレを隠す。
「志貴さんひどいです。やめてって言ったのに」

「あの、琥珀さん…」
どう反応していいかわからない。
「こ、これはですね。今朝は寒かったから…。その、女の子は冷え性が多いん
ですよ」
言い訳っぽいことを言いながら、恥ずかしそうに視線をそらす。

「琥珀さん。もしかして、その、『毛糸のパンツ』だから駄目だったの?」
「そっ、それは言わないでくださいっ」
その真っ赤になって怒る琥珀さんの様子を見て、落ち着きを取り戻て「はぁ」
と小さく息を吐く。
「そんなに嫌がらなくてもいいでしょう。『毛糸のパンツ』を見られるくらい」
ぴくり。
恥ずかしそうだった琥珀さんが一転して眉をひそめる。
「志貴さん。私の事、薹が立った行き遅れだと思ってません?おさんどんだし、
割烹着だし。一応お姉さんだと言っても、翡翠ちゃんと双子(同い年)なんで
すよ?」
ああ、恨めしそうな琥珀さんの視線が痛い…。
「私だって、年頃の女の子なんですから。好きな男の子にこんな格好見せたく
無いと思うのは当たり前じゃないですか。そんなデリカシーの無い事言う志貴
さんは嫌いです」
言いながら、「好きな男の子」なんて口に出して恥ずかしくなった琥珀さんの
顔が、しだいに紅く染まる。

琥珀さん可愛いな。

「でもね、琥珀さん。俺は飾らない琥珀さんも、可愛いと思うよ」
本心からの言葉だったけど、琥珀さんはぷいっと外方を向いて剥れる。
「そんな事言っても許してあげませんから」

「ごめん。許して」
拝む様に手を合わせて頭を下げる。

「わかりました。許してあげます。だだし…」
「ただし?」
「この埋め合わせはしてくださいね」
いつもの琥珀さんの笑顔に戻っている。
あの優しくて、ほっと安心する笑顔に。

「うん。何でも言って」
それを聞いた途端。ぱぁっと太陽みたいな笑みを浮かべると、科を作って志貴
に寄り添い、甘い声で―――


「志貴さま。では今夜、ちゃんと勝負様の下着を履いてお伺いしますから、よ
ろしくお願いしますね」






――――― 了 ―――――






うまく出来たか不安ですが、こんなモノで如何でしょう…
乱文ではございますが、少しでも楽しい気持ちになっていただけたら幸いです。

2004/01/11   you