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注:このSSは 阿羅本さん作の「傀儡の夜」を読まれた後にお読み下さいませ。


溺れる

作:瑞香

扉がノックされる。

「どうぞ」

扉の中から声がする。

「……入ります」

扉を開けて入ってくるのは、瀬尾晶であった。
晶はバスローブを身にまとっており、顔はうっすらと上気していた。

 部屋の中は廊下よりもなお暗かった。

窓から見えるのは、蒼天に輝く月。その冴え冴えとした月光が部屋の中を照ら
しているというに、部屋は薄暗く、晶は漆黒の闇の中に入ったかのようであった。

「あら瀬尾」

怖々としている晶にベットの方から声がする。

 そこには、敬愛し畏れ敬い――そして主人である秋葉が横たわっていた。

「はい……先輩」

闇の向こうから含み笑いの気配がする。
ゆるるかに闇がながれ、ベットで横たわっていた秋葉が半身を起こした。

「さぁいらっしゃい」

誘いの言葉。低く冷たく感情のない声。それを聞く度に晶の背筋に冷たいもの
が駆け抜ける。

 でも。
 ――でも、彼女は逆らえなかった。

噛みつかれた箇所が甘く疼く。
晶はその言葉を聞くと、バスローブを脱ぎすてる。その下には何もつけていなかった。

 薄くまた未成熟な躰。そこには生々しい愛撫の後があった。

噛み、口づけし、ねぶり、舐められた跡がいたるところにあった。

「シャワーは浴びなかったわね」

質問というより確認。
それに対してこくりと頷くと、晶はベットへと近寄ってくる。
「さぁ」とシーツを持ち上げる秋葉も全裸であった。
しずしずとベットの中に潜り込むと、晶はうつぶせになった。
そして秋葉は晶を抱きしめる。そして大きく息を吸い込む。

「――あぁ、兄さんの匂い」

胸一杯に志貴の匂いを吸い込んだ後、

「さぁ話してごらんなさい」

秋葉は耳元で囁くと、晶の上に覆い被さった。

「……はい。まず最初は志貴さんは、わたしの唇に……」
「そう唇に」

秋葉は唇を重ねる。

「それから?」

秋葉の目が赤く輝く。
(あぁあの目が、瞳がわたしを狂わせる)

「痛っ!」

とたん胸のつぼみがつねられる。

「……それから?」

下からのぞき込むかのように、秋葉が見つめてくる。

「は、はい。それから舌を絡ませ……」

すると秋葉は唇を重ね、舌を入れてくる。
晶もそれに絡める。相手の舌を舐め、唾液をすすり合う。

「……そして、そして……」

晶はうわごとのように繰り返す。

「舌先でわたしの唇をなぞって……」
「こんな風に?」
「あぁ!」
「……それから、ゆっくりと……下がって……首筋に」

秋葉は言われたようり首筋に唇をはわせる。

「……同時に……志貴さんの手はわたしの胸に……」

秋葉の手が胸に伸び、そっともむ。

「あぁ……違います、先輩。もっと……もっと強く……」
「こうかしら?」

ふふふ、と笑いながら、力をこめて胸をこねくり回す。

 はぁ

晶は熱い吐息を吐く。

「そうです……もっともっと強く……」
「こう?」
「はい、志貴さんは男性の力で荒々しく……」

言われたとおりに胸をまさぐる。こねくり回し、つねり、ひねる。

「……そして、志貴さんは……鎖骨をチロチロと舐め……」

晶は今さっきまで行われた、志貴との逢瀬を思い出していた。

(……本当は違う)

晶はぼんやりとした頭で考える。

(志貴さんはもっとやさしく、わたしが物足りないような力で揉むの……)

でも晶の口から出る言葉は真実と違う。

「そうです……先輩……志貴さんは……もっと強く、跡が残るぐらいに……」

 秋葉もこの幼い躰を舐め、もみ、晶の言われるがままに愛撫する。
 さらさらとした髪が晶の顔にかかる。
 あの美しい艶やかな秋葉の髪である。それからは高貴な薔薇の甘い香りがした。

(あぁわたしは……先輩に……抱かれているんだ……)

 志貴とは違う、柔らかで丸みをおびた女性特有の体。しかもそれが憧れの遠
野先輩が、わたしを……。
 どんどん晶は主であるはずの秋葉に命じる。

「そしてそして……そうです、そのままおへそをなめて……いったん離れて、今
度は太股をなでて……」

秋葉も言われたまま、命じられたまま、ただ晶の躰に刻まれた兄志貴の痕跡を拭
おうと、そのとおりに動く。

「そのままわたしの茂みの上に口づけを……」

秋葉はまるで従僕かのように、茂みに口づけする。

(あぁ遠野先輩がわたしのあそこにキ、キスを……)

そして下を延ばして、ぴちゃぴちゃと音を立てて舐め始める。

「そうです、そこ、そこを広げて!」

晶は全身を火照らせて叫ぶ。
秋葉はそのまま晶の陰唇を舐める。すする。粘膜をおさえ、舌と指をはわせる。

 思わず晶は秋葉の頭に手を伸ばし、抱え込む。

(……兄さんの匂いがする)

晶に頭を押さえつけられても気にせずに、頬を染めながら、一心不乱に陰唇を
秋葉は舐める。

(あぁ兄さん……兄さん)

いつの間にか舌だけで舐め、手はそのまま自分の秘所に延びる。

(……兄さんは瀬尾のここを、こんな風に嬲ったのですね)

秋葉は自分の陰核をこすり、つまみ、その下の陰唇にもう一方の手で慰める。

 すでにしとどに濡れきっていた。

人差し指と中指を自分の膣にいれる。
舐めていると、晶の膣から白いものがこぼれてくる。

(兄さんの!)

晶の幼い躰に注ぎ込まれた志貴の精液に舌を伸ばす。
舌に触れると、兄さんの味がした。
秋葉は夢中で精液をすすり、晶の胎内に一滴も残さないかのように、なめ回す。

(遠野先輩からわたしのあそこを)

考えるだけで頭がスパークする。

(男の志貴さんとは違う)

 「あぁ……あぁ……」

ただ二人の嬌声が部屋に響く。

「……そしてそして、志貴さんはわたしの中に……」

その言葉を聞くと、秋葉は指を晶の中にいれる。
ぐちゅぐちゅと音を立て、挿入を開始する。

「こぅ」

顔を真っ赤にして、秋葉はうわごとのように繰り返す。

「……兄さんは……こうしたのね」
「……はい……あ」
「……それから」
「あぁそれからもっと口づけを、いや、もう……」
「……はっきり言いなさい……瀬尾」

興奮しきった声で尋ねる。
晶の痴態を通じて、志貴の姿を見ていた。

「……あぁ! もぅ……もぅ頭が真っ白で……」

冷ややかな朱色の瞳を見ながら、晶は秋葉を見ていた。

(……溺れる……)

晶は目を潤ませて、秋葉の責めにとろけていた。
それは秋葉も同じ。
自分の肉人形を通じて、兄志貴を感じていた。
晶の胎内に出し入れする指と、自分の秘所に挿入している指が同じ動きをする。
「こぅ、こぅなのね、瀬尾……兄さんは……こうしたのね」
秋葉はさらに激しく、陰唇に指を出し入れする。

(兄さんはこうするのね)

そう考えると、自分に挿れている指が、志貴のものに思えた。

(兄さんは、兄さんは)

「……はぁ……はぁはぁ……」

 晶は何も考えられなかった。ただ喘ぐのみ。
 答えない晶を無視して、秋葉は登り詰めていく。
 ただただ真っ白い、最後の高みを目指して。
 晶の躰は震え、胸がぶるぶると揺れ、ピクピクと動く。
 秋葉の白い指は襞をかきわけて、まだ十分に発達しきっていない晶の真っ赤
な花園をかき乱す。
充血しきったそこは残った志貴の精液と愛液がまじり、ぐちゃぐちゃになっていた。

「そして……そして……」

秋葉はうわごとのように言う。

「イったのね。兄さんのを感じて、兄さんの腕の中で、兄さんに貫かれて、兄
さんに組み伏せられ……こんな風に、こんな風に……兄さんに、兄さんに!」

 びくんと晶の躰がのけぞる。と同時に秋葉も躰を丸めて動かない。
二人しておこりのように震えるのであった。

 しばらくして、晶は胡乱な表情で立ち上がる。

ベットにはあられもない姿で、秋葉が寝ている。放心しきった表情で、虚空を
見つめていた。

(――なんて綺麗なのかしら……)

 秋葉の全身は真っ赤に染まり、窓からの冴え冴えとした月光に照らされて、
ほのかに輝き、とても、そうとても綺麗だった。

 しばし見とれる。

晶はよろよろと床に投げ出したバスローブを掴み、着込む。

「また来ます、遠野先輩」

静かに告げる。
秋葉は満足しきったのか、何の返事もない。

「また、志貴さんに抱かれたら……」

志貴、という言葉に反応して、秋葉がこちらを見る。
蕩けるような表情で、そっという。

「抱かれたら来てね……必ず」
「えぇ」
「絶対よ、あなたはわたしの肉人形なのだから……」
「はい」

(えぇ遠野先輩に抱かれに――そして抱きに)

言葉にせずに晶は視線で告げる。
ベットでまるまって寝ている秋葉を一瞥して、晶は出ていく。

溺れたのは、どっち?



 瑞香です。
 この話も、やはり 阿羅本さんのSS、傀儡の夜、があったからです。
 あれのあとがきの「きっとこの後、毎晩志貴に抱かれた後に秋葉にすすられ
にいったり」を見たとき、これだ、と思ったのが不幸の始まり(爆)
 でそのシーンをいろいろこーもーそーするわけです、はい。
すると途中で攻め受けが入れ替わるんですよ、なぜか。
 どうしてでしょうか?
 晶ちゃん攻めって珍しいよね、うん珍しい、じゃ書こー、と速攻書き上げた
のが、これ、溺れる、です。
 でもあんまり攻められませんでした。
指示するだけで終わったけれども、瑞香的には、晶攻め、です、はい。
 やはり小動物系では、攻め、は難しいですねー。

 どうだったでしょうか?

最後に。

 やはりアイディアのもととなった傀儡の夜の作者であられる 阿羅本さんに、
このSSを捧げます。受け取ってくださると、いいな。