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「……そこにいるんだろ、秋葉」


「えっ……」

 頭をがんと叩かれたように、私は一気に体が凍り付いた。
 遠野……先輩?そんな……
 ただ意味が分からず、無駄と分かりながら布団を被ってしまう。

「……入って来いよ」

 志貴さんはおどけた様子でそう言う。

 かちゃり……


 ドアを控えめに開け入ってくるその姿は……

「遠野……先輩」

 私はその姿を確認してしまい、言葉を失った。
 ふらりと、ドアを後ろ手に閉じるようにすると、遠野先輩がこちらを見る。

「……ったく、来るとは思ってたけど、ちょっとやり過ぎじゃないか?」

 志貴さんは、ベッドにの端に移動して腰掛けながら訳の分からない事を言っている。

「だって、待ちきれなかったんですもの。中であんな声が聞こえたら」

 遠野先輩は悪気のなさそうに、いつもの調子で答える。

「気配だけでも十分だってのに、いきなり自慰なんて始めるなよな」
「あら、分かってました?」

 え……何……?
 遠野先輩が、自慰?

「してる途中に、アキラちゃんの声とは違う声がすれば、誰だって気付くぞ。
ったく廊下でオナニーなんて、はしたないなぁ」

 志貴さんが半ば呆れたような口調で言っている。

「仕方ないじゃないですか。でも流石兄さんですね。私の嬌声も覚えてるとは
余裕がありますね」
「まぁ、そうでもないけどな。アキラちゃんには最後までしてあげられなかっ
たから」

 何で、そんな日常会話みたいなの?
 内容があまりにも跳躍しすぎていて、私にはさっぱり分からなかった。

「アキラちゃん……ごめんね」

 志貴さんがそこでようやく私に向き直る。

「秋葉の奴が、来たいって言ったから」
「え……?」
「俺は、じゃぁ夜中おいでって言ったけど、まさか行為の最中に廊下で自慰始
めちゃうとは思わなかったよ」

 志貴さんは説明するように言ってくる。

「別に、集中してなかった訳じゃないよ。でも、あんな大きな声だったら聞き
たくなくても聞こえちゃうし」

 と、遠野先輩の方を見ると、

「聞きたくないとは、また随分ですね」

 先輩は、嫌みたっぷりな声で反論する。

「おっと、ただ一人に集中したい時にアレはないだろ?おまえだっていつも他
の話をすると怒るくせに」
「何の事かしら?そんなの女心を兄さんが知らないからじゃないですか」
「分かったよ。そういうことにしておいてやるさ」

 志貴さんが軽く手を振ってたしなめる。

 
 いつも……?
 女心……?


 私には、それを理解しようとする精神を持ち合わせていないようだった。


「ところで」

 遠野先輩が、志貴さんの方を見る。

「まだ、足りないようですわね」

 そう言うと、遠野先輩がゆっくりと服を脱ぐ。

「え……」

 信じられない、という面もちでそれを見る。
 遠野先輩は、何も躊躇無く志貴さんの前で裸になった。そしてそのまま

「あら、まだ付いてますね。私が綺麗にしてあげます」

 と、ベッドの前まで来ると跪き、志貴さんのペニスに舌を這わせ始めた。

 ……分からない。
 目の前で何が起こっているのか
 
 私は言葉を失い、その光景を眺めるしかなかった。
 遠野先輩は、志貴さんのペニスを愛おしそうにくわえ、私たちの残光を味わ
っているようだった。

「んっ……上手くなったな、秋葉」

 志貴さんも、さも当たり前のように遠野先輩の頭を撫で、それを見下ろしている。

「嬉しいですわ。兄さんの所為ですからね」

 いやらしく笑うと、遠野先輩は顔を上げ、立ち上がった。そのまま志貴さん
に体を触られる。控えめの胸が、志貴さんに触られて小気味よく反応する。

「あん……」

 そのまま、パンティの上からまさぐられている。志貴さんは

「まったく、一度イッたのに全然足りないのは、そっちもみたいじゃないか」

 そう言うと、先輩の脚から手を引き抜き、指を見せる。
 そこは、ぬらぬらと妖しい粘液がまとわりついていた。
 ぽーっと、遠野先輩がそれを眺めている。

「兄さん、もう来てください……」
「ああ……ほら、秋葉」

 志貴さんが自分の腿を叩く。
 そこにゆらりと遠野先輩が乗り上がる。パンティを抜き取り、既にとろとろ
になっているそれを晒す。
 そして、志貴さんをまたぐと、何の迷いもなくその中心に向かって手をあて
がい、腰を落としていった。

「あ……ん……」

 その感触を確かめるように、遠野先輩が目をつぶり、快感に震えている。
 奧まで到達すると、志貴さんは私の時みたいに腰を上下させる。
 遠野先輩が、跳ねるように身悶えている。

「い……いいです……兄さん……」

 今まで聞いた事のない色っぽい声で、遠野先輩が悦んでいた。


 思考停止。
 まるで夢の中と一緒。
 ただ、それがレンちゃんから先輩に変わっただけ。
 これも夢?
 現実?
 

 それは異常なはずなのに、それを咎めようとすることが出来ないでいる。
 どうして……分からない。



「瀬尾……」

 ふとその名を呼ばれて、顔を上げる。
 志貴さんに抱かれ恍惚の表情を見せながら、そこに遠野先輩がいた。


「あなた今、おかしいって思ってるでしょう?」

 私の心を見透かすように、先輩が訪ねる。

「あ……」

 言葉が思い浮かばない。

「きょ……兄妹……」

 二人は兄妹なのに……って、言いたいのに。何がそれを拒ませていたのか、
声が出ない。

「でも、大丈夫なのよ……っん」

 乳首を吸われながら、遠野先輩が優しく囁く。
 ナニが?ダイジョウブなんですか?
 ワカラナイ。

「私と兄さんは、血が繋がっていないの。だからこういう風にセックスしても
大丈夫なのよ」

 揺すられて嬉しそうに、遠野先輩が答える。志貴さんは先輩を貫き、時折複
雑な腰の動きを混ぜながら交わっている。

 ……そんな問題じゃないハズ……です
 モラルとか、社会通念とか、体裁とか……
 それが、この屋敷の中では失われているような錯覚を、私も覚えてしまっていた。
 この目の前の淫靡な、そして男と女の愛し合う光景を見せられて。

「くっ……秋葉、イクよ」
「はい……私も……膣に、来てください……」

 そう言うと、二人は大きく揺れ、そして強ばった。
 その瞬間、志貴さんは先輩の奧に打ち付けるように。先輩もそれを腰をくね
らせて受け取っていた。
 志貴さんが抜き取ると、それがごぼりと溢れ出す。恐ろしく淫靡だった。

「あっ……」

 志貴さんが遠野先輩をベッドに横たえる。目の前には満ち足りた先輩の顔。
それは兄妹の見せる光景でなく、明らかに男と女の光景だった。

「ん……」

 遠野先輩が、うっすらと目を開けた。

「瀬尾……」

 私の名を呼ぶ。

「は、はい……」

 弱々しく答える。

「大丈夫。兄さんはみんなのモノだから」
「え……っ?」

 そう言うと、遠野先輩は呆けている私に近づき、その脚の間に顔を埋める。

「きゃっ……何を?」

 抗えずにいると、舌が私の入り口にあてがわれた。

「あーあ、兄さんが乱暴にしたのね。痛かったでしょう?」

 そう言うと、私の膣を綺麗にするように舌を這わせる。

「ふふっ、瀬尾の味と兄さんの味がする」

 と、嬉しそうに遠野先輩が舐め続ける。

「や……あっ……」

 女性にされているという背徳感と、快感がごちゃ混ぜになってくる。

「可愛い……感度もいいのね」

 遠野先輩はにやりと笑うと、先程からその光景を眺めていた志貴さんの方に
向いた。

「兄さん、今度は二人で気持ちよくしてあげましょうね」

 そう言って、私の脚をガバッと開いてしまう。
 先輩の唾液と、私の愛液とで濡れたそこを晒され、一気に羞恥心が駆け上が
ってくる。

「ほら、もうこんなになってる……兄さんが欲しくて、啼いているわ」

 くつろげわれ、その中まで見せつけるようにして先輩が志貴さんを誘惑する。
 ごくり、と唾を飲み込む音。

「そうだな……今度は3人で……」

 そう言うと、志貴さんがはい上がってくる。遠野先輩は素早く私の脚を広げ
させたまま後ろに回り、腰をガードする。

「どうぞ……兄さんのでめちゃめちゃにしてください」
「ああ……」

 志貴さんは、熱にうなされたようにそこだけを凝視し、声も乾いている。

「アキラちゃん……いくよ」

 そうして、私の腰の下に自分の下半身を滑り込ませ、斜め下から私を貫いた。

「ああっ……!」

 痛みは、もうほとんど無かった。いきなり快感が全身を駆けめぐる。

「可愛いわ、瀬尾……」

 遠野先輩が後ろから耳朶を甘噛みして、耳に息を吹きかける。途端、弛緩し
て更に志貴さんのモノを深く受け入れる。

「あっ……あん!」

 気持ちよくて、それしか声に出せない。前後の息のあった攻めに、あっとい
う間におかしくなる

「あっ……ああっ……!」

 初めて、意識が遠くなる感覚。
 体を固まらせ、それは体の奧で何かがはじけるようだった……

「あ、アキラちゃんイッちゃったんだ。凄いね」

 志貴さんが、嬉しそうに言っている。

「瀬尾、本当に気持ちよかったのね。羨ましいわ……」

 遠野先輩が自分の時を思い出すようにして呟いている。

「くっ……アキラちゃんの膣、気持ちよすぎだけど……まだイッてないからね」

 そう言うと、まだ力の入らない私の体を起こし、逆に志貴さんが枕に頭を置く。

「ほら、こうすると……見えるだろ?」
「や……」

 この位置だと、志貴さんのそれが、私を貫いているのが見えてしまう。でも、
そこから目が離せずに、上下する粘液にまみれたペニスを凝視する私がいた。

「あっ……ずるいです。兄さん、私にも」
「ああ……秋葉、おいで。おまえも可愛がってあげるよ」

 と、蚊帳の外だった遠野先輩が、志貴さんの顔をまたぐように腰を落とし込
む。志貴さんはその開かれた秘裂に舌を這わせ、啜りとる。

「あっ!兄さん、そこいいっ!」

 目の前で、快感に顔をゆがめる先輩。反らした首筋が悩ましかった。


 と、先輩がふと私に笑いかけたと思うと

「ん……!?」

 唇を塞がれていた。ぴちゃぴちゃと音を立て、舌が私の口腔を蠢き回る。

「んんっ……」

 信じられない、そんな行動に理性が飛んでしまいそうだ。
 先輩の左手が、私の乳首を玩び、気持ちよすぎる。
 更に、右手が私たちの繋がっている部分にも伸びていた。
 そのまま、志貴さんのを銜えている私の秘裂の上部でまだ包皮に包まれてい
る淫核を優しく撫でられる。

「ひゃぁああ!」

 志貴さんのとは違う、知り尽くした優しい感覚が更に私を高める。

「どう……?自分でするより、男の人がするよりいいでしょ?女の子同士だか
らどこが感じるかも分かるのよ……」

 遠野先輩がそう言うが、私はもうそれが殆ど聞こえなかった。
 貫かれ、口を塞がれ、胸と中心を愛撫され、体中が快感に溺れ、イッたばか
りなのに、またおかしくなってきた。

「ああっ……志貴さん。先輩、もうダメ!!」

 私は、叫び声とも取れる程の声を上げる

「よし……俺もイクよ」

 志貴さんは動きを早める。

「ああっ、兄さん、私もっ!!」

 腰をぐいぐいと押しつけるように、遠野先輩が懇願する。志貴さんが舌に手
を添えて、秘裂をこね回す。

「あああっ!!!」

 3つの声が、重なった

 その瞬間、志貴さんは私の中に大量の精を出し、先輩は志貴さんの顔目掛け
大量の愛液を噴き出し、そして……

「ああああっんん!!!!」

 私は、全身を硬直させて登り詰めていった。

「ん……志……貴さん……先……輩」

 意識がぐらりと歪み、そのまま訳も分からず倒れ込んでしまった。



 チュン、チュン
 雀の囀りに目を覚ます。

「あ……」

 気絶してたんだ、その事実に顔が真っ赤になる。
 布団の中には、少し窮屈ながら3人。
 すぐ隣では、志貴さんの背中。
 そして……


「おはよう、瀬尾」

 その志貴さんを越えてむこう、遠野先輩が一糸まとわぬ姿で優しく微笑んでいた。

「あ……おはよう……ございます」

 まだ少し緊張したように、私はかえすと、先輩はふふふっと笑う。

「かしこまらないでいいのよ、気にしないから」

 今まで見た事無いような、慈愛に溢れた先輩の姿。幸せな女としての理想の
姿を、そこに見たような気がした。

「志貴さんは……」

 私が、恐る恐る訪ねると

「ああ、兄さんは起きないわよ。愛する妹がいくら呼んでも起きてくれないん
ですもの。それに、さっきまで私の相手してくれたから、疲れ果ててるでしょう」
「さっきまで……?」

 あれから、何時間経ったか定かでないが、明らかに1回や2回の交わりではな
いと分かる。

「まぁ、兄さんは底なしですから、死ぬまで続けられるかも知れないけどね」
 と、真下の志貴さんを見つめ軽く笑う。

「ところで、瀬尾」
「はい」
「兄さんに、なんて言われたの?」
「えっ……」

 突然、そう質問されて戸惑う。

「ここに来るように言われた理由」

 それは……

「未来視の事、知りたいって……」

 私がそう言うと、先輩は呆れたように

「全く、兄さんったら……」

 怒るではなし、やれやれといった風に苦笑いする。

「瀬尾、兄さんは私にはなんて言ったと思う?」
「え?」

 私には?

「ど、どういうことですか?」

 私が訪ねると、含みのある顔で

「能力の事なんて言ってないわよ。兄さん、私には「妹みたいなアキラちゃん
としたい」って言ってたわよ」
「え……?」

 ぽかんと、あっけにとられてしまう。

「全く、「妹みたい」なのに「したい」だなんて、変態な兄さんね」
「そんな……」

 信じられなかった。
 あれだけ積極的に色々尽くしてくれた志貴さんに、私は策をかけられていた
なんて……

「まぁ、瀬尾に誤解が無いように言っておくと、能力の事はレンの事もあるし、
あながち嘘ではないでしょう。それにしても、上手くやりましたわね、兄さん」

 そんな策士の兄を見て、私がいるのに、と甘ったるい声で笑って頬をつねる。
 志貴さんは、そんな素振りも一切見せず、置きようともせず規則的な寝息を
立てている。
 ころんと、こちらに倒れてくる志貴さんの顔を見て

「あっ……」

 あまりの美しさに、声を失った。

「……でも、いいです」

 私はその笑顔に元々ほとんど無い毒気を全て抜かれていた様だった。
 結局、未来視の事は完全にでは無いけど、志貴さんとレンちゃんに教えられ
たし。
 憧れてた、大好きだった志貴さんに処女を捧げたし。
 こうして、遠野先輩とももっと仲良く慣れたし。


「そう、瀬尾がいいなら構わないわ」

 そう言うと、先輩は何故かちょっと恥ずかしそうに目を背け

「それに、翡翠も琥珀も……私も、瀬尾みたいな妹がいたらいいなぁ、って思
ってたし……」
「え……」

 私まで、赤くなってしまう。
 そんな、遠野先輩まで!?

 みんなから優しくされて、愛されて、嬉しくって……


「……瀬尾?」
「ううん、何でもないです」

 私はまたこぼれてきた涙をぬぐわず、一杯に笑った。

「しばらく、ここにいていいですか?」

 私が聞くと、先輩は

「もちろん、何なら何時までもいてくれてもいいのよ」

 優しく、微笑んでくれた。

「はい!」

 元気良く答えて、私は二人に抱きついた。

「ちょっと……やめなさいって」

 秋葉お姉さんが苦笑いしながら、それを受け止めてくれた。
 志貴お兄さんは、相変わらず眠ったままだけど、笑ったいるように見えた。

「このまま、もう少し眠りませんか?」

 抱きついたまま、私が言うと

「そうね、私はまだ眠ってないし……瀬尾、あなた最初に寝てたのに欲張りね」

 先輩が笑って言う。

「へへっ、ゴメンナサイ」

 舌を出して笑う。

「まぁいいわ。これから兄さんの相手をする時は一人だけ先には眠らせないか
らね。昨日は初めてだったから特別よ。私と兄さんで一杯気持ちよくしてあげる」

 そう言うと、先輩は志貴さんの胸に頭を置く。
 私も同じようにすると、先輩が頭を撫でてくれる。

「お休み、瀬尾。可愛い妹……」
「ハイ、お休みなさい、お姉さん、お兄さん」

 先輩の優しい手の感触と、志貴さんの暖かさに、私はすぐに夢へと落ちていっ
た……

 そんな、新しい日々の始まり






〜後書き〜
今回姫嬢祭では3度目の登場です。古守久万です
……またまたやっちゃいました。長いったらありゃしません。(苦笑
しかも今回も見事に前半エンジンがかからない……スロースターターもいいと
ころです。

 今回はアキラちゃん。最近、フロイトの精神分析学を勉強し、夢にまつわる
様々な事を学習したので、よし月姫に応用してやろうと思った次第です。とい
うか受講した理由が月姫でしたし。授業中にこの話の骨組みを書いてたりした
事も(笑
 ちょっと学説っぽくて難しい所が多かったかなぁ、と反省してます。これな
ら最初っから欲望の任せるままにアキラちゃん処女喪失SSにすればよかった
と、それじゃ芸がないですし(爆
 きっとその分後半はいい感じでえろーすだったのではないかと。

ちなみにタイトルはフランス語で「言語と欲望」……この授業の講座名でした、
ということで(ぉ

今日は3月13日、まだ間に合うかなぁ?
姫様のSSも書きたいです。真面目な奴を。では


                                      《つづく》